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第二章

54.アーサランド兄弟は微妙なんだよね

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 国中の名医を呼び集めても教会の伝手を使って他国から呼び寄せても全員が『原因不明』と言うのみ。

「我々に関わって欲しくなかったから色々頑張ったみたいなんだけどね、進展がなくずっと眠ったままだそうなんだ。
で、今頃になって奴等は『助けろ』と言い出したんだ。放っておこうかとも思ったんだがせっかくのチャンスだからと乗り込んだんだが、ロズウェルにさえ何も分からなかった」

 ロズウェルの鑑定は上級とされているが実際のところは神級、今までに彼が鑑定できなかったのはグロリアの情報のみ。

「私が何かしたと思っておられるみたいですけど、何もしていないのでお話しできることはありません」

「僕の言い方がまずかったね。グロリアを疑っているわけではないんだ⋯⋯あのロズウェルでさえ原因が掴めないしエイルの薬草も効かない状況なものだから、何か気付いたことがなかったかと思って来てもらったんだ」

 原因はマルデルがドヴェルグに無理やり作らせたネックレスによる隷属だが、それを話せばドヴェルグ達が無事ではすまないかもしれない。

(私からしたら結構良い子達なんだけど、元神族からしたら穢らわしい闇の妖精なんだよね。ティウ達とブロック・エイトリ兄弟を秤にかけたら兄弟の方が大事だもん)

「ほんの些細なことでも良いんだが何か気になったこととかなかったかな?」

「⋯⋯彼等はある時突然マルデルさんの奴隷のようになりました」

「詳しく話してくれるかい?」

「私達はカフェテラスの2階で話しをしてました。ガムラ様は酷くマルデルさんに怯えて帰りたいと言い、残りの3人が逃げてもいつかやって来るからマルデルさんから守ると言って説得していました。
その直後マルデルさんが来て、4人の顔が無表情になり私を追い払いました。
翌日、彼等の話ぶりから記憶がすり替わっていることに気づきました」

「すり替わっていると言うのはどう言うこと?」

「エイル先生はご存知かもしれませんが、彼ら4人は入学してから頻繁に私と話をしたり昼食を取ったりしていましたが、その記憶がマルデルさんになっていてガムラさんは私の名前さえ忘れていました。
それ以降、4人はマルデルさんとずっと行動を共にしていましたが、仲が良いと言うよりは全ての言動を支配された下僕や奴隷のように見えました」

「全ての言動、下僕⋯⋯」

「マルデルさんが何か言えば全てを叶えようとする様子は不気味なくらいでした」

「オリーも同じことを言ってた。あの日、マルデルが何か言うたびにティウ達が従う様子は真面じゃなかった。気持ち悪かったと」

(そうだ、オリー教授が見てたんだもん。後は任せられないかなぁ)

「⋯⋯結局新しいことは何もわからないか。神界との連絡が取れない私達ではレーヴァテインの詳細が分からないし」

「あの男の作った剣だからな、ロクでもない小細工が仕掛けられててもおかしくないぜ」

 突然聞こえてきたのはロズウェルの声だった。

「マーウォルス卿は何をしてる?」

「まだあっちの部屋で粘ってる。あの日何があったか聞くまでは帰らんそうだ」

 ヘニルが溜息をつきロズウェルが鼻を鳴らした。

「向こうの部屋はオリーが担当してるんだけど、その話をそこでロズウェルが聞いてるんだ。勿論、向こうの部屋の話は録音してる。
当事者が揃うまでは事件について干渉するのは禁止だと国王から言われてるはずなのにしつこいなぁ」

「レーヴァテインが見つかりゃ解析できんのに、あの場から消えてなくなってるしよお。もしかして奴がなんかしてんじゃねえのか? 奴ならガキどもの意識を奪うくらい平気でやりそうじゃねえか。あのクソ野郎め!
昔っからロクでもない事ばかりして、いけすかねえ奴だったんだ」

 ジェニの悪口を聞いてイラッとしたグロリアが少し大きな声でロズウェルを嘲った。

「自分の実力不足を棚に上げて人のせいにするのってカッコ悪いですよ」

「はあ? なんだと、てめえもっかい言ってみろや!」

「何度でも⋯⋯実力不足を棚に上げて人のせいにする格好悪い人」

「死にたいか!」

 ロズウェルが杖をグロリアに向け火魔法を放った。

 バシュン⋯⋯プスプス⋯⋯

「ほらな、お前できんじゃねえか!?」

 壁にだらしなくもたれていたロズウェルが一歩前に出て再びグロリアに杖を向けた。

「元神族って簡単に人を殺そうとするんで、身を守らないとねぇ。じゃなきゃもう両手で足りないくらい殺されてるんですよ。ほんとクソ野郎とクソ女ばっかりでうんざりします。
今のだって私が何もしなければ丸焦げですよね。防御できずに中級の火魔法を受けたら死んでます。私は純正の人間なんで」

「すまん、絶対お前は防御できるって知ってたから」

 ロズウェルが素直に頭を下げた。

「それも同じ。やっといて『ああ、ごめんごめん』って、超ゆるゆる。本気の謝罪なんて聞いたこともない。その後こう言うんです『謝ったんだから、もういいじゃないか』って。追加するなら『だから協力しろ』かな?
無理強いしないんですよね、だったら帰っていいですよね?」

「⋯⋯あ、ああ。申し訳なかったね」

「ありがとうございます。じゃあお礼⋯⋯魔法が消されてがっかりしてる魔法学権威のショボい先生にサービス情報です。
4人には隷属魔法がかかってました。それが影響してるのかどうか知りませんし、魔法が使えない私がやったんでもありません。
私にでもわかる程度のことも分からず偉そうにするなんて笑ってもいいですよね」

 ソファから立ち上がったグロリアはさっさとドアに向かいノブに手をかけた。

「あー、それからついでに教えてあげると、本物のレーヴァテインじゃなくてそれの模造品でしたよ。マルデル達もレーヴァテイン改って言ってましたし。
アカデミーの魔導具にははっきりと聞こえてたはずですよね」

 わざとらしく大きな音を立ててドアを閉めたグロリアが階段を降りているとエイルが追いかけてきた。

「待って! グロリア、お願い」

(エイル先生にはちょびっとお世話になってるしなぁ)

 仕方なく足を止めたグロリアはエイルと一緒にすぐ近くの面会室に入った。

「防音結界をお願いできる?」

(できないと騒いでも今更だよね~)

 エイルと向かい合ってソファに座ったグロリアは鞄を膝に乗せて少し俯き溜息をついた。

「私はヘルと仲がいい方だと思ってるし、今回ここに来たのはヘルに頼まれたからなの」

 チラッと顔を上げたグロリアと目があったエイルがにっこりと笑った。

「気に入ってる子が学園に入るからちょっと様子を見てきてって⋯⋯ヘルは口は悪いけどおせっかい焼きだから。
まあ、私も面白そうって思ったから同罪なんだけどね」

「⋯⋯」

「グロリアの事は何も教えてもらってないけどヘルが人間に肩入れするなんて前代未聞の事だから、グロリアがただの凡人とは思ってなかったわ。
流石にルーン魔術が使えるとは思ってなかったから驚いたけどね」

「何故それをアーサランド兄弟に話さないんですか?」

「うーん、何故⋯⋯彼等を助ける理由がないからかな? 私、男の人って信用してないのよね。あの2人との付き合いってこの間の事件の時からだから、為人が分かってるわけじゃないし」

(エイルが本当の事を言ってるかどうかってどうやったら分かるんだろう。ヘルは信用してる。ヘルと連絡が取れたら聞けるけど⋯⋯)

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