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一回目 (過去)
31.ウォレス達の小芝居に辟易
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「強い精霊の加護はこの国の宝ですから少しばかりご家族の方と交流をと思いまして」
口元を歪めてニヤリと笑ったウォレスは想像した通り教会がご機嫌を取りに来たと勘違いした。
「そうですか、しかし水の加護が少しばかり強いくらいでお忙しい枢機卿が足を運ばれるとは驚きですな」
暗に暇な奴だと愚弄してくるウォレス。
「ナザエル様。あの、わたくしの聖布をお待ちしましたの。是非ご覧になって下さいませ」
上目遣いで頬を赤らめて聖布を差し出したリリアーナだったがナザエルは小さく首を横に振った。
「いや、今日はやめておきましょう」
「リリアーナは現在の王宮精霊師の方達よりも加護の力が強いとお墨付きを頂いておりますの。ぜひご覧になって頂きたいですわ」
優雅に扇子を揺らしながらカサンドラがリリアーナと顔を見合わせて微笑み合った。
「そんな⋯⋯お母様ったら皆様の前で、恥ずかしいわ」
「先日のオーレアンも本当はリリアーナの力だったのではないかと言う話になっておるのはご存じですかな?」
「いえ、全く。オーレアンの件はともかくとしてこちらからローザリア様の加護はとても強いと連絡しました。その件で今日は少しばかりお話があって参った次第です」
ここからはナスタリア神父のターンということだろう。ナザエル枢機卿はソファの背にもたれて寛いでいる。
「アレの加護ですか。しかしまあ身体が弱くて今までなんの教育も出来ませんでしたからこれから挽回するのはなかなか難しいのではないかと。
前回など同行しただけで1ヶ月も寝込んでしまいましたしなあ」
「リリアーナ様は強い水の加護をお持ちなら回復魔法は使えますか?」
「え?」
「馬鹿なことを。回復魔法は光の加護だというのは子供でも知っておりますぞ?」
「なんと、『水の公爵家』でもご存じないのですか。強い水の加護持ちは簡単な回復なら可能なのです。但しかなりの魔力が必要ですし、下級回復だけではありますが」
「まさか! いや、それは本当ですの?」
「このような時に嘘や冗談を言ったりしません。近年はそれだけの強さの加護と必要な魔力を持ち合わせた方が現れず知らない人の方が多くなってしまいましたが」
「ではわたくしも回復魔法が使えるようになるのですね」
嬉しいと言いながら両手を胸の前で握りしめてナザエル枢機卿を見つめるリリアーナだったがナザエルは目も合わせず呑気に紅茶のカップを持ち上げた。
「リリアーナ様が出来るようになるかどうか、ここでは意見を差し控えさせて頂きますが、ローザリア様は使えるようになると保証いたします」
「「「なっ!」」」
ウォレス達3人が声を揃え怒りを表したがナスタリア神父は護衛が話しかけてきたのでそちらの方を向いた。
「どうやらドアの向こうで話を聞いておられる方が数名いらっしゃるようですが? お聞きになりたいようであればお誘いされますか?」
ドアが勢いよく開きナスタリア神父達の予想通り王宮の監視人達がランブリー王宮精霊師団団長と一緒になだれ込んできた。
「回復魔法が使えると言うのは本当ですか?」
「⋯⋯なんと、王宮勤めの方が立ち聞きとは」
ナザエル枢機卿が呆れたように呟いた。
「ナザエル枢機卿、お久しぶりです。我々は教会の報告をお待ちしておったのです」
「それなら何故最初から参加しておられなかったのですかな?」
「それは⋯⋯それよりも回復魔法です! これは非常に重要な話ですぞ。隠蔽していたのならば王家に対する反逆と取られても仕方のない事に」
「後ほど確認されれば如何でしょうか? 使える人が現存しないと言うだけで秘密というわけではありませんから。
恐らくは王宮の資料庫で過去の事例集には書かれているはずです。
そのようなものがあれば間違いなく書いてあります」
「それではリリアーナ様達の実習に含めれば⋯⋯」
「王宮や学園にその習得方法等があれば可能かもしれませんが、大量の魔力を消費するのでご注意下さい。過去には無理やり行使して魔力欠乏症になったり体調を崩し精霊師として働けなくなった方もおられたという記録が残っていますから」
「それなのにローザリアは出来ると仰るのですかな?」
「はい、魔力量に注意しなければなりませんが間違いなく使えるようになられます」
「その根拠は? オーレアンの偉業はリリアーナ様達多くの精霊師達の尽力の可能性が高いのですよ」
「それ程に加護の力が強いと言うことですね。魔力量も」
「おい! 聖布を出せ!!」
口元を歪めてニヤリと笑ったウォレスは想像した通り教会がご機嫌を取りに来たと勘違いした。
「そうですか、しかし水の加護が少しばかり強いくらいでお忙しい枢機卿が足を運ばれるとは驚きですな」
暗に暇な奴だと愚弄してくるウォレス。
「ナザエル様。あの、わたくしの聖布をお待ちしましたの。是非ご覧になって下さいませ」
上目遣いで頬を赤らめて聖布を差し出したリリアーナだったがナザエルは小さく首を横に振った。
「いや、今日はやめておきましょう」
「リリアーナは現在の王宮精霊師の方達よりも加護の力が強いとお墨付きを頂いておりますの。ぜひご覧になって頂きたいですわ」
優雅に扇子を揺らしながらカサンドラがリリアーナと顔を見合わせて微笑み合った。
「そんな⋯⋯お母様ったら皆様の前で、恥ずかしいわ」
「先日のオーレアンも本当はリリアーナの力だったのではないかと言う話になっておるのはご存じですかな?」
「いえ、全く。オーレアンの件はともかくとしてこちらからローザリア様の加護はとても強いと連絡しました。その件で今日は少しばかりお話があって参った次第です」
ここからはナスタリア神父のターンということだろう。ナザエル枢機卿はソファの背にもたれて寛いでいる。
「アレの加護ですか。しかしまあ身体が弱くて今までなんの教育も出来ませんでしたからこれから挽回するのはなかなか難しいのではないかと。
前回など同行しただけで1ヶ月も寝込んでしまいましたしなあ」
「リリアーナ様は強い水の加護をお持ちなら回復魔法は使えますか?」
「え?」
「馬鹿なことを。回復魔法は光の加護だというのは子供でも知っておりますぞ?」
「なんと、『水の公爵家』でもご存じないのですか。強い水の加護持ちは簡単な回復なら可能なのです。但しかなりの魔力が必要ですし、下級回復だけではありますが」
「まさか! いや、それは本当ですの?」
「このような時に嘘や冗談を言ったりしません。近年はそれだけの強さの加護と必要な魔力を持ち合わせた方が現れず知らない人の方が多くなってしまいましたが」
「ではわたくしも回復魔法が使えるようになるのですね」
嬉しいと言いながら両手を胸の前で握りしめてナザエル枢機卿を見つめるリリアーナだったがナザエルは目も合わせず呑気に紅茶のカップを持ち上げた。
「リリアーナ様が出来るようになるかどうか、ここでは意見を差し控えさせて頂きますが、ローザリア様は使えるようになると保証いたします」
「「「なっ!」」」
ウォレス達3人が声を揃え怒りを表したがナスタリア神父は護衛が話しかけてきたのでそちらの方を向いた。
「どうやらドアの向こうで話を聞いておられる方が数名いらっしゃるようですが? お聞きになりたいようであればお誘いされますか?」
ドアが勢いよく開きナスタリア神父達の予想通り王宮の監視人達がランブリー王宮精霊師団団長と一緒になだれ込んできた。
「回復魔法が使えると言うのは本当ですか?」
「⋯⋯なんと、王宮勤めの方が立ち聞きとは」
ナザエル枢機卿が呆れたように呟いた。
「ナザエル枢機卿、お久しぶりです。我々は教会の報告をお待ちしておったのです」
「それなら何故最初から参加しておられなかったのですかな?」
「それは⋯⋯それよりも回復魔法です! これは非常に重要な話ですぞ。隠蔽していたのならば王家に対する反逆と取られても仕方のない事に」
「後ほど確認されれば如何でしょうか? 使える人が現存しないと言うだけで秘密というわけではありませんから。
恐らくは王宮の資料庫で過去の事例集には書かれているはずです。
そのようなものがあれば間違いなく書いてあります」
「それではリリアーナ様達の実習に含めれば⋯⋯」
「王宮や学園にその習得方法等があれば可能かもしれませんが、大量の魔力を消費するのでご注意下さい。過去には無理やり行使して魔力欠乏症になったり体調を崩し精霊師として働けなくなった方もおられたという記録が残っていますから」
「それなのにローザリアは出来ると仰るのですかな?」
「はい、魔力量に注意しなければなりませんが間違いなく使えるようになられます」
「その根拠は? オーレアンの偉業はリリアーナ様達多くの精霊師達の尽力の可能性が高いのですよ」
「それ程に加護の力が強いと言うことですね。魔力量も」
「おい! 聖布を出せ!!」
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