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妖精王パート20
しおりを挟む「いくら探しても、見つからないぞ。サラ、お前の嗅覚で、見つけることは、できないのか」
「この部屋から、匂いがしたはずなのに、おかしいわ。どこ消えてしまったのかしら」
「仕方がない。俺も、鍋を食べるとするか」
「私も食べるわ」
トールさんとポロンさんが、ヤミークラブの探索をやめて、歓迎会用の鍋を食べ始めた。
「ヤミークラブは、ないけど、この鍋は、美味しいぞ」
「出雲山から取れる新鮮な野菜が、美味しいのですわ」
「この家に来て、正解だったな」
「本当ね。でも、ヤミークラブは、どこへいったのかしら?」
トールさん達が、鍋を囲んで、ワイワイしていると、地面が急に大きく揺れだした。
「地面が激しく揺れているぞ」
「トール、虹蛇が、動き出したのかもしれませんわ」
「そうだな。フワリンを呼ぶから急いで逃げるぞ」
「まだ、鍋が余っていますわ。私は、最後の一滴たりとも、鍋のお汁を、残す事はしないのよ」
地面が、激しく揺れて、今にも家が倒壊しそうだが、サラちゃんは、落ち着いて、鍋を食べている。食事を残さないサラちゃんの精神は、尊敬に値するが、今は、呑気に食べている場合でない。
「俺たちは、先に逃げるぞ」
トールさんとポロンさんは、フワリンに乗って、上空へ逃げた。上空から出雲山を見てみると、さっきまで大きな山だっと思っていた出雲山は、大きな蛇が、トグロを巻いている姿であった。
「なんて、でかい蛇なんだ!!」
「あり得ないわ。こんな蛇が、存在するなんて、」
「おい、目が開いたぞ」
出雲山の山頂が、虹蛇の顔になる。大きな瞼が開いて、鋭い赤い目が、トールさん達を睨みつける。
「おい、こっちを見てるぜ、サラ、早く逃げろ」
サラちゃんは、鍋を持って、残りの汁を啜っている。
「ちょと、待ってよ。後少しよ」
虹蛇が、ゆっくりと動き出した。虹蛇の体から生えている木々や、地面が崩れ出し、宍道湖を一瞬にして、埋め尽くす。
オロチの家も、崩れて落ちていく。サラちゃんは、とっさに、鍋に飛び乗って、サーフィンのように、土砂崩れをうまく乗りこなす。
「サラ、何をしている。早く、上空に逃げろ。土砂に巻き込まれるぞ」
サラちゃんは、軽快に鍋サーフィンを楽しんでいたが、すぐに飽きてしまい、翼を広げて、上空へ避難した。
「大きな蛇だわ」
「さすがに、サラでも、あの大蛇に勝つのは、難しいだろ」
「私は、精霊神最強ですわ。あんな大蛇なんて、楽勝よ」
サラちゃんは、真剣の目つきで、虹蛇を見ていた。
「もしかしたら・・・・かもしれないわ」
「サラ、何か言ったか?」
「間違いないわ」
サラちゃんは、虹蛇を見て、ある事を確信したみたいである。
「サラ、どうしたんだ」
「私が、あの大蛇を退治してあげますわ」
「どう考えても、無理だろ。どうやってあんな化け物倒すんだ?」
「そうよ、サラちゃん。無理しないで」
トールさんとポロンさんが、サラちゃんを引き止める。
「問題ないわ。あの大蛇のお腹には、必ずあるはずよ」
サラちゃんは、2人が引き止めるのを、振り払って、虹蛇へ突進した。
「大蛇のお腹の中・・・・そういうとこか。サラ、お前を1人危険なところへ、行かせるわけには、いかないぞ。ポロン、行くぞ」
ポロンさんは、考えた。あの2人が、正義感で、虹蛇を倒しに行くなんて、絶対にあり得ない。何か事情があるに違いない。ポロンさんは、少ない脳みそをフル回転して、考えた。
「そういうことなのね!トール、私も行きますわ」
ポロンさんは、頭をフル回転したが、結局何も分からなかった。なので、わかったフリをして、ついていくことにした。
「サラ、どうやって、虹蛇を倒すのだ」
「口の中から、お腹に入るのよ」
「大丈夫なのか?」
「問題ないわ。ヒュドラもそうやって、倒したわ」
「わかった。お前を信用するぜ」
トールさん達は、ゆっくりと動き出す虹蛇の頭を目指して、飛んでいった。
虹蛇は、ゆっくりと、地面を沿うように動いていく。
トールさん達は、虹蛇の顔付近まで近づいた。虹蛇は顔だけでも100mはある。虹蛇は大きな目を見開いて、トールさん達を見るが、虹蛇からしたら、あまりにも小さな生き物に、見えるので、相手にしない。虹蛇はそのままゆっくりと前に進んでいく。
「ドッキとしたぜ。目があったから、食われると思ったぜ」
「でも、今から、食われにいくのですわ」
「確かに、そうだったな。俺たちは、あの虹蛇の口から、体内に入るのだな」
「行きますわ」
サラちゃんは、いきなりサラマンダーに変身して、巨大な炎を虹蛇の顔に向けて、吐きつけた。
虹蛇は、炎にビックリして、大きく口を開ける。
「入るわよ」
「わかったぜ」
トールさん達は、虹蛇の口の中へ入っていった。
サラちゃんは、考えていた。ヒュドラには、あんなに美味しい、幻魔のコアがあったので、こんな大きな蛇の体には、ヒュドラの数十倍も大きな、美味しいコアがあるに違いないと。
トールさんは、考えていた。この虹蛇は、調理された、ヤミークラブをたくさん食べている。なので、体の中には、ヤミークラブがたくさんあるに違いないと。
ポロンさんは、考えていた。2人についていけば、何か美味しいものに、ありつけるに違いないと・・・でも、どうみても、虹蛇の体内は、異様な雰囲気である。なぜ付いて来てしまったのかと、後悔していたのであった。
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