上 下
32 / 41

32.二転三転

しおりを挟む
「ロクサーナ・モートン、貴様の罪は明白。リチャード王子殿下との婚約を破棄し毒杯を「ロクサーナのネックレスを盗みリチャード殿下に渡したメイドを捕らえておりますが、それでも審議なしで断罪されるおつもりでしょうか?」」

 宰相の言葉を途中で遮ったチャールズが大声で詰問した。


「どう言う事だ?」

「リチャード殿下に渡しただと?」



「見苦しいぞ、モートン侯爵。娘可愛さにそのような事を申すか?」

「宰相殿、お言葉を返すようですが。事実しか申しておりません。
盗んだメイドがリチャード殿下にネックレスを渡した際、側近候補のアーノルド・ロジャー・サミュエルの3名も同席していたそうですがご確認いただけますかな」


「ぼっ僕は知らない」

「俺だって」

「神に誓います。何も知りません」



「えー、私は君達から聞いたけど?」

 まだ赤く腫れた手を包帯で巻いたリアムが出てきた。

「君達4人の口からハッキリと聞いたよ。ステラ嬢と結婚する為に、結託して計画したって」

 リアムは真実を混ぜながら4人にカマをかけた。


「そっそれは。・・僕は見てただけだ」

「なんでお前がいるんだよ、国に帰るからバレないって!」

「リチャード殿下とステラがやったんです、僕は関係ない!」

「おっお前ら、お前らだって乗り気だったじゃないか!」


 リチャードと側近候補達が青褪め慌てふためいて口を滑らせた。



「私は関係ないわ。ロクサーナがやったのよ!」

「家でも学園でも盗みを働いた事がありますの。この子の手癖の悪さには散々泣かされて参りました。
姉のステラは心優しい娘ですから何度悲しい思いをさせたか数え切れませんの」

 大広間の端にいたステラとメリッサが飛び出してきて大声で叫んだ。

(メリッサの台詞・・確かあの時とおんなじ)


 大広間にいた者たちは静まり返り事の行方を見守っていた。




「陛下、王宮に殆ど参内していなかったロクサーナが宝物庫に侵入するなど不可能だとは思われませんか?」

 王妃の声が沈黙を破って響き渡った。


「母上、ロクサーナは王子妃教育で何度も王宮に来ていました。その時にやったんです!」

「ロクサーナが王宮に来た時から退出するまでの全ての日時の記録がわたくしの影から上がっています。その間にロクサーナが一人で行動した事は一回もありません」

「だっだったら誰かに頼んで「ならばロクサーナのネックレスが落ちていたのはおかしな話でしょう?」」

 リチャードの言葉を王妃が遮った。

「王宮で好き勝手に歩き回っていたのはロクサーナではなくステラです。国庫から支給される王子妃の婚約者への支出も全てステラに贈られた物ばかり。わたくしが気付いてないと思っていたのかしら?」

「・・母上、それは」

「わたくしが以前ロクサーナに贈ったアクセサリーをステラが身につけてパーティーに出ていた事も。
メリッサが『ステラが次期王妃だ』と触れ回ってあちこちで便宜を図らせていた事も全て報告が上がっています」


 王妃と大広間の人達から冷ややかな目で見られたリチャードが俯き黙り込んだ。



 陛下は王妃を憎々しげな顔で睨みつけ宣言した。

「ロクサーナ・モートンに対する窃盗容疑は・・取り下げじゃ、審議の必要はない。
但し、この場を騒がせた事の責任を取り奴隷落ちし罪を償え!」

「奴隷となる前に婚約は破棄という事で宜しいでしょうか?」

「当然であろう! 貴様など王家には相応しくないわ」

「賜りました。それでは奴隷落ちとなる前に資産譲渡のご報告をさせて頂きます」


「お前の資産の話なぞ誰も聞きたいわけが無かろう。余の時間を無駄にすると申すか」

「左様でございますか。
アニー商会商会長のロクサーナ・モートンの資産についてですのでご興味がおありかと。
大変失礼を致しました」



「待て! 今なんと申した?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

パーティー会場で婚約破棄するなんて、物語の中だけだと思います

みこと
ファンタジー
「マルティーナ!貴様はルシア・エレーロ男爵令嬢に悪質な虐めをしていたな。そのような者は俺の妃として相応しくない。よって貴様との婚約の破棄そして、ルシアとの婚約をここに宣言する!!」 ここ、魔術学院の創立記念パーティーの最中、壇上から声高らかに宣言したのは、ベルナルド・アルガンデ。ここ、アルガンデ王国の王太子だ。 何故かふわふわピンク髪の女性がベルナルド王太子にぶら下がって、大きな胸を押し付けている。 私、マルティーナはフローレス侯爵家の次女。残念ながらこのベルナルド王太子の婚約者である。 パーティー会場で婚約破棄って、物語の中だけだと思っていたらこのザマです。 設定はゆるいです。色々とご容赦お願い致しますm(*_ _)m

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

身勝手な理由で婚約者を殺そうとした男は、地獄に落ちました【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「おい、アドレーラ。死んだか?」 私の婚約者であるルーパート様は、私を井戸の底へと突き落としてから、そう問いかけてきました。……ルーパート様は、長い間、私を虐待していた事実が明るみになるのを恐れ、私を殺し、すべてを隠ぺいしようとしたのです。 井戸に落ちたショックで、私は正気を失い、実家に戻ることになりました。心も体も元には戻らず、ただ、涙を流し続ける悲しい日々。そんなある日のこと、私の幼馴染であるランディスが、私の体に残っていた『虐待の痕跡』に気がつき、ルーパート様を厳しく問い詰めました。 ルーパート様は知らぬ存ぜぬを貫くだけでしたが、ランディスは虐待があったという確信を持ち、決定的な証拠をつかむため、特殊な方法を使う決意をしたのです。 そして、すべてが白日の下にさらされた時。 ルーパート様は、とてつもなく恐ろしい目にあうことになるのでした……

幼馴染みに婚約者を奪われ、妹や両親は私の財産を奪うつもりのようです。皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?

水上
恋愛
「僕は幼馴染みのベラと結婚して、幸せになるつもりだ」 結婚して幸せになる……、結構なことである。 祝福の言葉をかける場面なのだろうけれど、そんなことは不可能だった。 なぜなら、彼は幼馴染み以外の人物と婚約していて、その婚約者というのが、この私だからである。 伯爵令嬢である私、キャサリン・クローフォドは、婚約者であるジャック・ブリガムの言葉を、受け入れられなかった。 しかし、彼は勝手に話を進め、私は婚約破棄を言い渡された。 幼馴染みに婚約者を奪われ、私はショックを受けた。 そして、私の悲劇はそれだけではなかった。 なんと、私の妹であるジーナと両親が、私の財産を奪おうと動き始めたのである。 私の周りには、身勝手な人物が多すぎる。 しかし、私にも一人だけ味方がいた。 彼は、不適な笑みを浮かべる。 私から何もかも奪うなんて、あなたたちは少々やり過ぎました。 私は、やられたままで終わるつもりはないので、皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?

チート過ぎるご令嬢、国外追放される

舘野寧依
恋愛
わたしはルーシエ・ローゼス公爵令嬢。 舞踏会の場で、男爵令嬢を虐めた罪とかで王太子様に婚約破棄、国外追放を命じられました。 国外追放されても別に困りませんし、この方と今後関わらなくてもいいのは嬉しい限りです! 喜んで国外追放されましょう。 ……ですが、わたしの周りの方達はそうは取らなかったようで……。どうか皆様穏便にお願い致します。

悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ

春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。 エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!? この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて… しかも婚約を破棄されて毒殺? わたくし、そんな未来はご免ですわ! 取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。 __________ ※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。 読んでくださった皆様のお陰です! 本当にありがとうございました。 ※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。 とても励みになっています! ※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。

精霊に愛されし侯爵令嬢が、王太子殿下と婚約解消に至るまで〜私の婚約者には想い人がいた〜

水都 ミナト
恋愛
精霊王を信仰する王国で、マナの扱いに長けた侯爵家の娘・ナターシャ。彼女は五歳でレイモンド王太子殿下の婚約者に抜擢された。 だが、レイモンドはアイシャ公爵令嬢と想い合っていた。アイシャはマナの扱いが苦手で王族の婚約者としては相応しくないとされており、叶わない恋であった。 とある事件をきっかけに、ナターシャは二人にある提案を持ち掛けるーーー これはレイモンドとアイシャ、そしてナターシャがそれぞれの幸せを掴むまでのお話。 ※1万字程度のお話です。 ※他サイトでも投稿しております。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

処理中です...