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一回目 (過去)
131.通りすがりのタルーゲン
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ジェイク達の暮らす村ベリントンを出た翌日、ローザリア達の一行は高い石壁に囲まれた町タルーゲンに来ていた。
「僻地にある町にしちゃ随分としっかりした守りだな」
「先先代の町長の代から作りはじめたそうです。この町の自慢のようで門には番兵も立って通行人を調べています」
調査に向かった聖騎士のひとり、アルビーが答えた。
皮の鎧を着た番兵は門の前に並ぶ商人達に一人ひとり質問し荷物の確認までしている。
「ありゃ時間がかかりそうだなあ、楽しみだぜ」
ふっと笑ったナザエル枢機卿が馬を進ませはじめた。
「止まれ! お前⋯⋯あなた方はどなたですか? タルーゲンにはどのようなご用件で、えっと⋯⋯いらっしゃったのですか?」
「我らは通りすがりの者。一夜を過ごす場所を探しておる故、町に広場があればお借りしたいと町長に伝えよ!」
ナザエル枢機卿の迫力と威厳に畏れをなした番兵の一人が『しょっ、少々お待ちを!』と町の中に走り込んでいった。
何も言わずその場に待機する一行で門に並んでいた人達は足止めを食らっている。
「あの⋯⋯後ろがつかえて⋯⋯なっ、なんでもありません!!」
勇気を振り絞った番兵はナザエル枢機卿のひと睨みで口をつぐんだ。
汗を垂らす番兵を引き連れて馬でやって来たのはスキンヘッドで筋肉の塊のような大男。
「大勢で押しかけ⋯⋯えっ? その制服は教会の⋯⋯もしや水の補給にこられた教会の方達か!? なんとありがたい。お前ら、何をしている! この方々を案内しろ!」
「はいぃ、こち、こちらへどうぞ⋯⋯ってか、どこへ案内すればいいんすか?」
「俺様の家に決まってるだろうが!」
頭で真っ赤になって番兵を怒鳴りつけた町長らしきスキンヘッドが番兵を殴りつけた。
「へいぃ!」
「全く役立たずな奴らで⋯⋯」
来た時の横柄な態度は鳴りを潜め、堂々とした態度の中に探るような計算高い様子が見て取れる。
「我等はこの大所帯、一夜の宿とする為テントを張れる広場があれば良いのだが」
「では、町の広場を開けさせましょう。祭りやなんかをしている時以外大して役に立っておりやせんから」
番兵が走る後ろをゆっくりと進んで行く一行に町中の人の目が集まった。
「あれだろ、水不足の町を回って水を出してる聖女様ってやつ」
「えっ? 町長がどーせ役に立たないハズレ聖女しか来ねえから、街には来させねえって言ってたアレか?」
「いや、雨を降らしたりとかすごいらしいぜ」
「でも、堰を増やしたのってハズレしか来ないからだろ?」
様々な噂話が耳に入って来るが、まるで聞こえてないかのように悠々と進む。町長は先回りをしたいのかその横を馬で早駆けしていった。
広場に着きいつもの作業がはじまった。馬の世話・テント張り・竃の設置、大量の食材を出して料理がはじまった。
唯一違うのは大きな樽の設置場所。いつもなら野営地の外れでその町の人々が汲みやすい場所に設置するが、今回はナザエル枢機卿の指示で野営地の中心に置かれた。
「おお、その辺りでいいぞ。もう一つ樽を並べてくれ」
巨大な鍋に放り込まれる大量の野菜や肉、香辛料を効かせた肉が焼けはじめた匂い。町の人たちが見守る中で大量の水が鍋と樽に注がれた。
「すげ~、アレが聖女の力か!?」
「ハズレじゃねえじゃん」
「精霊師ってのは樽くらいじゃ、へでもねえってことかよ」
「いつになったら分けてくれるんだ?」
料理ができ食事がはじまっても水の配給がない。町の人達が痺れを切らした頃にスキンヘッドが広場に走り込んできた。
「準備が終わられたようで何よりですな」
「この通り、問題なく食事の準備ができたようだ。通りすがりの我らに広場を貸してくれた事、礼を言う」
ナザエル枢機卿がエールの入ったカップを持ち座ったままで言葉を返した。
「通りすがりなどと水臭い。明日にはこの町に力をお貸しくださるのに広場くらいいくらでもお使いくだされ」
「明日の朝には出発する予定。もうお会いすることもないであろう」
「は? 水は? どこの町でも井戸を満たし雨を降らして来られたはず」
「確かに。どの町でも喜んでおられたが?」
「ここに来られたと言うことはこの町の番が来たと言うことのはず」
スキンヘッドの顔が段々と赤くなっていき、周りの人達は不安そうな顔でスキンヘッドを見つめた。
「ナスタリア神父、次の予定地はどこだ?」
不思議そうな顔をしたナザエル枢機卿がナスタリア神父を振り返った。
「僻地にある町にしちゃ随分としっかりした守りだな」
「先先代の町長の代から作りはじめたそうです。この町の自慢のようで門には番兵も立って通行人を調べています」
調査に向かった聖騎士のひとり、アルビーが答えた。
皮の鎧を着た番兵は門の前に並ぶ商人達に一人ひとり質問し荷物の確認までしている。
「ありゃ時間がかかりそうだなあ、楽しみだぜ」
ふっと笑ったナザエル枢機卿が馬を進ませはじめた。
「止まれ! お前⋯⋯あなた方はどなたですか? タルーゲンにはどのようなご用件で、えっと⋯⋯いらっしゃったのですか?」
「我らは通りすがりの者。一夜を過ごす場所を探しておる故、町に広場があればお借りしたいと町長に伝えよ!」
ナザエル枢機卿の迫力と威厳に畏れをなした番兵の一人が『しょっ、少々お待ちを!』と町の中に走り込んでいった。
何も言わずその場に待機する一行で門に並んでいた人達は足止めを食らっている。
「あの⋯⋯後ろがつかえて⋯⋯なっ、なんでもありません!!」
勇気を振り絞った番兵はナザエル枢機卿のひと睨みで口をつぐんだ。
汗を垂らす番兵を引き連れて馬でやって来たのはスキンヘッドで筋肉の塊のような大男。
「大勢で押しかけ⋯⋯えっ? その制服は教会の⋯⋯もしや水の補給にこられた教会の方達か!? なんとありがたい。お前ら、何をしている! この方々を案内しろ!」
「はいぃ、こち、こちらへどうぞ⋯⋯ってか、どこへ案内すればいいんすか?」
「俺様の家に決まってるだろうが!」
頭で真っ赤になって番兵を怒鳴りつけた町長らしきスキンヘッドが番兵を殴りつけた。
「へいぃ!」
「全く役立たずな奴らで⋯⋯」
来た時の横柄な態度は鳴りを潜め、堂々とした態度の中に探るような計算高い様子が見て取れる。
「我等はこの大所帯、一夜の宿とする為テントを張れる広場があれば良いのだが」
「では、町の広場を開けさせましょう。祭りやなんかをしている時以外大して役に立っておりやせんから」
番兵が走る後ろをゆっくりと進んで行く一行に町中の人の目が集まった。
「あれだろ、水不足の町を回って水を出してる聖女様ってやつ」
「えっ? 町長がどーせ役に立たないハズレ聖女しか来ねえから、街には来させねえって言ってたアレか?」
「いや、雨を降らしたりとかすごいらしいぜ」
「でも、堰を増やしたのってハズレしか来ないからだろ?」
様々な噂話が耳に入って来るが、まるで聞こえてないかのように悠々と進む。町長は先回りをしたいのかその横を馬で早駆けしていった。
広場に着きいつもの作業がはじまった。馬の世話・テント張り・竃の設置、大量の食材を出して料理がはじまった。
唯一違うのは大きな樽の設置場所。いつもなら野営地の外れでその町の人々が汲みやすい場所に設置するが、今回はナザエル枢機卿の指示で野営地の中心に置かれた。
「おお、その辺りでいいぞ。もう一つ樽を並べてくれ」
巨大な鍋に放り込まれる大量の野菜や肉、香辛料を効かせた肉が焼けはじめた匂い。町の人たちが見守る中で大量の水が鍋と樽に注がれた。
「すげ~、アレが聖女の力か!?」
「ハズレじゃねえじゃん」
「精霊師ってのは樽くらいじゃ、へでもねえってことかよ」
「いつになったら分けてくれるんだ?」
料理ができ食事がはじまっても水の配給がない。町の人達が痺れを切らした頃にスキンヘッドが広場に走り込んできた。
「準備が終わられたようで何よりですな」
「この通り、問題なく食事の準備ができたようだ。通りすがりの我らに広場を貸してくれた事、礼を言う」
ナザエル枢機卿がエールの入ったカップを持ち座ったままで言葉を返した。
「通りすがりなどと水臭い。明日にはこの町に力をお貸しくださるのに広場くらいいくらでもお使いくだされ」
「明日の朝には出発する予定。もうお会いすることもないであろう」
「は? 水は? どこの町でも井戸を満たし雨を降らして来られたはず」
「確かに。どの町でも喜んでおられたが?」
「ここに来られたと言うことはこの町の番が来たと言うことのはず」
スキンヘッドの顔が段々と赤くなっていき、周りの人達は不安そうな顔でスキンヘッドを見つめた。
「ナスタリア神父、次の予定地はどこだ?」
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