上 下
253 / 453

ホロスコープ星国 パート29

しおりを挟む


 「私の家まで案内するわ」


 ヴァンピーは笑顔で言った。

 私とベガちゃんはヴァンピーの後ろをパカパカと歩いて行った。



 「ヴァンピー様、その女の子は誰なのですか」


 門を守る兵士が言う。


 「私の知り合いよ」


 ヴァンピーは、兵士の瞳を見つめながら言った。


 「そ・そ・そうなんですか。身分証の確認をされたのでしょうか」


 ヴァンピーに見つめられて、兵士は緊張している。


 「もちろんよ。この子が手配書の子供なわけないでしょ」


 ヴァンピーは兵士に近寄って、肩に手を回して言った。


 「そうですよね。お嬢さんにお馬さん、王都シリウスにようこそ」


 ヴァンピーに肩を触れられて、兵士の興奮状態はマックスであった。兵士は私を全く調べることなく門を通してくれたのであった。


 「あいつ、ヴァンピー様にボディタッチしてもらってやがるぜ」


 悔しそうに別の兵士が言った。


 「俺もヴァンピー様に触れてもらいたいぜ」


 唇を噛み締めながら別の兵士が言った。


 「ヴァンピー様は、なんであんなにお美しいのだろう」


 兵士たちは、ヴァンピーの姿を見てウットリとしているのであった。


 ヴァンピーのカリスマの美貌の効果もあり、私のことは誰も見ていないので、私は疑われることなく無事に王都シリウスに入ることができたのであった。

 私とベガちゃんは、ヴァンピーに連れられて、ヴァンピーの大きな屋敷に案内された。

 屋敷には、大きな厩舎がありベガちゃんは喜んで厩舎に入り、美味しい人参、バナナ、リンゴをご馳走になっていた。

 ベガちゃんの悲鳴のような喜びの声が厩舎中に轟いていた。

 次は私の番である。私は、屋敷の中に入ると、可愛いメイドが、私を地下の部屋に案内するのであった。


 「えっ!地下室に行くの?」


 私は一瞬戸惑ったのであった。なぜならば、私は地下室には悪い思い出しかないのである。パースリの町では、地下の部屋に連れて行かれて、奴隷のように働かさせられていたからである。


 「ヴァンピー様が、大事な話があるということなので、地下の部屋に案内するように言われました」


 メイドは、にこやかに言った。

 ヴァンピーは、屋敷に着くと準備があるとすぐに屋敷を出たのであった。私は王都で1番おいしいパンを買ってきてくれると思って、笑顔で見送ったが、まさか地下の部屋に、連れて行かれるとは思わなかったので、少し不安になっているのであった。


 「私を監禁するのですか」


 私は、率直に言った。


 「大丈夫ですよ。私もヴァンパイアなので信じてください」


 メイドはそういうと、鋭い二本の牙を見せた。

 私は一瞬ドキッとしたが、ドラキュンの仲間に悪い人はいないと、自分にいい聞かせて、メイドの案内する地下室に向かった。

 屋敷の地下室は、とても大きくて綺麗なお部屋だった。私は大きなソファーに座って、ヴァンピーが戻ってくるのを待つことにした。

 しばらくすると、焼き立てのパンの美味しい匂いがした。


 「パンがきたわ!」


 私は思わず大声を出した。


 「お待たせ!美味しいパンを買ってきたわよ」


 ヴァンピーの姿が見えないほど、たくさんのパンをヴァンピーは抱えていた。


 「ありがとうございます」


 私は、少しでもヴァンピーを疑ったことを深く後悔するのであった。

 
 「では、パンを食べながら、あなたのこと聞かせてくれるかしら?」


 ヴァンピーは、瞳を輝かせながら言った。

 私は、こんなにたくさんパンをくれる人は、絶対にいい人に違いないと判断して、今までのことをヴァンピーに説明した。しかし、私が以前男の子だったこと、リプロ様のこと、不死鳥フェニックスの能力は秘密にしておいた。


 「あなたが手配書の女の子だったのね」


 ヴァンピーは、少し驚いているみたいであった。


 「レジスタンスのことは私も心配していたのよ。『星の使徒』のレオ、キャンサーが、アダラの村で必死にレジスタンスのアジトを探しているみたいなのよ。いつアジトが見つかるかは時間の問題よ。私は表立ってレジンスタンスを助けることはできないから、どうしたらいいのか迷っていたのよ」


 ヴァンピーは、王国の魔法師団であるが、レジスタンスとも繋げっているみたいである。


 「私が、レオとキャンサーを倒してあげます」


 私は美味しいパンを食べて、とても気分がいいのであった。


 「1人で大丈夫なの」


 ヴァンピーは、心配そうに私をじっと見つめている。


 「なんとかなると思います」


 私は基本無計画である。なので、なんとかなる精神で行動するのである。


 「ライブラを倒した実力があるのなら、なんとかなるかもしれないけど、気をつけるのよ。レオは『大きな虎』になる能力を持っているし、キャンサーは『高速横走り』の能力があるわ。特にキャンサーの『高速横走り』は、予測不能な動きをするので、厄介だと聞いたことがあるわ」


 『高速横走り』とても興味深い能力である。


 「わかりました。無茶はしないようにします」


 私は元気よく言った。


 「明日は、9時までに王都シリウスの門を出るのよ。9時になるとアリエルが門の監視業務に着くわ。アリエルはとても用心深いので、フェニちゃんのことを疑うかもしれないから、必ず9時まで出発するのよ」


 ヴァンピーは、かたく念を押して私に言うのであった。


 「はーーーい」


 私は、パンを食べるのに夢中で、きちんと話を聞かずに返事をしたのであった。


 「私は門の警護業務に戻るわね。何かあったらメイドに言ってくれたらいいわ」


 ヴァンピーはそう言うと、王都シリウスの門に戻って行った。

 私は、途中からヴァンピーの話をそっちのけで、パンを食べまくっていたのであった。

 
 「美味しぃーーーですぅーー」


 私の美味しいですぅコールが、地下の部屋から鳴り響くのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

辺境で魔物から国を守っていたが、大丈夫になったので新婚旅行へ出掛けます!

naturalsoft
ファンタジー
王国の西の端にある魔物の森に隣接する領地で、日々魔物から国を守っているグリーンウッド辺境伯爵は、今日も魔物を狩っていた。王国が隣接する国から戦争になっても、王国が内乱になっても魔物を狩っていた。 うん?力を貸せ?無理だ! ここの兵力を他に貸し出せば、あっという間に国中が魔物に蹂躙されるが良いのか? いつもの常套句で、のらりくらりと相手の要求を避けるが、とある転機が訪れた。 えっ、ここを守らなくても大丈夫になった?よし、遅くなった新婚旅行でも行くか?はい♪あなた♪ ようやく、魔物退治以外にやる気になったグリーンウッド辺境伯の『家族』の下には、実は『英雄』と呼ばれる傑物達がゴロゴロと居たのだった。 この小説は、新婚旅行と称してあっちこっちを旅しながら、トラブルを解決して行き、大陸中で英雄と呼ばれる事になる一家のお話である! (けっこうゆるゆる設定です)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...