19 / 135
第二章 育ったお花から採れた種
06.絶好調のアメリアとマクベス国王
しおりを挟む
「恋人や愛人の数が多すぎて、集計に手間取っているうちに夜会の日を迎えた(嘘だけど)事は私の手落ちではありますが、王家の方々が気楽に契約を破棄されるのは、周知の事実でございますので、調査せずにいられなかった心情はご理解いただけるかと。
しかも破棄だけでなく負担は全て相手任せ、ご自身達に被害が出れば無理矢理でも相手に責を問う。ありもしない瑕疵を作りあげて、ご自身の行いから世間の目を逸らそうとされた事もおありです。
そのような過去の経験や、手元の情報から鑑みて、危険予測した次第です。ダンビール子爵家や子爵令嬢と関わりがないことは、調べていただければお分かりいただけるはずです。
夜会の費用が増えるたびに、王宮に出向き確認いたしましたが、請求額は増えるばかり。ほんの数ヶ月の間に王妃殿下のドレスは67着、メアリー様29着、マクベス国王陛下3着。因みに王太子殿下は男性用54着、女性用に至っては81着でした。宝石類に関しては数が多すぎて、宝飾店ごとの合計額でご報告させていただいた方が宜しいかと。
私には招待状も届いておりませんし、参加もしておりませんが、王家主催や王妃殿下主催のお茶会や夜会の費用は、茶葉の代金から手土産代までビルワーツ侯爵家に請求がきております。
新しく作られた馬車とそれ専用の馬。王妃殿下と王太子殿下及び王女殿下の、私室の改装と家具一式。王宮の侍女から下働きまで制服を一新し、それに加えて使用人の給与も請求がきております。騎士団には制服と防具や武器と馬具を配布。
離宮と別邸の改修費用と、夜会で使われた大広間のシャンデリアや天井画の請求は、数年前から支払われていなかったものだそうで、利息までついておりました。
その他にも、日々王宮に納入される食材・アルコール類・洗剤に至るまで、全ての請求が侯爵家に届いております。疑問に思いお伺いしたところ、『婚姻前契約に則り、王家及び王宮において発生した経費は全て、婚約予定となった為に発生したと見做す』との返答を文書にていただいており、ご署名は王妃殿下と法務大臣。
以前より、王妃殿下のビルワーツ侯爵家に対する言動に、不安を抱いてはおりましたが、懸念は日に日に強まるばかりでございます。
先程、国を潰すつもりかと言うお言葉がございましたが、婚姻前契約書の内容を無視するおつもりであるならば、王家は今度こそ、なんとしてでも、ビルワーツ侯爵家を潰すおつもりで、今回の王命を出されたのだと思わざるを得ません。
正直申し上げますと⋯⋯このような状況でございましたので、ランドルフ王太子殿下の行動には余程のお覚悟がおありになり、それをお止めにならず演奏を望まれた王妃殿下のお心の広さに感動している次第でございます」
「⋯⋯陛下。アメリア嬢の申される事に間違いはございません。エロイーズ王妃殿下がサインをされる前に確認をしたのは法務大臣であり、連名でサインをしておられます。
費用負担についての書類をお持ちになられた時アメリア嬢からお聞きして驚き、エロイーズ王妃に何度も確認をさせていただきました。
費用を抑えるべきだと、繰り返し進言致しましたが『ビルワーツは払わざるを得ないのだから気にすることはない。少しでも多く資産を使ってやる予定だ』と仰せになられました」
財務大臣は、アメリアが請求書の内訳について問い合わせていた相手。アメリアは誰が何を購入したのか、サインしたのは誰なのかを調べ上げた上で、財務大臣に確認をとった。
ビルワーツ侯爵家が払うべきものなのか、エロイーズに最終確認をとったのも財務大臣。
断れなかったと、一国の大臣が何度も頭を下げるのを申し訳なく思いながら、王宮を後にした回数は数えきれない。
「先程は申し訳なかった。詳しい事情も知らず、不確かな情報で非難してしまったのは我が不徳の致すところ⋯⋯で、先程のアメリア嬢の言葉で少し気になったのだが、お聞きしても宜しいだろうか」
「勿論です。多分、どんな内容でもお答えできると思います」
「懸念が強まったと言うのは⋯⋯その⋯⋯以前から王家に潰されそうだと思っていたと言うことかな?」
ビルワーツ侯爵家とあまり親しくない貴族であれば、当然思う疑問だろう。
マクベス国王が王太子の時代に、婚約破棄騒動があった事は知れ渡っているが、それ以外の事は知らない人もいる。
