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10.ロクサーナがチクチクしているのは
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ロクサーナが作っているのはパッチワークキルトとアップリケキルトを組み合わせたもので、手芸部時代に夢中になって作ったハワイアンキルトをイメージしたもの。
アップリケ終了後、薄く伸ばした羊毛と裏地の3枚を合わせ、アップリケのデザインに沿ったおとしキルトを施す。
その後デザインの上に丁寧にキルティングを施すデザインキルトをして3枚の生地を安定させ、周りを輪取るようにエコーキルトをすれば完成。
大きなものではベッドカバーやタペストリーなども作るが、手作業では完成までに時間がかかりすぎるので(目先の資金調達の為にと)女性用や子供用の鞄やリュックサックなども作っている。
この世界には鞄を背負うという概念がなかったので、リュックサックはあっという間に爆発的人気を博した。
丈夫な帆布を使った男性用の物と、キルティングで作った女性の物。子供用には可愛らしいアップリケ付き。
商標登録した後の販売はクラリア商会に全面委託し、ロクサーナはひたすらチクチク。
商品と材料の受け渡しはコナーが張り切って担当してくれた。
注文や問い合わせが引きも切らずクラリア商会からは納品数を増やして欲しいと言われているが・・。
(人手が欲しい・・、上手く行きすぎて辛い)
屋敷の使用人はコナー以外は信用しない方がいいと考えている。
優しかった馬丁がクビになったのは、馬丁が旧ロクサーナを馬に乗せてくれたのをステラに見られた次の日だった。
今いる使用人はコナー以外はメリッサが来てから入れ替わった人ばかり。
(取り敢えずは現状維持かなぁ。プレミア感で値上がりとかしないかな・・)
新ロクサーナが邪な思いを抱きつつせっせと製品を作ってはコナーに預けていた頃、予想通りの騒ぎが起きた。
コナーの所から帰り裏口からこっそり厨房へ入るとメイドの大声が厨房の左の方から聞こえてきた。
「ありましたー。奥様、あの子の部屋にありましたー」
厨房の前をメイドが横切った直後にメリッサの怒鳴り声が聞こえてきた。
「アレを探しなさい! 直ぐ連れて来るのよ!」
入り口から覗いていた料理人が裏口の近くに立っているロクサーナに気付き、ギョッとした顔をした後顔を背け慌てて調理台に戻り玉ねぎの皮を剥き出した。
そろそろと廊下に出て辺りの様子を伺っていると、ステラ専属のメイド2人がバタバタと走って現れた。
「奥様、ここにいましたー!」
1人が大声で叫びもう1人がロクサーナの右腕を捻り上げた。
「いたい!」
取り敢えず抗議の声をあげてみた。
「煩いわね、サッサと来なさいよ。ふふん」
(思い出した! 旧ロクサーナの記憶ではこの後・・)
メイドに腕を取られたままメリッサの私室の1つに連れて行かれた。
「今朝わたくしの部屋からブローチがなくなっているのに気が付いたの。これに見覚えはないかしら?」
「いいえ」
(そうだ、はじまりはこのブローチだ)
少しずつ鮮明になっていく記憶にロクサーナは青褪めた。
(ヤバい! アレは痛い。どうしよう、何か・・何か・・)
「お前の部屋の枕の下から見つかったの。お前が盗んだのね、正直に言いなさい!」
「いっいいえ」
「泥棒には罰を与えなくてはね」
メリッサの合図でメイドがロクサーナをメリッサの前に突き飛ばそうとした時、左手でメイドのスカートを握りしめた。
「ビリビリ、ビリッ・・きゃあー」
メイドのスカートが見事に破れカルソンが丸出しになった。
慌てふためくメイド達に驚いて呆然としているメリッサの足元には、メイドからうっかり剥ぎ取ってしまったスカートの残骸を握りしめたロクサーナが転がっていた。
憎々しげにロクサーナを見下ろしたメリッサは「ふんっ」と鼻を鳴らし、扇子を手に叩きつけた。
「今度やったらタダではおかないから、覚えておきなさい」
