430 / 453
スカンディナビア帝国編 パート17
しおりを挟む「しかし、パドロット家の背後にはエルフがいます。不用意に手を出すと危険かと思われますが・・・」
「それはわかっている。しかし、アーサソール家の血を引くカレンを野放しにする方がもっと危険だ。国王の座を安泰にするためにも、アーサソール家の血縁者は全て殺しておく必要があるのだ」
「確かに、その通りかもしれません。それならヘカトンケイルとキュクロプが戻ってからの方が良いと思います」
「その必要はないぜ!俺がパドロット家を潰してきてやるぜ」
謁見の間の大きな窓から大きな二つの目が見えた。スカンディナビア城の謁見の間は3階にあり、おおよお20mくらいの位置にある。巨人族の平均的な身長は5mくらいなので、謁見の間を覗き見している巨人は規格外の大きさなのである。
「ジャイアント様が動いてくれるのですか?」
「スカンディナビア国はガリヴァー国の一部になるのだ。邪魔な奴がいるなら俺が倒してやるぜ。それに、いずれエルフの国も俺の支配下になる運命だ。その時期が少し早まるだけに過ぎないぜ」
「ありがとうございます」
ヴァリは謁見の間の窓に向かって頭を下げてお礼をした。
ヴィリは巨人族と手を組む上でガリヴァー国の傘下に入ることを了承している。これは巨人族からのクーデターに手を貸す条件であった。巨人族は特赦な力を失ってからは平穏に暮らす毎日を過ごしていた。そして、時が経つにつれて、神へ復讐を誓う者と平穏に暮らす者、そして、人界で領土を拡大を狙う3つの勢力が生まれた。
今回ヴァリに協力したのが、神への復讐を誓う勢力と人界で領土を拡大する勢力である。ジャンアントは領土を拡大する勢力のボスであり、神への復讐を誓う勢力に、魔王の降臨させる嘘の方法を教えて一緒にクーデターに参加させたのである。
ジャイアントは、手下の巨人を数名引き連れてスカンディナビア帝国の北の大地へと向かう。
「ジャイアント様、人間などに手を貸さなくても、われらでこの国を支配してもよかったのではないのですか?」
「人界で派手に暴れると魔族が介入する恐れがあるのだ。だから人間に協力する形で、徐々に人界を支配するのが1番望ましい形だと考えているのだ」
「そこまで考えておられてのですか。バカな私には思い浮かばない判断です」
「俺たちが相手にしてはいけないのは魔族と神だ。神への復讐を誓うバカな奴らには困ったものだ」
「えっ・・・それなら、なぜヘカトンケイル達をこのクーデターにお誘いになったのですか?あいつらは魔王を降臨させて、神への復讐を果たそうとしているはずです」
「そもそも魔王を降臨させる方法など存在しないわ。あいつらを利用するために嘘の情報を人間どもに教えたのだ」
「魔王を降臨させる方法は嘘だったのですね。もしあいつらが嘘だと知ったらどうするつもりなのですか?」
「嘘だと知れば、あいつらは逆上して人間達を殺すだろう。そこを俺が救ってあげて、俺が正当なるこの国の支配者になるのだ」
「そこまで考えておられたのですか・・・さすがジャイアント様」
「力だけで領土を拡大させるのは危険があるのだ、頭を使っていかに正当に領土を広げるかが、人界で領土を広げる方法の一つなのだ。俺がパドロット家を潰している間に、ヘカトンケイル達が、魔王降臨の方法が嘘だと知ることになるだろう。嘘とわかったあいつらは王都で殺戮の限りを尽くすだろう。巨人に王都を潰されて絶望的な状況になった時に俺が登場して、王都の民を救ってやるのだ。完璧な演出だと思わないか?」
「完璧な演出だと思います」
「俺の晴れ舞台のためにあいつらに存分に暴れてもらわないとな。ガハハハハ!」
ジャイアントは、下品な笑い声を上げながら北の大地へと向かうのであった。
⭐️場面はルシス視点に戻ります。
「ルシスお姉様、ただいまです」
キュクロプスの大きな棍棒で潰された小ルシス2号は、私の魔力を注ぎ込むことにより復活をした。
「2号ちゃん・・・」
小ルシス2号にどのような言葉をかければいいのか私は迷っていた。
「わずか1mmのズレが私の敗北の原因です。あと1mm左の部分に私のパンチが当たっていれば、棍棒は砕け散り、今横たわっているのキュクロプスの姿だと思います。しかし、同じ過ちを繰り返さないのが私の長所だと思います。今すぐにでも、キュクロプスの元へ私を転移してください」
私は、取りあえす小ルシス2号のことは放置して、小ルシス1号から聞いた情報をキューティーメロン達に説明した。
「やっぱり、ロキ達は私のことを心配しての行動だったのね。プリティーイチゴちゃん。すぐにロキ達の元へ駆けつけるわよ。こんなとことで指を咥えていても仕方ないわ。すぐに合流するのよ」
キューティーメロンの瞳には薄っすらと涙がこぼれ落ちていた。ロキさん達が自分に迷惑をかけないように気遣ってくれた気持ちが嬉しかったのと、ロキさん達の仲が壊れていないこと知って嬉しかったのである。
キューティーメロンは、私の手を引いて、全力でロキさん達の元へ駆け出していく。しかし、馬に乗った方が断然早いのに、それに気遣いないほどキューティーメロンは、無我夢中で全力で走っていたのである。
私はそんなキューティーメロンの姿を見て、微笑ましく感じていた。仲間のためにこれだけ真剣に思うことができるのは3人がそれだけ強い絆で結ばれているのだと思った。なので、私は「馬に乗った方が早いですよ」とは言えなかったのである。しかし・・・
「キューティーメロン、空回りをしていますわ。走るよりも馬に乗りましょう」
スイートデラウェアが真面目な顔でキューティーメロンに注意するのであった。
0
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
辺境で魔物から国を守っていたが、大丈夫になったので新婚旅行へ出掛けます!
naturalsoft
ファンタジー
王国の西の端にある魔物の森に隣接する領地で、日々魔物から国を守っているグリーンウッド辺境伯爵は、今日も魔物を狩っていた。王国が隣接する国から戦争になっても、王国が内乱になっても魔物を狩っていた。
うん?力を貸せ?無理だ!
ここの兵力を他に貸し出せば、あっという間に国中が魔物に蹂躙されるが良いのか?
いつもの常套句で、のらりくらりと相手の要求を避けるが、とある転機が訪れた。
えっ、ここを守らなくても大丈夫になった?よし、遅くなった新婚旅行でも行くか?はい♪あなた♪
ようやく、魔物退治以外にやる気になったグリーンウッド辺境伯の『家族』の下には、実は『英雄』と呼ばれる傑物達がゴロゴロと居たのだった。
この小説は、新婚旅行と称してあっちこっちを旅しながら、トラブルを解決して行き、大陸中で英雄と呼ばれる事になる一家のお話である!
(けっこうゆるゆる設定です)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる