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一回目 (過去)

138.侯爵の情報と思惑

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「今聞いた話は俺たちの推測も含め目新しい話題はなかった。その内容で信用しろとか腹を割れと言われても頷けんな」

「⋯⋯うーん、想像以上に手強い。それか、余程の


 食堂が重苦しい空気に包まれた。誰も口を聞かず目も合わせない。



「仕方ない。僕は聞かれたことにも自分から話すことにも嘘も隠し立てもしない。あなた達は正当な理由があると判断した場合は話さなくていい。それでどう?」

「そこまでしても利があるって事か?」

「ある。僕はそう考えて待ってたんだ」


「⋯⋯わかった。その条件を飲もう」

 魔法契約が行われ魔法陣が消えるのを待っていたかのようにダフネル侯爵が話しはじめた。

「各地で討伐された魔獣だけでは足りなくて他国からも魔獣を輸入していたんだけど特定の魔石だけが一時期異常に高値で取引されてたのに気付いたんだ。
他の魔石に比べたら産出量は少ないけど利用価値も少ないのにね」

「闇の魔石ですか?」

「即答とは流石だね。知ってると思うけど闇の魔法はイメージが悪すぎる上に使い方が難しい。悪用するには高度な知識と技術が必要だし、とても役立つのに真面な運用方法を研究しようと考える人はあまりいない。
でも、一つとても簡単な活用法がある事に気付いたんだ」

「⋯⋯」

「ある一定量を超えて保管するだけで闇の魔法を発動できる」

「ダークジェイル⋯⋯闇を操り敵を捕まえる牢獄を作る魔法です」

「ウスベルの湖であなた達が見たものだ」

「何故知ってる? あれは見つけた後に粉々に砕いた。あの現場は誰も見ていないはずだぞ」

 グレイソンは魔法契約で縛られているし、ここにいるメンバーが話すはずはない。


「調べたら闇の魔石を買っていたのはアーバインの闇ギルドだった。で、それを指示していたのが先代のノールケルト子爵。鉱山が廃坑になって貧乏だったはずの子爵が割高の魔石を集めまくってたなんて胡散臭いだろ?
興味本位で色々調べてみたら魔石の値段が元に戻った後、子爵がウスベルに調査隊を送ってた。
で、ウスベルの湖に運ばれたのではないかと予想したんだ。闇の魔石を壊せたなら浄化できたってことだよね。良かった」


「その調査書をもらう事はできるか?」

「勿論。これを解決できるのはあなた達しかいないからね。ナザエル枢機卿とナスタリア神父にしか任せられないと思ってる。それとローザリア様⋯⋯僕の計算だと教会の精霊師では浄化しきれてないはずなんだ。だから、ローザリア様が浄化の力を持ってると考えてるんだけど答えなくていいよ、僕の勝手な想像だから」

「魔石を愛する僕としては同じことが起こらないようにしたいんだ。その為に情報を伝えておきたかった」

「ノールケルト子爵のバックに誰がいるか知ってるのか?」

「いくら考えてもわからないんだ。それだけの資金を持っている人とノールケルト子爵がどこで繋がったのか調べても出てこない」


 ウスベルの鉱山は一時期ごく少量のエメラルドを産出した事があった。品質は低レベルで量も少なく話題になる事はなかったが、ひとつだけ最高品質のエメラルドが見つかった。

 それを足がかりに王都での地位を得ようとしたノールケルト子爵が当時既に宝石狂いで有名だった王弟妃に秘密裏に献上した。

 この情報を知っているものはごく僅かで、ナザエル枢機卿やナスタリア神父でさえも教会に問い合わせて初めて知ったほど。


「命が惜しければ調べるのはやめろ。大切な領民や領地だけでは済まんぞ」

「やっぱりそれほどの権力者か⋯⋯王家絡みじゃないかとは睨んでるんだ。だからリリアーナ隊ではなくローザリア部隊に来てくれるように頼んだんだ」

「何故王家絡みだと思う?」

「勘⋯⋯僕の勘は結構当たるんだ。それに王家は横暴で胡散臭い奴ばかりだしね。
公には魔道具の輸入を制限している癖に内緒で買ってるし、貴族には目溢ししまくってるだろ? この間トーマック公爵家が手に入れた魔道具なんて最悪だよ。リリアーナ様に同行している支援部隊が王都に帰り着くまでに精霊師が何人使い物にならなくなるか、想像しただけで怖気が走る」



 黙って話を聞いていたローザリアがダフネル侯爵の言葉に驚いた。

「リリアーナは何をやったんですか?」

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