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倭の国パート25

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 「ちゃんこ番は誰だ!まだちゃんこが準備されていないぞ」


 突撃王が大声で叫んでいる。


 「突撃王様、実はあそこに座っているお嬢さんが、全てのちゃんこを食べてしましました」

 「言い訳をするな!あんな女の子が全部食べれるわけないだろう。俺をバカにしているのか」


 突撃王は、ちゃんこ番を掴み上げる。


 「本当なのです」

 「それに、この鍋を見てみろ。お汁が一滴も残っていないどころか、鍋がピカピカに光っているではないか。この鍋で料理を作った形跡など微塵も感じないぞ」


 サラちゃんは、鍋がピカピカになるくらい綺麗にちゃんこを食べていた。


 「言い訳はいいから、早く作れ。出場者がお腹を空かせて待っているぞ」

 「お兄さん、早くちゃんこの追加を用意してよ」


 ちょこんと座って、追加のちゃんこを待っていたサラちゃんが、ちゃんこ番に催促する。


 「お嬢さん、さっきから説明していますけど、もうちゃんこはないのです」

 「言い訳はいいから、早く作るのよ」


 サラちゃんは頬を膨らませて、大きい声で怒鳴る。


 「お嬢さんの言うとおりだぜ、言い訳はいいから、早くちゃんこを作れ」


 突撃王もサラちゃんの後押しをするかのように、言い放つ。


 「突撃王、何を騒いでいるのだ」


 雷電が食事場にやってきた。


 「雷電か、今日のちゃんこ番が、まだちゃんこを作っていないから、注意していただけだ」

 「そんなはずはないぞ。俺がさっき見た時は、4つの鍋に溢れんばかりのちゃんこが入っていたぞ」

 「鍋を見てみろよ。鍋の中には何も入っていないぞ」

 「本当だ・・・」

 「私の話しを信じて下さい。あのお嬢さんが1人で全部食べてしまったのです」

 「あいつの話しは本当だったのか・・・」


 雷電も、サラちゃんが1人で、ちゃんこを全部食べたという話しは、信じていなかったのであった。

 雷電は、サラちゃんの元へ行った。


 「本当にお嬢さんが、ちゃんこを全部食べたのかな?」

 「もちろんよ」


 サラちゃんは親指を立てて、かっこよくポーズをした。

 
 「本当なのですか・・・お嬢さん、あのちゃんこは、出場者の皆さんで食べるちゃんこなんですよ」


 雷電は、子供に説明する感じで優しく言った。


 『ガーーーーン』

 サラちゃんの顔が青ざめた。


 「あんな少ない量を、みんなで分けるなんて、とても食糧事情が悪い環境なんですね」


 とサラちゃんは同情するように言った。


 「いや、そういうわけではないのだよ・・・」


 雷電は説明に困ってしまう。


 「仕方がない。私の部屋から食材を補充して、ちゃんこを作るとするか」


 雷電はこれ以上の説明しても無駄だと思い、解決策として自分が新たなちゃんこを用意することにした。

 こうして、サラちゃんが食べ尽くしたちゃんこの追加が、決まったのである。

 倭の国では、年に1度剣術大会と大相撲大会が同時に行われる。剣術大会は刀の技術を競う大会であり、大相撲大会は己の力を競う大会である。

 しかし、大相撲大会に参加するのは、普段から競技相撲を行なっている力士がメインの大会になっているので、力士以外は参加することがほとんどいない。なので、この大相撲大会は、今年度の最強力士を決める大会として、位置付けられているのである。

 この大相撲大会に出るために、剣術大会同様に、各町の強豪力士が集まるのであった。そして、エードの町で最強を誇る3人の力士が、雷電、突撃王、改心丸である。

 大相撲大会の参加者は各町から、名だたる力士が大勢参加するので、剣術大会よりも参加者は多いのである。そして、その参加者をもてなす儀式が、ちゃんこ鍋であるので、ちゃんこ鍋がないと困るのであった。

 受付を終えた、力士達が次々とちゃんこを食べにやってくる。しかし、ちゃんこが用意されていないので、不平不満の声が上がる。


 「今年は、ちゃんこはないのか!」

 「早く準備してくれ」

 「ちゃんこはまだなのか」

 「そうよ、ちゃんこ用意するのよ」


 どさくさに紛れて、サラちゃんもちゃんこを催促する。


 「もう少しお待ちください。すぐに準備いたしますので」


 ちゃんこ番が頭を下げて謝る。


 「ちゃんこができるまで、こちらをお食べください」


 たくさんの稲荷寿司が運ばれてきた。いつもは、ちゃんこ鍋の後に出される稲荷寿司を、先に出すことにしたのであった。


 「稲荷寿司かぁ、ちゃんこができるまでこれで待つとするか」

 「稲荷寿司・・・どんな食べ物なのかしら」


 お腹をすかした力士達が、稲荷寿司を取り囲む。サラちゃんは、力士の頭をピョンピョン跳ねながら、稲荷寿司が置いてあるテーブルにちょこんと座る。

 サラちゃんは、稲荷寿司を掴んで食べてみる。


 「なんですの、この甘くてジュワッとする感覚は・・・こんな美味しいものがあるなんて、倭の国に来て正解ですわ」

 サラちゃんは、稲荷寿司を食べまくる。その姿は千手観音のように100本の腕があるかのように、サラちゃんの腕は高速に動いていた。そして大皿に載っていた全ての稲荷寿司を1人で食べてしまった。

 周りにいた力士達は唖然としていた。しかし、楽しみにしていたちゃんこは出てこないし、さらに、今から食べようとしていた稲荷寿司は、サラちゃんが全部食べてしまったので、力士達の我慢は限界を超えてしまった。


 「この亜人が、調子に乗りやがって、俺の稲荷寿司がないじゃないか」

 
 2mくらいの大きな力士が、サラちゃんに平手打ちをしようとした。

 しかし、サラちゃんは、力士の腕を掴んで、200kgくらいありそうな力士を簡単に放り投げた。


  「この化け物め」


 周りにいた力士達がサラちゃんに言い放った。


 「おい、みんなでこの化け物を追い出すぞ」


 200kgの力士を軽く放り投げたサラちゃんを見て、1人では絶対に勝てないと感じた力士達は、全員でサラちゃんを追い出すことにした。

 30名ほどの力士が、サラちゃんに襲いかかる。しかし、サラちゃんは涼し顔をしながら、次々の力士達を投げ飛ばす。

 数分もしないうちに、全ての力士が、投げ飛ばされて気を失ってしまったのであった。


 「すいません。やっとちゃんこができました。少ししかありませんが、みんなで分け合って食べて下さい」

 「はーーーい」

 
 サラちゃんは元気よく返事して、またしても1人で、ちゃんこを全て食べるのであった。
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