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スカンディナビア帝国編 パート1

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⭐️ルシス視点に戻ります。


 2週間後・・・


 私はラディッシュの町に戻って、ディーバ様の協力を得てメロンパン屋を出店することになった。メロンパンをディーバ様に試食してもらったら、目を爛々と輝かせて「私の冒険者ギルドの前にメロンパン屋を作るのよ」とメロンパン屋の場所まで指定されたのである。

 ディーバ様の冒険者ギルドの前は、道具屋さんがあったのだがディーバ様がメロンパンを持って道具屋の主人に立退を要求したら、二つ返事で了承を得たのである。

 私は、一旦道具屋を破壊して更地にしてから、1週間ほどかけてパン屋を建築したのであった。メロンパンはこの世界では未知の食べ物なので、メロンパンを知ってもらうために、メロンパンの形をしたお店を作ったのである。

 そして、内装はメロンパンのようなライトグリーンに統一して、店内でも食べれるカフェのようなスタイルを採用した。メロンパンもチョコチップを入れたものからシンプルなメロンパンまで10種類ほど用意して、万全の体制を整えたのだが、オープンも間近に迎えた時に大きな大問題が勃発したのである。それは、ラスパの解散の危機とも言える状況になったのであった。


 「ルシスちゃん!本当にそれでいいの!!!」


 いつにない強い口調で私を責めるロキさんが居た。


 「これで問題ありません」


 私は毅然ある態度でスバっと言い切った。


 「ルシスお姉様のおっしゃる通りです」


 小ルシス2号も私の後押しをする。


 「いくらルシスが出した答えでも俺も納得はいかないぜ」


 トールさんが激しい口調でわたしに唾を飛ばしなら怒鳴る。


 「私も反対ですわ。今回はルシスちゃんの判断が間違っていると思いますわ」


 いつもならゆっくりとした口調で喋るポロンさんが捲し立てるように発言した。


 「みんな反対しています。ルシスお姉ちゃん、考え直した方がいいと思います」


 小ルシス1号はロキさん達側につく。


 「嫌です。絶対にこの名前がいいのです!」


 私は子供が駄々をこねるように大声をあげた。


 「ルシス!『魔王の鉄槌』って名前だと誰もお店に寄ってこないぞ」


 私とロキさん達は、メロンパン屋の名前を決めるのに大いに揉めていたのであった。


 「『魔王の鉄槌』が絶対にいいのです。私の作ったメロンパンを食べた方は、魔王様の鉄槌を受けたかのように、激しい衝撃と共に新たな味覚の世界へ連れて行ってもらえる気分になるのです」

 「メロンパンの味はまさに魔王の鉄槌を受けたような衝撃を感じるのは確かだわ。でも・・・それを店名にするのはどうかな?って思うのよ。メロンパンの中のふんわりとした生地をイメージした『天使のほっぺ』なんてどうかしら」

 「却下です」


 私は即答した。


 「『天使のほっぺ』いいじゃないか?俺はいいと思うぜ」

 「ダメです。このメロンパンは美味しさを伝えるには、全然的を得ているとは思えません!どちらかといえば『魔王様のふくらはぎ』なら、採用してもいいです」


 私は激しくテーブルと叩きつけてみんなを説得した。


 「そんな店名では、全然メロンパンの美味しさが伝わないぞ!」

 「そうですわ。それなら『エルフの唇』なんてどうかしら?」

 「却下です」


 私の有無を言わせない却下にポロンさんは悲しそうにうつむいた。


 「『ゴーレムの心臓』なんていいと思います」


 小ルシスが万を期して店名を提案した。


 「却下」
 「却下」
 「却下」
 「却下」


 満場一致で否決された。


 「『メロンの宴』なんてどうだ!」


 いつになく真剣な顔でトールさんが言った。


 「それがいいと思うわ」

 「『エルフの二の腕』も捨てがたいですが、私もその店名に賛成ですわ」

 「トールさんの案に私も賛成です」


 小ルシス1号も賛成する。


 「ダメーーーーー。絶対に『魔王の鉄槌』にするのです」


 私の聞き分けのない態度にみんな唖然として、これ以上いくら言っても無駄だと感じたロキさん達は、渋々私の命名した『魔王の鉄槌』をいう店名を採用したくれたのであった。



 私はやっと店名が決まり、メロンパン屋の屋根にどんなに遠くから離れていても確認できるように特大の魔王様がメロンパンを頬張っている絵付きの看板を立て付けたのである。

 そして、ディーバ様がいるギルドへ行って、店名を登録しに行ったのである。


 「ルシスちゃん・・・・この店名は採用できないわ!」


 眉間にシワを寄せて申し訳なさそうにディーバ様は言った。


 「な・・な・・・なぜですか?」


 私の頭の中は真っ白になった。


 「ルシスちゃんが魔王に憧れているのは知っているわ。誰に憧れるのは自由なので問題はないのだけれど、店名に魔王をつけるのは控えて欲しいのよ」


 「そ・・・そんな・・・」


 私はあまりの出来事に思考回路は停止して、呆然と立ち尽くしてしまった。そして、あまりのショックのために、その後の記憶がほとんど残っていない。後から知ったのだが、ディーバ様に他に店名の案はないのかと聞かれて、『そんな・・そんな・・・」とずっと呟いていたらしい。

 なので、メロンパン屋の名前は『魔王の鉄槌』ではなく『ソンナ』になってしまったのである。



⭐️場面は変わってオリュンポス城内に変わります。


 「ネテア王!これを見てください」


 王の間に、血相を変えて王国騎士団の団長であるフレイヤが訪れた。


 「これは・・・」


 ネテア王の顔が曇りがかる。


 「これはラストパサーのトールさんの手配書ではないのですか!!」


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