33 / 100
学生生活の始まり
しおりを挟む
「まだ姿を見せないわね」
「うんうん」
日車 鼓(ひぐるま つづみ)と銀 笑(しろがね えみ)は、いつもより一本早めの時刻から松井山手駅に着て、俺が姿を見せるのを張り込みしていた。
「昨日と同じ時刻の電車は行ってしまったわ」
「うんうん」
「次の電車にも現れなかったら諦める」
「ノーノー」
笑(えみ)さんは首を横に振る。
「後1本遅らせても遅刻にならないわ」
「うんうん」
「ギリギリまで粘るわね」
「うんうん」
「あ!そうだわ。先に学校へ行くようにきーちゃんに連絡しとくね」
「うんうん」
次の時刻の電車が到着するが俺が姿を現すことはない。そして、その次の電車が到着した。
「笑、昴君はまだ来ないみたいよ」
「うんうん」
「寝坊でもしたのかしら?」
「うんうん」
「これに乗らないと遅刻するわ」
「うんうん」
「笑、乗るわよ」
「ノーノー」
笑さんは首を横に振る。
「何を言っているのよ!すぐに乗るわよ」
「ノーノー」
笑さんは首を横に振る。
「私は乗るわよ」
鼓さんは笑さんを置いて電車に乗車しようとする。
「ノーノー」
しかし、笑さんが堤さんのスカートを掴んで離さない。
「キャー――、何をするのよ笑!」
鼓さんの制服のスカートは膝上10㎝と丈が短い。笑さんがスカートの裾をつかんだので、スカートがめくれ上がりそうになる。
「昴君が遅刻するなら私達も遅刻する。一緒に遅刻をして苦難を共にすれば、そこから友情が生まれ、その先には輝かしい未来が待っている。3人で遅刻をした思い出は未来永劫忘れることなく、伝説の1ページとして心に刻まれること間違いなし」
「笑、何を言っているのよ!昴君が先の電車に乗っていたらどうするの」
「ガ―――ン」
「ガー―ーンって言っている場合じゃないわよ」
2人が言い争っている間に電車の扉は閉まり走り出してしまう。
「笑、電車が行ってしまったじゃない」
「うんうん」
「あぁ~遅刻だわぁー」
「どんまい!」
「あなたのせいでしょ!」
「ノーノー」
結局二人は次の電車で学校へ向かったが遅刻した。ちなみに笑さんはきーちゃんに代返をしてもらい難を逃れたらしい。
俺が学校に到着すると時刻は7時50分であった。30分早めに家を出てのんびりと歩いて通学したが、かなり時間に余裕が出来てしまった。学校は8時30分からホームルームが始まるので、昔の俺は8時15分に教室に着くようにしていた。こんな早い時間だと誰も教室にいない。俺より先に学校へ向かった茜雲さんの姿もなかった。
俺の席は窓際の一番後ろの席になる。窓から見える景色はとても眺めが良いとは言えない。東校舎は3階建てで1階から1年生となり階が上がるに連れて学年も上がる。3階から眺める景色はとても眺めが良かった。東校舎からはグランドが一望できるし、学校へ登校して来る学生の姿も見渡せるので優越感に浸る事が出来た。高い所から人を見ると、人がとても小さく見えて自分が偉くなったような気分になり気持ちが良い。俺は高校3年間誰とも会話もせずに過ごしてきた。いつも窓から見える景色を見て、人を見下した気分になり高揚感を得るのが俺の楽しみの一つでもあった。
しかし、1年生の時は窓から見える景色は最悪だ。外には木が植えられて教室の中があまり見え難くしてあるが、通り過ぎる人を見る事は出来る。3階と違って人を見下ろす事が出来ずに同じ視線の位置にあるので高揚感はない。逆に外から教室の中を見られると威圧感があり委縮してしまう。
窓から外を見るとグランドでは、朝練をしているサッカー部がミニゲームをして楽しそうに声を上げている。俺は超が付くほどの運動音痴なのでスポーツをするのも見るのも好きではなかった。早く着き過ぎた俺は、外を見るのを辞めてスマホを開いてネットニュースを眺める。
8時15分を過ぎると続々とクラスメートが登校して来る。
「六道!おはよう」
俺に挨拶をしたのは上園である。体がデカくて身長もあるのでクラスではひと際目立つ存在である。
「おはよう」
上園は廊下側の前から2番目の席だったのだが、体がデカくて後ろの席の人が前が見えないという理由で廊下側の一番後ろの席に移動させられたらしい。本人は前の席が嫌だったので喜んでいたようだ。
「六道君、おはよう」
上園の後ろにいた塩野が俺に挨拶をする。
「おはよう」
俺は昨日班分けをした人以外とは喋る機会もなかったので会話をしていないし、顔も良く見ていない。34年前の1年5組に居たクラスメートの中に昨日バーベキューで同じ班になった人と同一人物はいなかった。担任である雪月花先生以外は34年前と同一人物がいるのか確かめる必要はない。なぜならば。俺は誰とも関わらずに1人で平穏な青春を送った。簡単に言えば思い出は何もないので確かめるのが難しい。それは確かめるほどクラスメートの顔も名前も覚えていないということである。
俺は二人に挨拶をした後、スマホの画面に目線を移す。世間の情勢は俺が死んだ時と何も変わっていない。浮気をした芸能人はまだ謹慎期間でテレビに出ていないしネットでは罵詈雑言の嵐に立たされている。スマホのゲームはそのままで俺が課金したアバターは顕在だ。34年前と同じ事もあれば、そのまま引き継がれた事もある。過去の経験や知識はあてにならないと判断した方が賢明である。
今日から始まる高校生活、俺は不安で緊張をしているが、イケメン効果によりどのような高校生活が待っているか楽しみでもあった。
「うんうん」
日車 鼓(ひぐるま つづみ)と銀 笑(しろがね えみ)は、いつもより一本早めの時刻から松井山手駅に着て、俺が姿を見せるのを張り込みしていた。
「昨日と同じ時刻の電車は行ってしまったわ」
「うんうん」
「次の電車にも現れなかったら諦める」
「ノーノー」
笑(えみ)さんは首を横に振る。
「後1本遅らせても遅刻にならないわ」
「うんうん」
「ギリギリまで粘るわね」
「うんうん」
「あ!そうだわ。先に学校へ行くようにきーちゃんに連絡しとくね」
「うんうん」
次の時刻の電車が到着するが俺が姿を現すことはない。そして、その次の電車が到着した。
「笑、昴君はまだ来ないみたいよ」
「うんうん」
「寝坊でもしたのかしら?」
「うんうん」
「これに乗らないと遅刻するわ」
「うんうん」
「笑、乗るわよ」
「ノーノー」
笑さんは首を横に振る。
「何を言っているのよ!すぐに乗るわよ」
「ノーノー」
笑さんは首を横に振る。
「私は乗るわよ」
鼓さんは笑さんを置いて電車に乗車しようとする。
「ノーノー」
しかし、笑さんが堤さんのスカートを掴んで離さない。
「キャー――、何をするのよ笑!」
鼓さんの制服のスカートは膝上10㎝と丈が短い。笑さんがスカートの裾をつかんだので、スカートがめくれ上がりそうになる。
「昴君が遅刻するなら私達も遅刻する。一緒に遅刻をして苦難を共にすれば、そこから友情が生まれ、その先には輝かしい未来が待っている。3人で遅刻をした思い出は未来永劫忘れることなく、伝説の1ページとして心に刻まれること間違いなし」
「笑、何を言っているのよ!昴君が先の電車に乗っていたらどうするの」
「ガ―――ン」
「ガー―ーンって言っている場合じゃないわよ」
2人が言い争っている間に電車の扉は閉まり走り出してしまう。
「笑、電車が行ってしまったじゃない」
「うんうん」
「あぁ~遅刻だわぁー」
「どんまい!」
「あなたのせいでしょ!」
「ノーノー」
結局二人は次の電車で学校へ向かったが遅刻した。ちなみに笑さんはきーちゃんに代返をしてもらい難を逃れたらしい。
俺が学校に到着すると時刻は7時50分であった。30分早めに家を出てのんびりと歩いて通学したが、かなり時間に余裕が出来てしまった。学校は8時30分からホームルームが始まるので、昔の俺は8時15分に教室に着くようにしていた。こんな早い時間だと誰も教室にいない。俺より先に学校へ向かった茜雲さんの姿もなかった。
俺の席は窓際の一番後ろの席になる。窓から見える景色はとても眺めが良いとは言えない。東校舎は3階建てで1階から1年生となり階が上がるに連れて学年も上がる。3階から眺める景色はとても眺めが良かった。東校舎からはグランドが一望できるし、学校へ登校して来る学生の姿も見渡せるので優越感に浸る事が出来た。高い所から人を見ると、人がとても小さく見えて自分が偉くなったような気分になり気持ちが良い。俺は高校3年間誰とも会話もせずに過ごしてきた。いつも窓から見える景色を見て、人を見下した気分になり高揚感を得るのが俺の楽しみの一つでもあった。
しかし、1年生の時は窓から見える景色は最悪だ。外には木が植えられて教室の中があまり見え難くしてあるが、通り過ぎる人を見る事は出来る。3階と違って人を見下ろす事が出来ずに同じ視線の位置にあるので高揚感はない。逆に外から教室の中を見られると威圧感があり委縮してしまう。
窓から外を見るとグランドでは、朝練をしているサッカー部がミニゲームをして楽しそうに声を上げている。俺は超が付くほどの運動音痴なのでスポーツをするのも見るのも好きではなかった。早く着き過ぎた俺は、外を見るのを辞めてスマホを開いてネットニュースを眺める。
8時15分を過ぎると続々とクラスメートが登校して来る。
「六道!おはよう」
俺に挨拶をしたのは上園である。体がデカくて身長もあるのでクラスではひと際目立つ存在である。
「おはよう」
上園は廊下側の前から2番目の席だったのだが、体がデカくて後ろの席の人が前が見えないという理由で廊下側の一番後ろの席に移動させられたらしい。本人は前の席が嫌だったので喜んでいたようだ。
「六道君、おはよう」
上園の後ろにいた塩野が俺に挨拶をする。
「おはよう」
俺は昨日班分けをした人以外とは喋る機会もなかったので会話をしていないし、顔も良く見ていない。34年前の1年5組に居たクラスメートの中に昨日バーベキューで同じ班になった人と同一人物はいなかった。担任である雪月花先生以外は34年前と同一人物がいるのか確かめる必要はない。なぜならば。俺は誰とも関わらずに1人で平穏な青春を送った。簡単に言えば思い出は何もないので確かめるのが難しい。それは確かめるほどクラスメートの顔も名前も覚えていないということである。
俺は二人に挨拶をした後、スマホの画面に目線を移す。世間の情勢は俺が死んだ時と何も変わっていない。浮気をした芸能人はまだ謹慎期間でテレビに出ていないしネットでは罵詈雑言の嵐に立たされている。スマホのゲームはそのままで俺が課金したアバターは顕在だ。34年前と同じ事もあれば、そのまま引き継がれた事もある。過去の経験や知識はあてにならないと判断した方が賢明である。
今日から始まる高校生活、俺は不安で緊張をしているが、イケメン効果によりどのような高校生活が待っているか楽しみでもあった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。
問い・その極悪令嬢は本当に有罪だったのか。
風和ふわ
ファンタジー
三日前、とある女子生徒が通称「極悪令嬢」のアース・クリスタに毒殺されようとした。
噂によると、極悪令嬢アースはその女生徒の美貌と才能を妬んで毒殺を企んだらしい。
そこで、極悪令嬢を退学させるか否か、生徒会で決定することになった。
生徒会のほぼ全員が極悪令嬢の有罪を疑わなかった。しかし──
「ちょっといいかな。これらの証拠にはどれも矛盾があるように見えるんだけど」
一人だけ。生徒会長のウラヌスだけが、そう主張した。
そこで生徒会は改めて証拠を見直し、今回の毒殺事件についてウラヌスを中心として話し合っていく──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる