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下僕ゲーム
第16話 唐突に勝利が訪れる
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教室の時計の針が15時を指す。俺は助けを呼ぶ事はせずに、ずっと椅子に座っていた。中学生活の3年間をパシリとして過ごしてきた俺は、ただ椅子に拘束されているだけのイジメに柔軟に溶け込んでいた。臆病で気弱な俺は誰もいない教室で1人になることは苦痛でない。誰からも相手をされずに放置されるのも苦痛ではない。動けずに、ずっと椅子に座っているのも苦痛ではない。このまま誰も助けてくれなくても苦痛ではない。お昼も過ぎて多少お腹は減っているが暴力を振るわれるよりかはマシだ。裃に殴られたお腹はまだズキズキと痛むが、それ以外苦痛を味わうことがないので俺はホッとしている面もあった。
『ガラガラガラ』
俺は何も考えずにボーとしていたら唐突に教室の扉が開いた。
教室に入って来たの裃であった。笑みを浮かべて喜んでいるように見えるが目は全く笑っていない。まるで感情を持たない腹話術の人形のような笑みである。裃の影が俺を覆い隠すように近づいてくる。よく見ると右手に光る物体を持っている。それは銀色に輝くサバイバルナイフであった。裃はサバイバルナイフを俺の目の前に突きつける。俺は瞬時に殺されると思って目を瞑る。
「おめでとう、下僕2号君。君は下僕ゲームで1位になりました」
「……」
唐突な裃の言葉に俺は唖然とした。そして、急に両腕が軽くなったのである。俺は恐る恐る目を開けると、椅子に拘束されていた結束バンドが切り落とされていた。
「下僕1号君は行き過ぎた指導で壊れてしまったが、2号君が活躍してくれて本当に助かりました。今後も活躍を期待しているのでがんばってください」
裃は何を言っているのだろうか?下僕ゲームとは?俺が1位?「きちんと説明してくれ」と言いたいが恐怖で声が出ない。
「明日から学校に投稿したら制服を脱いでこのロンTを着てください。もし、このロンTを着ていなければ指導を致します」
裃は机の上に黒のロンTを置いた。
「下僕ゲームは1か月に1回の頻度で開催を予定しています。ゲームの内容、日時は一切お知らせしませんので、楽しみにしてください。後、絶対に学校を辞めたり不登校になることは許しません。もし、私を裏切るようなことがあれば粛清が入ります。1号君のようにならないよう気をつけてください。これから僕と一緒に楽しい学生生活を送りましょう」
俺はただ恐怖に怯えていた。頭が真っ白になり裃の言葉は記憶に留まることなく右から左へ流れ落ちて行く。裃はそれだけ告げると教室から出て行った。また1人教室に取り残された俺だが結束バンドは外れ自由に動けるようになった。悪魔の化身のような裃がいなくなり、やっと俺は声を出す事ができた。
「これから俺はどうなってしまうのだろう」
誰もいない静かな教室の中でも聞き取ることができない小さな声で俺は呟いた。目の前には黒いロンTが置いてある。裃が発した言葉は何も思い出すことができない。しかし、明日からこのロンTを着なければいけないことは容易に理解できた。俺はロンTを手に取り広げてみる。
黒のロンTの表には【TEAM KING 】とプリントされて、裏面には大きな文字で【下僕2号】とプリントされていた。
「逃げたい……」
もう二度と学校に来たくないと思った。しかし、入学してすぐに不登校になると母親が心配するはずだ。あまり母親に迷惑をかけたくない。それに、今日は結束バンドで拘束される以外のいじめに遭遇はしなかった。不気味なロンTを着て授業を受けるのは苦痛だが、暴力をふるわれないのなら我慢できるかもと俺の心に一途の希望が灯された。俺はロンTをカバンにしまって家へ帰ることにした。
「くそ!こんな結果は受け入れらるか!あんな糞雑魚が勝利なんて馬鹿げているぜ」
「弱者ほど過酷な環境に適応しやすいのです。下僕ゲームの参加者は生まれた時から決まっています。今年も厳選された10校に【下僕ゲームへようこそ】と教室に張り紙を出し、運命に吸い込まれるように教室に入って来た生徒のみが下僕ゲームに参加できる権利が与えられました。僕は2人の下僕を手に入れましたが、残念ながら下僕1号君は廃棄処分になりました。しかし、下僕2号君は想定通りの大活躍をしてくれました。今回は下僕ゲームの親として大いに儲けさせていただきました。僕の下僕が勝者になりましたので、引き続き親を継続させていただきます」
下僕ゲームとは厳選された高校生を対象に行われる賭けゲームである。下僕とよばれる参加者は、下僕Tシャツの着用を義務付けらえて、突然ゲームが開始される。勝利条件は参加者には伝えられず、どのように行動するのが正解なのかは不明である。今回俺が参加した下僕ゲームは、【入学初日に突然目を覚ましたら結束バンドで椅子に拘束されていたらどうする?】という内容であったらしい。この下僕ゲームの勝利条件は、最後まで椅子に座り続けた者が勝利するというものだった。多くの参加者は、すぐに助けを求め泣き叫び失格となった。俺は最後まで叫ぶ事もなく椅子座り続けて勝利したらしい。
『ガラガラガラ』
俺は何も考えずにボーとしていたら唐突に教室の扉が開いた。
教室に入って来たの裃であった。笑みを浮かべて喜んでいるように見えるが目は全く笑っていない。まるで感情を持たない腹話術の人形のような笑みである。裃の影が俺を覆い隠すように近づいてくる。よく見ると右手に光る物体を持っている。それは銀色に輝くサバイバルナイフであった。裃はサバイバルナイフを俺の目の前に突きつける。俺は瞬時に殺されると思って目を瞑る。
「おめでとう、下僕2号君。君は下僕ゲームで1位になりました」
「……」
唐突な裃の言葉に俺は唖然とした。そして、急に両腕が軽くなったのである。俺は恐る恐る目を開けると、椅子に拘束されていた結束バンドが切り落とされていた。
「下僕1号君は行き過ぎた指導で壊れてしまったが、2号君が活躍してくれて本当に助かりました。今後も活躍を期待しているのでがんばってください」
裃は何を言っているのだろうか?下僕ゲームとは?俺が1位?「きちんと説明してくれ」と言いたいが恐怖で声が出ない。
「明日から学校に投稿したら制服を脱いでこのロンTを着てください。もし、このロンTを着ていなければ指導を致します」
裃は机の上に黒のロンTを置いた。
「下僕ゲームは1か月に1回の頻度で開催を予定しています。ゲームの内容、日時は一切お知らせしませんので、楽しみにしてください。後、絶対に学校を辞めたり不登校になることは許しません。もし、私を裏切るようなことがあれば粛清が入ります。1号君のようにならないよう気をつけてください。これから僕と一緒に楽しい学生生活を送りましょう」
俺はただ恐怖に怯えていた。頭が真っ白になり裃の言葉は記憶に留まることなく右から左へ流れ落ちて行く。裃はそれだけ告げると教室から出て行った。また1人教室に取り残された俺だが結束バンドは外れ自由に動けるようになった。悪魔の化身のような裃がいなくなり、やっと俺は声を出す事ができた。
「これから俺はどうなってしまうのだろう」
誰もいない静かな教室の中でも聞き取ることができない小さな声で俺は呟いた。目の前には黒いロンTが置いてある。裃が発した言葉は何も思い出すことができない。しかし、明日からこのロンTを着なければいけないことは容易に理解できた。俺はロンTを手に取り広げてみる。
黒のロンTの表には【TEAM KING 】とプリントされて、裏面には大きな文字で【下僕2号】とプリントされていた。
「逃げたい……」
もう二度と学校に来たくないと思った。しかし、入学してすぐに不登校になると母親が心配するはずだ。あまり母親に迷惑をかけたくない。それに、今日は結束バンドで拘束される以外のいじめに遭遇はしなかった。不気味なロンTを着て授業を受けるのは苦痛だが、暴力をふるわれないのなら我慢できるかもと俺の心に一途の希望が灯された。俺はロンTをカバンにしまって家へ帰ることにした。
「くそ!こんな結果は受け入れらるか!あんな糞雑魚が勝利なんて馬鹿げているぜ」
「弱者ほど過酷な環境に適応しやすいのです。下僕ゲームの参加者は生まれた時から決まっています。今年も厳選された10校に【下僕ゲームへようこそ】と教室に張り紙を出し、運命に吸い込まれるように教室に入って来た生徒のみが下僕ゲームに参加できる権利が与えられました。僕は2人の下僕を手に入れましたが、残念ながら下僕1号君は廃棄処分になりました。しかし、下僕2号君は想定通りの大活躍をしてくれました。今回は下僕ゲームの親として大いに儲けさせていただきました。僕の下僕が勝者になりましたので、引き続き親を継続させていただきます」
下僕ゲームとは厳選された高校生を対象に行われる賭けゲームである。下僕とよばれる参加者は、下僕Tシャツの着用を義務付けらえて、突然ゲームが開始される。勝利条件は参加者には伝えられず、どのように行動するのが正解なのかは不明である。今回俺が参加した下僕ゲームは、【入学初日に突然目を覚ましたら結束バンドで椅子に拘束されていたらどうする?】という内容であったらしい。この下僕ゲームの勝利条件は、最後まで椅子に座り続けた者が勝利するというものだった。多くの参加者は、すぐに助けを求め泣き叫び失格となった。俺は最後まで叫ぶ事もなく椅子座り続けて勝利したらしい。
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