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2人で射撃練習

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 ギルドを出た後、私はサミュエル達を尾行して、明日の朝8時にサミュエルの屋敷に集合してから魔獣の世界に行くという情報を入手した。


 『魔獣の世界に行く日程が決まったわ。やっと魔獣の世界にいけるぞぉ~!』


 私は初めての魔獣の世界に行ける喜びと、やっと美味しいお肉が食べられるかもしれない期待に胸を躍らせた。


 『そうだわ!射撃の練習をしなくちゃ』


 私は確実に美味しいお肉を食べる為に魔銃の練習をすることにした。


 「だいぶ意識はできるようになったと思う。しかし、エイムがブレてしまう・・・いや、これでいいのだ。大事なのは俺が魔獣を倒すのではなく、みんなで魔獣を倒すことだ」


 私が練習場に到着するとオレリアンが射撃の練習をしていた。


 『オレリアン君も気合が入っているね』


 夢中に射撃の練習をしていたオレリアンの体は汗でびっしょり濡れていた。


 『私も頑張らないとね』


 私は空いている射撃スペースに移動してエタンセルを構える。的のボタンを押すと動き出すのだが、姿を消している私がボタンを押すわけにはいかないので、ボタンを押さずに練習を始めた。

 まずはクラブステップの練習である。姿を消すことが出来る私が射撃術を練習する意味がないと思うかもしれないが、どのような状況下で魔銃を発射する機会が訪れるかもしれないので、棒立ちでの射撃練習はしないと決めていた。

 今日は孤児院の倉庫に眠っていた薄汚いクロスアーマーを洗濯して装備している。

 ※クロスアーマーとは綿を編み込んだ防護服である。安価で機動性に優れているが防具としての耐久値はかなり低い。

 ルージュを担当する者は、初めはレザーアーマーを使用する者が多い。クロスアーマーよりかは値段は高いが、魔獣の世界に行くには最低でもレザーアーマーが必須と言われている。お金がある者はチェインメイルを選ぶことになる。

 ※レザーアーマー 皮をなめしワックスなどで固めた革製の鎧。魔獣の皮を使用しているレザーアーマーは、動物の皮を使用したレザーアーマーより耐久値が高い。また動物、魔獣の種類によっても耐久値は変わる。

 ※チェインメイル 金属製の輪を連結した防具。金属の種類によって耐久値が変わる。高価なので初級冒険者には手が届かない代物である。


 『そんなに違和感を感じる重さじゃないわ。これなら問題ないわ』


 私は左右に移動しながら発射時にしっかりとエタンセルを握りしめ、アイアンサイトと的の頭部一直線になった瞬間にトリガーを引く。


 『きちんとエイムがあっているわ。次は後衛の射線を意識しての練習よ』


 私はソロで魔獣の世界に挑戦することになる予定だが、もしものために、後衛の射線を意識した練習をする。


 『ダメだわ。エイムを合わせるので精一杯だわ』

 
 後衛の射線を意識して射撃するのは非常に難しい。


 『やっぱりエイムは二の次にして、後衛の射線を通す練習に集中しなくちゃね』


 オレリアンもエイムを合わせるよりも後衛の射線を優先した練習をしていたので、私もマネすることにした。

 私は姿勢を半身にした。半身にするだけでも射線は通りやすくなる。片手撃ちの私には半身撃ちにしても片手でしっかりと魔銃を固定する事ができるので問題はないが、両手持ちだと正面立ちの方が固定しやすいので半身撃ちは難しくなる。レアは両手持ちかつ半身撃ちだったのでかなり練習をしたに違いない。

 
 「腕撃ちになってしまっている・・・きちんと腰撃ちをしないと」


 オレリアンがぼそりと呟いた。

 
 ※魔銃の撃ち方は基本腰撃ちである。腰撃ちとは腕を動かしてエイムを合わせるのではなく、構えは固定したまま腰や姿勢を動かしてエイムを合わせる技術である。腕を動かした方が素早く魔銃を動かすことが出来るが、アイアンサイト、敵、自分の視線を一直線に調整するのが難しい。しかし、腰撃ちは、最初の構えた姿勢でアイアンサイトと自分の視線が一直線になっているので、腰や姿勢を微調整するだけでエイムが合うので命中率が格段に上がる。


 『アドバイスありがとう。オレリアン君』


 オレリアンの独り言を、自分へのアドバイスだと私はとらえてしまう。しかし、間違ってはいないのであった。半身撃ちにすると腰撃ち精度が落ちてしまい気付かないうちに腕撃ちになってしまうのである。

 私はオレリアンのアドバイス通りに腰撃ちを意識して射撃練習をがんばった。


 「もう日が暮れたみたいだな。いくら練習しても不安が消える事はない。でも、やれるだけの事はやった。明日はみんなの足を引っ張らないようにするぞ」


 オレリアンは何度か休憩を入れつつ、日が暮れるまで射撃の練習をした。もちろん、私も同じである。射撃術を身に着けるには何度も練習して、射撃術を体に染み込ませることである。意識するのではなく、無意識に体が自然とエイムを合わせるようになるまで練習し続けることが大事だ。そして、数年かけて自分に合った射撃術を体に染み込ませる事が出来た者が、射撃の頂に登る権利を得る事ができる。

 私は天高くそびえ立つ射撃の頂を目指して、オレリアンが帰った後も練習を続けた。
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