22 / 41
22.味方がいました
しおりを挟むリアムが校舎の方から走ってやって来た。
「アーノルドとロジャーは意外に手癖が悪いんだね。私の国では女性に手を出した者は手を切られてしまうんだよ」
ロジャーは慌ててロクサーナから手を離し言い訳をはじめた。
「これはロクサーナの問題行動を戒めようと。リアム殿下には関係のない事です」
「ロクサーナの行動が目に余るというか、自分勝手すぎて」
ロジャーとアーノルドが必死で言い訳をしている。
「リアム様、この間もお話ししたようにこの子が嘘をついて私を家から追い出したんです。
みんなはそれでこの子に話をしてくれてただけなんです」
ステラは目を潤ませてリアムを見上げた。
「それにコイツは王子妃教育をサボってばかりだからしっかり言い聞かせてやらないと。
あのくらいされても仕方ないんですよ」
リチャードはロクサーナを指差し態とらしく溜息をついた。
「それで、王子妃教育にステラを参加させようって」
ロジャーの発言にリアムが吹き出した。
「何でステラ嬢が王子妃教育に参加するんだい? 関係ない人を参加させるなんて意味がわからない」
リチャードが一歩前に出て話しはじめた。
「元々僕はステラと婚約するはずだったんだ、コイツが邪魔をしなければね。
それなのに王子妃教育はサボってるんだ」
「婚約が決まった時の経緯は知らないけど、王子妃教育の事なら知ってる。モートン嬢はテストに合格して既に殆どの教育を終えてるよ」
「「「はあ?」」」
「王妃様に呼ばれて一番最初のテストに参加したから知ってるんだ」
「ばかな、だってはじまってまだ2週間くらいしか経ってないのに?」
「モートン嬢を責める前に確認するべきだね。その様子じゃあ婚約が決まった時の経緯とかだって君達が言ってるのとは違うんじゃないかな?」
「リアム様、騙されないで。この子は7歳の時お母様のブローチを盗んだんだから!
それに王妃様から贈られた物を私の部屋に隠して私に盗みの罪を着せたの」
「証拠は? この国はどうか知らないけど我が国は証拠主義なんだ」
「僕はステラの話を信じてる。こんな奴との婚約なんて破棄したいんだ」
「そうか、それ陛下か王妃様に言うべきだね。あの方達にしか決定権はないんだから。
モートン嬢、送っていくよ」
ロクサーナはリアムと馬車乗り場まで並んで歩いた。
「ありがとうございました。お陰で助かりました」
「王妃様に話しておいた方がいい。あの様子だとこれからも何かしてくるんじゃないかな?」
リアムが眉間に皺を寄せている。
「そうですね、考えてみます。リチャード殿下のお気持ちを聞けたので婚約破棄できるようお父様とも話さないと」
2人の間に沈黙が訪れ、馬車乗り場の近くに着くまで何も話が思い浮かばなかった。
「モートン嬢は婚約破棄したいの?」
「・・正直に言っても?」
「うん、ここだけの秘密にしておくよ」
「秘密は漏れるものでは?」
「例の馬車の件だって誰にも話してないだろ?」
リアムが片方の眉を上げて胸を叩いた。
「確かに・・婚約破棄したいです」
「理由を聞いてもいい?」
「信じられないような話なので」
ロクサーナは苦笑いして誤魔化した。
「じゃあ、いつか僕の事を信用出来たら教えて欲しい。どんな話でも笑わないって約束する」
リアムは真摯な目でロクサーナを見つめた。
「ではいつか、全てが片付いたら」
ロクサーナは馬車に乗り、リアムの真剣な目を思い出しながら屋敷に戻った。
馬車を降りると珍しくコナーが玄関前で待っていた。
「ただいま、ここにいるなんて珍しいのね」
ロクサーナがにっこり笑うと、ニヤリと笑ったコナーがこっそり手紙を渡して来た。
「五月蝿いのがいなくなったしな。それに配達員が至急って言ってたからな」
手紙の裏を見るとネイサンからだった。
(うーん、何だかすごく嫌な予感がする)
12
お気に入りに追加
1,736
あなたにおすすめの小説
身勝手な理由で婚約者を殺そうとした男は、地獄に落ちました【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「おい、アドレーラ。死んだか?」
私の婚約者であるルーパート様は、私を井戸の底へと突き落としてから、そう問いかけてきました。……ルーパート様は、長い間、私を虐待していた事実が明るみになるのを恐れ、私を殺し、すべてを隠ぺいしようとしたのです。
