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スカンディナビア帝国編 パート17

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 「しかし、パドロット家の背後にはエルフがいます。不用意に手を出すと危険かと思われますが・・・」

 「それはわかっている。しかし、アーサソール家の血を引くカレンを野放しにする方がもっと危険だ。国王の座を安泰にするためにも、アーサソール家の血縁者は全て殺しておく必要があるのだ」

 「確かに、その通りかもしれません。それならヘカトンケイルとキュクロプが戻ってからの方が良いと思います」

 「その必要はないぜ!俺がパドロット家を潰してきてやるぜ」


 謁見の間の大きな窓から大きな二つの目が見えた。スカンディナビア城の謁見の間は3階にあり、おおよお20mくらいの位置にある。巨人族の平均的な身長は5mくらいなので、謁見の間を覗き見している巨人は規格外の大きさなのである。


 「ジャイアント様が動いてくれるのですか?」

 「スカンディナビア国はガリヴァー国の一部になるのだ。邪魔な奴がいるなら俺が倒してやるぜ。それに、いずれエルフの国も俺の支配下になる運命だ。その時期が少し早まるだけに過ぎないぜ」

 「ありがとうございます」


 ヴァリは謁見の間の窓に向かって頭を下げてお礼をした。


 ヴィリは巨人族と手を組む上でガリヴァー国の傘下に入ることを了承している。これは巨人族からのクーデターに手を貸す条件であった。巨人族は特赦な力を失ってからは平穏に暮らす毎日を過ごしていた。そして、時が経つにつれて、神へ復讐を誓う者と平穏に暮らす者、そして、人界で領土を拡大を狙う3つの勢力が生まれた。

 今回ヴァリに協力したのが、神への復讐を誓う勢力と人界で領土を拡大する勢力である。ジャンアントは領土を拡大する勢力のボスであり、神への復讐を誓う勢力に、魔王の降臨させる嘘の方法を教えて一緒にクーデターに参加させたのである。

 ジャイアントは、手下の巨人を数名引き連れてスカンディナビア帝国の北の大地へと向かう。


 「ジャイアント様、人間などに手を貸さなくても、われらでこの国を支配してもよかったのではないのですか?」

 「人界で派手に暴れると魔族が介入する恐れがあるのだ。だから人間に協力する形で、徐々に人界を支配するのが1番望ましい形だと考えているのだ」

 「そこまで考えておられてのですか。バカな私には思い浮かばない判断です」

 「俺たちが相手にしてはいけないのは魔族と神だ。神への復讐を誓うバカな奴らには困ったものだ」

 「えっ・・・それなら、なぜヘカトンケイル達をこのクーデターにお誘いになったのですか?あいつらは魔王を降臨させて、神への復讐を果たそうとしているはずです」

 「そもそも魔王を降臨させる方法など存在しないわ。あいつらを利用するために嘘の情報を人間どもに教えたのだ」

 「魔王を降臨させる方法は嘘だったのですね。もしあいつらが嘘だと知ったらどうするつもりなのですか?」

 「嘘だと知れば、あいつらは逆上して人間達を殺すだろう。そこを俺が救ってあげて、俺が正当なるこの国の支配者になるのだ」

 「そこまで考えておられたのですか・・・さすがジャイアント様」

 「力だけで領土を拡大させるのは危険があるのだ、頭を使っていかに正当に領土を広げるかが、人界で領土を広げる方法の一つなのだ。俺がパドロット家を潰している間に、ヘカトンケイル達が、魔王降臨の方法が嘘だと知ることになるだろう。嘘とわかったあいつらは王都で殺戮の限りを尽くすだろう。巨人に王都を潰されて絶望的な状況になった時に俺が登場して、王都の民を救ってやるのだ。完璧な演出だと思わないか?」

 「完璧な演出だと思います」

 「俺の晴れ舞台のためにあいつらに存分に暴れてもらわないとな。ガハハハハ!」


 ジャイアントは、下品な笑い声を上げながら北の大地へと向かうのであった。



 ⭐️場面はルシス視点に戻ります。



 「ルシスお姉様、ただいまです」


 キュクロプスの大きな棍棒で潰された小ルシス2号は、私の魔力を注ぎ込むことにより復活をした。


 「2号ちゃん・・・」


 小ルシス2号にどのような言葉をかければいいのか私は迷っていた。


 「わずか1mmのズレが私の敗北の原因です。あと1mm左の部分に私のパンチが当たっていれば、棍棒は砕け散り、今横たわっているのキュクロプスの姿だと思います。しかし、同じ過ちを繰り返さないのが私の長所だと思います。今すぐにでも、キュクロプスの元へ私を転移してください」


 私は、取りあえす小ルシス2号のことは放置して、小ルシス1号から聞いた情報をキューティーメロン達に説明した。


 「やっぱり、ロキ達は私のことを心配しての行動だったのね。プリティーイチゴちゃん。すぐにロキ達の元へ駆けつけるわよ。こんなとことで指を咥えていても仕方ないわ。すぐに合流するのよ」


 キューティーメロンの瞳には薄っすらと涙がこぼれ落ちていた。ロキさん達が自分に迷惑をかけないように気遣ってくれた気持ちが嬉しかったのと、ロキさん達の仲が壊れていないこと知って嬉しかったのである。

 キューティーメロンは、私の手を引いて、全力でロキさん達の元へ駆け出していく。しかし、馬に乗った方が断然早いのに、それに気遣いないほどキューティーメロンは、無我夢中で全力で走っていたのである。

 私はそんなキューティーメロンの姿を見て、微笑ましく感じていた。仲間のためにこれだけ真剣に思うことができるのは3人がそれだけ強い絆で結ばれているのだと思った。なので、私は「馬に乗った方が早いですよ」とは言えなかったのである。しかし・・・


 「キューティーメロン、空回りをしていますわ。走るよりも馬に乗りましょう」


 スイートデラウェアが真面目な顔でキューティーメロンに注意するのであった。


 
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