21 / 100
真相
しおりを挟む
「昴、まだ寝ているの?今日はゴミ拾いに行かないの?」
一階から母親の声が聞こえてくる。俺は既に起きてはいるがゴミ拾いに行くか躊躇しているのである。結局、三日月さんからココアの返信はこなかった。メールの内容からして返信がなくても問題はないと思うのだが、一言でもいいから返信が欲しかった。俺は返信が来ないことにより、三日月さんに嫌われたのではないかという不安が加速して、三日月さんと会うかもしれない松井山手駅でのゴミ拾いに躊躇しているのであった。
「ダメだ!こんなことで落ち込んでいたら、前の人生と同じじゃないか。俺は二度目の人生こそ頑張ると決めたんだ」
俺は両手で顔を叩いて自分自身にカツを入れる。ココアの返信はなかったが
メールはすぐに見てくれている。もし、嫌われていたらメールも見ないで放置しているに違いない・・・と俺は自分の言い聞かせて布団から出る事にした。
「お母さん、今日もゴミ拾いに行ってくるよ!入学式までは頑張るつもりだよ」
「それがいいわ。何事も続ける事が大事だからね。短い期間でも自分がやろうとしたことを成し遂げた達成感は昴の力になるはずよ。今日もゴミ拾いをがんばってね」
「うん。がんばるよ」
母親の言う通りである。どんなことをするにでも嫌な事はついて回るものである。嫌な事があるからといってすぐに逃げ出すようでは何も得る事は出来ない。俺は玄関の扉を開けて松井山手駅に向かった
松井山手駅に着くといつものようにゴミ拾いを始める。三日月さんが姿を見せるのは毎回9時30分頃である。もうすぐ、時計の針がその時刻を告げようとしていた。
「おはよう!昴君」
背後から心地よい優しい声が聞こえた。
「お・・・お・・・おはようございます」
俺はダンサーのように華麗にくるっと振り返り、地面に頭が付くほどのお辞儀をし大声で挨拶をした。
「げ・・・んきだね・・・」
俺が頭をあげると見知らぬ女性が目を見開いて驚いていた。
「だ・・・れ・・・でしょうか?」
俺は顔を真っ赤にして再び地面に顔が付くほど頭を下げて目線を外す。
この女性は誰なんだ?挨拶は俺じゃなく違う人にしていたのか?俺は脳内であれやこれやと考えるが答えは出てこない。
「いきなり挨拶をしてごめんね。私は南(みなみ)といいます。三日月の同僚であり友人よ。昨日はシュークリームありがとうね」
「・・・」
俺の思考回路は停止しているので、すぐに状況を飲み込むことは出来ずに、頭を下げたまま固まっている。
「昴君!昴君!」
「・・・」
南さんは何度も俺の名を呼ぶが、俺は顔を上げる事はできない。俺の思考は動き出しているが、恥ずかしくて顔も声も上げる事が出来ない。
「光が言ってたとおりの恥ずかしがり屋さんなんだね。あ!光は三日月の名前よ。光から声をかけちゃダメと言われてだけど、急に光が店が変わったから、もしかして、昴君に言ってないかと思って声をかけたのよ」
「え!・・・三日月さん・・・店を・・・やめたの・・・・・・ですか」
三日月さんが店を変えた?俺と会いたくないから美容院を辞めてしまったのか?俺の心が疑心暗鬼に支配される。
「違うよ。別の店舗に移動しただけよ」
「僕が・・・僕が・・・迷惑を・・・かけたのか・・・な」
「全然違うよ。光は昴君のがんばる姿を見て、一流のスタイリストに戻る為に京都駅の店舗に移ったのよ」
「京都・・・駅の・・・店舗」
「やっぱり光は何も言ってなかったのね・・・。あの子は一つの事に夢中になったら他が見えなくなるの。だから昴君を嫌いになったわけじゃないのよ。私が電話をしても取ってくれないのよねぇ~。そのうち連絡がくると思うから、昴君が心配していると言っておくわ」
「は・・・い」
「さっきの元気のいい返事はどこへいったの?光に比べたら私は美人じゃないから元気が出ないのかな?」
「そ・・・ん・・・な・・・ことはありません」
「冗談よ!ゴミ拾い頑張ってね」
「は・・・い」
三日月さんは、松井山手駅の店舗から京都駅の店舗に移動した。くわしい事情はわからないのだが、南さんの話しでは一流のスタイリストに戻る為らしい。昨日、三日月さんと話した内容の「もう一度スタイリストとしてやっていく勇気をもらった」という言葉に関連しているのであろう。あの時、三日月さんは「今度、話すわ」と言ってくれた。俺は三日月さんの言葉を信じて、話してくれるまで待つことにした。
