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3.こっそり準備
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侯爵邸は正面玄関を入った所にあるホールの左手にパーティーで使用する大広間や応接室・図書室・音楽室などが集まり、庭師の手によって美しく整えられた庭園に出られるようにテラスが設えてある。
右手には食堂や厨房・執事や家政婦長の部屋・掃除用具などの為の倉庫・地下に降りる階段などがある。
地下には男の使用人の部屋・倉庫・食品貯蔵庫・ワイン蔵などがあり、屋根裏部屋にメイド達女の使用人の部屋がある。
2階にはチャールズの執務室・家族の私室・客室があり、それぞれの部屋には広大な庭園を望むバルコニーが設置されている。
ロクサーナの部屋は3年前から1階の倉庫脇にある。
元は倉庫として使われていた部屋の為かなり広さはあるものの置かれているのはベッドの他に収納のためのチェストが一つ。
剥き出しの床には色褪せ端がほつれた絨毯が敷かれている。
部屋から出るのを禁止されたロクサーナだが、どうしても今日中に裏庭の奥まで行かなくてはならない理由があった。
(今日の午後仕立て屋さんが来るならその時がチャンスよね)
仕立て屋が来た時に先ずはじめにロクサーナの用事を片付け、メリッサ達は延々と時間をかけて次のドレスの相談や新しい布地の品評会を楽しむはず。
その時間であればメリッサやステラだけでなく彼女達専属のメイド達もその部屋に集まり監視の目がなくなる。
(それ迄に何か入れ物を準備しなくちゃ。蓋がしっかり閉まって、ポケットに入るくらいの小さな物)
もうすぐお昼の食事で厨房もメイド達も慌ただしくなるはず、ロクサーナは小さく開けたドアから聞こえてくる音や話し声に耳を傾けた。
厨房から美味しそうな匂いが漂ってきて料理長の低い罵り声が聞こえてきた。
「トロトロしてんじゃねえ、さっさと持ってけ」
ぶつぶつ文句を言うメイドの声が聞こえたあと、ガチャガチャと食器がぶつかる音がしてメイドが料理を運んで行った気配がした。
(よーし、倉庫の横って超ラッキー)
そっと部屋を抜け出して隣の倉庫に潜り込み、ナイフ・麻の布・蓋の端が欠けた陶器の器を部屋に持ち帰った。
小さく切った麻の布を器の中に敷き準備完了。狙い目の午後のお茶の時間あたりまでは図書室から借りてきていた本でも読もうとしたが・・。
(うっ、お子ちゃま用過ぎて無理)
パタリと本を閉じてベッドに倒れ込んだ。
ロクサーナの精神年齢は赤の間のあの時点の17歳。目の前にあるのは文字より絵の方が多い童話の本。
(そう言えば前回は7歳の時って字が読めなかったのよね)
ロクサーナは殆ど物が置かれていない部屋をぼーっと見ながら20日前の出来事を思い出していた。
温かい春の日差しの中ロクサーナは高い木の上に登っていた。
(ダメだ、見えない)
ロクサーナを可愛がってくれていた馬丁がクビになり裏口から出て行ったのがほんの数分前の事。
泣きながらお別れの挨拶をしたが裏口の扉が閉まった瞬間ロクサーナは駆け出しこの木に登った。
(ここからなら見えるかと思ったのに)
涙で霞む目を擦り下を見ると、随分上まで登っていたと気づきロクサーナは青褪めた。
(どうしよう、また怒られちゃう)
恐る恐る足をかけゆっくりと下に降りていったが、『ずるっ』足が滑り地面に叩きつけられて意識を失った。
右手には食堂や厨房・執事や家政婦長の部屋・掃除用具などの為の倉庫・地下に降りる階段などがある。
地下には男の使用人の部屋・倉庫・食品貯蔵庫・ワイン蔵などがあり、屋根裏部屋にメイド達女の使用人の部屋がある。
2階にはチャールズの執務室・家族の私室・客室があり、それぞれの部屋には広大な庭園を望むバルコニーが設置されている。
ロクサーナの部屋は3年前から1階の倉庫脇にある。
元は倉庫として使われていた部屋の為かなり広さはあるものの置かれているのはベッドの他に収納のためのチェストが一つ。
剥き出しの床には色褪せ端がほつれた絨毯が敷かれている。
部屋から出るのを禁止されたロクサーナだが、どうしても今日中に裏庭の奥まで行かなくてはならない理由があった。
(今日の午後仕立て屋さんが来るならその時がチャンスよね)
仕立て屋が来た時に先ずはじめにロクサーナの用事を片付け、メリッサ達は延々と時間をかけて次のドレスの相談や新しい布地の品評会を楽しむはず。
その時間であればメリッサやステラだけでなく彼女達専属のメイド達もその部屋に集まり監視の目がなくなる。
(それ迄に何か入れ物を準備しなくちゃ。蓋がしっかり閉まって、ポケットに入るくらいの小さな物)
もうすぐお昼の食事で厨房もメイド達も慌ただしくなるはず、ロクサーナは小さく開けたドアから聞こえてくる音や話し声に耳を傾けた。
厨房から美味しそうな匂いが漂ってきて料理長の低い罵り声が聞こえてきた。
「トロトロしてんじゃねえ、さっさと持ってけ」
ぶつぶつ文句を言うメイドの声が聞こえたあと、ガチャガチャと食器がぶつかる音がしてメイドが料理を運んで行った気配がした。
(よーし、倉庫の横って超ラッキー)
そっと部屋を抜け出して隣の倉庫に潜り込み、ナイフ・麻の布・蓋の端が欠けた陶器の器を部屋に持ち帰った。
小さく切った麻の布を器の中に敷き準備完了。狙い目の午後のお茶の時間あたりまでは図書室から借りてきていた本でも読もうとしたが・・。
(うっ、お子ちゃま用過ぎて無理)
パタリと本を閉じてベッドに倒れ込んだ。
ロクサーナの精神年齢は赤の間のあの時点の17歳。目の前にあるのは文字より絵の方が多い童話の本。
(そう言えば前回は7歳の時って字が読めなかったのよね)
ロクサーナは殆ど物が置かれていない部屋をぼーっと見ながら20日前の出来事を思い出していた。
温かい春の日差しの中ロクサーナは高い木の上に登っていた。
(ダメだ、見えない)
ロクサーナを可愛がってくれていた馬丁がクビになり裏口から出て行ったのがほんの数分前の事。
泣きながらお別れの挨拶をしたが裏口の扉が閉まった瞬間ロクサーナは駆け出しこの木に登った。
(ここからなら見えるかと思ったのに)
涙で霞む目を擦り下を見ると、随分上まで登っていたと気づきロクサーナは青褪めた。
(どうしよう、また怒られちゃう)
恐る恐る足をかけゆっくりと下に降りていったが、『ずるっ』足が滑り地面に叩きつけられて意識を失った。
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