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スカンディナビア帝国編 パート4

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 「そうか・・・」


 トールさんは少しも表情を変えることなく静かに答えた。


 「でも安心するのよ。私たちは貴方を引き渡したりはしないわよ」

 「フレイヤ、お気遣いは嬉しのだが、俺は誰にも迷惑をかけるつもりはない。おとなしく投降するつもりだ。ロキ、俺を連れて行け」


 トールさんは静かにロキさんの方を見た。


 「どういうことなの?」


 フレイヤはトールさんの発した言葉の意味が理解できない。


 「ロキは俺をずっと監視していのだ」

 「ロキさん・・・本当なの?」

 「はい。私は父から絶えずトールの側にいて、クーデターが成功すればトールを捕まえるように言われています」


 ロキさんも表情を少しも変えることなく淡々と答える。


 「2人ともこうなることはわかっていたの?」

 「そういうわけではない。しかし、最悪このような事態になることは予測はできていた。マグニがアーサソール家を裏切ったのだろう」

 「どういうことなの?」

 「スカンディナビア帝国の王であるドンナー・アーサソール王には3人の子供がいる。第一王子のモージ、第二王子のマグニ、そしてこの俺だ。アーサソール家は、長男が王位を継承することになっているので、次の王になるのはモージの予定だった。しかし、マグニは自分より力の劣るモージが王位につくことに不満を募らせていた。モージは自分のが王に相応しいとよく親父と喧嘩をしていた。俺は王族の醜い争いとヴァナヘイム家を奴隷の様に扱うオヤジに反発して、使用人だったロキを連れて冒険者として国を出ることにしたのだ。貪欲で傲慢なマグニならヴァナヘイム家と手を組んでクーデターを起こす可能性はあると思ったいた」


 トールさんは無表情のまま淡々と語る。


 「ヴァナヘイム家とはロキさんの家系のことね」

 「そうだ。ヴァナヘイム家はもと王族だったが、アーサソール家から王族の地位を剥奪されて、アーサソール家の使用人として奴隷のように働かされていた。さらにヴァナヘイム家に男の子が誕生すればその場で殺されるという酷い扱いを受けていた。だから、ヴァナヘイム家はアーサソール家には、昔年の恨みを募らせていたはずだ。クーデターが成功したのならば、俺たちが処刑されるのは当然なのだ」

 「ロキさん、トールさんの話は本当なのですか?」

 「間違いありません」



 ロキさんも無表情のまま淡々と答える。


 「2人は仲間であり友人ではなかったのですか?」

 「ロキとは幼い頃からずっと一緒に育ってきた。俺は王女としてロキは俺の使用人としていつも側にいた。俺はロキを姉妹のような存在だと思っていたが、ロキは俺のことを王女としての扱いを辞めてくれなかった。しかし、冒険者としてスカンディナビア帝国を出ることを許された時に、俺と一緒に付いてきて欲しいとロキに頼んだのだ。その時初めてロキは、俺のことを王女様と呼ばずにトールと呼んでくれたのだ。俺はその時の嬉しさを今も忘れたことはない。ロキと一緒にスカンディナビア帝国を出てからは、お互いに対等な関係を築き仲間であり親友であると俺は思っている」

 「私も同じです。私が父から与えらた使命は絶えずトールの側にいることです。冒険者に誘われた時も、私はトールと一緒にいることが使命なので迷わずに返答しました。父からは、時期が来ればクーデターを起こすと聞いてはいました。私はずっとトールと一緒に育ってきました。使用人として仲間として友人として・・・」

 「それなら、スカンディナビア帝国に投降することなんてないわ。みんなで一緒に逃げればいいのよ」

 「それはできないぜ。あいつらはどこまでも俺を探しにくるだろう。そうなれば俺に関わる全ての者に迷惑をかけてしまう。それに・・・俺のわがままに付き合わせてしまったロキにこれ以上迷惑をかけることはできない」

 「ロキさんはどうなのよ?」

 「私は生まれてきたからずっと背負ってきた使命があるのです。それをまっとうするのみです」


 「ディーバ様!!!大変です。スカンディナビア帝国の兵士と巨人族がトールさんを引き渡せと門の前で騒いでいます」


 門兵が血相を変えて飛んできた。


 「もう。ここを嗅ぎつけたのね・・・」


 フレイヤは髪をかきむしりながら眉をひそめる。


 「俺が投降すればすぐに済む問題だ」


 トールさんはラディッシュの門に向かって静かに歩き出した。そして、その後ろをロキさんが静かに付いていく。



 「ポロンさん、ルシスちゃん、2人を止めるのよ」


 ディーバ様が瞳に涙を浮かべながら声をあげる。


 「2人が選んだ答えに私が口を挟むことはできませんわ。それにスカンディナビア帝国とアルフヘイム妖王国は同盟を結んでいます。アルフヘイム妖王国の第3王女として軽はずな行動はできません」


 いつになく真剣な表情でポロンさんは答える。しかし、ポロンさんの言っていることは正しいのである。国内の権力争いに同盟国の王女であるポロンさんが手を出すことはできないのである。


 「・・・」


 私はどうすればいいのか迷っている。私の力を持ってすればスカンディナビア帝国を1人で掌握するのは簡単なことである。しかし、それをロキさん達が望んでいるのかわからない。しかし、このまま何もしなければ、トールさんは処刑されてしまう可能性がある。それだけは絶対に避けたいのである。それにポロンさんを巻き込むわけにはいかない。なので、私は小ルシス1号をロキさんに、2号をトールさんに忍び込ませたのである


 「1号ちゃん、2号ちゃん、2人を守ってあげてね」

 「ルシスお姉ちゃん、任せてください」

 「ルシスお姉様、任せてください。私がクソむし帝国のクーデターをぶっ壊してきます」


 私は小ルシス2号を送り込んだことを少し後悔するのであった。



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