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49.馬車で、職務質問ですか!?
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「ステファン様は結婚式の日泥酔してしまわれたので執事とメイド長の3人で夜を過ごされましたの。翌朝には出征されましたし。その次にお会いしたのは先日ビビアン様や子供達を連れて帰られた日ですから」
「それなのに今まで手続きをされなかったのは何か理由が?」
子供達を別の馬車にしたのはこの話をするためだったのだと漸くわかりました。子供達がいない方が落ち着いて話せますもの。
「一応縁あって嫁いだわけですし、遠方にいらっしゃる理由は国や国民の為でしたから。お帰りになられないうちにいなくなるのは失礼に当たるのではないかと思いましたの」
「なんと⋯⋯中尉は年に2回の休暇にも帰っていなかったのですね」
「はい、お手紙は何度かお出ししたのですがお返事がなくて。こちらから行くのは危険だからと伯爵夫妻から禁じられておりましたのでお会いした事はないままですの。それを証明できる書類も揃っておりますから直ぐに手続きは終わると思います」
伯爵夫妻は結婚した後も卒業まで学園に通う許可も下さいました。友達との交流は禁止されましたが子爵家経由でやり取りは続いておりますし、何度か内緒でお茶をしたこともあります。
比較的自由にさせてもらえてるのだからと思っておりましたが、お父様との話の後では理不尽だったと思うようになりました。だからと言って突然恨んだりもしておりませんけれど⋯⋯。
リリスティア・ラングローズに戻るのが今まで以上に嬉しくなったといった感じですね。
「その後については何か考えておられるのですか?」
「仕事を見つけようと思っております。お兄様も家族を連れて領地から戻られるでしょうから、それまでに住む場所と仕事を決めなくてはと思っておりますの」
「ご一緒には住まれないのですか?」
「出戻りの小姑として居座るのは気が進みませんから、小さな家を借りて孤児院の職員か通いのメイドの仕事を見つけたいと思っております」
王宮の登用試験は内緒にしておきます。お人好⋯⋯情に熱いフォレスト公爵様ですからコネ⋯⋯『強権発動』などと仰られるかもしれませんから。
それに、フォレスト公爵様が子供達を引き取られるのであればメイド希望とお伝えしておけば『うちに来ませんか?』と言っていただけるかもしれませんし。
邪な思いがバレていない事を祈ります。
「昨日ラングローズ卿からお預かりした資料はこれから念の為裏付け調査を行いますが、そのまま裁判に使えそうだと言われました。非常に喜んでいて、優秀な調査員として雇いたいと言っていたので勝手に断っておきました。人使いが荒い奴ですし手が早いので」
フォレスト公爵様が口角をあげてニヤリと笑われましたが、わたくしに対するお仕事のスカウトを潰されたと言う事でしょうか? 優秀だなんていう社交辞令を鵜呑みにするわけではありませんけれど、調査員ができたら面白そうでしたので少し残念な気が致します。
「危険な仕事はして欲しくありませんので」
「⋯⋯本気で仰ったわけではないと存じておりますわ。いずれにせよわたくしには荷が重すぎるお話ですしね」
「放浪癖のある医師というのは、もしかして子供達の診断書を書いて下さったケニス先生ですか?」
「はい、今は子爵領と王都を行き来して仕事をしておられますの。とても優秀な方ですからとても助かっています」
「司教になられた方と言いケニス医師といいリリスティア様の周りには優秀な方が集まっておられるのですね。ターニャさんも」
「ターニャは侍女としても護衛としても最高ですし、女性としても最高ですから」
気になっておられるなら馬車に乗っている今がチャンスだと思いますよ。
「私の護衛と同じくらいの反応速度でしたから、女性騎士として公爵家に欲しいくらいでした」
「⋯⋯えーっと、女性騎士としてですか?」
「はい、リリスティア様の護衛を引き抜きたいとは思いませんが、うちにも女性騎士がいますから時々手合わせして気合を入れて欲しいと思っています。男性騎士との戦いでもかなりいける気がしています」
「はぁ、そう⋯⋯ええ、かなりいけると思います」
フォレスト公爵様の『欲しい』は騎士としてだったのでしょうか。まあ、どちらにしてもターニャは凄いですから。
拍子抜けとはこんな感じかも。
フォレスト公爵様とケニス先生のバトルを楽しみにしていたのでちょっと残念です。
恋愛小説によくあるようなライバル同士の戦いを見てみたかったとか言いません。
ターニャを挟んで並ぶフォレスト公爵様とケニス先生という最高のシチュエーションを絵画にしたいとかも言いませんけれど、グレッグ達を含めたら並いる宗教画などよりも崇高な絵になりそう⋯⋯神と女神と天使⋯⋯なんて贅沢なんでしょうか。
またまた妄想に耽っているうちに教会に着いたようですが⋯⋯大変です、トーマス司教様自らが教会の前でお待ちになっておられます!!
「それなのに今まで手続きをされなかったのは何か理由が?」
子供達を別の馬車にしたのはこの話をするためだったのだと漸くわかりました。子供達がいない方が落ち着いて話せますもの。
「一応縁あって嫁いだわけですし、遠方にいらっしゃる理由は国や国民の為でしたから。お帰りになられないうちにいなくなるのは失礼に当たるのではないかと思いましたの」
「なんと⋯⋯中尉は年に2回の休暇にも帰っていなかったのですね」
「はい、お手紙は何度かお出ししたのですがお返事がなくて。こちらから行くのは危険だからと伯爵夫妻から禁じられておりましたのでお会いした事はないままですの。それを証明できる書類も揃っておりますから直ぐに手続きは終わると思います」
伯爵夫妻は結婚した後も卒業まで学園に通う許可も下さいました。友達との交流は禁止されましたが子爵家経由でやり取りは続いておりますし、何度か内緒でお茶をしたこともあります。
比較的自由にさせてもらえてるのだからと思っておりましたが、お父様との話の後では理不尽だったと思うようになりました。だからと言って突然恨んだりもしておりませんけれど⋯⋯。
リリスティア・ラングローズに戻るのが今まで以上に嬉しくなったといった感じですね。
「その後については何か考えておられるのですか?」
「仕事を見つけようと思っております。お兄様も家族を連れて領地から戻られるでしょうから、それまでに住む場所と仕事を決めなくてはと思っておりますの」
「ご一緒には住まれないのですか?」
「出戻りの小姑として居座るのは気が進みませんから、小さな家を借りて孤児院の職員か通いのメイドの仕事を見つけたいと思っております」
王宮の登用試験は内緒にしておきます。お人好⋯⋯情に熱いフォレスト公爵様ですからコネ⋯⋯『強権発動』などと仰られるかもしれませんから。
それに、フォレスト公爵様が子供達を引き取られるのであればメイド希望とお伝えしておけば『うちに来ませんか?』と言っていただけるかもしれませんし。
邪な思いがバレていない事を祈ります。
「昨日ラングローズ卿からお預かりした資料はこれから念の為裏付け調査を行いますが、そのまま裁判に使えそうだと言われました。非常に喜んでいて、優秀な調査員として雇いたいと言っていたので勝手に断っておきました。人使いが荒い奴ですし手が早いので」
フォレスト公爵様が口角をあげてニヤリと笑われましたが、わたくしに対するお仕事のスカウトを潰されたと言う事でしょうか? 優秀だなんていう社交辞令を鵜呑みにするわけではありませんけれど、調査員ができたら面白そうでしたので少し残念な気が致します。
「危険な仕事はして欲しくありませんので」
「⋯⋯本気で仰ったわけではないと存じておりますわ。いずれにせよわたくしには荷が重すぎるお話ですしね」
「放浪癖のある医師というのは、もしかして子供達の診断書を書いて下さったケニス先生ですか?」
「はい、今は子爵領と王都を行き来して仕事をしておられますの。とても優秀な方ですからとても助かっています」
「司教になられた方と言いケニス医師といいリリスティア様の周りには優秀な方が集まっておられるのですね。ターニャさんも」
「ターニャは侍女としても護衛としても最高ですし、女性としても最高ですから」
気になっておられるなら馬車に乗っている今がチャンスだと思いますよ。
「私の護衛と同じくらいの反応速度でしたから、女性騎士として公爵家に欲しいくらいでした」
「⋯⋯えーっと、女性騎士としてですか?」
「はい、リリスティア様の護衛を引き抜きたいとは思いませんが、うちにも女性騎士がいますから時々手合わせして気合を入れて欲しいと思っています。男性騎士との戦いでもかなりいける気がしています」
「はぁ、そう⋯⋯ええ、かなりいけると思います」
フォレスト公爵様の『欲しい』は騎士としてだったのでしょうか。まあ、どちらにしてもターニャは凄いですから。
拍子抜けとはこんな感じかも。
フォレスト公爵様とケニス先生のバトルを楽しみにしていたのでちょっと残念です。
恋愛小説によくあるようなライバル同士の戦いを見てみたかったとか言いません。
ターニャを挟んで並ぶフォレスト公爵様とケニス先生という最高のシチュエーションを絵画にしたいとかも言いませんけれど、グレッグ達を含めたら並いる宗教画などよりも崇高な絵になりそう⋯⋯神と女神と天使⋯⋯なんて贅沢なんでしょうか。
またまた妄想に耽っているうちに教会に着いたようですが⋯⋯大変です、トーマス司教様自らが教会の前でお待ちになっておられます!!
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