上 下
410 / 453

ボルの人界征服編 パート22

しおりを挟む

 光り輝く魔力の渦が空を覆い尽くし、一面を幻想的な光の世界を変えた時、小ルシス2号の魔力は尽きてしまってそのまま消滅した。


 「2号ちゃん・・・暴走しすぎよ!」


 小ルシス2号が使おうとした魔法は、私が光魔法と闇魔法を融合させて作り出した終極魔法『ビッグバン』であった。『ビッグバン』の破壊力はこの世界を一瞬で滅ぼしてしまうほどの威力を持っているので、扱いがとても難しい高難度な魔法であり、膨大な魔力を必要としている。いくらアルティメットバージョンになったといっても小ルシス2号が使える代物の魔法ではないのである。案の定、魔力不足で小ルシス2号は消滅した。

 しかし、『ビッグバン』を見たボルもあまりの恐怖でナレッジに転移を求めたが、ナレッジはトンズラをかまして逃げてしまったので、ボルは失意のどん底に落とされてしまった。死を覚悟したボルは、そのまま意識をなくして直立不動のまま地面に倒れ込んでしまった。

 その結果・・・2人の戦いはお互いに戦意喪失となり引き分けとなったのである。


 「ルシスお姉様は、4度目のチャンスも生かすことが出来ずに、不甲斐ない姿を晒してしまい申し訳ありません」


 すぐに復活した小ルシス2号は頭を下げて、肩を震わせ涙を堪えながら謝罪する。

 
 「気にしなくてもいいのよ。結果としてはボルさんを倒したのですから」

 「寛大なお言葉ありがとうございます。ルシスお姉様、ボルにトドメを刺すのですか?私と幾多の死闘をくりひげた盟友に尊厳ある死を与えてください」


 小ルシス2号は初めてボルを正式名称で呼んだ。


 「神人は殺すことはしません。とりあえず他の神人と同様に異空間に閉じ込める予定です」

 「寛大なる処置に感謝いたします。拳で語り合った者を葬るのは心苦しいのでとても嬉しいです。私が放った拳の数だけあの男も改心した思います」


 小ルシス2号は自身の拳を見つめながら嬉しそうに言ったが、小ルシス2号が拳を使ったのは、最初の『ミラクルパンチ』だけだったことには触れないでおこうと思った。

 私は『ディメンション』を使ってボルを異空間へ連れて行った。


 「ルシスお姉様、とんずら太郎はどうするのですか?」

 「ナレッジさんはこのまま放置します。もし、私に敵対するような動きがあれば、その時に対処するつもりです」


 私はナレッジが逃げ出した時に捕まえる余裕はあった。しかし、あえて逃してあげたのである。それは、天使様に会わせてくれるキッカケをくれたことへの貸を返したのである。理由はどうあれナレッジのおかげで私は7大天使様と出会い、この世界で無双できるほどの力を手に入れた。その貸を今回の件でチャラにしてあげたので、次に私に絡むようなことがあれば、容赦なく倒すことになるだろう。


 「ルシスお姉様は優しすぎるのです。逃走爆進野郎などに情けをかけずに肥溜めにぶち込めば良いのです」

 「2号ちゃん・・・もう少し言葉選びを慎重にするのよ。産みの親である私の品格まで問われてしまいます」

 「わかりました。ルシスお姉様の品格が失われるような発言は控えさせていただきます」


 胸を張って小ルシス2号は答えたが、不安しか残らないのであった。



⭐️裏天界では


 「人界へ暴れに行ったボルの魔力も消えたな・・・」

 「これで人界へ送り込んだ4人の神人の魔力が消えたことになる」

 「そうだな。残ったのはビバレッジだけだな」

 「ああ。人界では一体に何が起こっているのだ?」

 「わからん。やはりボルでは役不足だったのか?」

 「そうかもしれない。あいつはウーラノス様のパシリとしてひどい扱いを受けていた。『ホワイトホール』を教えると言って甘い言葉で騙して、150年かけて手に入れたスキルは、ほとんどが生活スキルだった。唯一教えてもらった魔法は『クラウドプレス』だけだ」



 ボルが使った『ホワイトホール』は偽物であった。もちろん私もすぐに察知して、私が手を下す必要がないと判断したのである。

 『クラウドプレス』も光魔法の中では強力な魔法であるが、『ホワイトホール』に比べたらレベルが違いすぎて例える気にもならないくらいの魔法であった。そして、ボルが150年下積み生活で得たものは、生活スキルであり、料理・洗濯・掃除・日曜大工・一発芸・合いの手・女性のエスコート・歌・モノマネなど、戦闘で使えないスキルに関してはカンスト状態であった。しかし、肝心の戦闘に関する能力は150年の下積み生活で得たものは微々たるものであった。


 「しかし、表天界で俺らの言うことを聞いてくれるのは、あいつしかいないのも事実だ」

 「そうだな。面白い余興になると思ったのだが残念な結果になってしまった。次は何をしよう?」

 「ボル達がどうなったか調べに行かないか?」

 「そうだな。俺たちも人界へ行くか」

 「もちろんだ。俺たちが力を与えたムーンとオーシャンの行方も気になるしな!」


 オーシャンに力を与えたポセイドンとムーンに力を与えたヘファイトスが、裏天界から人界へ行くことを決めたのである。



 「ミカエル、ついに神が直々に動き出すぞ」

 「そうみたいですね」

 「ルシスさんは大丈夫なのか?」

 「ルシスさんなら問題はないでしょう。ただ人界の秩序を壊さないか心配です」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

辺境で魔物から国を守っていたが、大丈夫になったので新婚旅行へ出掛けます!

naturalsoft
ファンタジー
王国の西の端にある魔物の森に隣接する領地で、日々魔物から国を守っているグリーンウッド辺境伯爵は、今日も魔物を狩っていた。王国が隣接する国から戦争になっても、王国が内乱になっても魔物を狩っていた。 うん?力を貸せ?無理だ! ここの兵力を他に貸し出せば、あっという間に国中が魔物に蹂躙されるが良いのか? いつもの常套句で、のらりくらりと相手の要求を避けるが、とある転機が訪れた。 えっ、ここを守らなくても大丈夫になった?よし、遅くなった新婚旅行でも行くか?はい♪あなた♪ ようやく、魔物退治以外にやる気になったグリーンウッド辺境伯の『家族』の下には、実は『英雄』と呼ばれる傑物達がゴロゴロと居たのだった。 この小説は、新婚旅行と称してあっちこっちを旅しながら、トラブルを解決して行き、大陸中で英雄と呼ばれる事になる一家のお話である! (けっこうゆるゆる設定です)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...