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14.リリスティアVS能面執事
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「エマーソン、子供服を扱っている商会に声をかけてくれる?」
「はい、直ぐに手配いたします」
「それとお父様に手紙を届けて欲しいの」
「⋯⋯このタイミングででしょうか。ご存知のように今日は人手が足りないほどの状況です。急ぎでなければ明日以降にしていただけると助かります」
「直ぐによ。10分位で準備ができるから直ぐにわたくしの自室に取りに来るよう伝えてください」
エマーソンはわたくしに対する扱いを抗議してもらうようお父様に頼むのだと勘違いしているのでしょう。そうではないと説明しても良いのですがマーベル伯爵家至上主義のエマーソンなら何を考え、どのような行動に出るか⋯⋯考えるのも面倒ですし時間の無駄です。
思いとどまらせようとするエマーソンを無視して2階にある自室に戻りました。ターニャは朝一番で子爵家に行っています。立て続けの連絡になりますが仕方ありません。
まさかフォルスト公爵様がパーティーにお越しになるとは思いませんでした。と言うよりもグレッグ達を会わせなければならないとは。
走り書きに近い手紙になってしまいましたがお父様には理解していただけるでしょう。御者のウォルトに預けて必ず返事をもらってくるように頼みました。
さて、次の問題はグレッグのマナーですがその前に⋯⋯エマーソンを探しに行きましょう。
お父様の情報があれば十分だとも思いますがエマーソンに話を聞けばマーベル伯爵家寄りの情報も手に入るはずです。
「エマーソン、忙しいところ申し訳ないのだけど少し時間をもらえるかしら?」
「はい、執務室ではいかがでしょうか」
周りに話を聞かれたくないと気付いてくれたようです。打てば響くような反応が嬉しい反面やはり警戒してしまいます。
エマーソンに続いて執務室に入りました。お義父様は殆どノータッチですからここはエマーソンの城と言っても良いかもしれません。
「このまま話をはじめたら首が痛くなってしまいそうだから、エマーソンも座ってくれるかしら?」
仕方なく座るんだと言わんばかりの態度でわたくしの正面に向かい合わせに座ったエマーソンはいつになく苛立った様子でした。
「フォルスト公爵様について教えて欲しいの」
「⋯⋯と言いますと?」
警戒心MAXの能面執事が背筋を伸ばしてわたくしを凝視しています。
「正直に言って今現在のグレッグは高位貴族の方の前で礼儀正しく挨拶できるだけのキャパもスキルも持ち合わせていません。
今までの生活では放置・虐待されていた可能性がありますし、新しい環境に突然放り込まれ二親からは完全放置されています。
昨日は不安と恐怖で癇癪を起こしてしまいましたが仕方のないことだったとわたくしは考えています。
今朝は少し落ち着いていますが大勢の集まるパーティー会場で威圧感たっぷりの高位貴族の方に挨拶をしなさいと言えばどうなるか⋯⋯。
ステファン様との関係が少しでもわかればフォルスト公爵様が突然お越しになられる理由も推測できるのではないかと思っています。
マーベル伯爵家としてどのような狙いでフォルスト公爵様とグレッグ達の顔合わせをさせたいのかもわたくしにはわかっていませんが、フォルスト公爵様の為人が分かれば伯爵家のお役に立つことができなくでも、足を引っ張ることにならずに済むのではないかと」
「⋯⋯フォルスト公爵様はステファン様の所属しておられた部隊の隊長でいらっしゃいます。ステファン様のお話では隊員の中でも特に目をかけていただいていたそうで、今回お越しになられるのは特別な部下を慰労する為だと仰っておられました」
「それを信じていますか?」
「⋯⋯疑う理由がございません。執事とはお仕えする家の方々の願いを叶え、より過ごしやすく配慮するのが使命です」
慣れない言語の本でも読んでいるかのように聞こえてしまいました。マーベル伯爵家命で仕えてきたエマーソンには辛い状況でしょう。
「まるで自分に言い聞かせているように聞こえますわ。いつもの能面はどこに落としてしまったのかしら?」
「⋯⋯」
忠義者で清廉潔白なエマーソンにはステファン様の『愛人と庶子』を受け入れるのは大変だったかもしれません。ましてや庶子を嫡子のように表舞台に出そうとしているのですから。
「はい、直ぐに手配いたします」
「それとお父様に手紙を届けて欲しいの」
「⋯⋯このタイミングででしょうか。ご存知のように今日は人手が足りないほどの状況です。急ぎでなければ明日以降にしていただけると助かります」
「直ぐによ。10分位で準備ができるから直ぐにわたくしの自室に取りに来るよう伝えてください」
エマーソンはわたくしに対する扱いを抗議してもらうようお父様に頼むのだと勘違いしているのでしょう。そうではないと説明しても良いのですがマーベル伯爵家至上主義のエマーソンなら何を考え、どのような行動に出るか⋯⋯考えるのも面倒ですし時間の無駄です。
思いとどまらせようとするエマーソンを無視して2階にある自室に戻りました。ターニャは朝一番で子爵家に行っています。立て続けの連絡になりますが仕方ありません。
まさかフォルスト公爵様がパーティーにお越しになるとは思いませんでした。と言うよりもグレッグ達を会わせなければならないとは。
走り書きに近い手紙になってしまいましたがお父様には理解していただけるでしょう。御者のウォルトに預けて必ず返事をもらってくるように頼みました。
さて、次の問題はグレッグのマナーですがその前に⋯⋯エマーソンを探しに行きましょう。
お父様の情報があれば十分だとも思いますがエマーソンに話を聞けばマーベル伯爵家寄りの情報も手に入るはずです。
「エマーソン、忙しいところ申し訳ないのだけど少し時間をもらえるかしら?」
「はい、執務室ではいかがでしょうか」
周りに話を聞かれたくないと気付いてくれたようです。打てば響くような反応が嬉しい反面やはり警戒してしまいます。
エマーソンに続いて執務室に入りました。お義父様は殆どノータッチですからここはエマーソンの城と言っても良いかもしれません。
「このまま話をはじめたら首が痛くなってしまいそうだから、エマーソンも座ってくれるかしら?」
仕方なく座るんだと言わんばかりの態度でわたくしの正面に向かい合わせに座ったエマーソンはいつになく苛立った様子でした。
「フォルスト公爵様について教えて欲しいの」
「⋯⋯と言いますと?」
警戒心MAXの能面執事が背筋を伸ばしてわたくしを凝視しています。
「正直に言って今現在のグレッグは高位貴族の方の前で礼儀正しく挨拶できるだけのキャパもスキルも持ち合わせていません。
今までの生活では放置・虐待されていた可能性がありますし、新しい環境に突然放り込まれ二親からは完全放置されています。
昨日は不安と恐怖で癇癪を起こしてしまいましたが仕方のないことだったとわたくしは考えています。
今朝は少し落ち着いていますが大勢の集まるパーティー会場で威圧感たっぷりの高位貴族の方に挨拶をしなさいと言えばどうなるか⋯⋯。
ステファン様との関係が少しでもわかればフォルスト公爵様が突然お越しになられる理由も推測できるのではないかと思っています。
マーベル伯爵家としてどのような狙いでフォルスト公爵様とグレッグ達の顔合わせをさせたいのかもわたくしにはわかっていませんが、フォルスト公爵様の為人が分かれば伯爵家のお役に立つことができなくでも、足を引っ張ることにならずに済むのではないかと」
「⋯⋯フォルスト公爵様はステファン様の所属しておられた部隊の隊長でいらっしゃいます。ステファン様のお話では隊員の中でも特に目をかけていただいていたそうで、今回お越しになられるのは特別な部下を慰労する為だと仰っておられました」
「それを信じていますか?」
「⋯⋯疑う理由がございません。執事とはお仕えする家の方々の願いを叶え、より過ごしやすく配慮するのが使命です」
慣れない言語の本でも読んでいるかのように聞こえてしまいました。マーベル伯爵家命で仕えてきたエマーソンには辛い状況でしょう。
「まるで自分に言い聞かせているように聞こえますわ。いつもの能面はどこに落としてしまったのかしら?」
「⋯⋯」
忠義者で清廉潔白なエマーソンにはステファン様の『愛人と庶子』を受け入れるのは大変だったかもしれません。ましてや庶子を嫡子のように表舞台に出そうとしているのですから。
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