井戸に落ちたショックで、私は正気を失い、実家に戻ることになりました。心も体も元には戻らず、ただ、涙を流し続ける悲しい日々。そんなある日のこと、私の幼馴染であるランディスが、私の体に残っていた『虐待の痕跡』に気がつき、ルーパート様を厳しく問い詰めました。
ルーパート様は知らぬ存ぜぬを貫くだけでしたが、ランディスは虐待があったという確信を持ち、決定的な証拠をつかむため、特殊な方法を使う決意をしたのです。
そして、すべてが白日の下にさらされた時。
ルーパート様は、とてつもなく恐ろしい目にあうことになるのでした……
強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します
天宮有
恋愛
私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。
その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。
シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。
その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。
それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。
私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!
ユウ
恋愛
侯爵令嬢であるアーデルハイドは妹を苛めた罪により婚約者に捨てられ流罪にされた。
全ては仕組まれたことだったが、幼少期からお姫様のように愛された妹のことしか耳を貸さない母に、母に言いなりだった父に弁解することもなかった。
言われるがまま島流しの刑を受けるも、その先は隣国の南の島だった。
食料が豊作で誰の目を気にすることなく自由に過ごせる島はまさにパラダイス。
アーデルハイドは家族の事も国も忘れて悠々自適な生活を送る中、一人の少年に出会う。
その一方でアーデルハイドを追い出し本当のお姫様になったつもりでいたアイシャは、真面な淑女教育を受けてこなかったので、社交界で四面楚歌になってしまう。
幸せのはずが不幸のドン底に落ちたアイシャは姉の不幸を願いながら南国に向かうが…
【完結】すべてを妹に奪われたら、第2皇子から手順を踏んで溺愛されてました。【番外編完結】
三矢さくら
恋愛
「侯爵家を継承できるという前提が変わった以上、結婚を考え直させてほしい」
マダレナは王立学院を無事に卒業したばかりの、カルドーゾ侯爵家長女。
幼馴染で伯爵家3男のジョアンを婿に迎える結婚式を、1か月後に控えて慌ただしい日々を送っていた。
そんなある日、凛々しい美人のマダレナとは真逆の、可愛らしい顔立ちが男性貴族から人気の妹パトリシアが、王国の第2王子リカルド殿下と結婚することが決まる。
しかも、リカルド殿下は兄王太子が国王に即位した後、名目ばかりの〈大公〉となるのではなく、カルドーゾ侯爵家の継承を望まれていた。
侯爵家の継承権を喪失したマダレナは、話しが違うとばかりに幼馴染のジョアンから婚約破棄を突きつけられる。
失意の日々をおくるマダレナであったが、王国の最高権力者とも言える王太后から呼び出される。
王国の宗主国である〈太陽帝国〉から輿入れした王太后は、孫である第2王子リカルドのワガママでマダレナの運命を変えてしまったことを詫びる。
そして、お詫びの印としてマダレナに爵位を贈りたいと申し出る。それも宗主国である帝国に由来する爵位で、王国の爵位より地位も待遇も上の扱いになる爵位だ。
急激な身分の変化に戸惑うマダレナであったが、その陰に王太后の又甥である帝国の第2皇子アルフォンソから注がれる、ふかい愛情があることに、やがて気が付いていき……。
*女性向けHOTランキング1位に掲載していただきました!(2024.7.14-17)たくさんの方にお読みいただき、ありがとうございます!
*完結しました!
*番外編も完結しました!
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる