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27.喜んで参加するお館様

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【ご注意下さい】
 25話と26話の内容を大幅に変更しています。既にお読みの方は、読み直しして頂けますようお願い申し上げます。

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「えー、お館様ちょー邪魔なんですけどぉ。お館様ってチームプレー出来なくて突っ走るでしょー、護衛対象が増えるとかマジ勘弁して」

 シリルが本気で嫌そうに眉間に皺を寄せるとモブレー公爵の顳顬に青筋が立った。

「ほー、護衛対象が増えたら力不足になるって事か? そうかお前らは現役退いたんだったもんなあ」

「ちょっと誰に向かって言ってるの? 久しぶりに楽しくなってきたから邪魔はいらないってだけですっ」


 ニヤニヤと笑いながら話す気心の知れた2人の攻防を見ていたマイケルが恐る恐る話に割り込んだ。

「あのー、オーモンド公爵との話し合いにお館様が参加してくれたら助かるかも・・てか、助かると思う。僕じゃ実績もないし面会だって無理かも知れないし」

「そうそう。前オーモンド公爵とうちの親父殿は仲が良かったから話をしてみるか」

 マイケルの後押しで黙り込んだシリルを見たモブレー公爵がほくそ笑んだ。

「だろー? 俺はすごーく役に立つよな」

「しょうがないわねぇ。まあ、お館様はケビンと一緒にしとけばいいって事で」

「マイケル、大凡でいいんだがカオリナイトの埋まってる場所はわかるか?」

「はい、場所は母上が教えて下さいました。信用できる採掘業者を見つける必要があるんですがお心当たりはありませんか?」

「いるぜ、傭兵と業者が集まるまでに全員を帝国に秘密裏に入らせる手筈をつけなきゃな」

「纏めて移動はヤバいわね。最低でも二手に分けなくちゃ」


 その後、執事のアーロンを呼びケビンへの伝言と採掘業者への連絡を頼んだ。

「暫くは身動きがとれねえから今まで通りだな。その間に俺の方も何とかしないとなあ、そっちはめんどくせぇんだよなー」

 余程気に入らない仕事なのかモブレー公爵が益々椅子をギシギシといわせている。

「そんなの王弟に丸投げしちゃえばいいでしょう? 『文句があったらモブレー連れて来るぞ~』で済ませてねって」

 シリルの言葉にモブレー公爵が絶句した。

「・・王弟って、なんでお前が知ってんだ?」

「ふふ、じゃの道は蛇ですわ。有能な傭兵は情報収集出来なくちゃ。脳筋の傭兵は簡単に騙されちゃうの」

 腕を組んだシリルがウインクするとモブレー公爵は苦笑いを浮かべた。

「大したもんだ。では準備が出来るまで手伝って貰うとするか」

「オッケー。但ししっかりお代は頂くから覚悟しといて下さいね」

「シリル、僕もちゃんと払うからね。後払いでいい?」

「そうねぇ、覚えとくわ」


 シリルは肩まで伸ばした髪を後ろで一つに纏め麻のシャツとズボン姿でモブレー公爵が作った書類を持って王弟の元へ出発した。

「僕、シリルのズボン姿初めて見ました」

「シリルがドレス姿で現れたら目立って仕方なかいからなあ。アイツはズボンを履いてても目立つんだが不思議と隠密行動出来るんだよな」

 シリルが帰って来る迄にマイケルは陛下に陳情する為の書類の作成と採掘場所の確認をし、集まったオーモンド公爵の情報の擦り合わせやカオリナイトの販売ルートと販売先の検討などを進めていった。

 ケビンはポツポツと集まりはじめた傭兵や公爵家所属の騎士達の戦闘訓練、アーロンは採掘業者との打ち合わせや帝国への密入国準備。
 モブレー公爵はマイケルとの打ち合わせ以外に領地の仕事の引き継ぎや自国の腐敗した官僚達の粛清への準備にと全員が寝る間を惜しんで走り回っていた。

「シリル、思ったより遅いね」

「あー、王弟にいらん仕事を押し付けられてるのかもなぁ。後顧の憂いを残さず出発出来る様にとか言われて働き蟻になってるんじゃねえか? 兄貴は口は悪いし態度はでかいがああ見えて結構役に立つからなぁ」

「そのお陰で俺は楽できてるぞー。王弟から相談された最初っからシリルに押しつけときゃ良かった」

 ニマニマ笑いの止まらないモブレー公爵だがシリルが出発してから真面に寝ていないので目の下にはくっきりとしたクマが出来、掻きむしったボサボサの髪と無精髭が破落戸のような凄みを感じさせる有様になっている。

「旦那様は危険な猛獣の様な有様ですがケビンはイキイキとして日に日に昔の傭兵時代に戻っているような・・野生化? しつつあるような」

 アーロンが真顔でコーヒーをサーブしながら平然と雇い主と師匠をディスってきた。

「そう言や昔も、お館様は猛獣で俺は野獣。シリルは魔王ってアーロンに言われてたな」

 ゲラゲラと笑うケビンを見ながらマイケルが絶句した。
(んじゃ、アーロンは猛獣使いか裏ボス?)

「おや? マイケル様は何か失礼な事を考えておられませんか?」

 マイケルの心の声が聞こえたらしいアーロンにツッコミを入れられたマイケルは青くなった。

(怖え、アーロン最強かも)


 居間で久々の休憩を楽しんでいたマイケル達の元に侍従がシリル帰還の知らせを告げた。

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