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42.後半戦 一 ミゲルにもお仕置き
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新たな客はミゲル皇太子ともう1人の男性だった。その後ろには緊張した面持ちのモブレー公爵が立ちシリルとケビンは見たこともない厳しい表情で部屋の中を見まわした。
アリシア達が一斉に立ち上がりカーテシーとボウ・アンド・スクレープをした。
「突然お邪魔して申し訳ありません。皆さんがこちらにおいでと伺ったので来てしまいました。お邪魔でなかったならば良いのですが」
声変わりしたミゲルの低い穏やかな声が静まりかえった部屋に響いた。
「ようこそおいで下さいました。アリシア・コーンウォリスで御座います。これは娘のマ「王子様! 寂しかったんですか? でも会いにきてくれてすっごく嬉しいですー」」
アリシアの言葉を遮ったミリーがミゲル皇太子の前に向かって走り出したが立ち塞がったシリルとケビンに止められ頬を膨らませた。
「ぷうっ、いつも邪魔なんですけどー。王太子様この人達にちゃんと言い聞かせて下さいね」
「彼等は私の護衛なのでお許し下さいますか?」
「仕方ないから、今回は許してあげます! 次は気をつけてくださいね」
部屋に入ってきたのがミゲル達だと気付いた瞬間エリーの前に立ち塞がったサイラスとエドナは身動きが取れないように後ろ手でエリーの腕やドレスを掴んでいる。
「王太子様、今日はどんな用事で来られたんですか?」
フレディがとても親しげにミゲル皇太子に話しかけたが隣に立っていた男性が反応した。
「今、王太子と聞こえたが? こちらにおられるのはミゲル皇太子様だ」
「やだあ、この人カッコいいのにお馬鹿さんなの? この人は王太子様ですよ。だって次の王様なんでしょ?」
「今回に限っては間違いです。私は帝国の王子ですから」
「ん? 分かった! 似たようなものってことね」
ミゲルと隣に立っていたロンダール王国の王弟殿下が顔を見合わせて苦笑いをした。後ろに控えているシリルは肩をすくめて目を回しケビンは笑いを誤魔化そうと横を向いた。
茶番の最中、サイラス達に捕まっているエリーは何とかして逃げ出そうと身を捩っていた。
(シリルさんのズボン姿が見たいのに!)
エリーの最大の関心事は久しぶりに顔を合わせたミゲルではなくシリルの服装だった。チラッと見えたシリルのピンク色だった髪は焦茶色に変わり軍服風の服装だった。
「私の婚約について少しお話ししておきたいことがあって参ったのですが、今お話しさせていただいても?」
「はい、ミリーが聞きますから安心して話して下さい」
「コーンウォリス卿の話からすると私と婚約したと言っているのはミリー嬢と言うことであっていますか?」
「はい、ミリーが王太子様のとこにお嫁に行きます」
ミリーの元気な返事の後にサイラスとエドナも大きく頷いた。
「私の知っていた名前はエリーだったはずなのですが?」
ミゲルの言葉に慌てたサイラスはチラチラとアリシアの様子を伺いながら返事をした。
「えーっと、エリーは既に子爵と婚約しておりまして双子でそっくりなのでミリーと婚約を」
「そうですか。では、我が国は色々問題を抱えており命の危険がある事を申し上げておきます。護衛をつけて出来る限りお守りするつもりですが100%守り切れるかと言うと・・。
それから他国のように妃の為の費用を国庫から捻出するのは厳しいのであまり多くの期待をされないように。不足分は妃の実家から援助して頂きます」
「・・えっ、命の危険があって綺麗なドレスやアクセサリー買えない?」
青褪めたミリーが一歩下がって低い声で問いただした。
「はい、そうなります」
「・・王妃になったら贅沢三昧でいっぱいドレス作って大きな宝石を散りばめたアクセサリーを買ってもらえるんでしょ?」
「我が国でそれは難しいかと。しかしミリー嬢は我が国に輿入れしたいと強く望まれ婚約したのです。それなりの覚悟をしていただかねば」
「待ってください。我が家にはそんな金は・・そうだ、母上! 母上なら王太子妃の衣装の準備など容易いじゃないか」
「どれもわたくしには関係のない話ですわね。どうぞ続きは他所でお願いいたします」
肩をすくめたアリシアが興味なさげにそっぽを向いた。
「アンタは孫が可愛くないのか!」
「血も繋がってないのに孫と思えるわけがないでしょう?」
平然と言い切ったアリシアはポンと扇子を手に打ち付け無邪気な顔で話しだした。
「そう言えばサイラスとも血が繋がってませんし、そろそろ援助金の返済をして頂こうかしら」
「なっ、何の話だ!」
「あら、わたくしとした事が場違いでしたわ。この件はまた改めて」
モブレー公爵は慈悲の塊のような微笑みを浮かべたアリシアに恐怖を覚えた。
(食えない婆さんだな。やっぱ怖え)
「あら、公爵様。どうなさいました?(心の声が表情に出てますわよ)」
「いっ、いえ! 何でもありません(やべ)」
「待って、違うんです。王太子様と結婚するのはエリーです!」
アリシア達が一斉に立ち上がりカーテシーとボウ・アンド・スクレープをした。
「突然お邪魔して申し訳ありません。皆さんがこちらにおいでと伺ったので来てしまいました。お邪魔でなかったならば良いのですが」
声変わりしたミゲルの低い穏やかな声が静まりかえった部屋に響いた。
「ようこそおいで下さいました。アリシア・コーンウォリスで御座います。これは娘のマ「王子様! 寂しかったんですか? でも会いにきてくれてすっごく嬉しいですー」」
アリシアの言葉を遮ったミリーがミゲル皇太子の前に向かって走り出したが立ち塞がったシリルとケビンに止められ頬を膨らませた。
「ぷうっ、いつも邪魔なんですけどー。王太子様この人達にちゃんと言い聞かせて下さいね」
「彼等は私の護衛なのでお許し下さいますか?」
「仕方ないから、今回は許してあげます! 次は気をつけてくださいね」
部屋に入ってきたのがミゲル達だと気付いた瞬間エリーの前に立ち塞がったサイラスとエドナは身動きが取れないように後ろ手でエリーの腕やドレスを掴んでいる。
「王太子様、今日はどんな用事で来られたんですか?」
フレディがとても親しげにミゲル皇太子に話しかけたが隣に立っていた男性が反応した。
「今、王太子と聞こえたが? こちらにおられるのはミゲル皇太子様だ」
「やだあ、この人カッコいいのにお馬鹿さんなの? この人は王太子様ですよ。だって次の王様なんでしょ?」
「今回に限っては間違いです。私は帝国の王子ですから」
「ん? 分かった! 似たようなものってことね」
ミゲルと隣に立っていたロンダール王国の王弟殿下が顔を見合わせて苦笑いをした。後ろに控えているシリルは肩をすくめて目を回しケビンは笑いを誤魔化そうと横を向いた。
茶番の最中、サイラス達に捕まっているエリーは何とかして逃げ出そうと身を捩っていた。
(シリルさんのズボン姿が見たいのに!)
エリーの最大の関心事は久しぶりに顔を合わせたミゲルではなくシリルの服装だった。チラッと見えたシリルのピンク色だった髪は焦茶色に変わり軍服風の服装だった。
「私の婚約について少しお話ししておきたいことがあって参ったのですが、今お話しさせていただいても?」
「はい、ミリーが聞きますから安心して話して下さい」
「コーンウォリス卿の話からすると私と婚約したと言っているのはミリー嬢と言うことであっていますか?」
「はい、ミリーが王太子様のとこにお嫁に行きます」
ミリーの元気な返事の後にサイラスとエドナも大きく頷いた。
「私の知っていた名前はエリーだったはずなのですが?」
ミゲルの言葉に慌てたサイラスはチラチラとアリシアの様子を伺いながら返事をした。
「えーっと、エリーは既に子爵と婚約しておりまして双子でそっくりなのでミリーと婚約を」
「そうですか。では、我が国は色々問題を抱えており命の危険がある事を申し上げておきます。護衛をつけて出来る限りお守りするつもりですが100%守り切れるかと言うと・・。
それから他国のように妃の為の費用を国庫から捻出するのは厳しいのであまり多くの期待をされないように。不足分は妃の実家から援助して頂きます」
「・・えっ、命の危険があって綺麗なドレスやアクセサリー買えない?」
青褪めたミリーが一歩下がって低い声で問いただした。
「はい、そうなります」
「・・王妃になったら贅沢三昧でいっぱいドレス作って大きな宝石を散りばめたアクセサリーを買ってもらえるんでしょ?」
「我が国でそれは難しいかと。しかしミリー嬢は我が国に輿入れしたいと強く望まれ婚約したのです。それなりの覚悟をしていただかねば」
「待ってください。我が家にはそんな金は・・そうだ、母上! 母上なら王太子妃の衣装の準備など容易いじゃないか」
「どれもわたくしには関係のない話ですわね。どうぞ続きは他所でお願いいたします」
肩をすくめたアリシアが興味なさげにそっぽを向いた。
「アンタは孫が可愛くないのか!」
「血も繋がってないのに孫と思えるわけがないでしょう?」
平然と言い切ったアリシアはポンと扇子を手に打ち付け無邪気な顔で話しだした。
「そう言えばサイラスとも血が繋がってませんし、そろそろ援助金の返済をして頂こうかしら」
「なっ、何の話だ!」
「あら、わたくしとした事が場違いでしたわ。この件はまた改めて」
モブレー公爵は慈悲の塊のような微笑みを浮かべたアリシアに恐怖を覚えた。
(食えない婆さんだな。やっぱ怖え)
「あら、公爵様。どうなさいました?(心の声が表情に出てますわよ)」
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