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お買い物
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リリーちゃんは、ダンディライオン家の期待を一身に背負って、私とのビスケット作りに命運を託すことになる。そんな重大なことになっている事を知らない私はバナーネの町の探索を終えて屋敷に戻って着た。
私はビスケット作りに必要な材料は買い揃えたが、生クリームを入手出来る事はできなかった。生クリームとは、動物性脂肪(乳脂肪)=生乳のみを原材料をしたものであり、生乳から乳脂肪分だけを遠心分離で取り出し濃縮して作られる。金と時間をかければ作る事は可能かもしれないが、そんな余裕はないので諦める事にした。しかし、代わりに牛乳で簡易的な生クリームを作ることにした。
「マカロンさん、おかえりなさい。いいお買い物は出来たのでしょうか?」
リリーちゃんは私の帰りを屋敷の門の前で待っていてくれた。
「リリーちゃんただいま。ビスケットを作る材料を買ってきたわ」
「自分の為の買い物でなく、私の為のお買い物をしてくれたのですね」
リリーちゃんは今にも歓喜余って泣き出しそうである。
「そんなことはないわ。私はお菓子を作るのが好きだから自分の為でもあるのよ」
これは正直な意見である。もちろん、リリーちゃんにバナナの件を忘れてもらう・・・いえ、ビスケットの作り方を覚えてもらう為でもあるが、私自身がお菓子を作るのが好きだからでもある。打算と欲望の両方を兼ね備えた結果と言える。
「マカロンさん、家族会議の結果、マカロンさんからビスケットの作り方を学ぶ事に決定しました。誕生祭には後一か月しかありません。不束者ですがご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
「救世主ちゃま、よろちくでちゅ」
リリーちゃんの横にリリーちゃんとよく似た小さい女の子が私にペコリとお辞儀をする。
「この子は私の妹のヒパティカです。どうしてもマカロンさんに会いたいと言って駄々をこねるので連れて来ました」
「初めましてヒパティカちゃん」
リリーちゃんにそっくりなヒパティカちゃんはとても可愛くてお人形さんみたいである。
「ビチュケット、ビチュケット!」
「ヒパティカ、おとなしくしていなさい。おとなしくしないとお部屋に連れて帰ります」
「・・・」
ヒパティカは唇を噛みしめておとなしくなるが、瞳からは今にも涙が溢れ出そうである。
「いいのよリリーちゃん。子供は元気が一番よ。ヒパティカちゃんはビスケットが食べたいのね。お姉ちゃんが今すぐに作ってあげるわ」
「・・・」
ヒパティカは顔をくしゃくしゃにして嬉しそうだが、リリーちゃんの言いつけを守って口を閉じたままである。
「マカロンさん、今からビスケットの作り方を教えてくださるのでしょうか?」
「そうね。ヒパティカちゃんに美味しいビスケットを食べさせてあげたいし、この屋敷に長居をするわけにはいかないから、今からビスケットの作り方を教えてあげるわ」
パンケーキちゃんがバナナを食べた犯人だと悟られる前に、早々にこの屋敷から退散する必要がある。なので、サクッとビスケットの作り方を教える必要があった。
「ちょっと待ってくださいマカロンさん。なぜ?すぐに屋敷から出て行かれるのでしょうか」
「あまりリリーちゃんに迷惑をかけるわけにいかないわ。早ければ明日にでも町を出る予定よ」
「やはり、私にはビスケットを作る技術を教えて下さらないのですね・・・」
リリーちゃんは寂しそうに俯いた。
「そんなことはないわ。ちゃんとビスケットの作り方を教えてあげるわよ」
「でも・・・ビスケットを作るには長年の修業が必要だとおもいます。それを一か月でマスターしようとすることさえ無謀な事だとはわかっています。それを1日でマスターするなんて・・・マカロンさんは鬼です」
「リリーちゃん、何か勘違いをしているようだけど、ビスケットを作るのはそんなに難しくないわよ。確かに一度聞いて全ての分量や工程を覚えるのは無理かもしれないけど、ちゃんとレシピも作ってあげるから問題ないわよ」
「レシピ?」
「そうよ。ビスケットを作る方法を書いたメモを渡してあげるわよ」
「それは秘伝の巻物ということでしょうか?」
「まぁ、そんなものよ」
「ほ・・・本当にそんな貴重な物をもらってもよろしいのでしょうか?」
「問題ないわよ」
「マカロンさぁ~~ん」
リリーちゃんは私の胸に抱き着いてきた。
「マカロンさん、なぜこんな私の為にそこまでしてくれるのですか?マカロンさんには何のメリットもありません。それどころかデメリットだらけです。どうしてですか?教えてください」
「リリーちゃん、最初に出会ったときに言ったわよね。困っている人を助けるのは当然のことよ。リリーちゃんが困っているのに放っておけないわよ」
私が本当に伝えたかった事は、私もパンケーキちゃんがバナナを盗んで困っているから許して欲しいと伝えたかった。
