上 下
33 / 116

デスカーニバル

しおりを挟む

 大きな穴の崖を器用にピョンピョンと跳ねながらショコラとバルザックが簡単に大きな穴から脱出した。


 「オークキングの牙ゲットよん!」


 ショコラは両手にオークの牙を持ち高らかに突き上げた。しかし、嬉しそうにはしゃぐショコラを3人はスルーする。


 「バルザック、下には何があったのだ」

 「オークキングの牙が落ちていた」

 「そうか、この穴はオークキングを倒すために放たれた魔法と考えて良さそうだな」

 「そうだ。そして、デスカーニバルが起こってオーク達は殲滅されたということだろう」

 「オーク2000体に英雄ランクのオークキングを倒せる魔獣となると・・・」

 「3体の火炎竜王かヴォルフロードね」

 「そうだなシェーネ。森が焼け野原になっていないと言うことはヴォルフロードやったということだろう」

 「俺もそう思う。しかし、俺たちの代わりにオークキングを倒してくれたことには感謝しないとな」

 「何を言ってるのよ。私たちだけでオーク2000体とオークキングを倒すのは不可能よ。今回はあくまで他の冒険者達の安全を確保するための先行視察だったのよ」

 「シェーネ、やはりお前でもオークキングは倒すことは不可能なのか?」

 「『青天の霹靂』全員とオークキングなら対処できると思うわ。しかし、オークキングの他に2000体ものオークがいるのよ。絶対に不可能よ!」

 「それをやってのけたヴォルフロードは強すぎるな」

 「そうね。黒の厄災の王に勝てる人間などいないわ。たとえ10万の軍隊を用意しても無駄ね。それがわかっているから『黒の厄災』と言われているのだから。『黒の厄災』に『赤の厄災』この国はこの二つの厄災と対峙して成り立っているわ。聖霊樹様の存在がこの二つの厄災を抑えているから私たちは生活をすることができるのね」

 「しかし、今回はその『黒の厄災』に助けられてたっていうことになるのか」

 「そうなるわね。デスカーニバルは魔獣同士の権力闘争、オークキングの誕生に危機を感じたのは、人間だけでなく魔獣も同じだったってことね。新勢力を排除したヴォルフロード、オークキングの侵略を免れた私たちお互いの利害が一致したってことね」

 「難しい話はわからないよん。そんなことよりもこのオークキングの牙を売って、パーティーでもするよん」

 「ショコラ!俺たちは国王様からイーグルネイルの排除を依頼されている。極悪非道な奴隷売買を主とする『真紅の爪』、魔石、素材を強奪する『紅緋の爪』まずはこの二つの爪を削ぐのが俺たちのメインの依頼だ。情報が確かなら、王都にいるあの冒険者が『紅緋の爪』と関わりがあるはずだ。今からアイツらの動向を徹底的に調べるぞ」

 「えぇ~スイーツパーティーをするよん」

 「だめだ!それにオークキングの牙は英雄ランクの素材だ。英雄ランクの素材は国王様に献上する必要があるのを忘れたのか?」

「黙っていればわからないよん」

 「バカかお前は!英雄ランクの素材を冒険者ギルド、商業ギルドに持って行って換金すれば、すぐに国王様に連絡がいくのだぞ」

 「よよよぉ~ん」

 「ショコラ、報酬は自分たちの腕で勝ち取ってこそ意味があるのよ。イーグルネイル達を捕まえて報酬をもらったらみんなでパーティーをしましょ」

 「そうよん。イーグルネイルをぶっ潰すよん」


 『青天の霹靂』はオークキング、オーク2000体がヴォルフロードによって殲滅されと報告するために急いで王都に戻るのであった。



 次の日、私はみんなで朝食を食べているときに、とんでもない情報を手に入れた。


 「あなた、お客様から聞いたのですが、先日新しく冒険者になりたいという女の子がいたそうよ。ちょうどハツキさんくらいの年齢の女の子が」

 「そうなのか?それがどうしたのだ」

 「若くて冒険者証が欲しくて冒険者試験を受けることは珍しくないわ。でも、その女の子・・・・」

 「どうしたのだアイリス」

 「ちょっと・・・」


 アイリスがかなり思い詰めて表情で、今にも涙がこぼれ落ちそうである。


 「実は・・・その女の子・・・魔力量が・・・・ゼロだったのよ」

 「そ・・・そんなことがあるのか?何かの間違いではないのか?」

 「私も初めは疑ったわ。でも、本当らしいのよ。魔力量がゼロだなんてそんなひどい仕打ちがあるの!神様はなんでそんなひどいことをしたの!」


 アイリスさんは瞳から涙を流しながら怒っている。


 「俺たちに何かできることはないのか?」

 「魔力量がゼロということは魔法、魔道具を使用することができないわ。この歳までどれほど大変な生活を送ってきたのか想像もできないわ。私たちができることは・・・そうだわ。この屋敷で雇ってあげればいいのよ。魔力を必要としない簡単な仕事を用意して、その子に仕事を与えてあげるのはどうかしら?」

 「それは名案だ!早速手配させよう」

 「あの~」


 私はか細い声で2人の話を止めに入る。


 「そうだ!ハツキさんの世話が係にするのはどうだろう。ハツキさんほどの魔法の使い手ならば、何かその女の子の力になってくれるかもしれない」

 「それがいいわ。ハツキさんのそばに居れば、魔力が溢れ出てくれるかもしれないわ」

 「無理です!!」

 「ハツキさん、申し訳ありません。勝手に私たちで話を進ませてしまって・・・ハツキさんのご迷惑とあれば別の方法を考えます」

 「いえ・・・実はその・・・女の子・・・私なんです」

 「えぇ~~~」


 ヘンドラーとアイリスの悲鳴にた驚きの声が食卓に響き渡る。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

愛されなければお飾りなの?

まるまる⭐️
恋愛
 リベリアはお飾り王太子妃だ。  夫には学生時代から恋人がいた。それでも王家には私の実家の力が必要だったのだ。それなのに…。リベリアと婚姻を結ぶと直ぐ、般例を破ってまで彼女を側妃として迎え入れた。余程彼女を愛しているらしい。結婚前は2人を別れさせると約束した陛下は、私が嫁ぐとあっさりそれを認めた。親バカにも程がある。これではまるで詐欺だ。 そして、その彼が愛する側妃、ルルナレッタは伯爵令嬢。側妃どころか正妃にさえ立てる立場の彼女は今、夫の子を宿している。だから私は王宮の中では、愛する2人を引き裂いた邪魔者扱いだ。  ね? 絵に描いた様なお飾り王太子妃でしょう?   今のところは…だけどね。  結構テンプレ、設定ゆるゆるです。ん?と思う所は大きな心で受け止めて頂けると嬉しいです。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!

水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。 正確には、夫とその愛人である私の親友に。 夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。 もう二度とあんな目に遭いたくない。 今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。 あなたの人生なんて知ったことではないけれど、 破滅するまで見守ってさしあげますわ!

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら

風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」 伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。 男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。 それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。 何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。 そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。 学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに! これで死なずにすむのでは!? ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ―― あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

処理中です...