立ち上がったロクサーナは脱兎の如く逃げ出し、その日から部屋に鍵をかける事にした。
(自己防衛だもん、仕方ないよね)
旧ロクサーナはあの後メリッサに鉄の芯を使った扇子で背中を何度も叩かれ、あのメイドには蹴られたのだから。
アップリケ終了後、薄く伸ばした羊毛と裏地の3枚を合わせ、アップリケのデザインに沿ったおとしキルトを施す。
その後デザインの上に丁寧にキルティングを施すデザインキルトをして3枚の生地を安定させ、周りを輪取るようにエコーキルトをすれば完成。
大きなものではベッドカバーやタペストリーなども作るが、手作業では完成までに時間がかかりすぎるので(目先の資金調達の為にと)女性用や子供用の鞄やリュックサックなども作っている。
この世界には鞄を背負うという概念がなかったので、リュックサックはあっという間に爆発的人気を博した。
丈夫な帆布を使った男性用の物と、キルティングで作った女性の物。子供用には可愛らしいアップリケ付き。
商標登録した後の販売はクラリア商会に全面委託し、ロクサーナはひたすらチクチク。
商品と材料の受け渡しはコナーが張り切って担当してくれた。
注文や問い合わせが引きも切らずクラリア商会からは納品数を増やして欲しいと言われているが・・。
(人手が欲しい・・、上手く行きすぎて辛い)
屋敷の使用人はコナー以外は信用しない方がいいと考えている。
優しかった馬丁がクビになったのは、馬丁が旧ロクサーナを馬に乗せてくれたのをステラに見られた次の日だった。
今いる使用人はコナー以外はメリッサが来てから入れ替わった人ばかり。
(取り敢えずは現状維持かなぁ。プレミア感で値上がりとかしないかな・・)
新ロクサーナが邪な思いを抱きつつせっせと製品を作ってはコナーに預けていた頃、予想通りの騒ぎが起きた。
コナーの所から帰り裏口からこっそり厨房へ入るとメイドの大声が厨房の左の方から聞こえてきた。
「ありましたー。奥様、あの子の部屋にありましたー」
厨房の前をメイドが横切った直後にメリッサの怒鳴り声が聞こえてきた。
「アレを探しなさい! 直ぐ連れて来るのよ!」
入り口から覗いていた料理人が裏口の近くに立っているロクサーナに気付き、ギョッとした顔をした後顔を背け慌てて調理台に戻り玉ねぎの皮を剥き出した。
そろそろと廊下に出て辺りの様子を伺っていると、ステラ専属のメイド2人がバタバタと走って現れた。
「奥様、ここにいましたー!」
1人が大声で叫びもう1人がロクサーナの右腕を捻り上げた。
「いたい!」
取り敢えず抗議の声をあげてみた。
「煩いわね、サッサと来なさいよ。ふふん」
(思い出した! 旧ロクサーナの記憶ではこの後・・)
メイドに腕を取られたままメリッサの私室の1つに連れて行かれた。
「今朝わたくしの部屋からブローチがなくなっているのに気が付いたの。これに見覚えはないかしら?」
「いいえ」
(そうだ、はじまりはこのブローチだ)
少しずつ鮮明になっていく記憶にロクサーナは青褪めた。
(ヤバい! アレは痛い。どうしよう、何か・・何か・・)
「お前の部屋の枕の下から見つかったの。お前が盗んだのね、正直に言いなさい!」
「いっいいえ」
「泥棒には罰を与えなくてはね」
メリッサの合図でメイドがロクサーナをメリッサの前に突き飛ばそうとした時、左手でメイドのスカートを握りしめた。
「ビリビリ、ビリッ・・きゃあー」
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憎々しげにロクサーナを見下ろしたメリッサは「ふんっ」と鼻を鳴らし、扇子を手に叩きつけた。
「今度やったらタダではおかないから、覚えておきなさい」
立ち上がったロクサーナは脱兎の如く逃げ出し、その日から部屋に鍵をかける事にした。
(自己防衛だもん、仕方ないよね)
旧ロクサーナはあの後メリッサに鉄の芯を使った扇子で背中を何度も叩かれ、あのメイドには蹴られたのだから。
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