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23.念の為、先手を打っておく

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 2階の部屋には行かずそのまま1階の部屋に入り中から鍵をかけた。

 手紙を読むとキルトの粗悪品が出回っていると書かれていた。
 ロクサーナのキルトには《アニー》とサインを入れているが、粗悪品にも同様のサインが入っていて購入者から苦情が来ているのだとか。


 明日の放課後商会に行くことに決めて手紙をコナーに事付けた。

「何かあったのかね?」

「キルトの偽物が出回ってるらしいの」


「何とまあ、あれを真似するのは無理っちゅうやつじゃろ」

「どうかな? 時間は掛かるけど出来なくはないから。但しロゴまで真似してるとなると犯罪よね」



 その日の夕食前にロクサーナは執務室を訪れた。

「リチャード殿下から婚約破棄したいと思っていると言うお話があったので一応ご報告を」

「何があった?」

 ペンを置きチャールズがロクサーナを見た。


「リチャード殿下と側近候補3名と殿下の恋人の以上5名で、王子妃教育に殿下の恋人を参加させるようにと言われました。
その時婚約破棄したいとも」

「両方あり得んな」


「・・では失礼します」

 ロクサーナが執務室を出ようとすると、チャールズが待ったをかけた。

「報告だけか? そのことに対して希望なり何なりはないのか?」


「期待値がマイナスな事柄について議論するのは時間の無駄ですから」

「婚約は破棄したいのだろう?」


「だから? やる気のない事をそのように仰られるのは大人として如何なものかと。
あり得ないと仰られた時点で話は完結しておりますので」

 ロクサーナの冷たい話し方と態度にチャールズは溜息をつき椅子の背にもたれた。


「以前から気になっていたが、お前は時々ひどく大人びた物言いをする。
まるで大人と話しているみたいだ」

 取り繕う気のなくなっているロクサーナは肩をすくめただけで黙り込んだ。


(まあ中身は17足す4? それに女子大生分を追加すると侯爵より上かも。
げっ、それはかなり嫌・・)


「現時点では婚約破棄するのは難しいと言う話だ。殿下に大きな瑕疵があったとか、そう言う理由がないからな」

「殿下が瑕疵を作ってこられるかも」

「ん? お前にそんな物がある訳がなかろう」

「証拠と言うのは幾らでも捏造できますし、人は信じたいと思うものを信じる生き物ですから。
身に覚えがありますでしょう?」


 にっこり笑って執務室を出た。

(あーもう、むかつくー。問題は私の歳よね、11歳じゃ身動きが取れない)



 翌日学園に到着後、迎えの馬車は不要だと御者に声をかけて教室に向かった。

 席につきキルトの模倣犯について考えながら校庭を見ていると、授業開始直前にシュルツ教諭がやって来た。


「モートン、学園長室へ一緒に来なさい。犯罪を告発する手紙が学園長宛に届いている」


 ザワザワとしていた教室が静まり返り生徒達が一斉にロクサーナを見た。

(えっ、もう?)


 旧ロクサーナの時は学園長から呼び出しが来たのは14歳の時だった。
 クラスの女子生徒が間違って学園に持って来た髪飾りがなくなったが、旧ロクサーナが持っているのを見かけたと言う内容だった。

(って事はもう仕掛けてあるって事か)


 教科書を全て鞄に入れ立ち上がったロクサーナはヒソヒソと話をしている生徒達の間を抜けてシュルツの後に従い教室を出た。


 階段を降り校舎の1階にある職員室の奥にある学園長室に入ると大きな執務机の前に学園長が立っており、ソファにリチャードが座りその後ろにアーノルド達3人が立っている。


 この権力志向の強い学園長はリチャードの成績に下駄を履かせた張本人で、王宮の大臣職を狙っている。
 前学園長の甥にあたるガチガチの縁故採用。(旧ロクサーナ情報)


 学園長の話は前回と全く同じでロクサーナは問答無用で荷物検査を受けさせられた上、女性教諭による身体検査も受けさせられた。


 ロクサーナの検査が終わった頃シュルツ教諭が得意満面な顔で学園長室に戻ってきた。

「学園長、ロッカーの中にありました」

(やっぱりか、いやー読みを誤ったわぁ)

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