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下僕ゲーム
第22話 唐突に逃げるチャンスが訪れる
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「2号先輩、裃さんから聞いたのですが下僕ゲームで2連勝されたのですよね。とてもすごいです!」
「いやいや、偶然だよ」
俺は謙遜して器のデカさを示す。
「そんなことはありません。裃さんも大絶賛していました。自分は下僕ゲームに参加するのが怖くて怖くてたまらないのです」
「お前は下僕ゲームのことを知っているのか?」
俺は気が付いたら下僕ゲームに参加させられていたが、下僕3号は初めから知っているような口ぶりである。
「僕は下僕ゲームの補欠の選手だったので、リモートで参加させられていました。いきなり結束バンドで拘束される恐怖、いきなりローションまみれで対決させられる恐怖、僕は画面越しでも失禁してしまいました。2号先輩は本当にすごいです」
下僕3号はスター選手を見ているかのようにキラキラと目を輝かせている。リモートで参加とはどのような状況なのかはよくわからないが、俺がヤンキーに性的虐待を受けたことは知らないのだろう。
「本当に恐ろしいゲームだよ。出来るなら逃げ出したいくらいだ」
下僕3号のおべっかにつられて俺はポロっと本音が零れ落ちる。
「2号先輩でも怖いのですか?」
「当たり前だ!どんなゲームをやらされるのかわからないのだぞ。呑気にリモートで参加していたヤツに俺の気持ちがわかってたまるか!」
自分よりも格下と見下している人物に「怖いのですか」と言われて、俺はカッとなり怒鳴りつける。
「ごめんなさい」
下僕3号は涙目で謝罪する。その姿を見た俺は少し気持ちが和らいだ。自分よりも弱いヤツに偉そうな態度をとるのは本当に気持ちが良い。
「わかれば良いのだ。あのゲームの恐ろしさは参加した者にしかわからない。俺は恐怖に耐え忍んで2回も勝利した。出来ることなら下僕1号のように逃げたいものだ」
「それなら逃げ出せば良いじゃないですか?」
「バカヤロー!下僕1号がどうなったのかお前は知らないのか?」
「どうなったのですか?」
「全身を滅多刺しにされて殺されたのだぞ。しかも、警察は自殺と発表した。滅多刺しにされて自殺なんてありえないだろ?」
「それは本当の話しなのでしょうか?」
「本当だ。俺はテレビのニュースで聞いたんだ!」
「え!テレビを見たのではなく聞いたのですか」
「そうだ。偶然朝にテレビが付いていたから聞こえてきたんだ」
「それ本当のニュースだったのですか?」
「当たり前だ」
「でも、おかしいです。僕はこの辺りに住んでいるのですが、高校生が自殺したニュースなんて聞いたことありません。もしかしたら、騙されていませんか?」
「そんなことはない。俺はちゃんとこの耳で聞いたんだ」
「もしかして、1号先輩と同じく逃げ出さないように仕組まれていたのかもしれませんよ。裃さんは学校でさえ支配するほどの力を持った組織の一員です。家に細工をするくらい朝飯前だと思います」
「まさか……」
たしかに下僕3号の言う通りかもしれない。裃1人でなら難しいかもしれないが、背景に大きな組織がいれば、俺1人騙すことは簡単なことだろう。それに内気で臆病な俺なら近所の人に確認したりすることがないことも想定済みだと思われる。まんまと俺は騙されたのであった。
「お前の言う通りかもしれない。下僕1号が死んだのは嘘だったんだな」
「そうだと思います。他府県に逃げれば裃さんも諦めると思います」
「やっぱり遠くに逃げないとダメなのか……」
現実問題の話しをすれば、高校1年生の俺がどこに逃げることができるのだろうか?学校から逃げて家に引きこもれば解決するのだろうか?いや、無理だろう。下僕3号の言う通り、何処か遠くの他府県に逃げなければ、裃は俺を見つけて強引に下僕ゲームへ参加させるに違いない。俺は家を飛び出して1人でどこか遠くへ逃げることができるのか?いやそんな勇気はない。それなら母親に全てを離して一緒にどこか遠くへ引っ越しをしてもらうのか?もちろんできない。結局俺は振り出しに戻ってしまう。逃げたくても逃げられない。逃げる勇気がないので逃げることから逃げてしまう。
「2号先輩、どうします。逃げますか?」
「うるさい!お前こそ怖いならどうして逃げないのだ!」
自分の不甲斐無さにイライラを感じて、下僕3号に8つ当たりをする。
「僕も怖くて逃げたいです。でも、1人では怖くて逃げることができないのです。もし、2号先輩が逃げるのでしたら僕も一緒に連れていってください」
「……それは無理だ」
もし仮に下僕3号が大金持ちの息子で多額の逃走資金を持っているのなら少し考えてみる余地があるかもしれない。見るからに足手まといになりそうなお荷物を抱えて逃げるなんてあり得ない。
「どうしてですか?」
「お前と逃げてもメリットはない。それに俺は逃げない」
「2号先輩、考え直してください。僕の両親は海外赴任をしているので毎月多額の生活費を送ってもらっています。2号先輩と一緒に暮らせるだけのお金はあるので問題ありません」
「……」
俺の心は動揺する。このまま下僕ゲームを続けるのは危険すぎる。ゲームの内容は次第にエスカレートしている。次はどんな恐ろしいゲームが用意されているのか想像もできない。このまま下僕3号と逃げるのもありかもしれないと考えてしまった。
「いやいや、偶然だよ」
俺は謙遜して器のデカさを示す。
「そんなことはありません。裃さんも大絶賛していました。自分は下僕ゲームに参加するのが怖くて怖くてたまらないのです」
「お前は下僕ゲームのことを知っているのか?」
俺は気が付いたら下僕ゲームに参加させられていたが、下僕3号は初めから知っているような口ぶりである。
「僕は下僕ゲームの補欠の選手だったので、リモートで参加させられていました。いきなり結束バンドで拘束される恐怖、いきなりローションまみれで対決させられる恐怖、僕は画面越しでも失禁してしまいました。2号先輩は本当にすごいです」
下僕3号はスター選手を見ているかのようにキラキラと目を輝かせている。リモートで参加とはどのような状況なのかはよくわからないが、俺がヤンキーに性的虐待を受けたことは知らないのだろう。
「本当に恐ろしいゲームだよ。出来るなら逃げ出したいくらいだ」
下僕3号のおべっかにつられて俺はポロっと本音が零れ落ちる。
「2号先輩でも怖いのですか?」
「当たり前だ!どんなゲームをやらされるのかわからないのだぞ。呑気にリモートで参加していたヤツに俺の気持ちがわかってたまるか!」
自分よりも格下と見下している人物に「怖いのですか」と言われて、俺はカッとなり怒鳴りつける。
「ごめんなさい」
下僕3号は涙目で謝罪する。その姿を見た俺は少し気持ちが和らいだ。自分よりも弱いヤツに偉そうな態度をとるのは本当に気持ちが良い。
「わかれば良いのだ。あのゲームの恐ろしさは参加した者にしかわからない。俺は恐怖に耐え忍んで2回も勝利した。出来ることなら下僕1号のように逃げたいものだ」
「それなら逃げ出せば良いじゃないですか?」
「バカヤロー!下僕1号がどうなったのかお前は知らないのか?」
「どうなったのですか?」
「全身を滅多刺しにされて殺されたのだぞ。しかも、警察は自殺と発表した。滅多刺しにされて自殺なんてありえないだろ?」
「それは本当の話しなのでしょうか?」
「本当だ。俺はテレビのニュースで聞いたんだ!」
「え!テレビを見たのではなく聞いたのですか」
「そうだ。偶然朝にテレビが付いていたから聞こえてきたんだ」
「それ本当のニュースだったのですか?」
「当たり前だ」
「でも、おかしいです。僕はこの辺りに住んでいるのですが、高校生が自殺したニュースなんて聞いたことありません。もしかしたら、騙されていませんか?」
「そんなことはない。俺はちゃんとこの耳で聞いたんだ」
「もしかして、1号先輩と同じく逃げ出さないように仕組まれていたのかもしれませんよ。裃さんは学校でさえ支配するほどの力を持った組織の一員です。家に細工をするくらい朝飯前だと思います」
「まさか……」
たしかに下僕3号の言う通りかもしれない。裃1人でなら難しいかもしれないが、背景に大きな組織がいれば、俺1人騙すことは簡単なことだろう。それに内気で臆病な俺なら近所の人に確認したりすることがないことも想定済みだと思われる。まんまと俺は騙されたのであった。
「お前の言う通りかもしれない。下僕1号が死んだのは嘘だったんだな」
「そうだと思います。他府県に逃げれば裃さんも諦めると思います」
「やっぱり遠くに逃げないとダメなのか……」
現実問題の話しをすれば、高校1年生の俺がどこに逃げることができるのだろうか?学校から逃げて家に引きこもれば解決するのだろうか?いや、無理だろう。下僕3号の言う通り、何処か遠くの他府県に逃げなければ、裃は俺を見つけて強引に下僕ゲームへ参加させるに違いない。俺は家を飛び出して1人でどこか遠くへ逃げることができるのか?いやそんな勇気はない。それなら母親に全てを離して一緒にどこか遠くへ引っ越しをしてもらうのか?もちろんできない。結局俺は振り出しに戻ってしまう。逃げたくても逃げられない。逃げる勇気がないので逃げることから逃げてしまう。
「2号先輩、どうします。逃げますか?」
「うるさい!お前こそ怖いならどうして逃げないのだ!」
自分の不甲斐無さにイライラを感じて、下僕3号に8つ当たりをする。
「僕も怖くて逃げたいです。でも、1人では怖くて逃げることができないのです。もし、2号先輩が逃げるのでしたら僕も一緒に連れていってください」
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もし仮に下僕3号が大金持ちの息子で多額の逃走資金を持っているのなら少し考えてみる余地があるかもしれない。見るからに足手まといになりそうなお荷物を抱えて逃げるなんてあり得ない。
「どうしてですか?」
「お前と逃げてもメリットはない。それに俺は逃げない」
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