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12.3人寄っても智慧は出ない
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「マーベル伯爵達はグレッグ達を嫡子のように扱うつもりなの。それで仮面にヒビが入ったんじゃないかしら」
後継のステファン様と第二夫人のビビアン様のお子様でも婚姻前に産まれたなら庶子となりますから嫡子とする方法はないのです。
「養子縁組をしても法律上嫡子とすることはできないもの。伯爵夫妻の勘違いで頭を悩ませてるのね」
「⋯⋯勘違いでしょうか?」
メイド長の眉間に皺が入っています。
「ただの勘違い程度であればエマーソンの能面に影響するとは思えません」
うーん、わたくしなどより長年付き合いのあるメイド長の言葉ですから重みを感じてしまいます。
「でも、勘違い以外にはあり得ないと思うの。グレッグ達が産まれる前に遡ることは出来ないのだし⋯⋯。妊娠がわかった段階で相談していただけていれば方法はいくらでもあったんだけど今更よね」
「「⋯⋯」」
「ステファン様と離婚するのは全然問題ないと言うか予定調和だし、子供のために第二夫人として申請したいと仰って下さればサインしていたのにね」
「その通りでございます。私達使用人一同は若奥様にこれからもここにいていただきたいと願っておりますが、それが叶わない事も理解しておりますから」
そう言えば結婚式当日泥酔したステファン様を介抱してくれたのは執事とメイド長だったと思い出しました。2人は一晩中ステファン様につきっきりで介抱していたのですから『白い結婚』だと知っています。
翌日真っ青な顔で登城し戦地へ向かうステファン様の後ろ姿を見ながら『情け無い』と呟いてました。
「そう言ってくれるのはとても嬉しいわ。メイド長達みんなのお陰で楽しくやってこれたって感謝してるのよ」
マーベル伯爵家のサンドバッグ担当でも離婚せずにいられたのは使用人達のお陰と言っても過言ではありません。
年配の使用人からは出来の悪い姪に対するように覚えるまで何度も丁寧に仕事を教えてもらいましたし、歳の近い使用人からは王都で流行りのカフェの情報を教えてもらったりも。
お義母様達の見ていないところでは笑ったりおやつの食べ比べをしたり⋯⋯。
そのお陰で突然家族と離れ離れになった寂しさなど感じることなく過ごしてきたのです。
お父様達から『さっさと離婚して戻ってきなさい』と言われつつ5年もこの屋敷で過ごしていたのはきちんとケジメをつけたいと思ったからでした。
戦地で頑張っておられるステファン様のいらっしゃらない間に逃げ出すのは不誠実な気がしていただけで、直接お話しして円満に離婚したいと思っているうちに5年も経ってしまったことにわたくし自身驚いております。
月日の経つのはあっという間というか、まさかこんなに長く戦争が続くとは思っておりませんでした。
17歳で結婚して既に22歳ですから離婚後のことも考えなくてはなりません。お父様達がわたくしを追い出すとは思えませんがお兄様は既に結婚して子供もおられます。
出戻りの小姑として実家に居座るのは絶対にお断りですもの。
マーベル伯爵家で培った家事スキルでどこかのお屋敷にメイドとして雇っていただくのが一番現実的な気がしますが、王宮侍女の登用試験を受けてみるのもアリですね。
その時はベスにバレないようにしなくては⋯⋯同僚になったらヘッポコのわたくしは虐められそうです。
そんな事を考えているとターニャが『ゴホン!』とわざとらしく咳をしました。わたくしの悪い癖が出て思考が遠出していたのがバレたみたいです。
「えーっと、取り敢えずお義母様達が何を考えておられるのか探る為に、明日のパーティーで目を光らせておくわ」
うん、良い感じに話を纏められました。ターニャもメイド長も苦笑いしているので『先延ばし』だと言われる前に終わりにしましょう。
「明日は今日より忙しいから終わりにしましょう。遅くまで付き合ってくれてありがとう」
「はい、明日からは当面の間ハンナとメイサがグレッグ様達のお世話係になります」
「メイサなら安心だわ。ハンナとも仲が良かったはずだし、小さな男の子にはちょうど良さそうね。朝食はグレッグ達と一緒にいただくことにするわ」
小柄なメイサは身体を動かすのが大好きです。弟や妹はいなかったはずですがグレッグが庭を走り回るようになれば丁度いい遊び相手になってくれそうです。
「子供達の問題が一つ解決した今夜はぐっすりと眠れそう。2人とも遅くまでありがとう、良い夜を」
