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倭の国パート30

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 広間に入ると、3つ席が用意されてた。


 「俺たち以外に誰かいるのか?」

 「そうみたいね。やむなく遅刻したのは私達だけではなかったみたいね」


 トールさん達は、席に座った。そして、残りの1席には、かえでちゃんが座ったのであった。


 「お前も参加するのかよ」


 トールさんは、かえでちゃんに突っ込んだ!


 「もちろんです。私はわんこそば大会5年連続優勝のわんこクイーンなのです」


 トールさん達は唖然するのであった。


 「予定を変更して、わんこそば大会の追加試合を開催いたします。現在1位の方の記録は20杯となっています。しかし、わんこクイーンのかえで選手の前回の記録は25杯です。追加試合には、かえで選手も出場しますので、順位の変動がありそうです」


 倭の国のわんこそば大会の器は、どんぶりくらいの大きな器である。なので25杯はかなりの大記録なのである。


 「それでは、わんこそば大会の追加試合を始めます。15分以内に何杯の器を食べれるか挑んでください」


 わんこそば大会の追加試合が開始された。トールさん達の目の前にどんぶりの器が用意される。トールさん達は、真剣にわんこそばを食べまくる。

 トールさん達は、焼き鳥を食べ過ぎて、動けなくなるくらいにお腹がパンパンになっていた。しかし、牛歩戦術、迷子戦術でかなりの時間を稼いだので、少しは食べれるくらいには、回復しているのであった。


 「おかわり」

 「おかわりだ」

 「おかわりよ」


 3人は次々とおかわりをしていく。


 5分が経過して、全員が横並びで10杯もわんこそばを食べたのであった。このペースでいくと25杯は超えそうである。

 しかし、トールさんとポロンさんはかなり苦しそうになってきている。


 「もう限界だ。これ以上は絶対に無理だ」


 とトールさんが心の中で叫んでいた。


 「もう無理よ。どうしたらいいのよ」


 とポロンさんも心の中で嘆いていた。

 それでもトールさん達は、無理してわんこそば食べていた。

 しばらくすると、ポロンさんは異変を感じたのであった。


 「おかしいわ。さっきからいくら食べても、器のそばがなくならないわ」


 ポロンは、頑張ってそばを食べているが、器のそばが全然減らないのであった。最初は、食べるペースが遅くなったからだと思っていたが、どう見てもおかしいのである。器からそばが減らないどころか増えている感じがするのであった。

 それは当然であった。実はトールさんが目には見えないスピードで、自分のそばをこっそりと、ポロンさんの器に入れていたのであった。


 「ポロン、これもわんこそばの戦いのテクニックの1つだ。悪く思うなよ」


 とトールさんは心の中で呟きながらほくそ笑んでいた。


 「もう、絶対に無理よ。いくら食べても減らないわよ」


 ポロンさんは、心の中で嘆き苦しんでいた。


 「そうだわ。あの手がありましたわ」


 ポロンさんも高速の動きで、トールさんの器にそばを入れ出したのであった。


 「トール、これも正当な作戦なのよ。だから悪く思わないでね」


 トールさん達は、お互いのそばを入れ合うのであった。


 「おかしいぜ。いくらポロンの器にそばを入れても、量が減らないぜ」

 「おかしいわ。いくらトールの器にそばを入れても、量が減りませんわ」


 それは当然の結果であった。


 そして10分が経過して終了時間が来たのであった。

 お互いにそばを入れあったトールさん達の記録は、トールさんが14杯、ポロンさんが12杯に終わった。そしてかえでちゃんの記録は30杯であった。

 この結果、かえでちゃんの6連覇が決定したのであった。


 「かえでちゃん、優勝おめでとう」

 「かえで、優勝おめでとう」


 トールさん達はかえでちゃんの優勝を讃えるのであった。

 
 「ありがとうございます。今から私の優勝を祝して、美味しいフルーツを出してくれるお店に案内してあげます」


 かえでちゃんは、嬉しそうに言った。かえでちゃんの食欲もトールさん達に全然負けていないのであった。


 「いや、遠慮しておくぜ。俺は、かりにも共に戦ったライバルだ。今は悔しさで胸がいっぱいで、何も食べる気が起きないぜ。本来の俺なら、まだまだ食べれるところだったのに、残念で仕方がないぜ」


 精一杯の言い訳をするトールさんである。


 「喜んで食べにいくわ・・・と言いたいところだけど、ロキ達の事が気になるわ、だから急いで剣術大会の会場へ戻った方が良いと思いますわ」


 もっともらしい言い訳を言うポロンさんであった。


 「そうですね。私もヒメコ様の事が気になります。急いで、剣術大会の会場へ戻りましょう」


 トールさん達はホッとするのであった。


 「あっ、わんこそば大会の優勝賞品があります。新鮮でとても美味しいお寿司です。最近は新鮮な魚が入手できないので、お寿司を食べることができないので、とても貴重なお寿司です。このお寿司をお二人にプレゼントいたします」

 
 かえでちゃんは、親切でトールさん達にお寿司を渡した。


 「お寿司は、新鮮なうちに食べるのが、1番美味しいです。さぁ召し上がってください」


 かえでちゃんは、屈託のない笑顔でお寿司を勧めてきた。

 トールさん達の顔が呆然としている。


 「これが、お寿司というモノかぁ。これが食べたくて倭の国へ来たのだぜ」


 トールさんは強がって答えた。


 「なんて美味しそうな食べ物なの!これは絶対に食べないといけない食べ物ですわ」


 ポロンさんも負けじと強がった答えた。


 「本当に美味しいです。さぁ食べたください」


 かえでちゃんは催促する。

 トールさん達はお寿司を掴んで、口に入れようとする・・・


 「ごめん・・・もう食べれない」

 「ごめんなさい。もうお腹いっぱいで食べることはできませんわ」


 トールさん達は、もう我慢の限界だった。なので素直に謝ったのであった。

 こうして、トールさん達のくだらない戦いは、幕を閉じるのであった。

 
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