前世が勝手に追いかけてきてたと知ったので

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第三章

14.最恐なのは誰?

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【ところで向こうの部屋でブルブル震えてる悪魔はいつ挨拶に来るのかねえ】

「あ、忘れてた~。エルにゃ、こっちにおいでよ」

【⋯⋯】

「沢山いるから恥ずかしいのかも! すっごいモフモフの雪豹で名前はエルだから、エルにゃって呼んでるんだ~。すぐ連れてくるね」

【【⋯⋯(悪魔だよね)】】



 昨日の部屋に行くとエルが隅っこに頭をくっつけて丸まりブルブルと震えていた。

【嘘にゃ! この家はおかしいにゃ。奴等をここに呼び寄せるとは思わにゃかったにゃ】

「エルにゃ~、お友達がいっぱい来ててエルにゃに会いたいって。一緒に向こうの部屋に行こう?」

【やだにゃ、殺されるにゃ。俺まだララちゃんと最後まで⋯⋯にゃあ⋯⋯殺される前にララちゃんとおぉぉ】

「えーっと、向こうにいるのはみんなオーディンを敵だと思ってるメンバーなんだよね~。あ、エイルはどうなんだろう?⋯⋯⋯⋯フレイヤの事は嫌いだって言ってるし男嫌いだから。うん、全員一緒の仲間だよ~」

【む、無理にゃ~。俺、帰りたいにゃ。悪魔達の城の方が怖くないにゃ】

「大丈夫だよ、ほれほれ」

 グロリアはエルを『うんしょ』と抱え上げてみんなのいる今にやってきた。

「お待たせです。この子がうっかり召喚したらしいエルにゃです。元は⋯⋯ フラウロスって言う異世界の悪魔ちゃんで、名前はメフリエルからとって『エル』にしたの」

【本当に雪豹だね~、モフってもいい?】

【わあ、俺っちもやってみた~い】

【ひいっ! こにゃいでにゃ、来たらダメにゃ】

【【にゃ? ⋯⋯可愛いぃぃぃ~】】

【グラネのなまかみたいでちゅ】

 全員に囲まれモフモフツンツンされたエルは早々に白目をむいてヘソ天になった。

【気の弱い悪魔だねえ、こんなので役に立つのかい?】

「すっごい物知りだし火魔法は多分神級でいっぱい助けてもらったから間違いなし」

「嘘つきで癖は強いがなんでも知ってるからな」

【フラウロスなら役に立ちそうじゃ】

「ええ? もしかしてヴァンは知ってるの?」

【序列までは覚えておらぬがフラウロスは地獄の大公爵。中々に強い魔神であったはず。敵を全て焼き尽くす力を持っておる上に他の悪魔や精霊から召喚者を守る】

 ヴァンはジェニと共にあちこちの世界を渡り歩いた時に軍団を率いて戦う様を見たことがあると言う。

「結構過激な戦い方をする奴だし、何より正確な情報を動かずに手に入れられる特典付きだからな」

【でもさあ、嘘つきなら信用できないよね?】

 3兄妹の中で一番おっとりとした性格のイオルが首を傾げた。

「普段は嘘つきだけど魔法陣の三角形の中では嘘をつけないから、昨夜も色々教えてくれたしね。セイズは我欲とか妄想が混じってるから嘘が多いって」

(そう言えば、この国の未来はどうなったのかなぁ? みんながここに来て変わったならいいんだけど)

【それは便利かも、俺っちの未来も教えてくれるかなぁ?】

 チラチラとヘルを見ながら聞いてきたマーナはヘルのひと睨みでイオルの陰に隠れた。



 広い居間にはそれぞれの好みの椅子やラグが持ち込まれてまったりとお茶やおやつを楽しんでいる。エルもカニスは怖くないと気付いたらしくぺったりと横に張り付いて一緒にジャーキーを齧っていた。

【で、アタシ達をここに呼んだのはイチャイチャを見せびらかしたいからってことかい?】

「へ?」「ええっ!」

 ソファに並んで座りおやつを交換したり耳元で内緒話をしては顔を赤らめたりしている事に、本人達は気づいていなかったらしい。

【全くいい歳して舞い上がって⋯⋯はぁ、超ウケるんだけど? 笑っちまいそうだよ】

「笑ったらいいじゃん。ヘルは元々笑い上戸なんだからさあ」

【エイル、アタシのイメージを壊すんじゃないよ! ヘルヘイムに君臨する恐怖の女神、死と再生を司り死者を支配するヘル様だよ!?】

「ブレイ◯ボードが動かないって尻餅ついて涙目になってたくせに~、こないだは携帯ゲーム機で魔物退治に失敗してゲーム機握りつぶして落ち込んでたんだよね~。
カッコつけるのそろそろ飽きてこないの?」

【⋯⋯ふん、エイルには一生薬草を分けてやらないからね】



「あ、薬草で思い出した! リンド医師がヤバいの。エルにゃ詳しく教えて欲しいからお願いね」

【もっしゃもっしゃ⋯⋯へ?】

 《ララちゃんのおねだり~》

【ちんまいちゃんらちいなまえでちゅ】

【⋯⋯おではグロリアにだけは名前付けさせないだにぃ】

「エルにゃ、エイルに関する質問に答えてね」

(この国の未来に関わることには触れないようにしなくちゃ。もし全てを消滅させるのが本来の定めだなんて話したら困るもん)

【⋯⋯いいにゃ、英雄スヴィプダグのせいで男嫌いににゃったエイルにゃ。薬草オタクは過去から未来まで変わらにゃいにゃ。死者の蘇生ができたのは過去、できにゃくにゃったのはフレイヤのせいにゃ】

「なんで知ってんの? 誰にも話したことなかったのに!?」

【俺は全てを知る悪魔にゃ。グロリアに召喚された後この世界の全てを知ったにゃ】

 ふふんと顎を上げて自慢げな顔をしたが、ヴァンと目が合うと尻尾を咥えて小さくなった。

「⋯⋯フレイヤがメングロズって名前でいた時、気まぐれで治療の真似事をしたんだ。で、薬を間違えて⋯⋯復活させろって言われて断ったら呪いをかけやがった。あんのクソ女、超ムカつく! 今度会ったら顔にイボができる薬飲ましてやる!!」

【リンドはエイルが好きだったにゃ、人間界に降りて追いかけるほどにゃ。何度か見つけたけどエイルは気付かにゃかったから今はエイルを恨んでるにゃ。エイルはリンドに捕まって魔導具で隷属させられるにゃ】

 全員が息を飲み込んだのを見たエルが『にゃ!』と意地悪そうに笑った。

【と言う未来は変わったにゃ。リンドはまだエイルとブロックがここに来てるのに気付いてにゃいにゃ。それが現在にゃ。
リンドはこれからもエイルを捕まえようとするにゃ。魔導具は作れにゃいにゃ。これが今ある未来にゃ】

「はあ、驚かせんじゃないわよ! もったいぶったクソ悪魔なんて可愛くもなんともないんんだからね! それにしても、フレイヤと言いリンドと言いただの八つ当たりじゃん。くっそムカつく! ひねくれ猫のあんたもね!」

【さっきの仕返しにゃ、悪魔の腹に『ぶぶ~』するのは禁止にゃ。あれはくすぐったくてくせににゃるにゃ】

【そそ、その魔導具ってもしかしておでが作る予定だったとかだにぃ】

 エルがチラッとグロリアの顔を見たのは返事をするかどうか確認しているのだろう。

【そうにゃ、ブロックとエイトリはエイルが拉致される時一緒に連れてかれてエイトリの命と引き換えに魔導具を作らされるはずだったにゃ。でもここに来たから未来が変わったにゃ。
ブロックはレーヴァテインの封印を解くにゃ。これがブロックの今ある未来にゃ】

「レーヴァテインか⋯⋯いや、アレは」

 ジェニが苦々しげな顔をして腕を組んだ。

「アレが今回の戦いに必要になるの?」

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