344 / 453
魔石国家ケルト王国編 パート13
しおりを挟む「ポーラちゃん、予定より早く戻ってきたんだね」
村の門兵がポーラに声をかける。
「色々とトラブルがあって、早く戻る事になりました」
「そうなんだ。アネモネさんを治す魔石具は買うことができたのかな?」
「魔石具屋の店主に騙されて買うことができなかったのです」
ポーラは今にも泣き出しそうになったがぐっと涙を堪えた。
「そんなことはないだろう。グリシャのおかげでこの村は救われているんだ。グリシャが人を騙すなんてありえない!」
門兵はあからさまに不機嫌になった。
「早くアネモネさんのところ行こうよ」
僕は雰囲気を察してこの場からすぐに立ち去ろうと思った。
「ポーラ、そいつらは誰だ!」
「お母さんの呪いを解いてくれる親切な方です」
「子供に呪いを解除することができるのか?」
「僕は治癒系の魔石具をたくさん持っています。その魔石具を使って、アネモネさんの呪いを解除する予定です」
「身なりのいいガキだと思ったが、どこぞの貴族のおぼっちゃまか?」
「そうです」
素性を隠したいので、門兵の話に合わせるとこにした。
「そうか、通行税を払えば村に入る許可を与えよう」
「リプロさんからお金を取るのですか?」
ポーラはびっくりして大声を出した。
「村に入れるのは俺が判断する仕事だ。親の金で裕福に過ごしている奴からはお金を徴収するのが、俺のルールだ!」
「そんなルール聞いたことがありません」
ポーラが反論する。
「やかましい。お前の母親の嘘せいで、村人は混乱しているのだぞ。井戸水を飲むのを嫌がる村人も増えてきて、村長が説得してなんとか平静を保っているが、いまだに原因不明の病は無くなることもない。俺も金銭に余裕がないのだ。貴族のガキからお金を徴収しても何も問題はないだろ」
「フェニ、バクを使ってはダメだよ」
僕は念話でフェニに声をかけた。
「でも、この門兵はリプロ様に対して失礼です」
フェニは、言葉に出さないがかなり怒っている。
「いいのだよ。通行税を払って村の中へ入ろうよ」
「でも・・・」
「お金は後からきちんと回収するよ」
「リプロ様にはお考えがあるのですね。余計なことをしよとして申し訳ありません」
「気にしなくていいよ」
「早く通行料を出せ!」
門兵は僕に剣を向けて脅すように言った。
「村長に報告します」
ポーラは毅然として言った。
「払うよ。これでいいかな?」
僕がお金を差し出すと嬉しそうに門兵はお金を受け取った。
「村に入る許可を与えよう」
門兵は偉そうに言う。
フェニはかなり怒っているが、僕がなだめて争うことなくイベリアの村に入ることができた。
「ごめんさない」
ポーラが頭を下げて謝る。
「気にしていないよ」
「グリシャがこの村に着てから、村の雰囲気が悪くなったのです」
「原因はわかるよ。それよりも君のお母さんの呪いを解除する方が先決だよ」
「そうですね。着いて来て下さい」
しばらくすると、小さな木造の一軒家に案内された。
「ここが私の家です。入って下さい」
僕はポーラに案内されて、母親が眠っている寝室に向かった。寝室では死んだように眠っているアネモネがいた。
「お母さん。もう大丈夫だよ。すぐに目覚めることができるはずよ」
眠っているアネモネの手を握りしてめてポーラは言った。しかし、アネモネはピクリとも動かない。
僕はアネモネが寝ているベットに近寄って、呪い解除の魔石具をアネモネにかざして、魔石具に魔力を注ぎ込んだ。するとアネモネの体から紫色のオーラが現れて、魔石具にオーラが吸い込まれて行く。
「すごいですぅ」
その光景を見ているフェニが興奮している。
「お母さん・・・」
ポーラは真剣な眼差しでじっと見ている。
『ガチャン』
しかし、紫色のオーラを吸収した魔石具は粉々に割れてしまった。
「失敗したみたいだね」
「そんな・・・」
絶望的な目をしてポーラは倒れ込む。
「リプロ様、呪い解除の魔石具は偽物だったのですか?」
フェニが僕に問いただす。
「呪い解除の魔石具は本物だよ。でも、アネモネさんにかけれている呪いは、かなりのレベルの高い呪いだったので、呪い解除の魔石具は壊れてしまったのだよ」
「お母さん・・・お母さん・・・」
ポーラは動揺している。
「リプロ様、ポーラちゃんのお母さんの呪いは解除できないのですか?」
「魔石具の性能を確かめたかったでけなので、アネモネさんの呪いは別の方法で解除するよ」
「さすがリプロ様!次の手を考えていたのですぅ。だからポーラさんも安心するのですぅ」
フェニはポーラを励ます。
「本当にお母さんの呪いを解除できるのですか」
「必ず呪いは解除するので安心して下さい。今から呪いの解除の儀式を行うので、ポーラさんはこの部屋から出て行ってもらってもいいですか?」
「私は一緒にいたいですぅ」
「フェニは手伝ってもらうので、この部屋にいてもいいよ」
「嬉しいですぅ」
フェニはニコニコと笑っている。
「私は別の部屋で待っています」
ポーラは母親の寝室から出て行った。
「どうやって呪いを解除するのですか」
フェニは瞳を輝かせて僕を見ている。
「簡単だよ・・」
「わかりましたですぅ」
僕が答える前にフェニが気付いたみたいである。
「時を削るのですぅ」
フェニは自慢げに言う。
「違うよ。僕の「リワインド』の魔法は何日も前の時を削ることはできないのだよ」
「ハズレたですぅ。どうやって呪いを解除するのですか?」
「簡単だよ。バクに呪いを食べてもらうのだよ」
「エーーー!そんなの食べたらバクちゃんがお腹を下してしまいますぅ」
フェニは悲しそうな顔をした。
『バクゥーーーー』
バクはフェニにすり寄って、「問題ないよ」と言いたげにフェニの頬にスリスリする。
「バクちゃん、くすぐったいですぅ」
フェニは嬉しそうにニコニコする。
「フェニ、バクは大丈夫だよと言っているよ」
「そうなんだ」
「バクは魔石だけでなくいろんな物を喰らい尽くすことができるのだよ」
「バクちゃんはすごいですぅ」
「そうだね。フェニ、バクにアネモネさんの呪い食べるように命令してよ」
バクは僕よりもフェニの言うことを聞くようになっている。
「はーーい」
フェニはバクにアネモネさんの呪いを食べるように命令した。
『バグゥウウーー』
バクは嬉しそうに返事をして、アネモネさんの体内の中へ入っていった。
0
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
自然神の加護の力でのんびり異世界生活
八百十三
ファンタジー
炎神インゲ、水神シューラ、自然神カーンの三柱の神が見守り、人々と魔物に加護を与えて発展させている異世界・ルピアクロワ。
その世界に、地球で命を落としたごく普通の中学生・高村英助の魂が流れ着く。
自然神カーンの手によってヴァンド市の羊飼い、ダヴィド家に一人息子のエリクとして転生した英助は、特筆すべき能力も見出されることもなく、至極平穏な日々を過ごすはずだった。
しかし12歳のある日、ダヴィド家の家政婦である獣人族の少女・アグネスカと共に、ヴァンド市近郊の森に薪を拾いに行った時に、彼の人生は激変。
転生する時にカーンから授けられた加護の力で「使徒」の資格を有していたエリクは、次々と使徒としてのたぐいまれな能力を発揮するようになっていく。
動物や魔物と語らい、世界を俯瞰し、神の力を行使し。
そうしてラコルデール王国所属の使徒として定められたエリクと、彼に付き従う巫女となったアグネスカは、神も神獣も巻き込んで、壮大で平穏な日常を過ごしていくことになるのだった。
●コンテスト・小説大賞選考結果記録
第1回ノベルアップ+小説大賞一次選考通過
HJ小説大賞2020後期一次選考通過
第10回ネット小説大賞一次選考通過
※一部ボーイズラブ要素のある話があります。
※2020/6/9 あらすじを更新しました。
※表紙画像はあさぎ かな様にいただきました。ありがとうございます。
※カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様、エブリスタ様、ノベルピア様にも並行して投稿しています。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054886818732
https://ncode.syosetu.com/n1574ex/
https://novelup.plus/story/382393336
https://estar.jp/novels/25627726
https://novelpia.jp/novel/179
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
フリーター、ゴーレムになり異世界を闊歩する
てぃー☆ちゃー
ファンタジー
旧タイトル)オレはゴーレム、異世界人だ。あ、今は人では無いです
3/20 タイトル変更しました
仕事を辞めて、さあ就職活動だ!
そんな矢先に別世界へ強制移動とゴーレムへの強制変化!
こんな再就職なんて望んでません!
新たな体を得た主人公が異世界を動き回る作品です
異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる