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鬼の島パート1

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  鬼の島へ渡るには、一つしか方法はない。それは、鬼の島へ通じる大きな橋を渡っていくことだ。船を用意して、渡ることもできるのだが、船での戦闘は避けたいので、橋を渡る事にした。


 「橋を渡りましょう」

 「ルシス、正面から行くのは、危険じゃないか」

 「確かにそうかもしれない。でもトール、他に方法がないわ」

 「簡単じゃないか。海の上を渡ればいいじゃないか」

 「トール、そんなことが、できるの」

 「簡単さ。まず右足を海に入れる。そして、右足が、海に沈む前に、左足を海に入れるんだよ。それを繰り返せば、海に沈む前に、海を渡り切ることができるぜ」

 「・・・・それは、無理でしょう」

 「俺が、手本を見せてやるぜ」


 そういうと、トールさんは、海に向かって、走り出した。


 「ジャボーン」


 当然の結果であった。そんな方法で、海を渡れることは、できるはずはなかった。しかし、私は、異世界ならそんな方法で、渡ることができるのかと、少し信じてしまっていた。期待外れである。


 「おかしいなぁ。俺の化学的理論だと、渡れるはずなんだけどな」

 「・・・・橋を渡ることしましょう」


 ロキさんは、呆れて、何も言えなかった。


 私たちは、鬼の島へ向かって、橋を渡る事にした。鬼の島は、オーガの住処なので、私たち以外に、橋を渡っているものは、当然いない。先の方にも、魔獣などの姿は見えない・・・が私にはわかっていた。この橋を守る魔獣が、すぐ近くにいることを。


 「ロキお姉ちゃん、トールお姉ちゃん、魔獣がもうすぐ、上から降りてきます。戦闘の準備をしてください」

 「わかったぜ」

 「了解よ」

 
 「お前達、ここに何しにきた」


  雲に乗った、オーガがあらわれた。そのオーガは、黄色の燃える髪を持ち、背中には、小さな、たくさんの太鼓が、円形になって連なっている。このオーガは、雷神オーガである。


 「雷光石を、取りに来ました。通っても良いですか」


 私は真摯に答えた。


 「そうか。そうか。雷光石を取りに来たのか。それなら通ってよし・・・とでも言うと思ったか。雷光石は、貴重な石だ。渡すわけにはいかない。ここから立ち去れ」

 「わかりました。立ち去ります・・・というと思いましたか。私たちは、どうしても雷光石が必要なのです。ここを通らせてもらいます」

 「今日のルシスは強気だな」

 「ルシスちゃんの言う通りよ。ここを通らせてもらうわ」

 「ならば、俺を倒していくがよい」

 「俺が倒す」

 「私が倒すわ」

 「久しぶりに戦いたいです」


  私たち3人が、誰が戦うか揉めていると、雷神オーガが、怒って、太鼓をドンドンと叩き出した。太鼓を一回叩くと、大きな稲妻が私たち目掛けて、飛んでくる。雷神オーガは、二本のバチを使って、リズミカルに太鼓を叩き続ける。無数の稲妻が私たちを襲う。

 しかし、無数の稲妻は、私の張っているライトシールドに全て弾き返される。弾き返された稲妻が、雷神オーガを襲う。予想だにしないことが起こり、雷神オーガは、稲妻を避けることができず、黒焦げになって倒れてしまった。


 「よし、じゃんけんで、決めるぞ」

 「わかったわ」

 「わかりました」

 「じゃんけん、ほい」

 「やったぁーー。私が勝ちました」

 
 私が、じゃんけんで勝ったので、戦うことが決定した。久しぶりの戦闘でワクワクしている。相手はあの雷神だ。雷の攻撃には気をつけないといけない。でも私には、ライトシールドがあるので、大丈夫であろう。


 「さぁ、雷神オーガさん。私が戦います・・・・・あれ・・・・雷神さんが見当たらないです」

 「ルシス、そこで黒焦げになっているのが、雷神オーガじゃないのか」

 「ガーーーン」


 いつの間にか、雷神オーガを倒していたのであった。せっかくの私の出番が、何もすることなく終わったのであった。


 「この雲は、俺らでも乗れるのか」


 トールさんは、雷神オーガの乗っていた雲に、乗ろうとした。


 「おお、これは面白いぜ」


 トールさんが、雷神オーガの乗っていた雲に乗っている。とても楽しそうである。私も乗ってみたい。

 雷神オーガの乗っていた雲は、雷、風属性の魔石の持ち主なら、操縦することが可能みたいである。なので、ロキさんは、操縦することはできなかった。私は全属性持ちなので、もちろん操縦することはできるのである。


 「ルシスは、空が飛べるから、雲は必要ないだろ。これは俺がもらっていくぜ」


 トールさんに、雲の運転をさせてもらえなくて、私は、とても悲しかった。私も雲を必ずゲットしてやると、心に誓うのであった。


 このまま、橋を渡って、鬼の島に入るのは、危険と思い、ロキさんは、トールさんの雲に乗り、私は空を飛んで、上空から鬼の島へ、侵入する事にした。

 橋を進むと大きな門があり、そこに、体長10mもある3体のジャイアントトロールが門を守っていた。ジャイアントトロールは、毛むくじゃらの大きな巨人であり、頭には三つのツノがある。そして、一つ目で、鼻と耳が異様に長く、とても醜い顔をしている。ジャイアントトロールは、再生可能な細胞を持っているために、不死の巨人とも言われている。

 私たちは、ジャイアントトロールが、守る門を避けて、鬼の島に入る事にした。

 鬼の島は、至る所から、熱湯や、水蒸気が吹き出している。間欠泉が、たくさんあるのであろう。妖精が嫌がる正気とは、もしかしたら、硫黄の匂いのことかもしれない。あのどくどくな卵が腐ったかのような匂いを、瘴気と呼んでいるのだろう。

 私は、温泉に入れるかもしれないと思い、ワクワクしてきたのであった。
 
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