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13.灯台の光

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 出来上がった料理を貰って地下室に戻り2人で夕食の準備をはじめた。

「ケビンさんカッコ良かった、まるで魔法使いみたい。ジャッジャッて炒めてるといい匂いがしてきて・・。
お祖母様のところに行ったらお料理の勉強してみる。いつかマイケルに食べさせてあげるね」

「うん、楽しみにしてる」


 今日も幸せいっぱいの2人は早々にベッドに潜り込んだ。





「あっ、光った! マイケル見た?」

「うん見た。一回で見えるなんてアリシアはめちゃめちゃ運が良いよ。
あの灯台の元になったアレクサンドリア灯台は遠い昔の冒険家の残した話やローマ時代のコインとか壁画のモザイク画に描かれた姿が残ってるんだ。アリシアちゃんとお願い事した?」

「うん、しっかりお願いした」

「なになに、教えて」

「マイケルが家に帰れるようにって。そしたらいっぱい会えるようになるかなって思ったの」

 テヘッと笑ったアリシアが恥ずかしがって顔を背けた。

「僕もお願いしたんだ。いつかずっとアリシアと一緒にいられるようにって。
今まではあんまり気にしてなかったって言うか義母上ははうえとかの事面倒臭いなあって思って知らん顔だったんだけど今のままじゃ駄目だって思ったんだ。
自由に動けるようになったらアリシアの事迎えに行っていい?」

「うん、待ってる。私の本当の名前はエリー・コーンウォリスって言うの、お手紙書いていい?」

「時間がかかると思うけど必ず迎えに行く。手紙は取り敢えずバーバルス亭に送ってくれる? 僕はリューゼルに送るね」


 手を繋いで意気揚々とバーバルス亭へ戻って行くと、宿の前に見慣れない馬車が停まっているのが見えた。
 マイケルは立ち止まり繋いでいたエリーの手をぎゅっと握りしめた。

「もしかしてエリーのお迎えが来たのかな?」

「そうかも」

 2人は言葉を交わすこともなく脇道にそれ無言で歩き続けた。バーバルス亭を遠巻きにして歩き街の南側を流れる川にやって来るとマイケルがネックレスのようにして首にかけていた古びた指輪を差し出した。

「これは僕の宝物なんだ。次に会う時まで持っていてくれる?」

「そんな大切なものを?」

「うん、もし何かあってもう会えないって思ったら手紙と一緒に送ってくれるかな」

「大切に預かっておくから必ず取りにきてね。絶対になくさない」


 透き通った川には小さな魚達の影がゆらゆらと揺めき朝日がキラキラと川面を輝かせている。エリーの手の中の指輪に嵌った小さな宝石の光がさっき見た灯台の輝きと重なって見えた。


 朝食を食べていないお腹が鳴いて抗議してきたので2人は苦笑いを浮かべしっかりと手を繋ぎ宿に向けて歩き出した。





 宿の入り口を入ると店のカウンターに品の良いドレス姿の夫人が2人腰掛けシリルやケビンと和やかに話しをしていた。

「お祖母様!」

 エリーの声に振り向いた夫人が立ち上がり満面の笑みを浮かべて両手を広げ飛びついたエリーを抱きしめた。

「よく頑張りましたね。わたくしに連絡をしてくれて本当にお利口さんでしたよ」

「お祖母様と叔母様がお二人で来てくださるなんて」

「可愛い姪っ子のお迎えですもの、お母様だけに任せるなんて勿体なくて。
良い方達に助けて頂けて本当に良かったわ」

「叔母様、ありがとう。シリルさんとケビンさんのお陰で安心して過ごせていました」

「それは良かったわ。でも、後ろの方にもお礼を言わなくちゃいけないんじゃないかしら?」

 叔母の揶揄うような言葉にはにかみながら振り返ったエリーはマイケルに笑顔で話しかけた。

「マイケル、お祖母様と叔母様がお迎えに来てくださったの。
マイケルはね毎日色んなことを教えてくれたのよ、今も灯台を見に連れて行ってくれたの」

「はじめまして、マイケルと言います」

 マイケルは少し離れた場所から礼儀正しく挨拶をした。エリーの祖母と叔母はマイケルの立ち姿や挨拶の仕方から貴族の子息だと推察した。


「この子の祖母のアリシア・コーンウォリスと言います。隣にいるのはわたくしの娘でこの子の叔母のマイラ・リストーエル。
この子の側に居てくれてありがとうございます。お陰で待っている間寂しくなかったんじゃないかしら」

 茶目っ気のある笑顔で笑ったアリシア祖母は帰ってきた時の2人がしっかりと手を繋いでいた事に気づいていた。

(アリシアってお祖母様の名前だったんだ)


「僕もとても楽しく過ごさせていただきました。出来ればこれからも手紙のやり取りをする事をお許し頂けますでしょうか」

 マイケルの顔が緊張で少し強張っている。

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