68 / 191
一回目 (過去)
68.教会VS公爵家
しおりを挟む
「いいえ、ナザエル枢機卿と私は勿論ローザリア様と行動させていただきます」
「ローザリアは僻地を回るのだから教会から別の者を付ければ良いではありませんか。お二方にはリリアーナの補助をお願いしますわ」
「お母様の仰る通りよ。ローザリアばかりお二人と一緒にいて狡いわ! 私とも仲良くして下さいませ」
「聞いたところによるとナザエル枢機卿は水の加護持ちだとか。ローザリアの代わりに精霊を使役するつもりでないならリリアーナの補助をしていただこう」
相変わらず精霊を使役すると言うウォレス。
「俺はローザリア様の護衛兼教育係なので別行動は致しかねる」
そろそろ我慢の限界がきているナザエル枢機卿の顳顬がヒクヒクしている。ローザリアはリリアーナがナスタリア神父達2人に異様に執着しているように見えて不思議でならなかった。
「ではナスタリア神父様は私とご一緒してくださいますのね。
良かった、色々お話ししたいと楽しみにしておりましたの。私達とご一緒したら教会の粗食なんてもう食べられないと思われるかもしれませんわ」
「いえ、私もローザリア様と僻地に参ります。リリアーナ様にはランブリー団長が同行なさるでしょう」
「ローザリアばかり構うなんて狡い! 私、知っているんですよ。ナザエル枢機卿とナスタリア神父は教会の中でも一番の実力者だって。そんな方は私と一緒にいるべきです」
そう言うことか⋯⋯とようやく納得したローザリアだったが、不勉強のローザリアにはナスタリア神父の知識とナザエル枢機卿の武力なしで僻地を回る自信がない。
「まだ勉強をはじめたばかりですので師がいない状況ではちゃんとお役目を果たす自信がありません。ナザエル枢機卿とナスタリア神父の同行を許可願います」
ローザリアはこの打ち合わせを主導しているギャンター内務大臣に向けて頭を下げた。
「確かに、ローザリア様は加護を戴いてからまだほんの数日でしたな。移動中に学ぶ必要がありそうです」
ローザリアを睨みつけていたリリアーナだったがようやく決着がついた。
「一つ提案があるのですが」
そろそろ打ち合わせを終わらせようとギャンター内務大臣が資料をまとめているとナスタリア神父が話しはじめた。
「お聞きしましょう」
「今はローザリア様を朝お迎えに行き夕方公爵邸にお送りしておりますが、出発までの間教会に滞在していただいては如何でしょうか?
移動時間がなくなればより勉強時間が確保できます。少しでも多くの知識を身につけていただくことはこの国の為になるかと。
教会には貴人用の宿泊室もありますし、ローザリア様の身の回りのお世話にはシスターがおりますのでご不便をおかけする事もありません」
「ダメよ! そんな特別扱いなんて!! ねえ、お母様もそう思うでしょう?」
「そうねえ、この子は礼儀も知らないし我儘で⋯⋯公爵家という箍がなくなれば何をしでかすか分かりませんのよ。家庭教師をつけて礼儀作法やマナーなどを教えはじめたばかりですもの。
それに、慣れない場所で過ごして体調を崩しでもしたらリリアーナの足を引っ張るだけですわ」
「では、ご足労ではありますが家庭教師に教会へ来ていただきましょう。勉強のために必要な物はこちらで準備致します。無駄な時間を減らすにはそれが一番ではないでしょうか? ギャンター内務大臣、如何でしょうか」
「左様ですな。今はマナーよりも加護を使いこなせるようになることの方が先決。陛下はローザリア様が回復魔法を行使できるようになる事を強く望んでおられたようですし。
良い案だと思われます」
貴族達から届き続ける嘆願書を減らしたいギャンター内務大臣は、『税収が!』と悲鳴を上げる財務大臣や、『困窮して犯罪が増えた』と不満を漏らす法務大臣、我が国が輸出していた農作物を当てにしていた国からの突き上げに悩む外務大臣達に恩を売りたい。
「公爵家の方々がローザリア様をご心配なさるお気持ちは分かりましたが、今回はナスタリア神父の仰られるようになされては如何ですかな?」
「しかし、ひとりを特別扱いすると言うのは⋯⋯ローザリアが教会で個別指導を受けるのであれば、リリアーナにもその権利があると思うがな」
「ローザリアは僻地を回るのだから教会から別の者を付ければ良いではありませんか。お二方にはリリアーナの補助をお願いしますわ」
「お母様の仰る通りよ。ローザリアばかりお二人と一緒にいて狡いわ! 私とも仲良くして下さいませ」
「聞いたところによるとナザエル枢機卿は水の加護持ちだとか。ローザリアの代わりに精霊を使役するつもりでないならリリアーナの補助をしていただこう」
相変わらず精霊を使役すると言うウォレス。
「俺はローザリア様の護衛兼教育係なので別行動は致しかねる」
そろそろ我慢の限界がきているナザエル枢機卿の顳顬がヒクヒクしている。ローザリアはリリアーナがナスタリア神父達2人に異様に執着しているように見えて不思議でならなかった。
「ではナスタリア神父様は私とご一緒してくださいますのね。
良かった、色々お話ししたいと楽しみにしておりましたの。私達とご一緒したら教会の粗食なんてもう食べられないと思われるかもしれませんわ」
「いえ、私もローザリア様と僻地に参ります。リリアーナ様にはランブリー団長が同行なさるでしょう」
「ローザリアばかり構うなんて狡い! 私、知っているんですよ。ナザエル枢機卿とナスタリア神父は教会の中でも一番の実力者だって。そんな方は私と一緒にいるべきです」
そう言うことか⋯⋯とようやく納得したローザリアだったが、不勉強のローザリアにはナスタリア神父の知識とナザエル枢機卿の武力なしで僻地を回る自信がない。
「まだ勉強をはじめたばかりですので師がいない状況ではちゃんとお役目を果たす自信がありません。ナザエル枢機卿とナスタリア神父の同行を許可願います」
ローザリアはこの打ち合わせを主導しているギャンター内務大臣に向けて頭を下げた。
「確かに、ローザリア様は加護を戴いてからまだほんの数日でしたな。移動中に学ぶ必要がありそうです」
ローザリアを睨みつけていたリリアーナだったがようやく決着がついた。
「一つ提案があるのですが」
そろそろ打ち合わせを終わらせようとギャンター内務大臣が資料をまとめているとナスタリア神父が話しはじめた。
「お聞きしましょう」
「今はローザリア様を朝お迎えに行き夕方公爵邸にお送りしておりますが、出発までの間教会に滞在していただいては如何でしょうか?
移動時間がなくなればより勉強時間が確保できます。少しでも多くの知識を身につけていただくことはこの国の為になるかと。
教会には貴人用の宿泊室もありますし、ローザリア様の身の回りのお世話にはシスターがおりますのでご不便をおかけする事もありません」
「ダメよ! そんな特別扱いなんて!! ねえ、お母様もそう思うでしょう?」
「そうねえ、この子は礼儀も知らないし我儘で⋯⋯公爵家という箍がなくなれば何をしでかすか分かりませんのよ。家庭教師をつけて礼儀作法やマナーなどを教えはじめたばかりですもの。
それに、慣れない場所で過ごして体調を崩しでもしたらリリアーナの足を引っ張るだけですわ」
「では、ご足労ではありますが家庭教師に教会へ来ていただきましょう。勉強のために必要な物はこちらで準備致します。無駄な時間を減らすにはそれが一番ではないでしょうか? ギャンター内務大臣、如何でしょうか」
「左様ですな。今はマナーよりも加護を使いこなせるようになることの方が先決。陛下はローザリア様が回復魔法を行使できるようになる事を強く望んでおられたようですし。
良い案だと思われます」
貴族達から届き続ける嘆願書を減らしたいギャンター内務大臣は、『税収が!』と悲鳴を上げる財務大臣や、『困窮して犯罪が増えた』と不満を漏らす法務大臣、我が国が輸出していた農作物を当てにしていた国からの突き上げに悩む外務大臣達に恩を売りたい。
「公爵家の方々がローザリア様をご心配なさるお気持ちは分かりましたが、今回はナスタリア神父の仰られるようになされては如何ですかな?」
「しかし、ひとりを特別扱いすると言うのは⋯⋯ローザリアが教会で個別指導を受けるのであれば、リリアーナにもその権利があると思うがな」
16
お気に入りに追加
599
あなたにおすすめの小説
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
呪われ令嬢、王妃になる
八重
恋愛
「シェリー、お前とは婚約破棄させてもらう」
「はい、承知しました」
「いいのか……?」
「ええ、私の『呪い』のせいでしょう?」
シェリー・グローヴは自身の『呪い』のせいで、何度も婚約破棄される29歳の侯爵令嬢。
家族にも邪魔と虐げられる存在である彼女に、思わぬ婚約話が舞い込んできた。
「ジェラルド・ヴィンセント王から婚約の申し出が来た」
「──っ!?」
若き33歳の国王からの婚約の申し出に戸惑うシェリー。
だがそんな国王にも何やら思惑があるようで──
自身の『呪い』を気にせず溺愛してくる国王に、戸惑いつつも段々惹かれてそして、成長していくシェリーは、果たして『呪い』に打ち勝ち幸せを掴めるのか?
一方、今まで虐げてきた家族には次第に不幸が訪れるようになり……。
★この作品の特徴★
展開早めで進んでいきます。ざまぁの始まりは16話からの予定です。主人公であるシェリーとヒーローのジェラルドのラブラブや切ない恋の物語、あっと驚く、次が気になる!を目指して作品を書いています。
※小説家になろう先行公開中
※他サイトでも投稿しております(小説家になろうにて先行公開)
※アルファポリスにてホットランキングに載りました
※小説家になろう 日間異世界恋愛ランキングにのりました(初ランクイン2022.11.26)
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
理不尽な理由で婚約者から断罪されることを知ったので、ささやかな抵抗をしてみた結果……。
水上
恋愛
バーンズ学園に通う伯爵令嬢である私、マリア・マクベインはある日、とあるトラブルに巻き込まれた。
その際、婚約者である伯爵令息スティーヴ・バークが、理不尽な理由で私のことを断罪するつもりだということを知った。
そこで、ささやかな抵抗をすることにしたのだけれど、その結果……。
殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?
星ふくろう
恋愛
聖女認定の儀式をするから王宮に来いと招聘された、クルード女公爵ハーミア。
数人の聖女候補がいる中、次期皇帝のエミリオ皇太子と婚約している彼女。
周囲から最有力候補とみられていたらしい。
未亡人の自分でも役に立てるならば、とその命令を受けたのだった。
そして、聖女認定の日、登城した彼女を待っていたのは借金取りのザイール大公。
女癖の悪い、極悪なヤクザ貴族だ。
その一週間前、ポーカーで負けた殿下は婚約者を賭けの対象にしていて負けていた。
ハーミアは借金のカタにザイール大公に取り押さえられたのだ。
そして、放蕩息子のエミリオ皇太子はハーミアに宣言する。
「残念だよ、ハーミア。
そんな質草になった貴族令嬢なんて奴隷以下だ。
僕はこの可愛い女性、レベン公爵令嬢カーラと婚約するよ。
僕が選んだ女性だ、聖女になることは間違いないだろう。
君は‥‥‥お払い箱だ」
平然と婚約破棄をするエミリオ皇太子とその横でほくそ笑むカーラ。
聖女認定どころではなく、ハーミアは怒り大公とその場を後にする。
そして、聖女は選ばれなかった.
ハーミアはヤクザ大公から債権を回収し、魔王へとそれを売り飛ばす。
魔王とハーミアは共謀して帝国から債権回収をするのだった。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
冷遇された王女は隣国で力を発揮する
高瀬ゆみ
恋愛
セシリアは王女でありながら離宮に隔離されている。
父以外の家族にはいないものとして扱われ、唯一顔を見せる妹には好き放題言われて馬鹿にされている。
そんな中、公爵家の子息から求婚され、幸せになれると思ったのも束の間――それを知った妹に相手を奪われてしまう。
今までの鬱憤が爆発したセシリアは、自国での幸せを諦めて、凶帝と恐れられる隣国の皇帝に嫁ぐことを決意する。
自分に正直に生きることを決めたセシリアは、思いがけず隣国で才能が開花する。
一方、セシリアがいなくなった国では様々な異変が起こり始めて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる