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肉体との会話
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町を出るには門番に冒険者証を見せて通過しなければならない。
「君はヘンドラーさんの使用人ではないか」
門番は私の顔を覚えていたみたいである。
「使用人が1人で町を出るのか」
門番は怪しそうに私を見ている。もしかしたら、私がヘンドラーの屋敷から逃げ出したのではないかと疑っているみたいだ。
「あ!そうだ。私ヘンドラー男爵様からチップを預かっているの。ヘンドラー男爵様から町を出るときはチップを渡すように言われていたの」
ヘンドラーが銀貨1枚をチップとして渡していたのを私は知っていた。私は門番にいらぬ疑いをかけられているかもしれないので、同じように銀貨1枚渡した。
「これはありがとうございます。どうぞ、門をお通りください」
急に門番は愛想が良くなり、冒険者証を確認することなく町を出る許可を与えてくれた。
私は町の外へ出るとワンピースのポケットに隠れていた米粒の大きさのプリンツを外に出してあげた。冒険者ギルドに仔犬を連れていくわけにもいかなかったので、ワンピースのポケットに隠していたのである。
「プリンツちゃん、窮屈な思いをさせてごめんね」
「気にしてないよ」
「もう誰もいないようだし、本来の姿に戻っていいわよ」
プリンツは本来の姿である1mほどの大きなになった。
「ハツキお姉ちゃんこれからどうするの?」
「自分の力の制御をしたいと思うの。まずはどれくらいの力があるのか試してみたいのよ」
「・・・」
プリンツの顔が真っ青になった。
「プリンツちゃん?どうしたの」
「ハツキお姉ちゃんが本気を出したらこの辺りは崩壊してしまうよ!徐々に力を試した方がいいと思うよ」
「失礼しちゃうわ。私はそこまで怪力じゃないわよ」
「ハツキお姉ちゃんは『黒の厄災の王』と呼ばれる僕のお父さんでもビビっているんだよ。僕のお父さんがあんなに恐怖に怯える姿を見たのは初めてみたんだ」
「そうなの」
「そうだよ。だから、絶対に本気を出さないでね」
「わかったわよ。でも、どうやって力を試せばいいのかしら」
「確か、ここから1時間ほど走れば、オークの森があるはずだよ。最近オークキングが誕生して、僕たちの黒の森に喧嘩を売ってくるとお父さんに聞いていたから、オークの森に行って力を試すのはどうかな?」
「プリンツちゃん、私を利用しよとしているのね。でも、ちょうどいい腕試しになりそうだから、利用されてあげるわ」
「決まりだね。急いでオークの森に向かうから僕の背に乗ってよ」
「いいえ、今回は私思いっきり走ってみたいの。もしかしたら、私自動車のように早く走れるかもしれないと思っているのよ」
「自動車?なんのことだがわからないけど、力ではハツキお姉ちゃんに敵わないけど、走りなら僕は負けないよ!」
「それなら勝負ね!ハンデとしてプリンツちゃんから走り出してね。私はプリンツちゃんの後を追いかけるわ」
「僕も舐められたものだよ。ヴォルフ族が誇るのは無敵の毛だけではなく、捕らえることができない疾風の足も有名なんだよ」
「あらそうなの?なら疾風の足を見せてもらうわよ」
「行くよ」
プリンツの目が本気モードになりギラギラと赤く輝きだし、大地を蹴って土煙をあげて走り出した。私を背に乗せていた時よりも速くて、プリンツの姿は一瞬で見えなくなった。
「あら、プリンツちゃんすごく速いじゃないの。私追いつけるかしら?」
私は大見得を切ってプリンツと勝負を挑んだが、実際にどれだけ早く走れるかは未知数である。私はテレビで見た陸上選手のフォームをマネして走り出した。
「これでいいのかしら?」
私は胴体を動かさずに前傾姿勢をとりながら腕を大きく振る。そして、流れるような足を出す。
「だめだわ。プリンツちゃんに追いつかないわ。それなら」
私は意識的にもっと力強く素早く肉体が動くように意識を集中させた。すると、私の肉体はそれに応えるようにどんどんスピードが増していく。そして、10分を経過した時にやっとプリンツに追いついた。
「力の加え方はなんとなくわかったわ。肉体と対話することで、肉体は私の気持ちに答えてくれるようだわ。なら、力を抑えるのも肉体と対話すればいいのね」
力の強弱の仕方は意外と簡単なものであった。それは肉体との会話だった。肉体にどれだけの力を出すか命令することによって、私の肉体はそれに応じて答えてくれるのであった。
「私の肉体ちゃん。私にもっともっと走るスピードをちょうだいね」
『わかったよぉ~』
私は肉体が返事をしてくれたような気がした。私の細い華奢な体のどこにそんな力があるのかわからないが、プリンツを大きく引きなして、オークの森にたどり着いたのであった。
「君はヘンドラーさんの使用人ではないか」
門番は私の顔を覚えていたみたいである。
「使用人が1人で町を出るのか」
門番は怪しそうに私を見ている。もしかしたら、私がヘンドラーの屋敷から逃げ出したのではないかと疑っているみたいだ。
「あ!そうだ。私ヘンドラー男爵様からチップを預かっているの。ヘンドラー男爵様から町を出るときはチップを渡すように言われていたの」
ヘンドラーが銀貨1枚をチップとして渡していたのを私は知っていた。私は門番にいらぬ疑いをかけられているかもしれないので、同じように銀貨1枚渡した。
「これはありがとうございます。どうぞ、門をお通りください」
急に門番は愛想が良くなり、冒険者証を確認することなく町を出る許可を与えてくれた。
私は町の外へ出るとワンピースのポケットに隠れていた米粒の大きさのプリンツを外に出してあげた。冒険者ギルドに仔犬を連れていくわけにもいかなかったので、ワンピースのポケットに隠していたのである。
「プリンツちゃん、窮屈な思いをさせてごめんね」
「気にしてないよ」
「もう誰もいないようだし、本来の姿に戻っていいわよ」
プリンツは本来の姿である1mほどの大きなになった。
「ハツキお姉ちゃんこれからどうするの?」
「自分の力の制御をしたいと思うの。まずはどれくらいの力があるのか試してみたいのよ」
「・・・」
プリンツの顔が真っ青になった。
「プリンツちゃん?どうしたの」
「ハツキお姉ちゃんが本気を出したらこの辺りは崩壊してしまうよ!徐々に力を試した方がいいと思うよ」
「失礼しちゃうわ。私はそこまで怪力じゃないわよ」
「ハツキお姉ちゃんは『黒の厄災の王』と呼ばれる僕のお父さんでもビビっているんだよ。僕のお父さんがあんなに恐怖に怯える姿を見たのは初めてみたんだ」
「そうなの」
「そうだよ。だから、絶対に本気を出さないでね」
「わかったわよ。でも、どうやって力を試せばいいのかしら」
「確か、ここから1時間ほど走れば、オークの森があるはずだよ。最近オークキングが誕生して、僕たちの黒の森に喧嘩を売ってくるとお父さんに聞いていたから、オークの森に行って力を試すのはどうかな?」
「プリンツちゃん、私を利用しよとしているのね。でも、ちょうどいい腕試しになりそうだから、利用されてあげるわ」
「決まりだね。急いでオークの森に向かうから僕の背に乗ってよ」
「いいえ、今回は私思いっきり走ってみたいの。もしかしたら、私自動車のように早く走れるかもしれないと思っているのよ」
「自動車?なんのことだがわからないけど、力ではハツキお姉ちゃんに敵わないけど、走りなら僕は負けないよ!」
「それなら勝負ね!ハンデとしてプリンツちゃんから走り出してね。私はプリンツちゃんの後を追いかけるわ」
「僕も舐められたものだよ。ヴォルフ族が誇るのは無敵の毛だけではなく、捕らえることができない疾風の足も有名なんだよ」
「あらそうなの?なら疾風の足を見せてもらうわよ」
「行くよ」
プリンツの目が本気モードになりギラギラと赤く輝きだし、大地を蹴って土煙をあげて走り出した。私を背に乗せていた時よりも速くて、プリンツの姿は一瞬で見えなくなった。
「あら、プリンツちゃんすごく速いじゃないの。私追いつけるかしら?」
私は大見得を切ってプリンツと勝負を挑んだが、実際にどれだけ早く走れるかは未知数である。私はテレビで見た陸上選手のフォームをマネして走り出した。
「これでいいのかしら?」
私は胴体を動かさずに前傾姿勢をとりながら腕を大きく振る。そして、流れるような足を出す。
「だめだわ。プリンツちゃんに追いつかないわ。それなら」
私は意識的にもっと力強く素早く肉体が動くように意識を集中させた。すると、私の肉体はそれに応えるようにどんどんスピードが増していく。そして、10分を経過した時にやっとプリンツに追いついた。
「力の加え方はなんとなくわかったわ。肉体と対話することで、肉体は私の気持ちに答えてくれるようだわ。なら、力を抑えるのも肉体と対話すればいいのね」
力の強弱の仕方は意外と簡単なものであった。それは肉体との会話だった。肉体にどれだけの力を出すか命令することによって、私の肉体はそれに応じて答えてくれるのであった。
「私の肉体ちゃん。私にもっともっと走るスピードをちょうだいね」
『わかったよぉ~』
私は肉体が返事をしてくれたような気がした。私の細い華奢な体のどこにそんな力があるのかわからないが、プリンツを大きく引きなして、オークの森にたどり着いたのであった。
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