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お手紙書きました

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「これで良いかしら」

 もう6回目の書き直しです。
 これならいっその事、リディが書いてくれたら良いのに、と思いますが。
 私がお手紙を書いている最中、妹は部屋を出たり入ったり、なんだがとっても忙しそうです。いったい何をしているのでしょうか? 気になってますます筆が進みません。

「まぁ、こんなものではないでしょうか。時間もありませんし、大急ぎで届けて貰いましょう」
 時間がなくなったのは、リディが何度も書き直しを言うから、なんて言ったら百倍になって返ってきそうなので、内緒です。

 メイドに手紙を渡し、紅茶を持って来てもらおうとしたら、既に夕食の時間が過ぎているとのこと。手紙を書き終わるまで、家族みんな待っていてくれたそうです。優しい家族に感謝です。お腹は空いているので、大急ぎで食事に参りましょう。
 妹はとっくに居なくなっておりました。
 一緒に行きたかったですわ。


 家族専用の食堂に向かいます。
 正餐用の食堂は別にありますが、”家族は近くに” と言う両親の希望で、普段食事をとる食堂は、とてもこじんまりしています。と言っても、10人位なら十分に座れますね。

 食堂に入ると、両親と妹は既に席についていて、のんびりおしゃべりをしています。

 両親はワインを、私たち姉妹は果実水で乾杯です。これは毎回の我が家の風習ですの。特にお祝い事がなくても、まず最初に乾杯します。今日一日を無事に過ごせたことと、家族がそろって食事できる喜びを感謝して乾杯です。


「今日はお母様も王宮へいらしたのでしょう?」
「えぇ、王妃様からお声をかけて頂いたの。もう暫くしたら外出も儘ならなくなるから、その前にお茶しましょうって」

 お母さまと王妃様は学園の同級生で、その頃からずっと仲が良くていらっしゃいます。

 王妃様は、王太子殿下がお生まれになられた後、第二子に恵まれず悩んでおられました。議会では側室をと言うお話も出ていましたが、陛下が断固拒否されたので、王太子殿下にはご兄弟がおられないのです。

「王妃様がね、もしこの子が男の子だったら養子に欲しいって。本気でおっしゃったわけではないと思うのだけど」
「陛下からも以前言われたよ。勿論お断りしたがね。王太子殿下はこれから妃を迎えられるわけだし、揉め事の種になるだけだからね」

「でももしもの時は、そうなる可能性もあるのではないですか?」
「難しいところだね。王太子殿下も最近はご健勝であらせられるし、心配はないと思うのだが、こればかりはなんとも言えないかな」

「生まれてくる赤ちゃんが、女の子であることをみんなで祈りましょう! それが一番ですわ」

「・・お姉様のそのお花畑の思考、時々すごく羨ましくなります」

 褒められました? 貶されたような気もしますが、気にしないことにしましょう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Sideリディア

 慌てました。まさかリオン・ウォルターと結婚だなんて。

 私の調べた情報の中では、お姉様とリオン・ウォルターは友人とも呼べない間柄だったはず。せいぜい知人程度の関係だという認識でしたの。おかげで最初、リオン・ウォルターが誰なのか判りませんでしたわ。
 お姉様に結婚を申し込みそうな輩は、別の名前ばかりでしたので。

 たまにお昼をご一緒する程度の関係で結婚を了承するなんて、恐るべしお姉様。
 それとも私の情報が古すぎたのでしょうか。じっくり調べてみなくてはいけませんね。



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