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倭の国パート16

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 「ルシス選手の不正について説明します。この剣術大会は、15歳未満の参加は認められていません。なので、年齢の規定にルシス選手は違反していますので、失格とします」

 「そんなルールあったのか?」

 「審判がそう言うなら、正しいのではないのか」

 「あのガキはルールを違反したのだから、失格は当然だ」


 会場いる侍達は、佐々木の勝利に歓喜していたが、私の失格理由を聞いて、そんなルールあったのか?的な感じになっていたが、とりあえず、佐々木の勝利を喜んだ。


 「ルシスさん。反則はいけませんわ!後で私が注意してきますわ」

 
 もみじちゃんは、カンカンに怒っていた。


 「大会の規定に年齢制限などありません。佐々木を勝たせるために、急遽規定を変えたのです」


 ヒメコ様が説明する。


 「もう。ルシスさんは、何を考えているのかしら。嘘はダメよ」


 もみじちゃんが、ヒメコ様の説明を全く聞いていないのである。

 私は、抗議する気もおきないので、そそくさと舞台から降りていった。


 「ルシスちゃん、ひどい言いがかりを受けてしまったね」

 「はい。でももういいです。あとは、ロキお姉ちゃんに任せます。ロキお姉ちゃんも反則負けにならないように、相手に合わせて戦ってください」


 ロキさんが、負けるとは到底思えない。しかし、審判は佐々木を勝たせるためには、なんでもするであろう。なので、ロキさんは言いがかりをつけられないように、相手のレベルに合わせて戦って、勝たないといけないと思ったのであった。

 一方佐々木は、ガクガク震えながら、舞台を後にした。


 「佐々木、何があったのだ」


 庭園の屋敷に戻った佐々木に、家康将軍が問いかける。


 「あのガキは、化け物です」

 「魔獣だったのか」

 「魔獣のがまだ可愛いです。あのガキは、私の刀を簡単に細く切り刻んだのです」

 「佐々木・・・どうしたのだ。そんなことができるわけがないだろう」

 「本当です。俺はもう怖くて、戦いたくありません」

 「何を言っているのだ。お前が戦わなくて誰が戦うのだ」

 「嫌だ俺は戦いたくない。あのガキの仲間がまだ残っている。あんな化け物の仲間なんかとは戦いたくはない」

 「家康、もう佐々木は使い物にならないぞ。そもそも人間に任せたのが間違いだったわ。俺が代わりに出場するぞ」

 「そうですね。予定とは異なりますが、鬼童丸様お願いします」


 鬼童丸は、侍の格好をした鬼の妖怪である。


 「任せとけ。ヒメコが邪魔をしなければ、俺が人間どもをズタズタにしてやるぞ」

 「ヒメコは動かないでしょう。まだ俺たちの動向をうかがってますので、問題ないと思います」

 「もしヒメコが動いたらどうする」

 「その時は酒呑童子様にお願いします。酒呑童子様はいつでも戦えるように、この屋敷でお酒を飲んで、準備をしているはずです」



 「第2回戦第2試合を始めます。両者舞台に上がってください」


 第二回戦第2試合はロキさん隊巴午後さんの試合である。


 「ロキさん、よろしくお願いします。あなたの強さはヒメコ様より聞いています。手加減抜きでお願いします」

 「こちらこそよろしくお願いします。午後さんの薙刀捌きには、感服いたします。しかし、まだまだ経験不足だと思いますわ。お望みならば、全力で戦いますわ」


 ロキさんと午後さんは握手をして挨拶を交わした。そして、開始の鐘がなり、試合が始まった。

 午後さんは長い薙刀を器用に扱い、ロキさんが懐に入らせないように絶えず攻撃を仕掛ける。

 私は倭の国の侍の中では、午前さんが1番強いと感じた。午前さんはヒメコ様にしっかりと薙刀の技術を伝授されたのであろう。無駄な動きもなく、隙を全く与えない。

 しかし、冒険者として、幾つもの試練を乗り越えてきたロキさんの実力には、遠く及ばない。午後さんの薙刀はロキさんの剣の重みに、次第に耐えきれなくなり、ロキさんの剣に弾かれて、薙刀を飛ばされてしまった。


 「参りました」


 午前は、ロキさんと剣を交えて、これ以上の戦いは無駄だと感じて降参した。


 「勝者ロキ選手」


 ロキさんは、午後さんに手を差し伸べて、2人で舞台を降りていった。


 「完敗です。ロキさん」

 「午後さんは強いですわ。もっといろんな方と戦って、経験を積めばさらに強くなると思いますわ」

 「ありがとうございます。今後も精進して腕を磨きます」


 午後さんは、丁寧に挨拶してヒメコ様の元へ戻っていった。



 「ロキおねちゃん完勝でしたね」

 「そうね。次の相手は、沖田くんか佐々木だわ。佐々木は戦意喪失していたけど、試合に出るのかしら」

 「そうですね。もう戦える雰囲気ではなかったですね。このまま順当に勝ち上がって、家康の正体を暴きましょう」

 「そうね」



 「これより準決勝を開催いたしますが、選手変更のお知らせがあります。佐々木選手が急病のため次の試合に参加できなくなりました。なので、代わりに鬼童丸選手が参加します」

 
 会場が騒ついている。


 「佐々木様に何があったのか」

 「鬼童丸?聞いたことがないぜ」

 「鬼童丸って誰だよ」


 会場の様子からすると、平民も武家も鬼童丸という男の正体を知らないみたいである。


 
 「準決勝は鬼童丸対沖田早郎です。両者舞台にお上がりください」


 鬼童丸が屋敷から姿を現した。侍の格好はしているが、どう見ても人間でなく鬼であった。鬼童丸の手には刀ではなく、大きな金棒をもっていた。

 鬼童丸は体長2m以上あり、体格も筋骨隆々で羽織袴が、今にもはち切れそうであった。

 会場の観客も鬼童丸を見て、固唾を飲んでいる。佐々木の代わりの選手なので、侍達は声援をあげて応援をしたいのだが、どう見ても人間でないのである。なので、声援を送れないのであった。


 「何者なんだ」

 「そもそも人間なのか・・・」

 「怖いわ」

 「もみじ、気をつけなさい。鬼童丸は鬼の妖怪です」

 「素敵ですわ!なんてかっこいい筋肉なの。それに鬼のお面も奇抜で素敵ですわ」


 相変わらず、大事な話しを聞いていないもみじちゃんであった。もみじちゃんは鬼童丸を見て、鬼のお面を被ったガタイの良い侍だと勘違いしたのであった。


 「鬼童丸さーーーん!カッコイイーーー」


 もみじちゃんが、飛び跳ねて手を振る。

 鬼童丸は、カッコいいと言われて、嬉しそうに手を振り替えてした。


 「人間にも俺の良さがわかるヤツがいるのだな。あいつだけは、助けてやろう」


 鬼童丸は、小さくつぶやいた。

 沖田も舞台に上がるが、誰も声援を送らない。いつもなら、超美男子の沖田が会場に現れたら、黄色い歓声が飛び交うのだが、鬼童丸の異様な雰囲気に、会場はもみじちゃん以外は、恐怖で声を発することができないのであった。



 
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