「マカロンさん・・・ありがとうございます。私は必ずビスケット作りをマスターしてバナーネを救ってみせます。だから、マカロンさんも見ていてください」
リリーちゃんは凛とした表情で高らかに宣言をした。
私はビスケット作りに必要な材料は買い揃えたが、生クリームを入手出来る事はできなかった。生クリームとは、動物性脂肪(乳脂肪)=生乳のみを原材料をしたものであり、生乳から乳脂肪分だけを遠心分離で取り出し濃縮して作られる。金と時間をかければ作る事は可能かもしれないが、そんな余裕はないので諦める事にした。しかし、代わりに牛乳で簡易的な生クリームを作ることにした。
「マカロンさん、おかえりなさい。いいお買い物は出来たのでしょうか?」
リリーちゃんは私の帰りを屋敷の門の前で待っていてくれた。
「リリーちゃんただいま。ビスケットを作る材料を買ってきたわ」
「自分の為の買い物でなく、私の為のお買い物をしてくれたのですね」
リリーちゃんは今にも歓喜余って泣き出しそうである。
「そんなことはないわ。私はお菓子を作るのが好きだから自分の為でもあるのよ」
これは正直な意見である。もちろん、リリーちゃんにバナナの件を忘れてもらう・・・いえ、ビスケットの作り方を覚えてもらう為でもあるが、私自身がお菓子を作るのが好きだからでもある。打算と欲望の両方を兼ね備えた結果と言える。
「マカロンさん、家族会議の結果、マカロンさんからビスケットの作り方を学ぶ事に決定しました。誕生祭には後一か月しかありません。不束者ですがご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
「救世主ちゃま、よろちくでちゅ」
リリーちゃんの横にリリーちゃんとよく似た小さい女の子が私にペコリとお辞儀をする。
「この子は私の妹のヒパティカです。どうしてもマカロンさんに会いたいと言って駄々をこねるので連れて来ました」
「初めましてヒパティカちゃん」
リリーちゃんにそっくりなヒパティカちゃんはとても可愛くてお人形さんみたいである。
「ビチュケット、ビチュケット!」
「ヒパティカ、おとなしくしていなさい。おとなしくしないとお部屋に連れて帰ります」
「・・・」
ヒパティカは唇を噛みしめておとなしくなるが、瞳からは今にも涙が溢れ出そうである。
「いいのよリリーちゃん。子供は元気が一番よ。ヒパティカちゃんはビスケットが食べたいのね。お姉ちゃんが今すぐに作ってあげるわ」
「・・・」
ヒパティカは顔をくしゃくしゃにして嬉しそうだが、リリーちゃんの言いつけを守って口を閉じたままである。
「マカロンさん、今からビスケットの作り方を教えてくださるのでしょうか?」
「そうね。ヒパティカちゃんに美味しいビスケットを食べさせてあげたいし、この屋敷に長居をするわけにはいかないから、今からビスケットの作り方を教えてあげるわ」
パンケーキちゃんがバナナを食べた犯人だと悟られる前に、早々にこの屋敷から退散する必要がある。なので、サクッとビスケットの作り方を教える必要があった。
「ちょっと待ってくださいマカロンさん。なぜ?すぐに屋敷から出て行かれるのでしょうか」
「あまりリリーちゃんに迷惑をかけるわけにいかないわ。早ければ明日にでも町を出る予定よ」
「やはり、私にはビスケットを作る技術を教えて下さらないのですね・・・」
リリーちゃんは寂しそうに俯いた。
「そんなことはないわ。ちゃんとビスケットの作り方を教えてあげるわよ」
「でも・・・ビスケットを作るには長年の修業が必要だとおもいます。それを一か月でマスターしようとすることさえ無謀な事だとはわかっています。それを1日でマスターするなんて・・・マカロンさんは鬼です」
「リリーちゃん、何か勘違いをしているようだけど、ビスケットを作るのはそんなに難しくないわよ。確かに一度聞いて全ての分量や工程を覚えるのは無理かもしれないけど、ちゃんとレシピも作ってあげるから問題ないわよ」
「レシピ?」
「そうよ。ビスケットを作る方法を書いたメモを渡してあげるわよ」
「それは秘伝の巻物ということでしょうか?」
「まぁ、そんなものよ」
「ほ・・・本当にそんな貴重な物をもらってもよろしいのでしょうか?」
「問題ないわよ」
「マカロンさぁ~~ん」
リリーちゃんは私の胸に抱き着いてきた。
「マカロンさん、なぜこんな私の為にそこまでしてくれるのですか?マカロンさんには何のメリットもありません。それどころかデメリットだらけです。どうしてですか?教えてください」
「リリーちゃん、最初に出会ったときに言ったわよね。困っている人を助けるのは当然のことよ。リリーちゃんが困っているのに放っておけないわよ」
私が本当に伝えたかった事は、私もパンケーキちゃんがバナナを盗んで困っているから許して欲しいと伝えたかった。
「マカロンさん・・・ありがとうございます。私は必ずビスケット作りをマスターしてバナーネを救ってみせます。だから、マカロンさんも見ていてください」
リリーちゃんは凛とした表情で高らかに宣言をした。
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