一階から母親の声が聞こえてくる。俺は既に起きてはいるがゴミ拾いに行くか躊躇しているのである。結局、三日月さんからココアの返信はこなかった。メールの内容からして返信がなくても問題はないと思うのだが、一言でもいいから返信が欲しかった。俺は返信が来ないことにより、三日月さんに嫌われたのではないかという不安が加速して、三日月さんと会うかもしれない松井山手駅でのゴミ拾いに躊躇しているのであった。
「ダメだ!こんなことで落ち込んでいたら、前の人生と同じじゃないか。俺は二度目の人生こそ頑張ると決めたんだ」
俺は両手で顔を叩いて自分自身にカツを入れる。ココアの返信はなかったが
メールはすぐに見てくれている。もし、嫌われていたらメールも見ないで放置しているに違いない・・・と俺は自分の言い聞かせて布団から出る事にした。
「お母さん、今日もゴミ拾いに行ってくるよ!入学式までは頑張るつもりだよ」
「それがいいわ。何事も続ける事が大事だからね。短い期間でも自分がやろうとしたことを成し遂げた達成感は昴の力になるはずよ。今日もゴミ拾いをがんばってね」
「うん。がんばるよ」
母親の言う通りである。どんなことをするにでも嫌な事はついて回るものである。嫌な事があるからといってすぐに逃げ出すようでは何も得る事は出来ない。俺は玄関の扉を開けて松井山手駅に向かった
松井山手駅に着くといつものようにゴミ拾いを始める。三日月さんが姿を見せるのは毎回9時30分頃である。もうすぐ、時計の針がその時刻を告げようとしていた。
「おはよう!昴君」
背後から心地よい優しい声が聞こえた。
「お・・・お・・・おはようございます」
俺はダンサーのように華麗にくるっと振り返り、地面に頭が付くほどのお辞儀をし大声で挨拶をした。
「げ・・・んきだね・・・」
俺が頭をあげると見知らぬ女性が目を見開いて驚いていた。
「だ・・・れ・・・でしょうか?」
俺は顔を真っ赤にして再び地面に顔が付くほど頭を下げて目線を外す。
この女性は誰なんだ?挨拶は俺じゃなく違う人にしていたのか?俺は脳内であれやこれやと考えるが答えは出てこない。
「いきなり挨拶をしてごめんね。私は南(みなみ)といいます。三日月の同僚であり友人よ。昨日はシュークリームありがとうね」
「・・・」
俺の思考回路は停止しているので、すぐに状況を飲み込むことは出来ずに、頭を下げたまま固まっている。
「昴君!昴君!」
「・・・」
南さんは何度も俺の名を呼ぶが、俺は顔を上げる事はできない。俺の思考は動き出しているが、恥ずかしくて顔も声も上げる事が出来ない。
「光が言ってたとおりの恥ずかしがり屋さんなんだね。あ!光は三日月の名前よ。光から声をかけちゃダメと言われてだけど、急に光が店が変わったから、もしかして、昴君に言ってないかと思って声をかけたのよ」
「え!・・・三日月さん・・・店を・・・やめたの・・・・・・ですか」
三日月さんが店を変えた?俺と会いたくないから美容院を辞めてしまったのか?俺の心が疑心暗鬼に支配される。
「違うよ。別の店舗に移動しただけよ」
「僕が・・・僕が・・・迷惑を・・・かけたのか・・・な」
「全然違うよ。光は昴君のがんばる姿を見て、一流のスタイリストに戻る為に京都駅の店舗に移ったのよ」
「京都・・・駅の・・・店舗」
「やっぱり光は何も言ってなかったのね・・・。あの子は一つの事に夢中になったら他が見えなくなるの。だから昴君を嫌いになったわけじゃないのよ。私が電話をしても取ってくれないのよねぇ~。そのうち連絡がくると思うから、昴君が心配していると言っておくわ」
「は・・・い」
「さっきの元気のいい返事はどこへいったの?光に比べたら私は美人じゃないから元気が出ないのかな?」
「そ・・・ん・・・な・・・ことはありません」
「冗談よ!ゴミ拾い頑張ってね」
「は・・・い」
三日月さんは、松井山手駅の店舗から京都駅の店舗に移動した。くわしい事情はわからないのだが、南さんの話しでは一流のスタイリストに戻る為らしい。昨日、三日月さんと話した内容の「もう一度スタイリストとしてやっていく勇気をもらった」という言葉に関連しているのであろう。あの時、三日月さんは「今度、話すわ」と言ってくれた。俺は三日月さんの言葉を信じて、話してくれるまで待つことにした。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる