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第33話 浄化の力
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あのイベントはローゼが入学して3か月が経過した日に起こった。シュバインはローゼをハーレム部へ入部させるために、いつも通りの第3王子というチート級の圧力を利用する。シュバインは王族主催のパーティーの招待状をローゼに送り付けて断ることのできない状況を作り出し、第4王子のマルスが邪魔をしないように、シュバインを溺愛する王妃を利用して、マルスをフォルモーント城へ帰還させて万全の体制を整える。
ローゼは渋々パーティーへ参加することになるが、この時頼もしい味方と一緒に行くこととなる。その味方とはイーリスである。シュバインの怪しげなパーティーに参加できるのは女性のみであり、ローゼのハーレムパーティーであるフラムが同行できない代わりにイーリスが同行した。
「リーリエ、作戦を立てるのは良いと思うが、何か秘策でもあるのか」
「秘策と言える案ではありませんが、予防策のような案を思いつきました」
私はローゼがシュバインに怪しげなパーティーへ招待された時のことを参考にして、とある案を思いつき兄たちに説明した。
「とても良い案だと思います」
真剣な眼差しでローゼが私の案に賛同してくれた。
「私も賛成です。もしもリーリエさんの予測が当たっていれば、今までのシュバインの悪行にも納得がいきます」
イーリスも賛同する。
「もちろん、俺も賛成だ。さすが我が妹だ」
兄は一番うれしそうな顔で私の案を褒めてくれた。こうして、私はとある案を用意して生徒会室へ向かった。
教室棟別館の前に着くと明らかに異様な雰囲気を感じる。この辺り一帯だけが異質の空気に汚染されているようにひしひしと伝わってきて緊張感が走る。
「嫌な空気だな。みんな慎重に行動しよう」
兄もすぐに異様な雰囲気を察知してみんなに声をかける。みんなも声を揃えて返事をした。
「私が先頭で入ります」
ローゼが先陣をきると宣言する。
「任せたぞ」
兄はローゼに先陣を託す。敵地に乗り込むなら先陣をきるのは騎士の兄が妥当であるが、これも私のとある案の一端をであった。ローゼは慎重に教室棟別館の扉を開く。すると、心地よい香りが鼻を刺激する。やはり私の思った通りのイベントが発生した。この香りの正体は魅惑の香である。心地よい甘い香りで脳を混乱させて精神異常をきたす魔法具だ。教室棟別館の1階を魅惑の香で充満させるには、1個や2個では無理である。かなりの数の魅惑の香を用意する必要があるが、それを可能にできるのはシュバインが第3王子という無双の肩書の恩恵である。
「リーリエの言った通りの展開だな」
兄は自慢げに言う。
「さすがリーリエさんです」
ローゼは羨望の眼差しで私を見る。
「私が見込んだだけのことはありますね」
3人は私を褒めてくれるが、これは私が考えたのではなくて、ゲームの知識を利用しただけである。ゲームでは、ローゼとイーリスが2人で怪しげなパーティーへ参加するために教室棟別館へ来ると、1階フロアーでは異様な光景が待ち受けていたのである。ローゼ以外にも強制的に招待された女生徒たちが、まるでゾンビのように歪な顔をして、フロアー内を徘徊しているのである。女生徒たちは魅惑の香を吸い込んだことにより自我を失い夢遊病者のようになったのだ。幸いにもローゼとイーリスはデバフ・バフ効果を無効化する特殊スキルが備わっているので、魅惑の香の効果はなく、シュバインの目論見は簡単に破られるのである。
私はゲームの知識を利用してデバフ対策をした。ローゼとイーリスはスキルがあるので問題はないが、私と兄はスキルがないので魅惑の香の餌食になる。そこで、ローゼに光魔法で聖なる結界を張ってもらいデバフ効果を無効にしてもらい、無敵のデバフ耐性を持つローゼに先陣をきってもらい状況確認をお願いした。
「ローゼ、光魔法で魅惑の香を浄化してもらえないかしら」
建物の中へ入るにつれて魅惑の香の濃度が高くなり、視界は薄気味悪い紫色の靄で覆われている。ローゼとイーリスは視界を確保できるが、私と兄は10㎝先も確認できないくらいに視野が無くなっていた。
「わかりました」
ローゼは両手を組んで祈りを捧げる。
「浄化の神ライニグング様、私にお力をお貸しください。原初の神カオス様が生命の糧としてお与えくださった清きエネルギーを、愚者の蛮行により汚れたエネルギーへと変貌してしまいました。身勝手なお願いになりますが、清きエネルギーへと戻してください」
ローゼが浄化の神ライニグングに願いを捧げると、ローゼの体から眩い光が溢れ出て、薄気味悪い紫色の靄を消し去ってくれた。
「ローゼ、ありがとう」
「これも、イーリスさんの指導のおかげです」
イーリスが兼部してくれたことは効果絶大であった。ゲームでは、第1魔法研究部へ入部してイーリスとフラムの指導を経て聖女として成長する。だが、リアルではローゼは料理研究部に入部することとなる。しかし、イーリスが兼部を申し入れたことにより、ローゼはイーリスから光魔法を学ぶことができた。ここでもゲームとは過程は違うが結果は似たような道を辿ることとなった。
ローゼは渋々パーティーへ参加することになるが、この時頼もしい味方と一緒に行くこととなる。その味方とはイーリスである。シュバインの怪しげなパーティーに参加できるのは女性のみであり、ローゼのハーレムパーティーであるフラムが同行できない代わりにイーリスが同行した。
「リーリエ、作戦を立てるのは良いと思うが、何か秘策でもあるのか」
「秘策と言える案ではありませんが、予防策のような案を思いつきました」
私はローゼがシュバインに怪しげなパーティーへ招待された時のことを参考にして、とある案を思いつき兄たちに説明した。
「とても良い案だと思います」
真剣な眼差しでローゼが私の案に賛同してくれた。
「私も賛成です。もしもリーリエさんの予測が当たっていれば、今までのシュバインの悪行にも納得がいきます」
イーリスも賛同する。
「もちろん、俺も賛成だ。さすが我が妹だ」
兄は一番うれしそうな顔で私の案を褒めてくれた。こうして、私はとある案を用意して生徒会室へ向かった。
教室棟別館の前に着くと明らかに異様な雰囲気を感じる。この辺り一帯だけが異質の空気に汚染されているようにひしひしと伝わってきて緊張感が走る。
「嫌な空気だな。みんな慎重に行動しよう」
兄もすぐに異様な雰囲気を察知してみんなに声をかける。みんなも声を揃えて返事をした。
「私が先頭で入ります」
ローゼが先陣をきると宣言する。
「任せたぞ」
兄はローゼに先陣を託す。敵地に乗り込むなら先陣をきるのは騎士の兄が妥当であるが、これも私のとある案の一端をであった。ローゼは慎重に教室棟別館の扉を開く。すると、心地よい香りが鼻を刺激する。やはり私の思った通りのイベントが発生した。この香りの正体は魅惑の香である。心地よい甘い香りで脳を混乱させて精神異常をきたす魔法具だ。教室棟別館の1階を魅惑の香で充満させるには、1個や2個では無理である。かなりの数の魅惑の香を用意する必要があるが、それを可能にできるのはシュバインが第3王子という無双の肩書の恩恵である。
「リーリエの言った通りの展開だな」
兄は自慢げに言う。
「さすがリーリエさんです」
ローゼは羨望の眼差しで私を見る。
「私が見込んだだけのことはありますね」
3人は私を褒めてくれるが、これは私が考えたのではなくて、ゲームの知識を利用しただけである。ゲームでは、ローゼとイーリスが2人で怪しげなパーティーへ参加するために教室棟別館へ来ると、1階フロアーでは異様な光景が待ち受けていたのである。ローゼ以外にも強制的に招待された女生徒たちが、まるでゾンビのように歪な顔をして、フロアー内を徘徊しているのである。女生徒たちは魅惑の香を吸い込んだことにより自我を失い夢遊病者のようになったのだ。幸いにもローゼとイーリスはデバフ・バフ効果を無効化する特殊スキルが備わっているので、魅惑の香の効果はなく、シュバインの目論見は簡単に破られるのである。
私はゲームの知識を利用してデバフ対策をした。ローゼとイーリスはスキルがあるので問題はないが、私と兄はスキルがないので魅惑の香の餌食になる。そこで、ローゼに光魔法で聖なる結界を張ってもらいデバフ効果を無効にしてもらい、無敵のデバフ耐性を持つローゼに先陣をきってもらい状況確認をお願いした。
「ローゼ、光魔法で魅惑の香を浄化してもらえないかしら」
建物の中へ入るにつれて魅惑の香の濃度が高くなり、視界は薄気味悪い紫色の靄で覆われている。ローゼとイーリスは視界を確保できるが、私と兄は10㎝先も確認できないくらいに視野が無くなっていた。
「わかりました」
ローゼは両手を組んで祈りを捧げる。
「浄化の神ライニグング様、私にお力をお貸しください。原初の神カオス様が生命の糧としてお与えくださった清きエネルギーを、愚者の蛮行により汚れたエネルギーへと変貌してしまいました。身勝手なお願いになりますが、清きエネルギーへと戻してください」
ローゼが浄化の神ライニグングに願いを捧げると、ローゼの体から眩い光が溢れ出て、薄気味悪い紫色の靄を消し去ってくれた。
「ローゼ、ありがとう」
「これも、イーリスさんの指導のおかげです」
イーリスが兼部してくれたことは効果絶大であった。ゲームでは、第1魔法研究部へ入部してイーリスとフラムの指導を経て聖女として成長する。だが、リアルではローゼは料理研究部に入部することとなる。しかし、イーリスが兼部を申し入れたことにより、ローゼはイーリスから光魔法を学ぶことができた。ここでもゲームとは過程は違うが結果は似たような道を辿ることとなった。
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