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王都パート3
しおりを挟む「俺が、リカーミストの能力を、発動している時は、俺の半径3m以内に入ると、脳内のアルコール濃度を高めて、お酒に酔った状態と、同じ状況を作り出すことができる。だから、俺に近寄れば、平衡感覚を失い、まともに立っていることはできないぜ」
「秘密をペラペラと喋って、大丈夫なのか」
「知ったところで、どうする事もできまい」
「なら、近寄らなければ、いいことだ」
トールさんは、接近戦を諦めて、中距離での、魔法攻撃に切り替えた。トールさんが武器を介入せずに、魔法だけで、攻撃するのは、めずらしい。それほど、近寄ると危険なのであろう。
トールさんは、雷風属性だ。なので電、風の魔法が得意だ。そういえば、ゴブリンキングを倒したときは、電撃を使っていた。
距離を保ちつつ、トールさんは、指先から、雷光を撃ち放つ。
雷光は、バッカスの、リカーミストの範囲内に入ると、消滅する。
「俺には、魔法は効かないぞ。リカーミストは、攻撃魔法を無効にする能力もあるのだ」
「なら、これは、どうだ」
トールさんは、ハンマーを振りまわし、ハンマー投げのようにして、バッカス目掛けて、ハンマーを投げつける。
「リカーシールド」
ハンマーは、バッカスの、リカーミストのシールド能力により、防がれる。
「無駄な事を。俺を倒すには、接近戦しかないぜ」
「そうみたいだな」
トールさんは、覚悟を決めたみたいだ。バッカスに勝つには、リカーミスト内で、戦うしかないのである。私が加勢することが、できるのなら、いくらでも、戦い方がある。しかし、この戦いは、戦闘ではなく、あくまで、ルールのある試合なのである。だから、2人の戦いに、誰も手を出さない。
一方ロキさんは・・・・こちらもかなり苦戦している。
ロキさん、そして相手のソールも同じ火属性であるみたいだ。
ロキさんは、灼熱の炎を剣にまとい、攻撃を仕掛けるが、相手に炎のが、数段も火力が強い。ソールも剣戟を凌ぐのが、精一杯である。ソールの剣がまとう黒炎は、闘技場の温度を上昇させる。観客席の者は、暑くて、席をたつ者さえもいる。
その剣をさばいている、ロキさんは、かなりの暑さであろう。全身から汗が滲み落ちている。火属性の者は、火の耐性を持っているのに、それでも、あの状況だから、ソールのまとう黒炎は、ものすごく暑いのだろう。
その一方・・・・・ポロンさんは、どこから取り出したのか、うちわで、仰ぎながら、ジュースを浴びるように、飲んでいる。
トールさんは、バッカスのリカーミスト内に入る、脳が揺らされているかのように、平衡感覚がなくなる。しかし、ふらつきながらも、ハンマーでバッカスを攻撃する。
しかし、力の入らない攻撃は、容易く斧で弾かれる。弾かれて、よろめいたところを、バッカスは、斧を振りかざす。トールさんは、転がりながら、斧を避ける。
バッカスは、攻撃の手を緩めない。何度も何度も、斧を振りかざす。トールさんは、転がりながらも、斧の攻撃を避ける。トールさんは、かなり体力を消耗している。リカーミストの効果と、体力の消耗で、もう立ち上がる事が出来なくなっている。
「しつこいやつだな。トドメを刺してやる。ゾーイ頼んだ」
「やっと私の出番が来たね。もう出番はないのかと思ってたよ」
「思ったより、こいつが、しぶとくてな。攻撃力と、スピードを上げてくれ」
「任せといて」
そいうと、ゾーイは、バッカスの攻撃力、スピードアップの魔法をかけた。
「おい、まだか。全然力が、湧いてこないぞ」
「いや、おかしいわ。先ほどから魔法をかけているはずよ」
「早くしろ、足を引っ張るな」
「そんなことはないわ。いつも通り、魔法をかけているわ。あなたが、おかしいんじゃない」
2人は、言い争っているが、もちろん、私が、魔法を無効化していた。後衛は、相手の後衛に対する、支援の邪魔はできるのである。
「うぁーー」
バッカスが悲鳴をあげる。
「おいおい、戦闘中に、よそ見とは、油断が過ぎるぜ」
トールさんがハンマーで、バッカスの頭部を叩きつける。
バッカスと、ゾーイが言い争っている時に、私がトールさんの体力を回復したのである。バッカスの詳しい能力は、知らなかったが、バッカスに接近すると、危ないとは知っていた。そして、ゾーイという支援魔法が、得意の者がいることも知っていたので、こうなる展開はある程度、予測していた。だから、トールさんが、試合前に、この作戦を立てていた。
作戦通り、幼い私に対しては、無警戒であった。すぐに魔法で支援すると、警戒されるから、ギリギリまで、トールさんの回復は、しないようにしていた。バッカス達にとっては私は、弱い支援魔法しか使えないと、思っていたのであろう。
「バッカス、大丈夫」
「ウーーー」
バッカスが、倒れ込んだことにより、リカーミストの効力が切れた。トールさんは、このチャンスを逃すはずはない。バッカスに、トドメの一撃を加えようとした。
「ロックフォール」
ゾーイは、トールさん目掛けて、攻撃魔法を仕掛けた。これは、規則違反だ。私はすかさず、ライトシールドを張った。そして、ゾーイに目掛けて、炎球を投げつけた。
ゾーイは、シールドを張ったが、シールドごと、炎球の炎に包まれる。
「少しやりすぎたかな」
私はすぐに、炎を鎮火させる。そこには、髪がチリチリになったゾーイが呆然と立ち尽くしている。
トールさんの方は、ハンマーの前で、気を失っているバッカスがいる。トールさんはトドメを刺さず、バッカスの目の前にハンマーを叩きつけたのであった。
「勝負ありだね。君たちの勝ちだよ」
ロキさんと戦っていた、ソールが私のところへきて、そう告げた。
ロキさんとソールの試合は、引き分けだったみたいだ。しかし明らかに、ソールは、手を抜いていたらしい。
「あの2人が、迷惑をかけて、すまなかったね。でも君たちの力は、この闘技場で、王都の冒険者に見せつけることが、できたはずだよ。私を相手に、ロキさんもかなり善戦してたしね。これで、君たちが、Cランク冒険者になることは、誰も文句は言わないと思うよ」
「善戦・・・完敗です」
「俺もバッカスに勝てたのは、相手が油断したからだ」
「油断するのが悪いんですよ」
「そうですわ。自分の能力に過信する者は、強くなれないわ。バッカスはあれが限界だったのよ。でも君たちは、もっと強くなれるはずよ。期待しているわ」
「ありがとう。次あう時は、今よりさらに強くなってやるぜ」
「私もよ」
私たちは、勝利をおさめ、はれてCランク冒険者になることができたのであった。
そういえば、ソールが私に近づいた時、石が黒く輝いた気がした。もしかした、彼女は・・・聖魔教会の関係者なのかもしれない。
「これで、依頼は完了ですね」
「ありがとうございます。ソールさん。これで、王都の者も、あのパーティーのCランクに対して、文句を言うことは、できなくなります。ディーバ様もさぞお喜びでしょう」
「私もあの子には、少し関心があったので、丁度よかったわ」
「でも、よかったのですか?バッカスとゾーイの立場はかなり悪くなったのでは」
「問題ないわ。これで、あの2人をパーティーから、解消する理由もできたしね。それに、2人の利用価値も無くなったしね」
「そうですか。また何かあれば、ご協力お願いします」
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