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妖精王パート14

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  「サラ、大丈夫か」


 トールさんが、真っ先に駆けつける。サラちゃんは、この刺激臭にやられてしまったのだろうか。そういえば、サラちゃんは、鬼の島の硫黄の匂いが、苦手だったことを、私は思い出した。サラちゃんにも弱点があったのだろう。


 「うるさいわね。少し静かにしてよ!」


 あれ、サラちゃんは、刺激臭によって、ダウンしていたわけでは、ないみたいである。


 「なんで、こんなところで、倒れていたんだ」


 トールさんは追求する。


 「なんで、私が、村人のために、ヒュドラを倒せないといけないのよ。私は、決めたわ。ヤミークラブを強奪するわ」


 サラちゃんが、なんだか、荒れているみたいである。


 「サラ、落ち着け。俺も、出店の店主に騙されたが、彼らにも事情があるんだ」

 「そんなの知らないわよ。私は、ヤミークラブを、食べれたらいいのよ」


 なんだか、サラちゃんの様子がおかしいと、私は感じた。確かに、サラちゃんは、食べ物に関して、わがままな部分があるのは、事実である。でも、村人から、ヤミークラブを、強奪するようなことはしないはずだ。何かが、おかしい・・・


 「刺激臭のせいです」


 イフリートが、精印から現れた。


 「サラマンダー様は、強い刺激臭を体内に取り組んでしまうと、やる気スイッチがオフになってしまうのです。オフになってしまうと、極端に面倒なことを嫌がり、楽な選択肢を選んでしまう、超絶ワガママモードに入ってしまうのです。早く、体内の浄化をしないと、ワガママがエスカレートしてします」


 「雷光石も、今すぐ食べたくなったわ。私に雷光石をよこすのよ!!」

 「これは、試練をクリアしたら、渡します。今は、渡せません」

 「試練なんて、どうでもいいのよ。私は、ヤミークラブと雷光石を食べたいのよ!!!」


 サラちゃんは、サラマンダーの姿に変身した。ワガママモードが全開になったのであろう。力尽くでも、雷光石を私から、奪おうとしているのである。

 私は、このままでは、危険だと思い、状態異常解除の魔法を使った。

 サラちゃんの体を、光の膜が包み込む。


 「早く渡すのよーーー」


 サラマンダーの体が。燃え盛るように赤くなる。私の状態異常解除の魔法が、効いていないみたいである。


 「ルシスさん。サラマンダー様は、状態異常が起こったわけでは、ありません。ただ、刺激臭を取り組んで、イライラしているだけです。なので、魔法ではなく、美味しい食べ物を与えると、落ち着くはずです」


 私は、すぐさま収納ボックスから、食材を取り出して、サラちゃんの口の中に投げ入れた。


 「パクパク・・・・・おいちい」


 私は、更に食材を投げ入れた。


 「パクパク・・・・最高ですわ」


 まだまだ、投げ込んだ。


 「パクパク、ムシャムシャ・・・もっともっと」


 サラちゃんは、サラマンダーから、人型に戻って、追加の食料を催促してきた。


 「サラ、正気に戻ったのか」

 「トールさん、何かあったのかしら?私は、いつも通りですわ」


 サラちゃんの超絶ワガママモードは、解除されたみたいである。


 「臭いですわ。このニオイなんとかならないの」

 「本当ですわ。私も限界ですわ」


 サラちゃんは、いつものワガママモードに戻ったみたいである。しかし、刺激臭が、消えたわけではないので、また、いつ超絶ワガママモードに、なってしまうかもしれない。なので、刺激臭の原因を探すことにした。


 「ルシスちゃん。もっと食べ物が欲しいわ」


 とりあえず、サラちゃんを、おとなしくするために、食べ物を与えた。


 「ルシスちゃん、このさきに宍道湖があります。この刺激臭の原因は、宍道湖だと思うわ」


 私は、ロキさんに言われて、この先にある宍道湖を確認した。宍道湖は、ドロドロした紫色ヘドロの湖であった。紫色のヘドロは、猛毒であろう。


 「あれは、危険だぜ。近寄ることすら、できないぞ」

 「あれは、猛毒よね。あれに触れたら、命が危ないですわ」

 「ルシスちゃん。どうするの?」

 「私の魔法で浄化します。危険かもしれないので、下がっていてください」

 「ルシス、任せたぞ」


 そう言うと、トールさん達は、後方に下がっていった。

 私は、宍道湖に近づいて、湖の様子をうかがった。この湖にヒュドラがいるのは、間違いない。しかし、姿は全く見えない。ヒュドラが、姿を見せないうちに、私は湖を、浄化することにした。

 私は、浄化の光を湖に打ち込んだ。

 浄化の光は、湖を、みるみると透明な水に変えていく。数分後には、湖の底まで見える透明度のある水に、変わったのであった。

 湖を見てみると、湖の底で、のんびりと、寝ているヒュドラの姿が見えた。

 ヒュドラは、体長20mの九つの頭を持つ水蛇の魔獣だ。体内に毒を持ち、口から、猛毒を吐き出す恐ろしい魔獣である。しかも、ヒュドラは、無限に細胞が復活するので、倒すことができないと言われている。


 「ルシス。刺激臭が治ったみたいだな。浄化できたのか」

 「はい。浄化は完了しました。宍道湖は、とても綺麗な湖になりました」

 「すごいわ。ルシスちゃん。あんなにドロドロした湖が、底まで見える綺麗な湖に、変えてしまうなんて・・・・ルシスちゃん、湖の底にいてるのが、ヒュドラなの?」

 「そうみたいです。今は、寝ているみたいなので、ロキお姉ちゃん達は、先に出雲山を登ってください。私と、サラちゃんで、ヒュドラは倒します」

 「任せたわよ」

 「はい」


 ロキさん達は、八岐大蛇を討伐するために、出雲山を登って行った。私は、サラちゃんと協力して、ヒュドラを倒すことにした。


 「ルシスちゃん。追加の食べ物を、もっと食べさせてよ」


 サラちゃんは、超絶ワガママモードに、なったせいで、なぜ、この湖に来たのか、目的を忘れてしまっていたのであった。
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