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倭の国パート28
しおりを挟む一方、トールさん達は、かえでちゃんに案内されて、わんこそば大会の会場に向かっていた。
「ポロン、なんか香ばしい甘い匂いがしないか?」
「本当ですわ。甘くて香ばしい素敵な香りですわ。もしかしたら、これがわんこそばに香りかしら」
「いえ違います。これは焼き鳥の匂いになります」
かえでちゃんが答えた。
「焼き鳥?」
「焼き鳥とは、鶏肉に串を通して甘いタレや塩などをつけて、あぶり焼いたものです」
「それは、美味しそうだな」
「トール、少しだけ食べていきましょうよ」
「もちろんだぜ」
「もうすぐ、わんこそば大会が始まります。焼き鳥は今度にした方が良いと思います」
かえでちゃんが忠告をする。
「味見するだけだから、大丈夫だぜ」
「そうですわ。ほんの少しだけ食べるだけですわ」
2人は、かえでちゃんの忠告を無視して、焼き鳥屋さんに入っていった。
「かえで、注文してくれ」
「かえでちゃん、お願いしますわ」
2人は、焼き鳥を食べたことがないので、かえでちゃんに注文を頼んだのであった。
「わかりました。わんこそば大会が控えていますので、もも肉とかわたれだけを注文します」
かえでちゃんは、トールさん達の事を考えて、1人に2本だけ焼き鳥を注文してあげた。
数分後、トールさんの目の前に、甘くて香ばしい焼き鳥が、運ばれてきた。
「美味しそうなだな」
「そうね。これは期待を遥かに越えそうな味を予感しますわ」
2人はまず、もも肉を食べてみた。
2人の体が突然、痙攣を起こし出す。そして2人はブルブルと震えながら、テーブルの上に倒れてしまった。
「トールさん、ポロンさん大丈夫ですか?何があったのですか」
しかし、テーブルに倒れた2人はスクっと起き上がり、両手を大きくあげて、大きい声で叫んだ。
「うめぇーーーーーーーー」
「ワンダフォーーーーーーーーーー」
2人はあまりの美味しさに、歓喜のあまり体が震えて倒れ込んだのであった。
「倭の国に来て正解だったぜ」
「本当ですわ。こんな美味しい食べ物に出会えるなんて、夢にも思っていませんでしたわ」
2人は固い握手をして、喜びを分かち合ったのであった。
「じゃんじゃん追加してくれ」
「そうよ。全然物足りなわ」
「あの・・・もうすぐわんこそば大会が始まります。もう食べない方が良いと思います」
「何を言っているのだ!こんな美味しいご馳走が目の前にあるのに、それを無視して、お店を出るなんて、冒険者として失格だぞ」
トールさんは興奮を抑えきれずに、強い口調でかえでちゃんに言う。
「そうよ、かえでちゃん。私たち冒険者は、美味しい食べ物があれば、それを放っておいて、次の場所になんていけないのよ。ラスパのメンツにかけても、このお店の焼き鳥を存分に食べていかないと、ここにいないメンバーに申し訳ないのよ」
とんでもない根拠を言い出すポロンさんであった。
かえでちゃんは2人の熱意?に負けて、渋々焼き鳥を追加するのであった。
2人の食欲は止まらない。どんどん追加して、テーブルの上は山のようにお皿が積み上げられるのであった。
30分後・・・
「もう食べれないぜ」
「う・う・う・・・お腹が重くて動けませんわ」
2人のお腹はパンパンに腫れ上がっていた。
「わんこそば大会はどうしますか」
かえでちゃんが、呆れた顔で言う。
「もちろん、参加するぜ」
トールさんは、強がって答えた。
「も・も・も・ちろん参加するわ。でも、どうしてもと言うなら、参加しないって手段も考えてあげてもいいかしら」
ポロンさんは、自分から参加しないと言えないので、参加しないように言ってもらえること期待していた。
「俺も、どうしてもと言うなら、考えてもいいぜ」
トールさんもポロンさんの意見にのっかかる。
「私は、2人の意見を尊重します」
かえでちゃんは意地悪そうな顔をして言ったのであった。
「俺は、是が非でも参加したいが、ポロンがどうしても、出たくないと言うなら、ポロンの意見を尊重してあげてもいいぜ」
「私も参加したいですわ。でもトールが、どうしても参加を拒むなら、断腸の思いで、わんこそば大会を辞退してもいいと思っていますわ」
2人とも意地の張り合いをしている。とても醜い争いである。
「2人とも参加の意思があるのなら、今から行けば、まだわんこそば大会に間に合います。急いでいきましょう」
かえでちゃんは、意地悪そうに2人に言ったのであった。
2人の顔はどんよりとして、無言でかえでちゃんの後を着いて行った。
「もう少し急ぎましょう」
かえでちゃんは冷たく言う。
「これが全力疾走ですわ」
ポロンさんは、膨れ上がったお腹を抑えながら、ゆっくりとゆっくりと歩いている。
「ポロン早すぎるぜ。俺の高速移動でも追いつけないぜ」
トールさんは、さらに遅いスピードで、スローモーションのように歩いている。
2人は牛歩戦術にでたのであった。2人は焼き鳥を食べ過ぎて、もう食べるのは限界であった。いや、もう動くことすら苦痛であった。このような状態でわんこそば大会に参加などできないのであった。なので、暗黙の了解で、お互いに牛歩戦術をとって、わんこそば大会に遅刻して、棄権しようと企んでいたのであった。
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