55 / 99
55.超有能魔法使い
しおりを挟む
チェイスがお昼寝から起きて来たので2人に軽食を準備してもらいました。
グレッグにはもちろんクロワッサンのサンドイッチ。野菜好きのグレッグはきゅうりとチーズのサンドイッチを美味しそうに食べています。
チェイスにはあまり甘くないパンケーキですが、ハンナの目を盗んでハムを手掴みで食べご満悦です。フォークの使い方を教えるのは何歳くらいが良いのかマーサなら知っているでしょうか?
デザートのプリンは最強のようです。
「ぷにん、おいしいね」
「ぃねー」
グレッグが上手に『し』が言えました。目に見えて進化していく子供の成長は目が離せません。
グレッグはまだスプーンを下から握りしめらように持つ下手持ちです。いずれ大人のような持ち方に変えていく必要はありますけれど、このままが可愛いとつい思ってしまいます。
大人の持ち方は『バキューン持ち』だと教えられる日も近そうです。
チェイスの上手持ちはもう堪りません。溢さないように真剣な顔も見応えたっぷりで。
料理長のサントスのプリン⋯⋯わたくしの分は? ターニャ、笑わないで下さい。サントスのプリンは別腹ですもの。
「お庭にブランコがあるんだけど行ってみない?」
「おそと、やだ、ちらーい」
「だー」
お腹いっぱいになった子供達を庭に誘いましたが、部屋から出るのを嫌がります。
「お花もいっぱい咲いてるし」
「リィ、いっちょがいいの」
マーベル伯爵家での記憶のせいでしょうか? 部屋の奥で遊ぼうとしますし、ドアが開くたびに怯えます。
「ブランコってゆらゆらして楽しいんですよね~」
「そう、2人でよく遊んだわね」
「大きく漕ぎすぎてセルゲイ爺ちゃんが飛んできたり」
「後ろから押してもらうのが好きだったわ」
はじめは背中を向けていたグレッグがターニャとわたくしの話に誘われてちょこちょこと近付いて来ました。
「ぶらんこ、たのちい?」
「すご~く楽しいわ。庭のお花もいい匂いだし」
「⋯⋯リィ、おはなちゅき?」
「勿論よ、グレッグやチェイスはどうかしら?」
「⋯⋯わかんない」
首を傾げて悩むグレッグを見たチェイスが横で真似をしています。お兄ちゃん大好きのチェイスと手を繋いだグレッグが小さく頷きました。
「おにわ、いく!」
庭に出ると夏の花が風にそよぎ、少し汗ばんだ肌に心地よく感じられます。
「セルゲイ爺ちゃん!!」
ベンチに腰掛けて新聞を読んでいるセルゲイ爺ちゃんを目ざとく見つけたターニャが叫びました。
「爺ちゃん、ズル休み?」
「アホか、ワシは休憩中じゃ」
毎朝届く新聞はお父様が読まれた後でセルゲイ爺ちゃんの元に届けられます。社会情勢やゴシップにも詳しい天才庭師なのです。
「お、久しぶりにちっこいのが増えたのう。ほれ、これをやろう」
日に焼けたシワだらけの大きな手に乗っているのは小さな木彫りの⋯⋯馬車? セルゲイ爺ちゃん、器用すぎです。
チェイスと手を繋いだままわたくしの後ろから顔を覗かせているグレッグは瞬きを忘れているようです。チェイスはそんなお兄ちゃんを見上げて首を傾げて⋯⋯。
「さーて、どうするかのう? ワシの孫にあげてもいいが⋯⋯取りに来るなら2人にあげてもええんじゃが⋯⋯さっきお前さんらが乗ったのとよう似とるぞ」
子供達は大人を怖がってますから初対面の方のそばには行け⋯⋯ました。
セルゲイ爺ちゃんの手の中を覗き込んで見上げたグレッグとチェイスの頭を撫で、小さな手の上に精巧に彫られた馬車が乗せられました。
「名前を教えてくれるかの?」
「ぐでっぐ、おとと、ちぇーす」
「⋯⋯ふむ、ちと難解じゃが⋯⋯グレッグと弟のチェイスかな?」
「うん、おとと、ちさい」
「確かに、グレッグより小さいのう。じゃが、利口そうなグレッグとすばしこそうなチェイスじゃな」
「りこお?」
「グレッグは頭がいいと言う意味じゃ」
会話が続いています! 流石セルゲイ爺ちゃんです。ここにわたくしが連れて来た人は全員セルゲイ爺ちゃんの虜になるのですから⋯⋯昔は『爺ちゃんは魔法使い』だと信じていましたの。
子供達はセルゲイ爺ちゃんに連れられて花壇の脇道を歩いていましたが、退屈したチェイスが脱走を企てました。
チェイスをひょいっとおんぶしたセルゲイ爺ちゃんとグレッグが何やら密談をはじめ、爺ちゃんが切った数本の花を持ったグレッグが走って来ました。
「リィ、あげゆ、こえはターニャ、こえはハンニャ、こえは⋯⋯メイタ。うれしい?」
初めて全員の名前を言いながら花をプレゼントしてくれたグレッグの耳が真っ赤になっています。
もう、可愛いが爆裂⋯⋯。
「はい、すご~く嬉しいです。ありがとう」
全員から『ありがとう』をもらったグレッグがセルゲイ爺ちゃんのところに駆け戻りながら『うれちいって~!』と、大声を⋯⋯大声を出したのです!
