上 下
250 / 453

ホロスコープ星国 パート26

しおりを挟む

★スコーピオ視点になります


 「タラウスの様子が変でしたね」


 スコーピオが赤騎士団の兵士に言った。


 「そうでしょうか・・・いつもと変わりないと思いました」


 兵士は答えた。


 「私には嘘は通用しません。タラウスは明らかに嘘をついていました」


 スコーピオの観察眼は鋭い。タラウスの嘘を簡単に見破ることはできるのである。


 「タラウス様はどんな嘘をついていたのでしょうか?」


 兵士は尋ねた。


 「関所で何かあったのかも知れません。しかし、兵士たちが負傷した様子もないので、何があったのかは検討もつきません」


 スコーピオはあらゆる展開を想定したが、結論は出ないのであった。


 「スコーピオ様、考えすぎだと思います」


 兵士はのんきに言った。


 「そうかも知れませんね」


 スコーピオは、一抹の不安を残しながら先を進むのであった。

 しばらくすると、カペラの町の近くまでたどり着いた。


 「あなた達は、ここで待機してください。カペラの町は特殊な町です。兵士が乗り込んでいくとトラブルになります」


 スコーピオは兵士たちに指示を出した。


 「わかりました。私たちはここで待機してます」


 兵士たちは、カペラの町の周辺で待機することになった。スコーピオは、兵士たちを残して、カペラの町へ向かっていった。

 スコーピオは、単独で馬に走らせてカペラの町の門まで着た。


 「私は、赤騎士団団長のスコーピオです。ポルックス様に会いにきました」


 スコーピオは、礼儀正しく門番に声をかけた。


 「少しお持ちください。確認してきます」


 門番は、スコーピオの姿に驚いていたが、スコーピオは、『星の使徒』の中ではかなりの穏健派で有名なので、スコーピオは害をなさないと信じて、ポルックスの元へ向かった。

 しばらくすると、門番はポルックスと共にカペラの町の門に姿を現した。


 「スコーピオ、お久しぶりですね」


 ポルックスはにこやかに言った。


 「お久しぶりです」


 スコーピオも笑顔で答えた。


 「私の屋敷へ案内します」


 ポルックスは丁寧に言った


 「わかりました」


 スコーピオは、ポルックスに連れられて、ポルックスの屋敷に向かった。


 「ライブラの件ですね」


 ポロックスは、見透かしたように言った。


 「そうです。ライブラがウルフキングを倒すと息巻いて、王都シリウスを出発して1週間以上が経過しました。しかし、未だに戻ってくる気配がありません。もしかしたら、カペラの町へ寄ったのではないかと思いまして・・・」


 スコーピオは、真剣な表情でポルックスに問いかける。


 「ライブラは、この町で拘束しています」


 ポルックスは隠すことはしない。


 「ポルックス様が倒したのですか?」

 「私にはそんな力がないのは知っていますよね」

 
 ポルックスは笑いながら言った。


 「確かにそうですが・・・なら、誰がライブラを拘束したのですか?」


 スコーピオは、困惑した顔で言った。


 「私が言わなくても、あなたなら想像はできているでしょう」


 ポロックスは見透かしたように言った。


 「ウルフキングですか」

 「違います」

 「では、誰ですか」


 スコーピオは、フェニはただの子供だと思っている。


 「あなたは、知らないのですね」


 ポルックスは、ウルフキングとフェニが手配書に載っているので、スコーピオは、フェニの実力も多少は知っていると思っていたのである。


 「もしかして、あの子供の女の子ですか」


 スコーピオは驚きを隠せない。


 「そうです。あの子は強いですよ。私は、ホロスコープ星国の今後を左右するのはあの子だと思っているのです」


 ポルックスは嬉しそうに言った。


 「ポルックス様の悲願を叶えてくれる逸材なのですね」


 スコーピオは笑顔で言った。


 「そうです。あの子はホロスコープ星国の希望です。私はあの子を全力で支援するつもりです。スコーピオも協力してください」


 ポルックスの瞳は子供のように輝いていた。


 「もちろんです。全力で協力いたします。それで、ライブラはどうするつもりなのですか?」

 「ライブラは、しばらくは拘束して、意識の変革をさせるつもりです。『星の使徒』だけが特別であると言う考えを改めさせないといけません」

 「それは、難しいでしょう。私とポルックス様以外は、『星の使徒』は神に選ばれし特別な人間だと勘違いしています。『星の使徒』は、国民を守るために神から能力を与えられたのです。自己の欲望を満たすのではないのです」


 スコーピオは清々しい目をして言った。


 「その通りです。あなたはとても優秀ですね」


 ポルックスは嬉しそうに言った。


 「これも全て、ポルックス様に教えてもらったことです」


 スコーピオはポルックスに跪いて言った。


 「私の考えを理解してくれたのは、あなただけです。私と一緒にこの国を変えましょう」

 「もちろんです」


 スコーピオは即答した。


 「ところで、レジスタンスのアジトが、レオとキャンサーに見つかったとライブラから聞いたのですが、本当ですか?」


 心配そうにポルックスは言う。


 「アダラの村が怪しいと目をつけて捜索しているところです。なので完全に見つかったわけではないのです。しかし、レオとキャンサーがアダラの村に滞在しているので、今はレジスタンスの行動は制限されています」

 「それで、私のところに報告がないのですね」

 「そうです。なので、私がライブラを探索すると言う名目でこの町に訪れたのです。大義名分がないと私はポルックス様に会うことは許されませんので」


 スコーピオは嬉しそうに言った。


 「これからどうするのですか」


 ポルックスは心配そうに言った。


 「ライブラは、見つからなかったと報告します。そして、引き続き、王都シリウスの動向を監視します」


 「スコーピオ、王都のことは任せました。あと、フェニちゃんのことも助けてあげてください」

 「ウルフキングと一緒にいた女の子ですね」

 「そうです。フェニちゃんは、私の依頼でアダラの村に向かっているでしょう。レオ、キャンサーの2人の相手をするのは少し危険だと感じています」



 ポルックスは、不安を感じていた。


 「それなら、私もアダラの村に向かいましょう。共に協力して戦うことはできませんが、レオとキャンサーの邪魔をすることはできると思います」

 
 スコーピオは、新たな目的が出来たため、カペラの町を出て、急いでアダラの村へ向かうことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

処理中です...