翌日のパーティーがとんでもないことになるとも知らず、枕に頭をつけた途端眠りについたのでした。
後継のステファン様と第二夫人のビビアン様のお子様でも婚姻前に産まれたなら庶子となりますから嫡子とする方法はないのです。
「養子縁組をしても法律上嫡子とすることはできないもの。伯爵夫妻の勘違いで頭を悩ませてるのね」
「⋯⋯勘違いでしょうか?」
メイド長の眉間に皺が入っています。
「ただの勘違い程度であればエマーソンの能面に影響するとは思えません」
うーん、わたくしなどより長年付き合いのあるメイド長の言葉ですから重みを感じてしまいます。
「でも、勘違い以外にはあり得ないと思うの。グレッグ達が産まれる前に遡ることは出来ないのだし⋯⋯。妊娠がわかった段階で相談していただけていれば方法はいくらでもあったんだけど今更よね」
「「⋯⋯」」
「ステファン様と離婚するのは全然問題ないと言うか予定調和だし、子供のために第二夫人として申請したいと仰って下さればサインしていたのにね」
「その通りでございます。私達使用人一同は若奥様にこれからもここにいていただきたいと願っておりますが、それが叶わない事も理解しておりますから」
そう言えば結婚式当日泥酔したステファン様を介抱してくれたのは執事とメイド長だったと思い出しました。2人は一晩中ステファン様につきっきりで介抱していたのですから『白い結婚』だと知っています。
翌日真っ青な顔で登城し戦地へ向かうステファン様の後ろ姿を見ながら『情け無い』と呟いてました。
「そう言ってくれるのはとても嬉しいわ。メイド長達みんなのお陰で楽しくやってこれたって感謝してるのよ」
マーベル伯爵家のサンドバッグ担当でも離婚せずにいられたのは使用人達のお陰と言っても過言ではありません。
年配の使用人からは出来の悪い姪に対するように覚えるまで何度も丁寧に仕事を教えてもらいましたし、歳の近い使用人からは王都で流行りのカフェの情報を教えてもらったりも。
お義母様達の見ていないところでは笑ったりおやつの食べ比べをしたり⋯⋯。
そのお陰で突然家族と離れ離れになった寂しさなど感じることなく過ごしてきたのです。
お父様達から『さっさと離婚して戻ってきなさい』と言われつつ5年もこの屋敷で過ごしていたのはきちんとケジメをつけたいと思ったからでした。
戦地で頑張っておられるステファン様のいらっしゃらない間に逃げ出すのは不誠実な気がしていただけで、直接お話しして円満に離婚したいと思っているうちに5年も経ってしまったことにわたくし自身驚いております。
月日の経つのはあっという間というか、まさかこんなに長く戦争が続くとは思っておりませんでした。
17歳で結婚して既に22歳ですから離婚後のことも考えなくてはなりません。お父様達がわたくしを追い出すとは思えませんがお兄様は既に結婚して子供もおられます。
出戻りの小姑として実家に居座るのは絶対にお断りですもの。
マーベル伯爵家で培った家事スキルでどこかのお屋敷にメイドとして雇っていただくのが一番現実的な気がしますが、王宮侍女の登用試験を受けてみるのもアリですね。
その時はベスにバレないようにしなくては⋯⋯同僚になったらヘッポコのわたくしは虐められそうです。
そんな事を考えているとターニャが『ゴホン!』とわざとらしく咳をしました。わたくしの悪い癖が出て思考が遠出していたのがバレたみたいです。
「えーっと、取り敢えずお義母様達が何を考えておられるのか探る為に、明日のパーティーで目を光らせておくわ」
うん、良い感じに話を纏められました。ターニャもメイド長も苦笑いしているので『先延ばし』だと言われる前に終わりにしましょう。
「明日は今日より忙しいから終わりにしましょう。遅くまで付き合ってくれてありがとう」
「はい、明日からは当面の間ハンナとメイサがグレッグ様達のお世話係になります」
「メイサなら安心だわ。ハンナとも仲が良かったはずだし、小さな男の子にはちょうど良さそうね。朝食はグレッグ達と一緒にいただくことにするわ」
小柄なメイサは身体を動かすのが大好きです。弟や妹はいなかったはずですがグレッグが庭を走り回るようになれば丁度いい遊び相手になってくれそうです。
「子供達の問題が一つ解決した今夜はぐっすりと眠れそう。2人とも遅くまでありがとう、良い夜を」
翌日のパーティーがとんでもないことになるとも知らず、枕に頭をつけた途端眠りについたのでした。
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