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倭の国パート7
しおりを挟む過程はどうあれ、倭海の平和を取り戻すことはできた。これで、新鮮な魚を取ることができるのである。
「そろそろ、出てきたらどうだ!」
トールさんが叫ぶ。
「そうですわ。みんな気づいているわよ」
ロキさんが静かに言う。
「そ・そ・そうですわ。私も気づいていますわ・・・」
みんなに合わせて、ポロンさんも言うが、なんのことか、さっぱり理解していない。
「ルシスちゃん。ロキ達は、何を言ってるの?」
ポロンさんが、私の方へ近寄ってきて、小声で話しかける。
私たちは、エードの町を出てから、ずっと誰かに、尾行されていた。特に殺気は、感じなかったので、放置していたのである。ポロンさんだけは、海で遊ぶのに夢中で気づいていないみたいである。
「ポロンお姉ちゃん、私たちは、ずっと尾行されていたのです」
「本当なの?」
「間違いないです。でも、殺気を感じないので、様子を伺っていました」
「そうだったのね」
ポロンさんは、自信ありげな顔をして、海岸の大きな岩に向かって、叫び出した。
「そこにいるのは、わかっているのよ。いい加減に姿を現しなさいよ」
ポロンさんは、岩を指差して、カッコよくポーズを決めた
しかし、大きな岩からは、誰も出てこない。
「ポロンお姉ちゃん、違います。後ろ大きなきの上に隠れています」
「そうなの・・・てっきり隠れるなら、あの大きな岩だと思ったわ」
ポロンさんは、慌てて、後ろの大きな木に向かって、大声で叫んだ。
「大きな岩に隠れていると見せかけて、本当は、そこの木に隠れているのね。私には、最初からその木に隠れているのは、わかっていたのよ。さぁ、姿を見せなさいよ」
ポロンさんは、ドヤ顔をして、木を指さした。
「・・・・」
「あれ?」
ポロンさんは、顔を赤くして、私のところに駆け寄ってきた。
「ルシスちゃん、反応がありませんわ。どういうことなの?」
ポロンさんの額からは、汗がダラダラ流れ出している。
「相手は、極秘任務で尾行しています。なので、姿を見せません」
「どうしたら、いいのかしら?」
「木を燃やしたら、出てくると思います」
「それは、名案だわ。早速やってみるわ」
ポロンさんは、再び、大きな木の前に立った。
「姿を見せないのなら、仕方ありませんね。私の、炎の矢で、大木もろとも、消し炭にしてあげますわ」
ポロンさんは、弓を構える。
「イフリート、特大のマグマをあの木に、打ち込むのよ」
「わかりました」
ポロンさんの構えた弓の矢先が激しく燃え上がり、大きなマグマになる。
「これでもくらいなさい」
「やめてぇーーーーー。死んじゃうよーーーー。」
大木の上から、ピンクの忍び装束をきた、女性の忍者が、泣きながら、降りてきた。
「尾行して、ごめんなさい。許してください。殺さないでください」
女性の忍者だから、くノ一であろう。くノ一は、日本名物土下座をしながら、謝るのであった。
「ポロン、危ないから、そのマグマをしまいなさい」
ロキさんが止めに入る。
「ロキ・・・・もう無理なのよ。こんなにマグマが大きくなってしまったわ」
「ポロン、危ないぞ。早く、そのマグマどうにかしろよ」
ポロンさんの出したマグマは、制御できないくらい、どんどん大きくなっていく。ポロンさんが、弓を引いているうちは、危険はないが、弓を打った瞬間、増大な熱を発して、全てを焼け尽くすのである。
「イフリート、どうにかならないの?」
ポロンさんは、イフリートに助けを求める。
「一度、放ったマグマの力は、自分でも制御できません」
「どうしたらいいのよ!!!」
ポロンさんは、泣きながら、叫ぶが、どうすることもできないのである。
そうしているうちにも、マグマはどんどん大きくなっていく。
「ルシスちゃん、どうにかならないの?」
ロキさんが、私に助けを求める。
解決策は、いろいろある。まずは、私が使える究極魔法の一つであるブラックホールである。しかし、この魔法は、黒属性の魔人にしか使えない魔法である。あらゆるもの全て吸い込むことのできるこの究極魔法なら、簡単にマグマを吸い込むことはできるのである。
しかし、この魔法は使いたくはない。私が、魔人であることがバレる可能性があるからである。
次は、光魔法の究極魔法、ワームホールである。ワームホールは、時空と時空をつなげる魔法である。ワームホールを使えば、マグマを、どこか違うところへ移動させることができる魔法である。
しかしこの魔法も使ったら、私が、何者なのか詮索されるのは困る。特に私たちのことを監視している、くノ一の前で使うのは好ましくない。
そして、同じ理由で、光魔法のもう一つの究極魔法ホワイトホールも使うことはできない。ブラックホールが全てのものを吸い込むなら、ホワイトホールは全てのものを跳ね返して、無効にする。
私は、いろいろと考えた。くノ一の前で、あまり目立たなくて、穏便に解決する方法を・・・
「ポロンさん、倭海に放り投げてください」
「でも・・・」
「それしか、ありません」
「わかったわ」
ポロンさんは、巨大なマグマを、倭海へ放り投げた。
倭海は、マグマの熱で、グツグツと沸騰し出したのである。そして、倭海は平和な海から、温暖化した暖かい海に戻ってしまったのであった。
「また、新鮮な魚が取れなくなるぞーーー」
トールさんの悲痛な叫びが、轟くのであった。
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