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35.犯罪の暴露と公爵の提案
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「驚かせてすまない。大丈夫だから元の場所で待機してくれ」
護衛が起こした椅子に腰掛けたフォレスト公爵様は護衛達を下がらせた後、額に拳を押し当てて目をぎゅっと瞑り天井に顔を向けておられます。
「ターニャも向こうで待っててくれる?」
フォレスト公爵様を睨みつけていたターニャが聞こえよがしに『チッ!』と舌打ちをすると、驚いたフォレスト公爵様が目をまん丸にしてターニャを凝視しました。
護衛達の集まる壁際に戻るターニャの後ろ姿は怒りに溢れていますが、それを見つめるフォレスト公爵様のご様子は好意的な?
コナー氏に何か言われたターニャがにっこりと笑いかけ耳元に顔を近づけています。危険だと叫んであげた方が良いのでしょうか?
少し顔を赤らめたコナー氏が『ぐふっ』と声をあげて崩れ落ちました。
「うん、良い」
「はい?」
「彼女はリリスティア様の侍女兼護衛かな。欲しい」
あら、お叱りを受けるどころか褒められてしまいました。もしかしてフォレスト公爵様が独身のままなのは可憐な社交界の華よりもターニャのようなピリッと辛さもある女性の方がお好きだからなのかもしれません。
単にターニャの美貌に魅せられたのかもですが。
「ターニャと言います。人気者ですから倍率は高いですわよ」
「でしょうね。でも⋯⋯凄く良い」
意外なところでケニス先生のライバル出現です。
「先着順というわけではありませんし、応援致しますわ」
「良いんですか?」
「勿論ですわ。どちらを選ぶか決めるのは本人の自由ですもの。わたくしは全員を応援します」
ケニス先生ごめんなさい。でも、戦いはフェアでなくてはなりませんから⋯⋯それとなく他にもいらっしゃるとだけは伝えておきますね。
「えーっと、脱税と人身売買でしたね」
居住まいを正したフォレスト公爵様が話を元に戻されました。色に惑わされて本来の目的を忘れない、切り替えの速さは好印象です。
「はい、今日は持ってきておりませんがお父様に保管していただいております。もし必要であれば子爵家に連絡して下さいませ」
「それは助かりますが、資料が揃っているのに告発をしなかったんですね」
犯罪を知りながら告発していないのですから、険しい顔になってしまわれるのも当然です。
「言い訳をするならばソラリス侯爵のことを調べきれていないからです。司法省のどなたと繋がっているのかハッキリしなくては揉み消されてしまう可能性がありますでしょう? そこは今お父様主導で調査中ですの」
「失礼致しました。リリスティア様を疑うような態度をとり申し訳ありません」
フォレスト公爵様が深々と頭を下げられました。
「頭を上げて下さいませ。フォレスト公爵閣下が不信感を抱かれるのは当然ですからわたくしは気にしておりませんし、閣下もお気になさらずいて下さると助かります。
この段階で情報をお知らせしたのは閣下の為とか正義のためではなくわたくしの個人的な欲のためですし」
フォレスト公爵様が頭を下げるとコナー氏が益々目を吊り上げてしまうのでやめていただけると助かります。
ほら、ターニャが嬉しそうにコナー氏に何か言って⋯⋯。
「欲のためですか?」
「はい。一番大きな理由は⋯⋯マーベル伯爵を潰せば子供達の安全が近付きそうだと思いましたの」
「⋯⋯確かに、その方法がありましたね」
「あの方達の元で子供達が幸せに暮らせるとは思えません。孤児院に入れるならまだマシな方で、いつの間にか他国に売られていそうですから」
「第二の理由は?」
「えーっと、色々ありまして私怨と申しますか⋯⋯。『ざまぁ』出来るチャンスかなぁと」
恥ずかしすぎて詳しい説明はできませんから、なんとなくで察していただけたようでホッとしました。
可哀想な子を見るような目はやめていただきたいですけど。
「一つ私から提案があるのですが」
「どのような事でしょうか。わたくしに出来る事であれば喜んでお手伝させていただきます」
もう一度居住まいを正してから口にされたのですから余程重要な内容なのでしょう。フォレスト公爵様のお陰で子供達の安全が近づいておりますから、恩返しができるなら喜んでお手伝いさせていただきたいと思います。
「リリスティア様は子供達を引き取りたいと思っておられるのですね」
「子爵家で引き取り、子供達が望む間は側にいて守ってあげたいと思っております」
ずっとそばにいたいと思うほど可愛いと思っておりますけれど、それはわたくしの我儘ですから口にはできません。
「どんな方法でもでしょうか?」
「仰る意味がよくわかりませんけれど⋯⋯犯罪に手を染めるような方法以外で確実に子供達の安全が保障されるのであれば、どんな方法でも構わないと思っております」
「では離婚して私と結婚していただけませんか?」
護衛が起こした椅子に腰掛けたフォレスト公爵様は護衛達を下がらせた後、額に拳を押し当てて目をぎゅっと瞑り天井に顔を向けておられます。
「ターニャも向こうで待っててくれる?」
フォレスト公爵様を睨みつけていたターニャが聞こえよがしに『チッ!』と舌打ちをすると、驚いたフォレスト公爵様が目をまん丸にしてターニャを凝視しました。
護衛達の集まる壁際に戻るターニャの後ろ姿は怒りに溢れていますが、それを見つめるフォレスト公爵様のご様子は好意的な?
