171 / 453
倭の国パート12
しおりを挟む剣術大会は、大きな日本庭園のある屋敷の庭の広場で開催される。この屋敷の広場は、以前は平民達の憩いの場であったが、家康将軍が急変した頃から、この大きな広場は、平民は入ることが許されていない。なので、年に一度の剣術大会の日のみ解放されるのであった。
今回は、家康将軍の優勝者に対して、望みを一つ叶えるとの御触れにより、平民の地位向上を掲げるフレッシュ組を応援する平民が、多数駆けつけていた。
もし、家康将軍の家来の武蔵達が優勝したら、さらに平民の立場が悪くなると、心配する声も多数出ているので、なんとしても、フレッシュ組に優勝してほしいのである。
そして、他の町から参加した剣豪達の領主達は、自分の部下の剣豪が優勝したら、家康将軍の配下になり、倭の国のナンバー2としての椅子を、約束をしていたのであった。
しかし、ヒメコ様の情報では、家康将軍は、他の町の領主達に、圧倒的な力を見せつけて、倭の国を完全に支配するつもりであると述べていた。
この大会は、領主達、平民、家康将軍のそれぞれの思惑があるので、よそ者が参加することにより、場を荒らされるのを快く思っていないのであった。
なので、私が、会場内に現れた時は、会場中からブーイングが鳴り止まないのであった。
「引っ込め、亜人!」
「子供が出るとこじゃないぞ」
「武蔵様、その無礼者を切り刻んでください」
まだ、紹介されていない段階から、ヤジがとぶ。
「黙りなさい。失礼です」
もみじちゃんの声で、会場が静かになる。
もみじちゃんは、倭の国では有名人である。そのもみじちゃんが普段とは違った雰囲気で、平民武家の者に大声で怒鳴ったのであった。
「今回の大会は、俺たちの未来がかかっているのだ」
静まり返った会場から、平民の1人が叫ぶ。
「ルシスさんは、ただの冒険者ではありません。帝様の推薦をもらっています」
「ザワザワ・ザワザワ」
会場内が騒ついている。
帝様は、形の上は最高権力者である。なので、帝様の推薦と言われると誰も文句を言えないのである。
「ただいまより、剣術大会第一試合をおこないます。宮木武蔵選手、ルシス選手、舞台に上がってください」
先に武蔵が舞台に上がる。さっきまで騒ついて会場内から歓声が飛ぶ。
「武蔵様」
「かっこいいところを見せてください」
もみじちゃんの言葉が効いたのか、応援の声は響くが、私への野次はない。それほど、帝様の影響力は強いのである。なので家康将軍は、この剣術大会で力を見せつけたいのであろう。
そして、私が舞台に上がると、武蔵が絡んできた。
「こんな子供を、相手しないといけないとは、俺もついてないな」
自分たちに有利なる組み合わせにしといて、白々しいのである。
「この前は、近藤男に邪魔されたから、あの時のガキの代わりに、お前を処刑にしてやるわ」
武蔵は、昨日の出来事を根に持っているのである。ロキさん、近藤男には、警戒しているので、最初に私を殺そうと思ったのであろう。
「それが、お前の剣なのか。子供のおもちゃではないか。ハ、ハ、ハ、ハ」
私の料理用ナイフを見て、武蔵が笑う。そして、武蔵の言葉を聞いた武家の観客達もを大笑いした。
「おい、あんなので戦うみたいだぞ」
「試合を舐めてるのか」
「ルシスちゃん・・本当に強いのかな?」
もみじちゃんまでも私の調理用ナイフ見て落胆している。海の魔獣を倒しのはロキさん達であって、私は、作戦の指示を送っただけである。なので、もみじちゃんは私の戦いを見たことはないのである。
「もみじ、心配する必要はありません。あの子は強さは本物です」
「・・・・・」
もみじちゃんは明らかに、「えーーーーそんなふうには見えないよ」と言いたげな顔をしているが、ヒメコ様には言えない。
「両者準備が整ったみたいですので、試合を始めたいと思います。第一試合、倭の国最強の剣豪宮木武蔵対冒険者ルシス試合を始めます」
試合開始の鐘が鳴って試合が始まった。
武蔵の身長は2mもあり、大きな刀を二本持っている。右の刀を私の方に向け、左の刀を上に振り上げる。
私と武蔵では、リーチの差が歴然である。太くて長い大き腕に長い刀の武蔵に対して、小さな細くて短い腕に、小さな料理用ナイフの私・・・誰の目から見ても、一瞬で試合は終わると誰もが思っていた。
「ガキが調子に乗ってこの大会に出たことを、あの世で後悔するのだな」
武蔵は、右の刀で私を突き刺して、左の刀を振り下げて、私を真っ二つに切り裂いた・・・・
そして、試合は一瞬で終わってしまった。
もちろん私を切り裂いて、ニヤニヤしてガッツポーズをしている武蔵の姿はそこにはない。
舞台の上では、白目を剥いて倒れている武蔵の姿があった。
会場では、何が起こったのか理解できずに、静まり返っている。
「一体何が起こったのだ」
広場の屋敷の最上階から、剣術大会を見学していた家康将軍が問う。
「急に武蔵様が倒れました。もしかしら、腹痛を起こしたのかもしれません」
「そうか、武蔵は、試合前には体力をつけるために、かなりの暴飲暴食をする。それが仇となったのだな」
「間違いありません」
「あの小娘め。運がいいことよ。次はそんなラッキーで勝利などさせないぞ」
「そうでございます。私があの小娘を懲らしめてあげます」
「そうだな。野獣よ、任せたぞ」
0
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
異世界転生はうっかり神様のせい⁈
りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。
趣味は漫画とゲーム。
なにかと不幸体質。
スイーツ大好き。
なオタク女。
実は予定よりの早死は神様の所為であるようで…
そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は
異世界⁈
魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界
中々なお家の次女に生まれたようです。
家族に愛され、見守られながら
エアリア、異世界人生楽しみます‼︎
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる