上 下
84 / 100

過去との決別

しおりを挟む
 「おい!命を絶っているとはどういうことだ。みんな第二の人生を謳歌していないのか?」
 「転移者には第二の人生を謳歌してもらう予定だったにゃん。しかし、この世界の神によってことごとく妨害されているにゃん」

 「それが転移者の自殺とどのように繋がるのだ」
 「神によって選ばれた人間は、嫌悪ポイントを貯めることによって神から祝福を受ける事ができるにゃん。しかし、好感度ポイントと違ってこの世界の人間からは嫌悪ポイントを得る事が出来ないにゃん。嫌悪ポイントを得る事が出来るのはこの世界の人間でない転移者のみに限られるにゃん」

 「それで転移者がヘイトの的になっているのか・・・でも、どうやって転移者だと知る事が出来るのだ?」
 「外見で転移者を特定するのは無理にゃん。だから、有名人や著名人にヘイト攻撃を仕掛けるにゃん。もし、別の世界でやり直しができるとするにゃん。もし、能力を上げる事が出来るとするとどうするにゃん?」
 
 「俺ならイケメンになりたいと思うし、実際にイケメンになった」
 「そういうことにゃん。昴にゃんと違って他の転生者は、特定の能力しかレベルを上げる事が出来ないにゃん。だから他の転移者は特定の能力に極ぶりするから一芸に秀でた人物になるにゃん。すなわち、有名人や著名人になる確率が高いにゃん」
 
 「それで、有名人や著名人がヘイトの的になるのだな」
 「そうにゃん。それに一般人を狙うよりも有名人や著名人を狙う方が簡単にゃん」

 最近の有名人や著名人は、ほとんどの人がSNSで世間にアピールをしているので、ヘイトをするには格好の的である。それに、たくさんの人が有名人や著名人にヘイトをぶつけているので、目立つことなくヘイトを書き込めるので都合も良いのであった。


 「対象者から嫌悪ポイントを得る事が出来るとわかったら、その人物が転移者と特定できるにゃん。特定されたら最後、ヘイト攻撃を悪化させ絞れるだけ嫌悪ポイントを搾り取るにゃん。そして、転移者はヘイトに苦しめられ最後には命を絶ってしまうにゃん」
 「そんな・・・ひどい」

 【不屈の心(銅)】のスキルを持っている俺でさえ、ヘイトコメントにさらされ続ければ心が折れてしまう。もし、俺が【不屈の心(銅)】のスキルを持っていなければ、俺はそのうち命を絶っていたかもしれない。それほどヘイトを受け続ける事は辛いのである。

 「おそらくにゃん、口舌バトルで昴にゃんは転移者であることがバレてしまった可能性があるにゃん」
 「それならなおさらモデルなんか辞めて静かに過ごした方が良いだろ」

 俺は転移者だと特定された可能性は高い。だからこそ、Yチューブのコメント欄はヘイトで埋め尽くされたのだろう。このままモデルを続けていれば最悪の事態になってしまう恐れがある。俺はすぐにでもモデルを辞めて、目立たずにひっそりと暮らしたいと思った。

 「昴にゃん、また現実世界から逃げるにゃん?このまま姿を消せば昴にゃんは逃げ切れるかもしれないにゃん。でも、アイツらは次のターゲットを探すにゃん。それに、ターゲットを見つけるために関係もない有名人や著名人がヘイトの犠牲になるにゃん。昴にゃんはこの状況を見て見ないふりをするのにゃん?」
 「・・・」

 俺はすぐに言い返す事が出来なかった。俺が逃げる事によって他に犠牲者が出る事になる。しかし、俺が命をかけてまでも次の犠牲者を出さない為に戦う必要があるのか?悪いのは俺じゃない。嫌悪ポイントを得るためにヘイトを浴びせ続ける奴らが悪い。なのに、黒猫の話し方だと俺が悪いように聞こえてしまう。俺に戦う勇気があれば、長年引きこもりなどしていない。俺に戦う力があれば長年引きこもりなどしていない。俺に戦う理由があれば長年引きこもりなどしていない。

 「俺にしかできないのか?」

 俺は絞り出すように声を出した。俺は2か月という短い時間だが、その2か月間で俺は生まれ変わっていた。力がないのに御手洗達に逆らって自分の気持ちをぶつけた。痛いのを我慢して木原にボコボコに殴られた。昔の俺ならそんなことは出来なかった。キャンプ場で木原に襲われた時も、自分から逃げずに自分に出来る事をやり遂げた。その結果、羅生天の力を借りて木原を撃退することが出来た。俺は2か月前の俺とは違う。スキルや能力のレベルを上げて、自分自身に自信が持てるようになり、内面的に成長した事が一番大きかった。

 「昴にゃんしか出来ないにゃん」
 「わかった。協力する」

 俺は決意した。俺が逃げる事によってあらたな犠牲者を出したくない気持ちも大きいが、俺がこの世界に来て、俺にしか出来ない事があるのならば、それは俺がすべき使命だと。恩恵ばかり受けて逃げるわけにはいかない。



 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

僕と精霊〜The last magic〜

一般人
ファンタジー
 ジャン・バーン(17)と相棒の精霊カーバンクルのパンプ。2人の最後の戦いが今始まろうとしている。

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

処理中です...