コナー氏に何か言われたターニャがにっこりと笑いかけ耳元に顔を近づけています。危険だと叫んであげた方が良いのでしょうか?
少し顔を赤らめたコナー氏が『ぐふっ』と声をあげて崩れ落ちました。
「うん、良い」
「はい?」
「彼女はリリスティア様の侍女兼護衛かな。欲しい」
あら、お叱りを受けるどころか褒められてしまいました。もしかしてフォレスト公爵様が独身のままなのは可憐な社交界の華よりもターニャのようなピリッと辛さもある女性の方がお好きだからなのかもしれません。
単にターニャの美貌に魅せられたのかもですが。
「ターニャと言います。人気者ですから倍率は高いですわよ」
「でしょうね。でも⋯⋯凄く良い」
意外なところでケニス先生のライバル出現です。
「先着順というわけではありませんし、応援致しますわ」
「良いんですか?」
「勿論ですわ。どちらを選ぶか決めるのは本人の自由ですもの。わたくしは全員を応援します」
ケニス先生ごめんなさい。でも、戦いはフェアでなくてはなりませんから⋯⋯それとなく他にもいらっしゃるとだけは伝えておきますね。
「えーっと、脱税と人身売買でしたね」
居住まいを正したフォレスト公爵様が話を元に戻されました。色に惑わされて本来の目的を忘れない、切り替えの速さは好印象です。
「はい、今日は持ってきておりませんがお父様に保管していただいております。もし必要であれば子爵家に連絡して下さいませ」
「それは助かりますが、資料が揃っているのに告発をしなかったんですね」
犯罪を知りながら告発していないのですから、険しい顔になってしまわれるのも当然です。
「言い訳をするならばソラリス侯爵のことを調べきれていないからです。司法省のどなたと繋がっているのかハッキリしなくては揉み消されてしまう可能性がありますでしょう? そこは今お父様主導で調査中ですの」
「失礼致しました。リリスティア様を疑うような態度をとり申し訳ありません」
フォレスト公爵様が深々と頭を下げられました。
「頭を上げて下さいませ。フォレスト公爵閣下が不信感を抱かれるのは当然ですからわたくしは気にしておりませんし、閣下もお気になさらずいて下さると助かります。
この段階で情報をお知らせしたのは閣下の為とか正義のためではなくわたくしの個人的な欲のためですし」
フォレスト公爵様が頭を下げるとコナー氏が益々目を吊り上げてしまうのでやめていただけると助かります。
ほら、ターニャが嬉しそうにコナー氏に何か言って⋯⋯。
「欲のためですか?」
「はい。一番大きな理由は⋯⋯マーベル伯爵を潰せば子供達の安全が近付きそうだと思いましたの」
「⋯⋯確かに、その方法がありましたね」
「あの方達の元で子供達が幸せに暮らせるとは思えません。孤児院に入れるならまだマシな方で、いつの間にか他国に売られていそうですから」
「第二の理由は?」
「えーっと、色々ありまして私怨と申しますか⋯⋯。『ざまぁ』出来るチャンスかなぁと」
恥ずかしすぎて詳しい説明はできませんから、なんとなくで察していただけたようでホッとしました。
可哀想な子を見るような目はやめていただきたいですけど。
「一つ私から提案があるのですが」
「どのような事でしょうか。わたくしに出来る事であれば喜んでお手伝させていただきます」
もう一度居住まいを正してから口にされたのですから余程重要な内容なのでしょう。フォレスト公爵様のお陰で子供達の安全が近づいておりますから、恩返しができるなら喜んでお手伝いさせていただきたいと思います。
「リリスティア様は子供達を引き取りたいと思っておられるのですね」
「子爵家で引き取り、子供達が望む間は側にいて守ってあげたいと思っております」
ずっとそばにいたいと思うほど可愛いと思っておりますけれど、それはわたくしの我儘ですから口にはできません。
「どんな方法でもでしょうか?」
「仰る意味がよくわかりませんけれど⋯⋯犯罪に手を染めるような方法以外で確実に子供達の安全が保障されるのであれば、どんな方法でも構わないと思っております」
「では離婚して私と結婚していただけませんか?」
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