「ほうか、良かったのう。次はブランコじゃったか?」
「うん、ブランコたのしい」
「そこは『楽しみ』ゆうとこじゃな」
「たのしみ~」
その日の夕食にトーマス司教様が乱入されてお父様と祝杯を上げられた後、セルゲイ爺ちゃんを奇襲されました。
有言実行ですね、二日酔いにならないようお祈りしておきます。
グレッグにはもちろんクロワッサンのサンドイッチ。野菜好きのグレッグはきゅうりとチーズのサンドイッチを美味しそうに食べています。
チェイスにはあまり甘くないパンケーキですが、ハンナの目を盗んでハムを手掴みで食べご満悦です。フォークの使い方を教えるのは何歳くらいが良いのかマーサなら知っているでしょうか?
デザートのプリンは最強のようです。
「ぷにん、おいしいね」
「ぃねー」
グレッグが上手に『し』が言えました。目に見えて進化していく子供の成長は目が離せません。
グレッグはまだスプーンを下から握りしめらように持つ下手持ちです。いずれ大人のような持ち方に変えていく必要はありますけれど、このままが可愛いとつい思ってしまいます。
大人の持ち方は『バキューン持ち』だと教えられる日も近そうです。
チェイスの上手持ちはもう堪りません。溢さないように真剣な顔も見応えたっぷりで。
料理長のサントスのプリン⋯⋯わたくしの分は? ターニャ、笑わないで下さい。サントスのプリンは別腹ですもの。
「お庭にブランコがあるんだけど行ってみない?」
「おそと、やだ、ちらーい」
「だー」
お腹いっぱいになった子供達を庭に誘いましたが、部屋から出るのを嫌がります。
「お花もいっぱい咲いてるし」
「リィ、いっちょがいいの」
マーベル伯爵家での記憶のせいでしょうか? 部屋の奥で遊ぼうとしますし、ドアが開くたびに怯えます。
「ブランコってゆらゆらして楽しいんですよね~」
「そう、2人でよく遊んだわね」
「大きく漕ぎすぎてセルゲイ爺ちゃんが飛んできたり」
「後ろから押してもらうのが好きだったわ」
はじめは背中を向けていたグレッグがターニャとわたくしの話に誘われてちょこちょこと近付いて来ました。
「ぶらんこ、たのちい?」
「すご~く楽しいわ。庭のお花もいい匂いだし」
「⋯⋯リィ、おはなちゅき?」
「勿論よ、グレッグやチェイスはどうかしら?」
「⋯⋯わかんない」
首を傾げて悩むグレッグを見たチェイスが横で真似をしています。お兄ちゃん大好きのチェイスと手を繋いだグレッグが小さく頷きました。
「おにわ、いく!」
庭に出ると夏の花が風にそよぎ、少し汗ばんだ肌に心地よく感じられます。
「セルゲイ爺ちゃん!!」
ベンチに腰掛けて新聞を読んでいるセルゲイ爺ちゃんを目ざとく見つけたターニャが叫びました。
「爺ちゃん、ズル休み?」
「アホか、ワシは休憩中じゃ」
毎朝届く新聞はお父様が読まれた後でセルゲイ爺ちゃんの元に届けられます。社会情勢やゴシップにも詳しい天才庭師なのです。
「お、久しぶりにちっこいのが増えたのう。ほれ、これをやろう」
日に焼けたシワだらけの大きな手に乗っているのは小さな木彫りの⋯⋯馬車? セルゲイ爺ちゃん、器用すぎです。
チェイスと手を繋いだままわたくしの後ろから顔を覗かせているグレッグは瞬きを忘れているようです。チェイスはそんなお兄ちゃんを見上げて首を傾げて⋯⋯。
「さーて、どうするかのう? ワシの孫にあげてもいいが⋯⋯取りに来るなら2人にあげてもええんじゃが⋯⋯さっきお前さんらが乗ったのとよう似とるぞ」
子供達は大人を怖がってますから初対面の方のそばには行け⋯⋯ました。
セルゲイ爺ちゃんの手の中を覗き込んで見上げたグレッグとチェイスの頭を撫で、小さな手の上に精巧に彫られた馬車が乗せられました。
「名前を教えてくれるかの?」
「ぐでっぐ、おとと、ちぇーす」
「⋯⋯ふむ、ちと難解じゃが⋯⋯グレッグと弟のチェイスかな?」
「うん、おとと、ちさい」
「確かに、グレッグより小さいのう。じゃが、利口そうなグレッグとすばしこそうなチェイスじゃな」
「りこお?」
「グレッグは頭がいいと言う意味じゃ」
会話が続いています! 流石セルゲイ爺ちゃんです。ここにわたくしが連れて来た人は全員セルゲイ爺ちゃんの虜になるのですから⋯⋯昔は『爺ちゃんは魔法使い』だと信じていましたの。
子供達はセルゲイ爺ちゃんに連れられて花壇の脇道を歩いていましたが、退屈したチェイスが脱走を企てました。
チェイスをひょいっとおんぶしたセルゲイ爺ちゃんとグレッグが何やら密談をはじめ、爺ちゃんが切った数本の花を持ったグレッグが走って来ました。
「リィ、あげゆ、こえはターニャ、こえはハンニャ、こえは⋯⋯メイタ。うれしい?」
初めて全員の名前を言いながら花をプレゼントしてくれたグレッグの耳が真っ赤になっています。
もう、可愛いが爆裂⋯⋯。
「はい、すご~く嬉しいです。ありがとう」
全員から『ありがとう』をもらったグレッグがセルゲイ爺ちゃんのところに駆け戻りながら『うれちいって~!』と、大声を⋯⋯大声を出したのです!
「ほうか、良かったのう。次はブランコじゃったか?」
「うん、ブランコたのしい」
「そこは『楽しみ』ゆうとこじゃな」
「たのしみ~」
その日の夕食にトーマス司教様が乱入されてお父様と祝杯を上げられた後、セルゲイ爺ちゃんを奇襲されました。
有言実行ですね、二日酔いにならないようお祈りしておきます。
21
お気に入りに追加
2,740
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?
よどら文鳥
恋愛
デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。
予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。
「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」
「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」
シェリルは何も事情を聞かされていなかった。
「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」
どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。
「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」
「はーい」
同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。
シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。
だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。
完結 喪失の花嫁 見知らぬ家族に囲まれて
音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいて見覚えがない家族がいた。彼らは「貴女は記憶を失った」と言う。
しかし、本人はしっかり己の事を把握していたし本当の家族のことも覚えていた。
一体どういうことかと彼女は震える……
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」
子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。
失意のどん底に突き落とされたソフィ。
しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに!
一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。
エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。
なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。
焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
私が聖女になったからって、男と出て行ったあなたが今更母親面しないでください。
木山楽斗
恋愛
父が亡くなってからすぐに、母は男と出て行った。
彼女にとって、私は邪魔でしかない存在だったのである。それはわかっていたため、特に悲しみも湧いてこなかった。
しかしながら、どうやって生きていけばいいかはわからなかった。母の影響で、町の人々からも嫌われていた私は、迫害同然の扱いを受けていたのだ。
そんな私を助けてくれたのは、貴族であるキルスタインさんとラーンディスさんだった。
所用で町を訪れた二人は、私の境遇を見かねてある孤児院に入れてくれたのである。
その孤児院で育った私は、魔法使いの道を進んだ。
幸いにも私は、秀でた才能があった。その才能もあって、私は王国の聖女に選ばれたのだ。
それを聞きつけた母は、私のことを訪ねてきた。
驚くべきことに、彼女は今更母親面してきたのだ。
当然のことながら、私がそんなことを認める訳がなかった。
私は補佐となったキルスタインさんと協力して、母を追い返したのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる