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22.味方がいました

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 リアムが校舎の方から走ってやって来た。

「アーノルドとロジャーは意外に手癖が悪いんだね。私の国では女性に手を出した者は手を切られてしまうんだよ」


 ロジャーは慌ててロクサーナから手を離し言い訳をはじめた。

「これはロクサーナの問題行動を戒めようと。リアム殿下には関係のない事です」

「ロクサーナの行動が目に余るというか、自分勝手すぎて」

 ロジャーとアーノルドが必死で言い訳をしている。


「リアム様、この間もお話ししたようにこの子が嘘をついて私を家から追い出したんです。
みんなはそれでこの子に話をしてくれてただけなんです」

 ステラは目を潤ませてリアムを見上げた。


「それにコイツは王子妃教育をサボってばかりだからしっかり言い聞かせてやらないと。
あのくらいされても仕方ないんですよ」

 リチャードはロクサーナを指差し態とらしく溜息をついた。


「それで、王子妃教育にステラを参加させようって」

 ロジャーの発言にリアムが吹き出した。

「何でステラ嬢が王子妃教育に参加するんだい? 関係ない人を参加させるなんて意味がわからない」


 リチャードが一歩前に出て話しはじめた。

「元々僕はステラと婚約するはずだったんだ、コイツが邪魔をしなければね。
それなのに王子妃教育はサボってるんだ」


「婚約が決まった時の経緯は知らないけど、王子妃教育の事なら知ってる。モートン嬢はテストに合格して既に殆どの教育を終えてるよ」

「「「はあ?」」」

「王妃様に呼ばれて一番最初のテストに参加したから知ってるんだ」


「ばかな、だってはじまってまだ2週間くらいしか経ってないのに?」

「モートン嬢を責める前に確認するべきだね。その様子じゃあ婚約が決まった時の経緯とかだって君達が言ってるのとは違うんじゃないかな?」


「リアム様、騙されないで。この子は7歳の時お母様のブローチを盗んだんだから!
それに王妃様から贈られた物を私の部屋に隠して私に盗みの罪を着せたの」

「証拠は? この国はどうか知らないけど我が国は証拠主義なんだ」


「僕はステラの話を信じてる。こんな奴との婚約なんて破棄したいんだ」

「そうか、それ陛下か王妃様に言うべきだね。あの方達にしか決定権はないんだから。
モートン嬢、送っていくよ」


 ロクサーナはリアムと馬車乗り場まで並んで歩いた。

「ありがとうございました。お陰で助かりました」

「王妃様に話しておいた方がいい。あの様子だとこれからも何かしてくるんじゃないかな?」

 リアムが眉間に皺を寄せている。


「そうですね、考えてみます。リチャード殿下のお気持ちを聞けたので婚約破棄できるようお父様とも話さないと」

 2人の間に沈黙が訪れ、馬車乗り場の近くに着くまで何も話が思い浮かばなかった。


「モートン嬢は婚約破棄したいの?」

「・・正直に言っても?」

「うん、ここだけの秘密にしておくよ」

「秘密は漏れるものでは?」

「例の馬車の件だって誰にも話してないだろ?」

 リアムが片方の眉を上げて胸を叩いた。


「確かに・・婚約破棄したいです」

「理由を聞いてもいい?」

「信じられないような話なので」

 ロクサーナは苦笑いして誤魔化した。


「じゃあ、いつか僕の事を信用出来たら教えて欲しい。どんな話でも笑わないって約束する」


 リアムは真摯な目でロクサーナを見つめた。

「ではいつか、全てが片付いたら」


 ロクサーナは馬車に乗り、リアムの真剣な目を思い出しながら屋敷に戻った。



 馬車を降りると珍しくコナーが玄関前で待っていた。

「ただいま、ここにいるなんて珍しいのね」

 ロクサーナがにっこり笑うと、ニヤリと笑ったコナーがこっそり手紙を渡して来た。


「五月蝿いのがいなくなったしな。それに配達員が至急って言ってたからな」



 手紙の裏を見るとネイサンからだった。

(うーん、何だかすごく嫌な予感がする)

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