ビルワーツ侯爵家が王家と関わりを持たず、領地に引き篭もっているのを『いつまでも根に持って』と言う輩もいるほど。
「デクスター閣下、おやめ下さい! アメリア嬢、今の質問は聞かなかった事にしなさい。
この場で不敬罪に問われずとも、後々は分かりませんぞ! 子供の言葉だとしても限度があると知「宰相、随分と慌てておるが何か身に覚えでもあるのではないか? 余が発言を許し、どのような内容であったとしても不敬には問わぬと申したのじゃ。それに、先程の其方の物言いは、脅しと取られても仕方ない言葉であったと気付いておるのか?」」
赤から青に変わっていた顔色が、白くなった宰相が大声を張り上げた。
「陛下、エロイーズ王妃殿下の名誉に関わることであった場合、皇帝のご不興を買う可能性があるとお気付きですか!?」
「勿論知っておるとも。長年に渡り皇帝の顔色を窺い、王妃の言動から目を逸らして来たからこその今じゃ。この度の問題は婚約者候補が変更になったなどと言う、生ぬるいものではない。王家とそれに関わる者達がしでかしてきたことの、集大成だと思うておる。
其方は帝国の手の者であったな。気に入らねばすぐに帝国へ帰るがよい。
王妃との密約、帝国の公爵位と領地は叶わぬ夢のようじゃが、溺愛する娘が産んだ子の父親を無碍に扱うことはあるまいて」
「な、なんのことを仰っておられるのか⋯⋯私には分かりかねます」
息を殺すようにして王宮で暮らしている国王が、まさか王妃と宰相のことを口にするとは思わなかった。
「密約の詳細を知っているとは思わなんだと顔に書いてあるぞ? 余はお飾りの王だと蚊帳の外に置かれておるが、耳も目もついておる。さて、アメリアよ。先程の質問に答える気はあるか?」
「はい。王妃殿下とそれ以外の方から、いくつもの書状がビルワーツ侯爵家当主宛に届いております。宰相殿からのものも多数保管しておりますが、アルフヘイル王国宰相としてのものと、帝国の使者としての二種類がございます。
それと同じで王国と帝国で兼任されている方は他にもおられますので『自分だけではない』と思えば宰相殿のお心が休まるかもしれません。
内容についてですが、最も多いものはビルワーツ侯爵領の鉱山を譲渡せよというもの。次に多いのは鉱山から産出された物を、全て献上せよというもの。その次は産出された宝石の売価の何割かを、支援金や寄付として差し出せというもの。金額を指定し寄付や支援を強制するもの。
領地込みで帝国に下れというものもございました。これは帝国の数人の方と、王国貴族の数人の方から届いており、王家を見限り皇帝又は第二皇子の庇護下に入るべきだと書かれておりました。
今回、王妃殿下が婚姻前契約書の草案に書いておられたのと同じで、ビルワーツ侯爵領の全ての鉱山を持参金の一部として、公妾になれというのは王家・帝国共何通も届いております。
枚数の多い順にお相手を申し上げると皇帝、第二皇子、ランドルフ王太子殿下、第一皇子。貴族の方々からは同様の条件で妻・後妻・第二夫人になれというものが届いております」
「嘘をおっしゃい! お父様がアンタみたいな小娘を公妾!? ふざけんじゃないわよ」
目を吊り上げて立ち上がったエロイーズがアメリアに向けて、折れ曲がった扇子を投げつけた。
鉄扇はヒュンっと音を立ててアメリアの横を通り過ぎたが、目も閉じず微動だにしないアメリアの胆力に、大人達が硬直した。
その程度の攻撃で、アメリアが怯えるなどあり得ない。この場で王妃を潰す覚悟できているのだから。
それに気付いた貴族は果たして何人いたのか⋯⋯。
「こ、この頭のおかしい売女を、牢へ連れて行きなさい!⋯⋯それよりも、この場で首を刎ねておしまい!」
最愛の父親が孫と同じ年頃の娘に懸想したように感じられたのか、普段の傲慢な態度をかなぐり捨てて騒ぎ立てた。
「マクベス、衛兵に命令しなさい! あの娘を処刑しろって命令を出すのよ!!」
無表情で前を向いたままのマクベス国王と、微動だにしない衛兵が命令を聞く気がないと知ったエロイーズは、爪を噛みながら『あり得ないわ、お父様はこんなガキを欲しがるはずがない』と言い続けた。
頭に血が上っているエロイーズは気付いていないが、皇帝とアメリアの年齢差を考えれば、余程特殊な性志向の持ち主でない限り、資産だけが狙いなのは間違いないはず。
「王妃を客室に!」
「な、何ですって! 誰のお陰で玉座に座らせてもらえてるかわかってるの!? わたくしにそんな口を利くなんて、今までどれだけわたくしに助けられてきたと思ってるのよ!!」
「その口を閉じておけないならば、退出させると申したはず。衛兵、王妃を私室ではなく客室に。部屋から出すでない⋯⋯必要なら拘束しても構わん」
お飾りの国王とは思えない厳しい口調で、マクベスが指示を出した。
「きゃあ! 離しなさい⋯⋯やめ⋯⋯やめて! わたくしは王妃よ、この国で最も高貴な王妃⋯⋯お父様に言いつけてやる! 帝国には今でもわたく⋯⋯」
バタン⋯⋯
癇癪を起こしたエロイーズが衛兵に連れ出され、一気に静まりかえった謁見の間にマクベスの低い声が響いた。
「アメリア、続きを申すが良い」
言葉を発するたびに覚悟が決まるのか、弱々しさが消え王の風格を漂わせていくよう。
しかも破棄だけでなく負担は全て相手任せ、ご自身達に被害が出れば無理矢理でも相手に責を問う。ありもしない瑕疵を作りあげて、ご自身の行いから世間の目を逸らそうとされた事もおありです。
そのような過去の経験や、手元の情報から鑑みて、危険予測した次第です。ダンビール子爵家や子爵令嬢と関わりがないことは、調べていただければお分かりいただけるはずです。
夜会の費用が増えるたびに、王宮に出向き確認いたしましたが、請求額は増えるばかり。ほんの数ヶ月の間に王妃殿下のドレスは67着、メアリー様29着、マクベス国王陛下3着。因みに王太子殿下は男性用54着、女性用に至っては81着でした。宝石類に関しては数が多すぎて、宝飾店ごとの合計額でご報告させていただいた方が宜しいかと。
私には招待状も届いておりませんし、参加もしておりませんが、王家主催や王妃殿下主催のお茶会や夜会の費用は、茶葉の代金から手土産代までビルワーツ侯爵家に請求がきております。
新しく作られた馬車とそれ専用の馬。王妃殿下と王太子殿下及び王女殿下の、私室の改装と家具一式。王宮の侍女から下働きまで制服を一新し、それに加えて使用人の給与も請求がきております。騎士団には制服と防具や武器と馬具を配布。
離宮と別邸の改修費用と、夜会で使われた大広間のシャンデリアや天井画の請求は、数年前から支払われていなかったものだそうで、利息までついておりました。
その他にも、日々王宮に納入される食材・アルコール類・洗剤に至るまで、全ての請求が侯爵家に届いております。疑問に思いお伺いしたところ、『婚姻前契約に則り、王家及び王宮において発生した経費は全て、婚約予定となった為に発生したと見做す』との返答を文書にていただいており、ご署名は王妃殿下と法務大臣。
以前より、王妃殿下のビルワーツ侯爵家に対する言動に、不安を抱いてはおりましたが、懸念は日に日に強まるばかりでございます。
先程、国を潰すつもりかと言うお言葉がございましたが、婚姻前契約書の内容を無視するおつもりであるならば、王家は今度こそ、なんとしてでも、ビルワーツ侯爵家を潰すおつもりで、今回の王命を出されたのだと思わざるを得ません。
正直申し上げますと⋯⋯このような状況でございましたので、ランドルフ王太子殿下の行動には余程のお覚悟がおありになり、それをお止めにならず演奏を望まれた王妃殿下のお心の広さに感動している次第でございます」
「⋯⋯陛下。アメリア嬢の申される事に間違いはございません。エロイーズ王妃殿下がサインをされる前に確認をしたのは法務大臣であり、連名でサインをしておられます。
費用負担についての書類をお持ちになられた時アメリア嬢からお聞きして驚き、エロイーズ王妃に何度も確認をさせていただきました。
費用を抑えるべきだと、繰り返し進言致しましたが『ビルワーツは払わざるを得ないのだから気にすることはない。少しでも多く資産を使ってやる予定だ』と仰せになられました」
財務大臣は、アメリアが請求書の内訳について問い合わせていた相手。アメリアは誰が何を購入したのか、サインしたのは誰なのかを調べ上げた上で、財務大臣に確認をとった。
ビルワーツ侯爵家が払うべきものなのか、エロイーズに最終確認をとったのも財務大臣。
断れなかったと、一国の大臣が何度も頭を下げるのを申し訳なく思いながら、王宮を後にした回数は数えきれない。
「先程は申し訳なかった。詳しい事情も知らず、不確かな情報で非難してしまったのは我が不徳の致すところ⋯⋯で、先程のアメリア嬢の言葉で少し気になったのだが、お聞きしても宜しいだろうか」
「勿論です。多分、どんな内容でもお答えできると思います」
「懸念が強まったと言うのは⋯⋯その⋯⋯以前から王家に潰されそうだと思っていたと言うことかな?」
ビルワーツ侯爵家とあまり親しくない貴族であれば、当然思う疑問だろう。
マクベス国王が王太子の時代に、婚約破棄騒動があった事は知れ渡っているが、それ以外の事は知らない人もいる。
ビルワーツ侯爵家が王家と関わりを持たず、領地に引き篭もっているのを『いつまでも根に持って』と言う輩もいるほど。
「デクスター閣下、おやめ下さい! アメリア嬢、今の質問は聞かなかった事にしなさい。
この場で不敬罪に問われずとも、後々は分かりませんぞ! 子供の言葉だとしても限度があると知「宰相、随分と慌てておるが何か身に覚えでもあるのではないか? 余が発言を許し、どのような内容であったとしても不敬には問わぬと申したのじゃ。それに、先程の其方の物言いは、脅しと取られても仕方ない言葉であったと気付いておるのか?」」
赤から青に変わっていた顔色が、白くなった宰相が大声を張り上げた。
「陛下、エロイーズ王妃殿下の名誉に関わることであった場合、皇帝のご不興を買う可能性があるとお気付きですか!?」
「勿論知っておるとも。長年に渡り皇帝の顔色を窺い、王妃の言動から目を逸らして来たからこその今じゃ。この度の問題は婚約者候補が変更になったなどと言う、生ぬるいものではない。王家とそれに関わる者達がしでかしてきたことの、集大成だと思うておる。
其方は帝国の手の者であったな。気に入らねばすぐに帝国へ帰るがよい。
王妃との密約、帝国の公爵位と領地は叶わぬ夢のようじゃが、溺愛する娘が産んだ子の父親を無碍に扱うことはあるまいて」
「な、なんのことを仰っておられるのか⋯⋯私には分かりかねます」
息を殺すようにして王宮で暮らしている国王が、まさか王妃と宰相のことを口にするとは思わなかった。
「密約の詳細を知っているとは思わなんだと顔に書いてあるぞ? 余はお飾りの王だと蚊帳の外に置かれておるが、耳も目もついておる。さて、アメリアよ。先程の質問に答える気はあるか?」
「はい。王妃殿下とそれ以外の方から、いくつもの書状がビルワーツ侯爵家当主宛に届いております。宰相殿からのものも多数保管しておりますが、アルフヘイル王国宰相としてのものと、帝国の使者としての二種類がございます。
それと同じで王国と帝国で兼任されている方は他にもおられますので『自分だけではない』と思えば宰相殿のお心が休まるかもしれません。
内容についてですが、最も多いものはビルワーツ侯爵領の鉱山を譲渡せよというもの。次に多いのは鉱山から産出された物を、全て献上せよというもの。その次は産出された宝石の売価の何割かを、支援金や寄付として差し出せというもの。金額を指定し寄付や支援を強制するもの。
領地込みで帝国に下れというものもございました。これは帝国の数人の方と、王国貴族の数人の方から届いており、王家を見限り皇帝又は第二皇子の庇護下に入るべきだと書かれておりました。
今回、王妃殿下が婚姻前契約書の草案に書いておられたのと同じで、ビルワーツ侯爵領の全ての鉱山を持参金の一部として、公妾になれというのは王家・帝国共何通も届いております。
枚数の多い順にお相手を申し上げると皇帝、第二皇子、ランドルフ王太子殿下、第一皇子。貴族の方々からは同様の条件で妻・後妻・第二夫人になれというものが届いております」
「嘘をおっしゃい! お父様がアンタみたいな小娘を公妾!? ふざけんじゃないわよ」
目を吊り上げて立ち上がったエロイーズがアメリアに向けて、折れ曲がった扇子を投げつけた。
鉄扇はヒュンっと音を立ててアメリアの横を通り過ぎたが、目も閉じず微動だにしないアメリアの胆力に、大人達が硬直した。
その程度の攻撃で、アメリアが怯えるなどあり得ない。この場で王妃を潰す覚悟できているのだから。
それに気付いた貴族は果たして何人いたのか⋯⋯。
「こ、この頭のおかしい売女を、牢へ連れて行きなさい!⋯⋯それよりも、この場で首を刎ねておしまい!」
最愛の父親が孫と同じ年頃の娘に懸想したように感じられたのか、普段の傲慢な態度をかなぐり捨てて騒ぎ立てた。
「マクベス、衛兵に命令しなさい! あの娘を処刑しろって命令を出すのよ!!」
無表情で前を向いたままのマクベス国王と、微動だにしない衛兵が命令を聞く気がないと知ったエロイーズは、爪を噛みながら『あり得ないわ、お父様はこんなガキを欲しがるはずがない』と言い続けた。
頭に血が上っているエロイーズは気付いていないが、皇帝とアメリアの年齢差を考えれば、余程特殊な性志向の持ち主でない限り、資産だけが狙いなのは間違いないはず。
「王妃を客室に!」
「な、何ですって! 誰のお陰で玉座に座らせてもらえてるかわかってるの!? わたくしにそんな口を利くなんて、今までどれだけわたくしに助けられてきたと思ってるのよ!!」
「その口を閉じておけないならば、退出させると申したはず。衛兵、王妃を私室ではなく客室に。部屋から出すでない⋯⋯必要なら拘束しても構わん」
お飾りの国王とは思えない厳しい口調で、マクベスが指示を出した。
「きゃあ! 離しなさい⋯⋯やめ⋯⋯やめて! わたくしは王妃よ、この国で最も高貴な王妃⋯⋯お父様に言いつけてやる! 帝国には今でもわたく⋯⋯」
バタン⋯⋯
癇癪を起こしたエロイーズが衛兵に連れ出され、一気に静まりかえった謁見の間にマクベスの低い声が響いた。
「アメリア、続きを申すが良い」
言葉を発するたびに覚悟が決まるのか、弱々しさが消え王の風格を漂わせていくよう。
12
お気に入りに追加
1,078
あなたにおすすめの小説
話が違います! 女性慣れしていないと聞いていたのですが
四季
恋愛
領地持ちの家に長女として生まれた私。
幼い頃から趣味や好みが周囲の女性たちと違っていて、女性らしくないからか父親にもあまり大事にしてもらえなかった。
そんな私は、十八の誕生日、父親の知り合いの息子と婚約することになったのだが……。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
幼馴染みに婚約者を奪われ、妹や両親は私の財産を奪うつもりのようです。皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?
水上
恋愛
「僕は幼馴染みのベラと結婚して、幸せになるつもりだ」
結婚して幸せになる……、結構なことである。
祝福の言葉をかける場面なのだろうけれど、そんなことは不可能だった。
なぜなら、彼は幼馴染み以外の人物と婚約していて、その婚約者というのが、この私だからである。
伯爵令嬢である私、キャサリン・クローフォドは、婚約者であるジャック・ブリガムの言葉を、受け入れられなかった。
しかし、彼は勝手に話を進め、私は婚約破棄を言い渡された。
幼馴染みに婚約者を奪われ、私はショックを受けた。
そして、私の悲劇はそれだけではなかった。
なんと、私の妹であるジーナと両親が、私の財産を奪おうと動き始めたのである。
私の周りには、身勝手な人物が多すぎる。
しかし、私にも一人だけ味方がいた。
彼は、不適な笑みを浮かべる。
私から何もかも奪うなんて、あなたたちは少々やり過ぎました。
私は、やられたままで終わるつもりはないので、皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
無理やり『陰険侯爵』に嫁がされた私は、侯爵家で幸せな日々を送っています
朝露ココア
恋愛
「私は妹の幸福を願っているの。あなたには侯爵夫人になって幸せに生きてほしい。侯爵様の婚姻相手には、すごくお似合いだと思うわ」
わがままな姉のドリカに命じられ、侯爵家に嫁がされることになったディアナ。
派手で綺麗な姉とは異なり、ディアナは園芸と読書が趣味の陰気な子爵令嬢。
そんな彼女は傲慢な母と姉に逆らえず言いなりになっていた。
縁談の相手は『陰険侯爵』とも言われる悪評高い侯爵。
ディアナの意思はまったく尊重されずに嫁がされた侯爵家。
最初は挙動不審で自信のない『陰険侯爵』も、ディアナと接するうちに変化が現れて……次第に成長していく。
「ディアナ。君は俺が守る」
内気な夫婦が支え合い、そして心を育む物語。
【完結】断罪されなかった悪役令嬢ですが、その後が大変です
紅月
恋愛
お祖母様が最強だったから我が家の感覚、ちょっとおかしいですが、私はごく普通の悪役令嬢です。
でも、婚約破棄を叫ぼうとしている元婚約者や攻略対象者がおかしい?と思っていたら……。
一体どうしたんでしょう?
18禁乙女ゲームのモブに転生したらの世界観で始めてみます。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる