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25.憔悴する侯爵
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「ロクサーナ!」
玄関ホールでチャールズが怒鳴っている声が聞こえたので、ロクサーナは私室を出て階段を降りて行った。
「手紙を読んだ。どう言う事だ、説明しなさい」
「執務室の方が良いのではありませんか?」
冷静さを失っていたチャールズは周りを見回し、チラチラと聞き耳を立てている使用人を見つけ舌打ちをした。
足早に階段を上がるチャールズの後について行き、執務室のドアを閉めた。
朝教室にシュルツがやって来たところから学園長室を出る所まで、なるべく詳細に感情を交えないよう気をつけながら報告した。
「直ぐに訴状を提出する。相手は学園長とシュルツ教諭」
「殿下と側近候補は含めないのですね」
「・・流石にそれは不味かろう」
(なんだ、やっぱりね)
「分かりました。ではお気の済むように」
冷ややかな顔で立ち上がったロクサーナはチャールズには目もくれず部屋を出ようとした。
「ロクサーナ、待ちなさい。王子殿下を告発しろと言うのか?それはあまりにも・・」
「侯爵様は家の名誉を、私は私自身を守ります」
「侯爵様・・父と呼ばないつもりか?」
「必要はなさそうですもの。
私の価値観の中では親は子を守るもの、守らない相手を敬う必要も従う必要もないと思いますの。
『殿下が瑕疵を作ってくるかも』と昨日言ったばかりですわ」
その後チャールズは学園長とシュルツ教諭に対し名誉毀損の訴えを出し、臨席者としてリチャード王子と3名の側近候補達の名前を列挙した。
キルトの模倣犯の摘発はネイサンが全面的に引き受けてくれたので、ロクサーナは学園へ登校せずひたすら図書室に閉じこもった。
(確かあったはず・・)
登校を取り止めて3日後、リアムが先触れもなく屋敷にやって来た。
「元気にしているか心配になって来てみたんだけど、思ったより元気そうで安心したよ」
「ありがとうございます。今回の事で一番憔悴してるのは侯爵・・お父様だと思いますわ。
しょっちゅう裁判所や王宮から呼び出しが来ていますの」
訴状に臨席者として王子と側近候補の名前が入っている事で、裁判所と司法大臣から再三の呼び出しを受け訴状の撤回や書き直しを求められている。
(あの人、何処まで粘れるのかしら・・)
「王妃様も心配しておられて様子を見て来いってしつこくて。
この状況では王宮に来るのは嫌か聞いて来いって」
お茶のカップを持ったままリアムが苦笑いしている。
「王妃様のお立場を考えるとお会いするのはあまり・・」
「私に何かできる事はないかな? 雑用係でも何でもやるよ」
前のめりになって意気込むリアムにロクサーナは吃驚して少しのけぞってしまった。
「隣国の王子様に雑用だなんて」
「友人としてなら? 昔会った事があるんだよ、と言っても私が一方的に見かけただけなんだけどね。
あの紫のドレス・・」
黒歴史を言われたロクサーナは真っ赤になって両手で口を押さえた。
現国王に連れられて遊びに来ていたリアムは、あの日リチャードの婚約者が来ると聞いて庭に隠れていた。そこであの騒ぎになり・・。
「それまでかなり陰湿な意地悪をされていたから、泣き喚くリチャードにザマアミロって。あれはどうやったの?」
目を輝かせて聞いてくるリアムはロクサーナが何かした事に確信を抱いているらしい。
「きっ企業秘密です。あっいえ知りませんから」
「まあいいさ、僕の分も仕返ししてもらった気になって感謝してるから」
学園では今回の件について意見が分かれていると教えてくれた。
「学園や王子が間違えるはずはないからって言う人と、空っぽのロッカーに盗んだものだけを入れとくなんてあり得ないって言う人」
王宮では戒厳令が敷かれているらしい。
「証拠もないのに犯罪者扱いしただろ? だからリチャードはかなり不味い立場になってる」
意外なリアムの知らせにロクサーナは吃驚してしまった。
「目撃者と告発文は?」
玄関ホールでチャールズが怒鳴っている声が聞こえたので、ロクサーナは私室を出て階段を降りて行った。
「手紙を読んだ。どう言う事だ、説明しなさい」
「執務室の方が良いのではありませんか?」
冷静さを失っていたチャールズは周りを見回し、チラチラと聞き耳を立てている使用人を見つけ舌打ちをした。
足早に階段を上がるチャールズの後について行き、執務室のドアを閉めた。
朝教室にシュルツがやって来たところから学園長室を出る所まで、なるべく詳細に感情を交えないよう気をつけながら報告した。
「直ぐに訴状を提出する。相手は学園長とシュルツ教諭」
「殿下と側近候補は含めないのですね」
「・・流石にそれは不味かろう」
(なんだ、やっぱりね)
「分かりました。ではお気の済むように」
冷ややかな顔で立ち上がったロクサーナはチャールズには目もくれず部屋を出ようとした。
「ロクサーナ、待ちなさい。王子殿下を告発しろと言うのか?それはあまりにも・・」
「侯爵様は家の名誉を、私は私自身を守ります」
「侯爵様・・父と呼ばないつもりか?」
「必要はなさそうですもの。
私の価値観の中では親は子を守るもの、守らない相手を敬う必要も従う必要もないと思いますの。
『殿下が瑕疵を作ってくるかも』と昨日言ったばかりですわ」
その後チャールズは学園長とシュルツ教諭に対し名誉毀損の訴えを出し、臨席者としてリチャード王子と3名の側近候補達の名前を列挙した。
キルトの模倣犯の摘発はネイサンが全面的に引き受けてくれたので、ロクサーナは学園へ登校せずひたすら図書室に閉じこもった。
(確かあったはず・・)
登校を取り止めて3日後、リアムが先触れもなく屋敷にやって来た。
「元気にしているか心配になって来てみたんだけど、思ったより元気そうで安心したよ」
「ありがとうございます。今回の事で一番憔悴してるのは侯爵・・お父様だと思いますわ。
しょっちゅう裁判所や王宮から呼び出しが来ていますの」
訴状に臨席者として王子と側近候補の名前が入っている事で、裁判所と司法大臣から再三の呼び出しを受け訴状の撤回や書き直しを求められている。
(あの人、何処まで粘れるのかしら・・)
「王妃様も心配しておられて様子を見て来いってしつこくて。
この状況では王宮に来るのは嫌か聞いて来いって」
お茶のカップを持ったままリアムが苦笑いしている。
「王妃様のお立場を考えるとお会いするのはあまり・・」
「私に何かできる事はないかな? 雑用係でも何でもやるよ」
前のめりになって意気込むリアムにロクサーナは吃驚して少しのけぞってしまった。
「隣国の王子様に雑用だなんて」
「友人としてなら? 昔会った事があるんだよ、と言っても私が一方的に見かけただけなんだけどね。
あの紫のドレス・・」
黒歴史を言われたロクサーナは真っ赤になって両手で口を押さえた。
現国王に連れられて遊びに来ていたリアムは、あの日リチャードの婚約者が来ると聞いて庭に隠れていた。そこであの騒ぎになり・・。
「それまでかなり陰湿な意地悪をされていたから、泣き喚くリチャードにザマアミロって。あれはどうやったの?」
目を輝かせて聞いてくるリアムはロクサーナが何かした事に確信を抱いているらしい。
「きっ企業秘密です。あっいえ知りませんから」
「まあいいさ、僕の分も仕返ししてもらった気になって感謝してるから」
学園では今回の件について意見が分かれていると教えてくれた。
「学園や王子が間違えるはずはないからって言う人と、空っぽのロッカーに盗んだものだけを入れとくなんてあり得ないって言う人」
王宮では戒厳令が敷かれているらしい。
「証拠もないのに犯罪者扱いしただろ? だからリチャードはかなり不味い立場になってる」
意外なリアムの知らせにロクサーナは吃驚してしまった。
「目撃者と告発文は?」
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