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一回目 (過去)

68.教会VS公爵家

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「いいえ、ナザエル枢機卿と私はローザリア様と行動させていただきます」

「ローザリアは僻地を回るのだから教会から別の者を付ければ良いではありませんか。お二方にはリリアーナの補助をお願いしますわ」

「お母様の仰る通りよ。ローザリアばかりお二人と一緒にいて狡いわ! 私とも仲良くして下さいませ」


「聞いたところによるとナザエル枢機卿は水の加護持ちだとか。ローザリアの代わりに精霊を使役するつもりでないならリリアーナの補助をしていただこう」

 相変わらず精霊を使すると言うウォレス。


「俺はローザリア様の護衛兼教育係なので別行動は致しかねる」

 そろそろ我慢の限界がきているナザエル枢機卿の顳顬がヒクヒクしている。ローザリアはリリアーナがナスタリア神父達2人に異様に執着しているように見えて不思議でならなかった。


「ではナスタリア神父様は私とご一緒してくださいますのね。
良かった、色々お話ししたいと楽しみにしておりましたの。私達とご一緒したら教会の粗食なんてもう食べられないと思われるかもしれませんわ」

「いえ、私もローザリア様と僻地に参ります。リリアーナ様にはランブリー団長が同行なさるでしょう」

「ローザリアばかり構うなんて狡い! 私、知っているんですよ。ナザエル枢機卿とナスタリア神父は教会の中でも一番の実力者だって。そんな方は私と一緒にいるべきです」

 そう言うことか⋯⋯とようやく納得したローザリアだったが、不勉強のローザリアにはナスタリア神父の知識とナザエル枢機卿の武力なしで僻地を回る自信がない。

「まだ勉強をはじめたばかりですので師がいない状況ではちゃんとお役目を果たす自信がありません。ナザエル枢機卿とナスタリア神父の同行を許可願います」

 ローザリアはこの打ち合わせを主導しているギャンター内務大臣に向けて頭を下げた。


「確かに、ローザリア様は加護を戴いてからまだほんの数日でしたな。移動中に学ぶ必要がありそうです」

 ローザリアを睨みつけていたリリアーナだったがようやく決着がついた。



「一つ提案があるのですが」

 そろそろ打ち合わせを終わらせようとギャンター内務大臣が資料をまとめているとナスタリア神父が話しはじめた。

「お聞きしましょう」

「今はローザリア様を朝お迎えに行き夕方公爵邸にお送りしておりますが、出発までの間教会に滞在していただいては如何でしょうか?
移動時間がなくなればより勉強時間が確保できます。少しでも多くの知識を身につけていただくことはこの国の為になるかと。
教会には貴人用の宿泊室もありますし、ローザリア様の身の回りのお世話にはシスターがおりますのでご不便をおかけする事もありません」

「ダメよ! そんな特別扱いなんて!! ねえ、お母様もそう思うでしょう?」

「そうねえ、この子は礼儀も知らないし我儘で⋯⋯公爵家というたががなくなれば何をしでかすか分かりませんのよ。家庭教師をつけて礼儀作法やマナーなどを教えはじめたばかりですもの。
それに、慣れない場所で過ごして体調を崩しでもしたらリリアーナの足を引っ張るだけですわ」

「では、ご足労ではありますが家庭教師に教会へ来ていただきましょう。勉強のために必要な物はこちらで準備致します。無駄な時間を減らすにはそれが一番ではないでしょうか? ギャンター内務大臣、如何でしょうか」

「左様ですな。今はマナーよりも加護を使いこなせるようになることの方が先決。陛下はローザリア様が回復魔法を行使できるようになる事を強く望んでおられたようですし。
良い案だと思われます」

 貴族達から届き続ける嘆願書を減らしたいギャンター内務大臣は、『税収が!』と悲鳴を上げる財務大臣や、『困窮して犯罪が増えた』と不満を漏らす法務大臣、我が国が輸出していた農作物を当てにしていた国からの突き上げに悩む外務大臣達に恩を売りたい。

「公爵家の方々がローザリア様をご心配なさるお気持ちは分かりましたが、今回はナスタリア神父の仰られるようになされては如何ですかな?」


「しかし、ひとりを特別扱いすると言うのは⋯⋯ローザリアが教会で個別指導を受けるのであれば、リリアーナにもその権利があると思うがな」

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