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77.予定調和で恥ずかしさMAX
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戸惑い顔を見合わせていた方々が話をはじめ、ダンスフロアに出て行く人もちらほらと見受けられました。
ノア様が王太子殿下やコナー氏と話をしておられる間、わたくしのそばには殿下の側近の方がずっと待機して下さいました。
周りから集まる好奇の目を逃れてノア様とわたくしはバルコニーに出てベンチに並んで座りました。
会場から漏れる明かりがバルコニーに届き気分を変えるような明るめの音楽が流れてきます。爽やかな風に乗って庭の花壇から甘い花の香りが漂い心を癒してくれます。
「ナーシャ殿が捕まっていないらしい。彼女が捕まれば危険は回避できたと言えたんだが」
「ナーシャ様は本当に修道院を抜け出されたのですね」
「二日前に逃げ出した。王都にある侯爵家の別邸に潜伏していたが、後一歩というところで逃げられてね」
わたくしがマナーやダンスのレッスンに奮闘している間、ノア様達は王都中を駆けずり回っていたようです。
『リィ、がんばれえ~!』
『リィ、れぇ~』
子供達の応援の声を思い出して思わず苦笑いしてしまったわたくしの顔をノア様が覗き込んでこられました。
「笑ったりして申し訳ありません。ノア様達が頑張っておられた頃、呑気にダンスの練習をしていたと気付きましたの。その時グレッグとチェイスが『がんばれ』と応援してくれていて、同じ言葉をノア様達に届けるべきだったなぁと」
「ティアが練習していると思うだけで応援になってた。夢のダンスが待ってたからいくらでも頑張れたが⋯⋯立て続けで3曲も踊らせてしまったなんて気付いてなくて申し訳なかった」
嬉しすぎて舞い上がっていたと仰って下さいましたが、私の目はノア様の足元に釘付けでした。
薄暗い中でもわかるほど傷だらけなんですもの。
「あの、つかぬことを伺いますが靴に鉄板を入れたりは⋯⋯」
「いや、してないが全然痛くなかったから。大丈夫」
「今度靴をお贈り致しますね。その靴はきっと修復不可能ですもの」
「記念に取っておくよ。初ダンスのいい思い出になりそうだ」
吹き出すのを堪えておられますがそれはわたくしの黒歴史になりますから、コナー氏に処分をお願いしておきましょう。
ノア様よりコナー氏の方が女心を理解してくださる気がします。
詳しい話を聞きたがるパーティー参加者を避けるために翌朝早くに離宮を出発しました。早起きは得意ですが流石に昨日の疲れが取れておらず、馬車の中でつい爆睡してしまいました。
「⋯⋯ア、ティア。残念だけど子爵家に着いたんだ、起きれるかな?」
目が覚めると皆様のご想像通りの状態になっておりました。向かい合わせで座っていたはずが隣に移動してこられたノア様の肩を借りて爆睡していたのです。
ピキリと固まったわたくしはゆっくりと馬車が停まりステップが準備される頃になっても『あわあわ』言うばかりでした。
ノア様は笑っておられましたが本気で恥ずかしくて⋯⋯メイド達の話で聞いていた時はこんなに動揺するものだとは思っていませんでした。
ドアが開く頃には少し落ち着いてきたのでお詫びをしようと口を開きましたが、玄関横からものすごいスピードの塊が走ってきてまた固まってしまいました。
「リィィィィー!」
今日も涙と鼻水でボロボロのグレッグがありえないほどの跳躍力で飛びついてきました。腕はわたくしの首に巻きつき両足でお腹をホールドしています。
わたくしが少ししゃがんでいたと言っても運動神経抜群ですね。
ゴフッと音がするほどの勢いで飛びつかれたたらを踏んだわたくしを後ろからノア様が支えて下さいました。
第二弾で走り込んできたチェイスはなんと泥だらけで何やら怪しい塊を右手に掴んでいます。
「リィィィィー!」
さすが兄弟です。全く同じパワーで飛びつこうとしましたが一歳児の悲しさなのか予定通りなのか⋯⋯ほんのちょっぴりのジャンプ力を見せてわたくしの膝辺りに顔を押し付けています。
わたくしの足元に何かが落ちるゴロンと言う音がしたように思いました。
「ププッ! 二人に愛されているのは知っていたが凄い状態になったね。どちらかひとり私のところに来てくれたりするとティアが歩けるようになると思うんだが?」
「だめ! リィ、ちゅきちゅきの。おくのからちゅるの!」
「ちゅうの!」
「えーっと、グレッグ? カッコよくエスコートしてくれるととても嬉しいのだけど」
必殺技の『カッコいい』をおねだりしました。
わたくしの首に顔を埋めてしきりに匂いを嗅いだ後はノア様を睨むのを何度も繰り返していたグレッグが固まりました。
「リィ、かっくいいしゅち?」
ノア様が王太子殿下やコナー氏と話をしておられる間、わたくしのそばには殿下の側近の方がずっと待機して下さいました。
周りから集まる好奇の目を逃れてノア様とわたくしはバルコニーに出てベンチに並んで座りました。
会場から漏れる明かりがバルコニーに届き気分を変えるような明るめの音楽が流れてきます。爽やかな風に乗って庭の花壇から甘い花の香りが漂い心を癒してくれます。
「ナーシャ殿が捕まっていないらしい。彼女が捕まれば危険は回避できたと言えたんだが」
「ナーシャ様は本当に修道院を抜け出されたのですね」
「二日前に逃げ出した。王都にある侯爵家の別邸に潜伏していたが、後一歩というところで逃げられてね」
わたくしがマナーやダンスのレッスンに奮闘している間、ノア様達は王都中を駆けずり回っていたようです。
『リィ、がんばれえ~!』
『リィ、れぇ~』
子供達の応援の声を思い出して思わず苦笑いしてしまったわたくしの顔をノア様が覗き込んでこられました。
「笑ったりして申し訳ありません。ノア様達が頑張っておられた頃、呑気にダンスの練習をしていたと気付きましたの。その時グレッグとチェイスが『がんばれ』と応援してくれていて、同じ言葉をノア様達に届けるべきだったなぁと」
「ティアが練習していると思うだけで応援になってた。夢のダンスが待ってたからいくらでも頑張れたが⋯⋯立て続けで3曲も踊らせてしまったなんて気付いてなくて申し訳なかった」
嬉しすぎて舞い上がっていたと仰って下さいましたが、私の目はノア様の足元に釘付けでした。
薄暗い中でもわかるほど傷だらけなんですもの。
「あの、つかぬことを伺いますが靴に鉄板を入れたりは⋯⋯」
「いや、してないが全然痛くなかったから。大丈夫」
「今度靴をお贈り致しますね。その靴はきっと修復不可能ですもの」
「記念に取っておくよ。初ダンスのいい思い出になりそうだ」
吹き出すのを堪えておられますがそれはわたくしの黒歴史になりますから、コナー氏に処分をお願いしておきましょう。
ノア様よりコナー氏の方が女心を理解してくださる気がします。
詳しい話を聞きたがるパーティー参加者を避けるために翌朝早くに離宮を出発しました。早起きは得意ですが流石に昨日の疲れが取れておらず、馬車の中でつい爆睡してしまいました。
「⋯⋯ア、ティア。残念だけど子爵家に着いたんだ、起きれるかな?」
目が覚めると皆様のご想像通りの状態になっておりました。向かい合わせで座っていたはずが隣に移動してこられたノア様の肩を借りて爆睡していたのです。
ピキリと固まったわたくしはゆっくりと馬車が停まりステップが準備される頃になっても『あわあわ』言うばかりでした。
ノア様は笑っておられましたが本気で恥ずかしくて⋯⋯メイド達の話で聞いていた時はこんなに動揺するものだとは思っていませんでした。
ドアが開く頃には少し落ち着いてきたのでお詫びをしようと口を開きましたが、玄関横からものすごいスピードの塊が走ってきてまた固まってしまいました。
「リィィィィー!」
今日も涙と鼻水でボロボロのグレッグがありえないほどの跳躍力で飛びついてきました。腕はわたくしの首に巻きつき両足でお腹をホールドしています。
わたくしが少ししゃがんでいたと言っても運動神経抜群ですね。
ゴフッと音がするほどの勢いで飛びつかれたたらを踏んだわたくしを後ろからノア様が支えて下さいました。
第二弾で走り込んできたチェイスはなんと泥だらけで何やら怪しい塊を右手に掴んでいます。
「リィィィィー!」
さすが兄弟です。全く同じパワーで飛びつこうとしましたが一歳児の悲しさなのか予定通りなのか⋯⋯ほんのちょっぴりのジャンプ力を見せてわたくしの膝辺りに顔を押し付けています。
わたくしの足元に何かが落ちるゴロンと言う音がしたように思いました。
「ププッ! 二人に愛されているのは知っていたが凄い状態になったね。どちらかひとり私のところに来てくれたりするとティアが歩けるようになると思うんだが?」
「だめ! リィ、ちゅきちゅきの。おくのからちゅるの!」
「ちゅうの!」
「えーっと、グレッグ? カッコよくエスコートしてくれるととても嬉しいのだけど」
必殺技の『カッコいい』をおねだりしました。
わたくしの首に顔を埋めてしきりに匂いを嗅いだ後はノア様を睨むのを何度も繰り返していたグレッグが固まりました。
「リィ、かっくいいしゅち?」
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