13 / 48
13.灯台の光
しおりを挟む
出来上がった料理を貰って地下室に戻り2人で夕食の準備をはじめた。
「ケビンさんカッコ良かった、まるで魔法使いみたい。ジャッジャッて炒めてるといい匂いがしてきて・・。
お祖母様のところに行ったらお料理の勉強してみる。いつかマイケルに食べさせてあげるね」
「うん、楽しみにしてる」
今日も幸せいっぱいの2人は早々にベッドに潜り込んだ。
「あっ、光った! マイケル見た?」
「うん見た。一回で見えるなんてアリシアはめちゃめちゃ運が良いよ。
あの灯台の元になったアレクサンドリア灯台は遠い昔の冒険家の残した話やローマ時代のコインとか壁画のモザイク画に描かれた姿が残ってるんだ。アリシアちゃんとお願い事した?」
「うん、しっかりお願いした」
「なになに、教えて」
「マイケルが家に帰れるようにって。そしたらいっぱい会えるようになるかなって思ったの」
テヘッと笑ったアリシアが恥ずかしがって顔を背けた。
「僕もお願いしたんだ。いつかずっとアリシアと一緒にいられるようにって。
今まではあんまり気にしてなかったって言うか義母上とかの事面倒臭いなあって思って知らん顔だったんだけど今のままじゃ駄目だって思ったんだ。
自由に動けるようになったらアリシアの事迎えに行っていい?」
「うん、待ってる。私の本当の名前はエリー・コーンウォリスって言うの、お手紙書いていい?」
「時間がかかると思うけど必ず迎えに行く。手紙は取り敢えずバーバルス亭に送ってくれる? 僕はリューゼルに送るね」
手を繋いで意気揚々とバーバルス亭へ戻って行くと、宿の前に見慣れない馬車が停まっているのが見えた。
マイケルは立ち止まり繋いでいたエリーの手をぎゅっと握りしめた。
「もしかしてエリーのお迎えが来たのかな?」
「そうかも」
2人は言葉を交わすこともなく脇道にそれ無言で歩き続けた。バーバルス亭を遠巻きにして歩き街の南側を流れる川にやって来るとマイケルがネックレスのようにして首にかけていた古びた指輪を差し出した。
「これは僕の宝物なんだ。次に会う時まで持っていてくれる?」
「そんな大切なものを?」
「うん、もし何かあってもう会えないって思ったら手紙と一緒に送ってくれるかな」
「大切に預かっておくから必ず取りにきてね。絶対になくさない」
透き通った川には小さな魚達の影がゆらゆらと揺めき朝日がキラキラと川面を輝かせている。エリーの手の中の指輪に嵌った小さな宝石の光がさっき見た灯台の輝きと重なって見えた。
朝食を食べていないお腹が鳴いて抗議してきたので2人は苦笑いを浮かべしっかりと手を繋ぎ宿に向けて歩き出した。
宿の入り口を入ると店のカウンターに品の良いドレス姿の夫人が2人腰掛けシリルやケビンと和やかに話しをしていた。
「お祖母様!」
エリーの声に振り向いた夫人が立ち上がり満面の笑みを浮かべて両手を広げ飛びついたエリーを抱きしめた。
「よく頑張りましたね。わたくしに連絡をしてくれて本当にお利口さんでしたよ」
「お祖母様と叔母様がお二人で来てくださるなんて」
「可愛い姪っ子のお迎えですもの、お母様だけに任せるなんて勿体なくて。
良い方達に助けて頂けて本当に良かったわ」
「叔母様、ありがとう。シリルさんとケビンさんのお陰で安心して過ごせていました」
「それは良かったわ。でも、後ろの方にもお礼を言わなくちゃいけないんじゃないかしら?」
叔母の揶揄うような言葉にはにかみながら振り返ったエリーはマイケルに笑顔で話しかけた。
「マイケル、お祖母様と叔母様がお迎えに来てくださったの。
マイケルはね毎日色んなことを教えてくれたのよ、今も灯台を見に連れて行ってくれたの」
「はじめまして、マイケルと言います」
マイケルは少し離れた場所から礼儀正しく挨拶をした。エリーの祖母と叔母はマイケルの立ち姿や挨拶の仕方から貴族の子息だと推察した。
「この子の祖母のアリシア・コーンウォリスと言います。隣にいるのはわたくしの娘でこの子の叔母のマイラ・リストーエル。
この子の側に居てくれてありがとうございます。お陰で待っている間寂しくなかったんじゃないかしら」
茶目っ気のある笑顔で笑ったアリシアは帰ってきた時の2人がしっかりと手を繋いでいた事に気づいていた。
(アリシアってお祖母様の名前だったんだ)
「僕もとても楽しく過ごさせていただきました。出来ればこれからも手紙のやり取りをする事をお許し頂けますでしょうか」
マイケルの顔が緊張で少し強張っている。
「ケビンさんカッコ良かった、まるで魔法使いみたい。ジャッジャッて炒めてるといい匂いがしてきて・・。
お祖母様のところに行ったらお料理の勉強してみる。いつかマイケルに食べさせてあげるね」
「うん、楽しみにしてる」
今日も幸せいっぱいの2人は早々にベッドに潜り込んだ。
「あっ、光った! マイケル見た?」
「うん見た。一回で見えるなんてアリシアはめちゃめちゃ運が良いよ。
あの灯台の元になったアレクサンドリア灯台は遠い昔の冒険家の残した話やローマ時代のコインとか壁画のモザイク画に描かれた姿が残ってるんだ。アリシアちゃんとお願い事した?」
「うん、しっかりお願いした」
「なになに、教えて」
「マイケルが家に帰れるようにって。そしたらいっぱい会えるようになるかなって思ったの」
テヘッと笑ったアリシアが恥ずかしがって顔を背けた。
「僕もお願いしたんだ。いつかずっとアリシアと一緒にいられるようにって。
今まではあんまり気にしてなかったって言うか義母上とかの事面倒臭いなあって思って知らん顔だったんだけど今のままじゃ駄目だって思ったんだ。
自由に動けるようになったらアリシアの事迎えに行っていい?」
「うん、待ってる。私の本当の名前はエリー・コーンウォリスって言うの、お手紙書いていい?」
「時間がかかると思うけど必ず迎えに行く。手紙は取り敢えずバーバルス亭に送ってくれる? 僕はリューゼルに送るね」
手を繋いで意気揚々とバーバルス亭へ戻って行くと、宿の前に見慣れない馬車が停まっているのが見えた。
マイケルは立ち止まり繋いでいたエリーの手をぎゅっと握りしめた。
「もしかしてエリーのお迎えが来たのかな?」
「そうかも」
2人は言葉を交わすこともなく脇道にそれ無言で歩き続けた。バーバルス亭を遠巻きにして歩き街の南側を流れる川にやって来るとマイケルがネックレスのようにして首にかけていた古びた指輪を差し出した。
「これは僕の宝物なんだ。次に会う時まで持っていてくれる?」
「そんな大切なものを?」
「うん、もし何かあってもう会えないって思ったら手紙と一緒に送ってくれるかな」
「大切に預かっておくから必ず取りにきてね。絶対になくさない」
透き通った川には小さな魚達の影がゆらゆらと揺めき朝日がキラキラと川面を輝かせている。エリーの手の中の指輪に嵌った小さな宝石の光がさっき見た灯台の輝きと重なって見えた。
朝食を食べていないお腹が鳴いて抗議してきたので2人は苦笑いを浮かべしっかりと手を繋ぎ宿に向けて歩き出した。
宿の入り口を入ると店のカウンターに品の良いドレス姿の夫人が2人腰掛けシリルやケビンと和やかに話しをしていた。
「お祖母様!」
エリーの声に振り向いた夫人が立ち上がり満面の笑みを浮かべて両手を広げ飛びついたエリーを抱きしめた。
「よく頑張りましたね。わたくしに連絡をしてくれて本当にお利口さんでしたよ」
「お祖母様と叔母様がお二人で来てくださるなんて」
「可愛い姪っ子のお迎えですもの、お母様だけに任せるなんて勿体なくて。
良い方達に助けて頂けて本当に良かったわ」
「叔母様、ありがとう。シリルさんとケビンさんのお陰で安心して過ごせていました」
「それは良かったわ。でも、後ろの方にもお礼を言わなくちゃいけないんじゃないかしら?」
叔母の揶揄うような言葉にはにかみながら振り返ったエリーはマイケルに笑顔で話しかけた。
「マイケル、お祖母様と叔母様がお迎えに来てくださったの。
マイケルはね毎日色んなことを教えてくれたのよ、今も灯台を見に連れて行ってくれたの」
「はじめまして、マイケルと言います」
マイケルは少し離れた場所から礼儀正しく挨拶をした。エリーの祖母と叔母はマイケルの立ち姿や挨拶の仕方から貴族の子息だと推察した。
「この子の祖母のアリシア・コーンウォリスと言います。隣にいるのはわたくしの娘でこの子の叔母のマイラ・リストーエル。
この子の側に居てくれてありがとうございます。お陰で待っている間寂しくなかったんじゃないかしら」
茶目っ気のある笑顔で笑ったアリシアは帰ってきた時の2人がしっかりと手を繋いでいた事に気づいていた。
(アリシアってお祖母様の名前だったんだ)
「僕もとても楽しく過ごさせていただきました。出来ればこれからも手紙のやり取りをする事をお許し頂けますでしょうか」
マイケルの顔が緊張で少し強張っている。
25
お気に入りに追加
2,506
あなたにおすすめの小説
婚約破棄をされて魔導図書館の運営からも外されたのに今さら私が協力すると思っているんですか?絶対に協力なんてしませんよ!
しまうま弁当
恋愛
ユーゲルス公爵家の跡取りベルタスとの婚約していたメルティだったが、婚約者のベルタスから突然の婚約破棄を突き付けられたのだった。しかもベルタスと一緒に現れた同級生のミーシャに正妻の座に加えて魔導司書の座まで奪われてしまう。罵声を浴びせられ罪まで擦り付けられたメルティは婚約破棄を受け入れ公爵家を去る事にしたのでした。メルティがいなくなって大喜びしていたベルタスとミーシャであったが魔導図書館の設立をしなければならなくなり、それに伴いどんどん歯車が狂っていく。ベルタスとミーシャはメルティがいなくなったツケをドンドン支払わなければならなくなるのでした。
幼馴染みに婚約者を奪われ、妹や両親は私の財産を奪うつもりのようです。皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?
水上
恋愛
「僕は幼馴染みのベラと結婚して、幸せになるつもりだ」
結婚して幸せになる……、結構なことである。
祝福の言葉をかける場面なのだろうけれど、そんなことは不可能だった。
なぜなら、彼は幼馴染み以外の人物と婚約していて、その婚約者というのが、この私だからである。
伯爵令嬢である私、キャサリン・クローフォドは、婚約者であるジャック・ブリガムの言葉を、受け入れられなかった。
しかし、彼は勝手に話を進め、私は婚約破棄を言い渡された。
幼馴染みに婚約者を奪われ、私はショックを受けた。
そして、私の悲劇はそれだけではなかった。
なんと、私の妹であるジーナと両親が、私の財産を奪おうと動き始めたのである。
私の周りには、身勝手な人物が多すぎる。
しかし、私にも一人だけ味方がいた。
彼は、不適な笑みを浮かべる。
私から何もかも奪うなんて、あなたたちは少々やり過ぎました。
私は、やられたままで終わるつもりはないので、皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
『欠落令嬢は愛を知る』~妹に王妃の座も人生も奪われましたが、やり直しで女嫌いの騎士様に何故か溺愛されました~
ぽんぽこ狸
恋愛
デビュタントを一年後に控えた王太子の婚約者であるフィーネは、自分の立場を疑ったことなど今まで一度もなかった。王太子であるハンスとの仲が良好でなくとも、王妃になるその日の為に研鑽を積んでいた。
しかしある夜、亡き母に思いをはせていると、突然、やり直す前の記憶が目覚める。
異母兄弟であるベティーナに王妃の座を奪われ、そして魔力の多い子をなすために幽閉される日々、重なるストレスに耐えられずに緩やかな死を迎えた前の自身の記憶。
そんな記憶に戸惑う暇もなく、前の出来事を知っているというカミルと名乗る少年に背中を押されて、物語はやり直しに向けて進みだす。
幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに
hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。
二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
【完結】その令嬢は、鬼神と呼ばれて微笑んだ
やまぐちこはる
恋愛
マリエンザ・ムリエルガ辺境伯令嬢は王命により結ばれた婚約者ツィータードに恋い焦がれるあまり、言いたいこともろくに言えず、おどおどと顔色を伺ってしまうほど。ある時、愛してやまない婚約者が別の令嬢といる姿を見、ふたりに親密な噂があると耳にしたことで深く傷ついて領地へと逃げ戻る。しかし家族と、幼少から彼女を見守る使用人たちに迎えられ、心が落ち着いてくると本来の自分らしさを取り戻していった。それは自信に溢れ、辺境伯家ならではの強さを持つ、令嬢としては規格外の姿。
素顔のマリエンザを見たツィータードとは関係が変わっていくが、ツィータードに想いを寄せ、侯爵夫人を夢みる男爵令嬢が稚拙な策を企てる。
※2022/3/20マリエンザの父の名を混同しており、訂正致しました。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
本編は37話で完結、毎日8時更新です。
お楽しみいただけたらうれしいです。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる